著者
秋葉 弘哉 飯田 幸裕 北村 能寛
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

内容 本研究は、通貨危機後の為替レート制度としては、一国の経済厚生から見てどのような制度が「最適」であるかを理論的に分析した研究である。通貨危機が固定制と変動制の間の中間的な制度を採用していた国々に発生した事実を受けて、いわゆる二極化が起こると言われたが、Fear of Floating(変動に対する恐れ)とFear of Pegging(固定に対する恐れ)も指摘され、最適な為替レート制度の選択は難しいことを念頭に置いて、モデル分析を試みた。モデルではde factoとde jureの制度を峻別し、それらの組み合わせも考慮した厚生の比較を行った。意義 モデルは変動性を考慮するために、必然的に3国モデルになる。厚生面から接近するために、小国の損失関数を大国の損失関数と類似のものと仮定し、失業とインフレからの損失を政府・中央銀行が最小化するようなモデルを構築し、変動レート制度、固定レート制度、中間的制度の3つの制度下の厚生水準を比較検討した。中間的な制度における政府の為替介入をいかにモデル化するかに腐心した。重要性 構築したモデルに基づいた分析から、以下のようないくつかの重要な結論が導出された。(1)変動レート制は中間的制度よりも厚生上優位にある。(2)de factoの中間的制度では、de jureの中間的制度の厚生が、de jureの変動制よりも高いことがある。(3)de factoおよびde jureの中間的制度と固定レート制の厚生では、中間的制度の厚生水準の方が高い。(4)de factoおよびde jureの変動制と固定制の厚生では、変動レート制の方が高い。(5)de jureの変動制でも、de factoで変動制の方が、de factoで中間敵な制度のときよりも厚生水準は高い。(6)de factoとde jureの固定制と、de jureで変動制でありde factoで中間敵な制度では、後者の制度の厚生水準の方が高い。その他いくつかの結論が得られた。
著者
川神 傳弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1940年代後半からスターリン治下のソヴィエト連邦共産主義体制内での恐怖政治の実態報告がフランスに伝わった。密告・強制収容所送り・暴力・拷問・虐殺などの全体主義体制の悲惨な実情が明るみに出て、それまでナチス・ドイツとは180度異なる理想の国家実現の夢をソ連に託していたフランス知織人を幻滅させ、共産主義支持の知織人から反-共産主義に転向する人々が続出した。しかしジャンーポール・サルトルは一貫してソ連擁護の姿勢を崩すことはなかった。理想の未来実現のために人命の犠牲はやむを得ないことを認めたのである。アルベール・カミュはあくまで人命尊重の立場をとり、サルトルと訣別した。彼ら両者がかく対蹠的な立場を表明した裏側に何が秘められているのかを詳細に分析した。
著者
小野 善康
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 2国貨幣経済動学モデルを構築し,各家計が資産として自国通貨と自国・外国の収益資産を選択するという前提で,非飽和的な流動性選好を持つ家計の動学最適化行動を定式化し,その経済動学と定常状態を調べた.その結果,対外資産を多く保有し,生産性の高い豊かな国ほど失業が発生しやすく,貧しい国ほど完全雇用が成立しやすいことを明らかにした.また,失業下では,完全雇用の場合とは異なり,対外資産を多く保有し生産性の高い国ほど失業が深刻になり,かえって消費が減少してしまうことを示した.さらに,流通機構の非効率性が生み出す内外価格差と失業の発生状況,中央銀行による為替介入の効果の有無,2財モデルの場合のマーシャル・ラーナー条件(為替レートと経常収支の関係)の正否など,国際マクロ経済学の諸問題を,動学的最適化を前提とする不況モデルの枠組みで再検討した.これらの結果については、後述の著書にまとめた.2. 実際に,家計が非飽和的な流動性選好を持つことを裏付けるための研究として,小川一夫教授(阪大)および吉田あつし助教授(大阪府大)とともに,各県別の資産と消費量,日経レーダーによる個別家計の資産と消費データを使って,実証研究を行った.その結果,流動性選好の非飽和性を強く裏付ける実証結果が得られた.3. 雇用を生み出す直接投資がある場合の国際経済モデルを構築し,直接投資に対する税制やローカルコンテンツ規制などが受入国に与える影響を調べた.さらに,生産者と販売者が異なり,それらが自国企業と外国企業である場合の,最適関税の性質についても調べた.これらの研究は,S.Lahiri教授(Essex大)とともに行い,研究発表の項の雑誌論文として挙げた,5つの論文としてまとめた.
著者
小池 文人
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

地域の生物相の種の生態特性から野外の生物群集を予測できれば,外来生物の導入前リスク評価や地球温暖化に伴う生物群集の変化の予測が可能になる.種の生態特性からデータマイニングによって予測する,群集の組み立て規則(assembly rule)の研究がすすめば,これが可能になるのであるが,世界の研究者の間では必ずしも広く認知されていない.研究代表者もこの分野を1990年代前半に立ち上げたひとりであるが,世界的にこの分野の研究を活性化してゆく必要がある.この研究の目的は統計的なアプローチの開発と検証,および複数の気候帯の群集における組み立て規則の確立と予測可能性の評価である.その結果,種のプールの設定と侵入のターゲットの設定については,既存の有害外来植物リスク・アセスメント(Weed Risk Assessment)の検討の結果,侵入ターゲットを広域ではなく個々の群集に設定する必要のあることが確認された.また植物群集はただひとつのニッチからなっており,このため単純なロジスティック回帰を適用することができることが明らかになった.植物の種特性を暖温帯下部と冷温帯上部で測定し,既存の暖温帯上部のデータとあわせて,組み立て規則をもとめた.その結果,フロラの異なる様々な気候帯で,群集タイプ(極相林,植林地,刈り取り草地,耕地雑草群集)ごとに大まかにはほぼ同じ組み立て規則が適用できることが明らかになった.今後,この研究結果が外来種のリスク評価や地球温暖化後の植物群集予測などに応用されてゆくには,植物の生態特性のデータベースの公開が不可欠となる,研究代表者が立ち上げた「Plant trait database in east and south-east Asia(東アジア・東南アジア植物種特性データベース)」に,今回の研究プロジェクトで測定したデータを登録して公開した.
著者
中村 不二夫
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

英語史研究は長い歴史を有するが、21世紀初頭にあっても、これまで語法分析されていない私的な日記・書簡資料を丹念に調査すると、従来考えられていたよりも早い言語変化の最前線を示す用例や、これまで未発見ないしは稀有な語法を発掘するなど、英語史実の訂正につながる用例に多々出くわす。この点を、8編の論考と2つの国際会議口頭発表、1つの海外におけるゲストレクチャー、1つの国内学会シンポジウムの司会と講師の仕事を通して実証した。
著者
小田内 隆
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究計画は12世紀末から13世紀にかけての北中部イタリアにおけるカタリ派、都市コムーネ、教会の諸関係を、この地域の独自の政治的社会的環境の中で研究し、ラングドック地方のケースとの比較を通じて、カタリ派異端の形と意味の多様性、およびそれに対する態度、政策の地域的偏差の重要性を明らかにしようとした。この報告書では3年間の期間でなされた、以上の計画のための基礎作業の成果の一部を3つの章に分けて提示した。第1章では、異端審問を権力過程の問題として考察する上での方法論的な諸問題を考察した。主として、Tアサドの研究に導かれながら、異端統制のための制度的メカニズムである異端審問の権力作用を具体的な歴史的コンテクストで分析する上での理論的な枠組みを素描した。とくに、異端審問が「告白」の制度の出現と密接な関係に立つことを踏まえて、フーコー的な権力論による理解が目指された。第2章では、ラングドックの異端審問に関する研究を踏まえて、同時代のヨーロッパにおける権力技術の発展の一部として異端審問の成立を理解した。異端と教会(異端審問)の関係は、地域社会の複雑な権力関係の網の目の中に置いて初めて、理解可能である。第3章では、Cランシングによるオルヴィエトのカタリ派に関するミクロな研究を紹介しながら、北中部イタリア都市におけるカタリ派の問題を、コムーネという特定の権力空間のなかでおきた「聖なるものと権威との関係」をめぐる論争という視点から考察した。現段階ではなお史料研究にもとづく研究成果には至らなかったが、少なくとも以上の作業にょって異端を具体的な権力関係の相において解釈し直すための枠組みを確立することはできた。
著者
大河内 信夫 名取 一好
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者大河内信夫は、2000年度学校要覧に示された農業に関する学科の教育課程表を分析した。その結果、1990年度調査に比較して、以下の点から「多様化」がキーワードになることを明らかにした。(1)学科名称が1990年度調査よりも多様になり、「農業科」の占める割合が低下していた。教育内容ではなく、自営者養成=農業科という観念を名称変更によって払拭しようとしているように見えた。(2)普通科目と専門(職業)科目とのそれぞれの合計単位の比率を比べると、普通科目の単位数が専門(職業)科目の単位数を上回る学校が圧倒的に多くなった。(3)選択科目では普通科目と専門(職業)科目との組み合わせの割合が多くなり、学科内でのコース制をとる傾向にあった。(4)専門(職業)科目間の選択を設けている学校は、1990年度調査結果(調査回答校中46.5%)に比べて大幅に増加し、2000年度調査結果は回答校中65.1%であった。(5)「農業に関するその他の科目」に該当する科目名称は、90科目と非常に多く、そのうち69科目は1校でしか開講されていなかった。最も多く開講されている科目でも7校に過ぎなかった。前年度行った「総合実習」に関する調査について、研究分担者名取一好とともにデータ整理、分析を行った。その結果、総合実習の目的について、上位の3つは「農業の実践的技法(技術)を学ぶ」「農業体験を重ねる」「座学の知識を確かめる」となっていた。「農業を受け継ぐきっかけを用意する」「農業を主体的に継承する意志をつくる」といった項目は下位であった。多くの学校(91.5%)が総合実習に時間外実習を含めていた。総合実習に農家での実習を含めていない学校は36.4%あった。農家での実習を実施している学校においても、生徒全員に課している括弧うは全体の15.0%であった。「講義」科目と総合実習との関係では、「講義」科目の実習は「講義との関係で必要」と回答する学校が最も多く、「総合実習があるので各科目での実習は不要」とする学校は皆無であった。一方、「総合実習は農場維持のために必要」とした学校は11.9%であった。農業教育の目的は、農業政策上の制約に由来して農家子弟の教育となってきたため農業後継者の要請として機能しなかった。総合実習もこの枠組みから抜け出せなかったと推察された。
著者
〓 斗燮 小井川 広志 村岡 輝三
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は昨今の東アジア経済の構造転換を「直接投資時代」への移行段階として規定し、その本質を企業連携、産業金融、地域協力という三つの局面において総合的な把握を試みた。この場合、直接投資の雁行型拡大により好調を続けてきたアジア経済が1997年タイの通貨危機以降、地域全体が構造的な危機を露呈している現状に鑑み、以下の三つの追求すべき課題を設定した。(1)「アジア型発展」モデルが90年代の後半に急激に機能不全に陥った理由は?。再び成長基調に乗せるための条件と問題点は何か。(2)経済成長の持続化ためには成長段階に合わせて人材の質を高める必要があるが、学校教育と企業内教育とどちらが有効であろうか。(3)「アジア型発展」モデルは、究極的には日本企業による企業内国際分業の展開及び高度化にその本質がある。今後の直接投資は、大企業よりは中堅中小企業による国境を越えた成長戦略がカギになるものと考えられるが、彼らの国際化を支える競争優位や企業文化とは何か。以上の三つの課題に対する我々の答えは以下の通りである。(1)「アジア経済」の成長は、アメリカ、日本、アジア諸国の3者(トライアングル)による技術、資本、地域協力の枠組みに内在する「協力」と「緊張」の好循環によるもの。しかし、昨今の通貨危機のなかで既存のトライアングルが持つ弱点がはっきりしてきた。特に、金融・通貨面での対応能力が脆弱である点が明らかになった。対応策としては、地域経済路力機構(ASEANやAPEC)の機能強化、共通通貨や通貨圏の設置などが不可欠であるが、問題は2大勢力の円(日本)と人民元(華人経済)が共通目的に向けて協力できるかである。(2)日本の高度成長は質の高い人材を長期安定的に供給できた点に負うところが大きいが、教育投資による経済的効果に関する定量分析によれば、いわゆる学校教育による労働生産性の増加効果はそれほど大きくない。企業内教育(OJTを含む)の重要性を示唆する結果である。(3)中堅企業の国際化がアジア経済を再び成長軌道に乗せるには非常に重要なファクターである。高い競争力を持つ中部圏の製造企業11社に対するヒヤリング調査から以下の点が確認された。第一は、全体として国際化にはまだ消極的であること。第二は、ある特定技術分野に特化した専業企業が多いこと。第三は、カリスマ的な創業者による独特の組織文化を共有していること。第四は、上位文化として製造業や熟練の継承に好都合の地域文化(中部圏)が存在していること。アジア経済の再生には、こうした中堅企業の対アジア進出と組織文化の地域的な拡散が大きく寄与するものと考えられる。
著者
渡部 和彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究における成果をまとめると、これまで一流スキージャンプ選手の踏み切り局面における構えおよびサッツ動作の解析を行うことができた。それと合わせて、足底部圧力分布と圧力中心点(COP)の移動の特徴を解析した。その結果次のような知見を得ることが出来た。(1)バイコンシステムによる3次元画像解析装置により、選手のサッツ動作時における構えのシミュレーション実験を行い、身体重心位置(COM)を特定するとともに、地面からのベクトルが圧力中心位置(COP)といかなる関係にあるかを静的な条件のみならずダイナミックな状態で記録し、すぐさまそれを分析して、その場でコーチ・選手に結果を呈示することを可能とした。このことにより、研究者がその実験資料の意義をについて解説・説明し、その場所で資料を基に、選手・コーチと共に結果と今後の取り組み方等を論議することができるようなシステムを構築できた。(2)足底圧のCOP移動軌跡から、一流選手の特性として、サッツ動作を行わせた際の移動軌跡を分析した結果、COPが足部の尖端近くにまで及んでいるものと、その手前で終了してサッツ動作を行っているものとがあった。その違いは、サッツのテクニックおよび跳躍の高さと関係があることが判明した。ある一流選手のサッツ直後のスキー板の変動とサッツ動作の選手の特性との関係が明らかとなり、選手・コーチの疑問に対してその場で、実験資料を基にアドバイスなど指導することができることが示された。その結果、オリンピック直前に代表選手の一人は、自分が抱いていた疑問を払拭して自信を持って自己のサッツ動作を行いトリノのオリンピックに出場した。良い成績を上げることができた。このたびの研究における成果の一つであり、我が国のオリンピックの成績に貢献できたと考える。今後の指導のあり方に、具体的な方向を示すことが出来た。
著者
片方 信也 佐々木 葉 小伊藤 亜希子 室崎 生子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1 中高層集合住宅の建設動向:京都市都心部では、バブル期についで1993年以降再び中高層集合住宅の建設ラッシュに見舞われている。1993年以降の特徴は、分譲、および9階建て以上の高層の割合いが増えていることであるが、敷地規模は依然として多くが400m^2以下であり、周辺の町並みの日照を奪っている。2 都心部中高層分譲集合住宅入居者の特性:1993年以降では3〜4000万円台と分譲価格が下がっているため、子どものいる世帯を含めて多様な世帯の入居がみられる。全体の7割は京都市内からの転入であり、うち半数は都心部内からである。6割の世帯に現在、または以前に都心部に住んでいた親族がおり、都心部とのコネクションの強い住民の入居が多いことがわかった。3 中高層集合住宅に対する周辺住民の対応:中高層集合住宅の建設に対して、日照やプライバシーの侵害、ビル風等の実施的な被害に加え、周辺住民が多大な不安を示していることがわかった。それは、マナーが悪い、だれが住んでいるかわからない、といったコミュニティ形成上の問題である。また、中高層集合住宅建設時に町内会として業者と交渉したり、建築協定を作って対応するといった積極的な動きがみられる。4 中高層集合住宅の立地する町内のコミュニティ形成:集合住宅自治会として町内会に属し、町内会の行事にも参加しているケース、管理人だけが町内会とのつなぎをしているケース、まったく別組織にしているケースなど、集合住宅の町内会との関係は様々であった。概して、集合住宅住民と周辺既存住民の交流は薄く、周辺環境を破壊する集合住宅の建て方がコミュニティ形成のひとつの疎外要因になっている。5 京都市都心部の地域ストックの享受と破壊:周辺既存住民と同様に、集合住宅入居者も、生活のしやすさ、便利さ、歴史や文化の存在、自然環境等、京都の都心部の「京都らしい」環境を評価して入居しているが、現在のような中高層集合住宅の建設は、その環境を破壊しつつあるという矛盾を抱えている。
著者
箱山 洋
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

無性型・有性型からなるフナ類の集団は同所的に共存している。この共存のメカニズムを理解することを目的とした。(1)野外個体群動態から、共存を可能にする3つの仮説(病気、中立、メタ個体群)を棄却した。(2)実験個体群で、有性生殖のオスを作るコストの個体群への影響を初めて実証した。(3)発育段階ごとに、有性・無性型の成長率の違いを明らかにした。結論として、共存メカニズムは出生率の差に関する何らかの要因によることが示唆された。
著者
牛田 享宏 大迫 洋治 末冨 勝敏 小畑 浩一 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 小畑 浩一
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

四肢の不動化(ギプスやシーネの装着あるいは過度のベッド上安静)はしばしば不動化した部位の廃用とそれに伴う痛みが生じる。しかし、この痛みのメカニズムについてはまだ明らかにされていないのが現状である。そこで我々は独自に開発したギプス固定法による前肢拘縮モデルを作製し、痛みの発症のメカニズムに関与する脊髄後角における神経ペプチドであるCGRP、転写因子であるC-fosおよびアストロサイトの活性マーカーであるGFAP、ミクログリアの活性マーカーであるCD11 bについて調査した。また、後根神経節においてCGRP陽性細胞の大きさとその分布について調査を行った。更にこのような拘縮に対する運動療法の有用性を検証する目的での訓練の効果について調べた。その結果、ギプス除去後にギプス固定側の脊髄後角においてCGRP陽性線維の増加、C-fosタンパク陽性細胞の増加、GFAPおよびCD11bの染色性の亢進が観察された。これらのことはギプス固定により、脊髄後角においてミクログリアやアストロサイトの活性化亢進し、それを引き金として炎症性神経ペプチドの増加などが引き起こされていることが示唆された。同時に調べた後根神経節細胞レベルのCGRP分布パターンの変化は、同部位においても長期のギプス固定により、後根神経節細胞に感作や可塑的変化が引き起こされていることを疑わせるものと考えられた。今回のモデル動物では、ギプスから解放を行っても治療を行った患肢を使う傾向が乏しい。そこで、水中訓練や反対側のギプス固定などを行ったところ反対側のギプスによって、生活障害が引き起こされると患側を使うようになり自ら動かすようになることが判った。今後はタイミングや運動強度などについても検証を行っていく必要があるものと考えられた。
著者
相内 眞子 相内 俊一
出版者
浅井学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、女性議員の選出に作用するアクターや条件を、日本、アメリカ合衆国、スコットランドの比較を通して検証することにある。議会選挙と議員の選出には、候補者の選考方法、政党の関与と支援、有権者の候補者選好傾向、さらに政治文化や選挙制度など、多様な要因が複合的に作用し結果に大きな影響を与える。本研究は、(1)アメリカにおける候補者選出過程に関する先行研究の紹介、(2)2006年のアメリカ中間選挙の分析、(3)2005年の衆議院選挙の分析、(4)2007年のスコットランド議会選挙の分析(5)ジェンダークオータの有効性分析などを中心に、主に国会レベルの議会への女性の選出につながる要因を抽出しようとするものである。女性の議会への選出については、その促進/阻害要因として、これまでは政治文化や有権者の候補者選好傾向がとりあげられてきたが、本研究はより制度的な側面に焦点を絞り、女性議員の選出に有効な選挙制度に着目した。その一つが、アメリカで議論され、近年採用州も増加しつつある「議員任期制=タームリミット」であり、もう一つが、世界に拡がりつつある「ジェンダークオータ制度」である。アメリカにおけるタームリミットは、『現時点では連邦議会にその効力は及んでいないが、女性の選出に必ずしも積極的な効果を与えていないことが統計上明らかになっている。また、ジェンダークオータ制度については、女性の選出を助けるものとしてその効果が評価される一方、自由主義的立場からは、有権者の選択権を制限するものだとする批判や、平等主義的立揚からは、不公平、逆差別等の批判があり、更にジェンダー論的立場からも賛否を巡る論争が続いている。本研究は、以上の共通の分析視点から3力国における女性の選出プロセスを検証したものであり、日本における政治学、選挙学研究においてまだ十分とはいえない分野に焦点を当てたという意味で、その重要性を主張できよう。
著者
國谷 知史 岡 綾子 菅沼 圭輔 真水 康樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本共同研究では、法学・政治学・農業経済学の諸領域において、農村の土地財産を巡る諸関係に関する制度・理論・実態の基本問題の発見と整理、およびいくつかの具体的問題の解明を進めた。法学領域では、重要な立法(農村土地請負法、農業法および物権法等)が相継ぎ、テーマに関する法整備が進んだことから、立法面・法制面での動きをフォローしながら法理論的問題の発見と整理、考察をおこなった。政治学領域では、基層といわれる「郷鎮-村」レベルの権力関係とそれを支えている構造をできるだけ詳細に明らかにするという課題を設定し、北京市に対象を絞って制度および実態の解明をおこなった。農業経済学領域では、農民の家族経営と農地の請負経営権の分配に関する研究を進めた。そこでの主題は、市場経済化を目指す中国において、農地(または耕地)という農業の生産要素が、他の生産要素(資本)あるいは他の土地(都市の工商業用地や住宅地)と同じように市場で取引される財となりえるのか、ということであった。以上のとおり各領域で本共同研究は進められたが、その結果、農村土地財産権に関する契約と権利構成の基本的内容、末端行政組織の形成プロセス、権利分配に関する集団の意思決定、に関する問題を明らかにすることができた。また、制度・理論・実態の諸層で矛盾が生じ、不安定な状況が生まれ、解決すべき問題が山積していることを確認することができた。その上で、市場経済への移行ないしは市民社会の形成を進めている中国について法学・政治学・経済学の共同研究を進めるにあたっては、「団体と団体構成員」または「集団と個人・家族」という分析概念を用いるのが有効であり、これらの概念で中国農村の土地財産を巡る諸関係を分析していくことが今後の課題である、という結論が導き出された。
著者
吉田 美喜夫
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「法と現実」との乖離を埋める課題は、法律学にとって古典的な課題であるが、タイのような経済発展を急速に進めている国の場合、この課題には2つの側面がある。1つは、国内法と現実との関係の側面であり、もう1つは、国際的な基準と現実との関係の側面である。とくに、グローバリゼーションが進展している状況の下では、国際的側面が重要である。グローバリゼーションの視点からタイ労働法の動向を見た場合、労働団体法と労働保護法の分野で大きな違いがあるように思われる。労働保護法の分野では、98年の労働保護法の制定に見られるように、ILO基準との整合性が図られており、その意味で、国際労働基準との一致が追求されている。しかし、労働団体法の分野では、近年の労働法改革において労働組合の保護を強化する方向には向いていない。その理由は、グローバリゼーションの中で影響力を高めてきた企業家が、労働組合は国際的な経済競争を勝ち抜く上で障害になると評価しているからだと思われる。では、現実の変化に対応し、「法と現実」との乖離を埋めるための労働法改革はどのような方向に向かうのか。1997年の通貨危機の経験を通じて、再度、伝統的な規範の評価が認められる。しかし、それは開発法制への回帰ではなく、協調的労使関係への回帰であるように思われる。その装置が1999年の労働関係法改正草案が新たに定めた合同協議委員会である。また、企業自体が大きくなっている条件の下で、むしろ交渉や協議を通じた労使関係の方が合理的だと考えられつつあるように思われる。さらに紛争解決手続を一層丁寧に規定しようとしている。このような労働法改革の帰趨は、タイ労働法が開発法制を清算し国際標準化を達成するかどうかを占うことになる。
著者
岡島 康友 原田 貴子
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、書字運動を特徴づける三次元運動解析パラメータを探索し、右利きの軽症の右片麻痺者6例と右利き健常者10例を対象に、左右の手による書字運動特性を解析するとともに、麻痺による書字運動の変化を検討した。左右の手で1.2,6,15cm角の3種類の大きさの平仮名「ふ」を、初めに各人の自由な書体で、次に楷書体手本をなぞらせた。評点をペン先、示指MP関節位、橈骨遠位端の3ヶ所において三次元座標からオフラインにて、書字時間、書字軌跡長、各点の運動半径、そしてその運動半径比を計算した。運動半径比とはペン先の運動半径を1とした時の他の2つの評点における運動半径比で、手や腕を固定してペン先の動きだけで書字がなされれば0に近くなり、反対にペン先と手全体が一塊となった動きでは1に近い値を示す指標である。健常者の自由書字では字体が大きくなるほどペン先は速くなり、書字時間を一定にする傾向を認めた。利き手書字の習熟性の反映と解釈できた。加速度や躍度あるいは文字軌跡長/文字半径といった書字運動や文字を構成する線のスムースさを反映するパラメータの一部で、感覚障害のある麻痺手による書字の稚拙さを示すことができた。健常者の書字運動半径比の結果で、字が大きくなるほど評点は一塊となって動くが、その一塊性は右手より左手で顕著となった。一方、右不全片麻痺者において、感覚が正常であれば健常者の右書字と同じ運動半径比の特性を認めたが、感覚障害があると小さな字でも一塊の動きになることが示された。つまり、麻痺があっても、感覚障害がなければ、書字速度は遅くなるにもかかわらず運動半径に示される利き手の習熟書字の運動特性は保たれることがわかった。巧緻運動の特徴の1つとして、身体各部の運動の独立性をあげることができるが、本研究の示す運動半径比はまさに、そういった独立性・分離性を示すパラメータといえる。
著者
大嶽 秀夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1993年の「政治改革」は、派閥の力を弱めることによって、相互に矛盾する二つの動きを日本政治に生み出した。一つは、党執行部のリーダーシップの強化であり、もう一つは個々の議員の相対的自律性の強化である。いずれの方向が今後優勢となるかはみきわめが難しいが、その行方を左右するものとして、2つの要因が重要である。一つは、与党が連立をいつまで必要とするかである。公明党との連立が不可避である限り、党執行部の党内統制力は強い状態にとどまるであろう。他方、もう一つの要因として、1970年代中期からのポピュリズムの断続的登場が挙げられる。ポピュリズムとは、通奏低音としての政治不信(政党とくに与党と官僚への不信)を背景に、時折現れる特定政治家への高い期待の急浮上(と急落)のことであるが、これが近年再三にわたって登場している。日本新党ブームを起こして首相に就任した細川護煕、(自社さ連立時代に)厚生大臣として薬害エイズ問題を「解決」し国民的人気を博した菅直人、派閥内で孤立していながら国民的人気で自民党総裁に選ばれ、九六年総選挙で自らを党の「顔」にしたテレビCMによるイメージ・キャンペーンで勝利を収め、「六大改革」に邁進した橋本龍太郎、森政権時代に「加藤の乱」で国民の喝采を博した加藤紘一、二〇〇一年の自民党総裁選挙で突如人気をさらった小泉純一郎と田中真紀子のコンビなどが、こうした突発的で強い期待を集めた政治家たちである。以上の特定政治家への国民的支持の一時的急上昇の主体は無党派層が中核となっっているとみられるが、それが自民党内権力構造に大きな影響を与えている。そして、その支持を背景として、九〇年代以降のポピュリストたちは、ネオ・リベラル型政策を掲げて、日本政治の改革に邁進する姿勢を示してきた。換言すれば、党内基盤の弱いポピュリスト政治家たちは、(自分の所属する政党を含む)政党や官庁を敵に仕立てて、改革の姿勢を演出する。これが今日日本政治の常態となっているのである。
著者
大嶽 秀夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1975年以降、アメリカでも日本でも、政治不信の高まりを背景に、政治のプロフェショナルでないという姿勢、すなわち素人イメージを演出したアウトサイダー的政治家が、突発的に人気を得るという現象が、間歇的にしばしば発生した。これを近年の政治学では、ポピュリズムという概念を再定義して表現するようになった。ポピュリズム概念は、政治学では従来、ロシアのナロードニキ、アメリカの革新運動、ラテンアメリカの政治体制をさす言葉として使われてきたが、最近は、カーター以来の大統領による「going public」の手法ならびに米国の減税運動に典型的にみられる直接民主主義的運動を表す言葉として、新たな意味賦与をともなって使われるようになった概念である。日本でも同様の現象がみられ、1976年の新自由クラブ、1989年の土井社会党、1993年の日本新党、そして2001年の小泉・眞紀子ブームがそれに当たる。これらのポピュリストたちは、政治腐敗を最大の課題として登場しており、中でも田中派の流れをくむ経世会、橋本派を最大の標的とした。言い換えると、政治学でいうクライアンティリズムに対する「改革」をスローガンとしていたのである。この対立図式は、米国の都市政治におけるマシーン政治と改革運動との対立の再現である。問題は、しかし、これらの日本のポピュリストたちは、小泉純一郎を除いて、いずれも短命に終わっていることである。本研究では、小泉がなぜ例外的にその人気を維持し、改革を達成できたかを検討した。そのために、ケーススタディ・アプローチをとって、(1)道路公団改革、(2)郵政民営化、(3)イラクへの自衛隊派兵、(4)北朝鮮拉致問題の4つの争点につき、実証的に研究を行った。そして、橋本内閣によって導入された首相の権限拡充という制度的変化と、小泉自身のもつリーダーシップ能力に検討を加え、通常制度論を援用していわれているような前者ではなく、後者の方がより重要な要因であったとの結論に導いている。
著者
丸山 孝一 姚 麗娟 楊 聖敏 地木 拉提 瓦 依提 神崎 明坤 趙 嘉麟 陳 継秋 阿吉 肖昌 文 蘭 関 清華
出版者
福岡女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

全国でも17万余人しかいない錫伯族の文化研究は歴史人類学的に急を要する。本研究では東西2地域のシボ族が伝統文化を維持し、あるいは消失しつつある現状を観察、報告するものである。かたや伝統を失った東シボ(遼寧省)が伝統回帰を志向するのに対し、西シボ(新疆ウイグル自治区)では240年余維持してきた伝統を急速に喪失しつつある。そこに急接近してきた漢文化またはナショナリズムに対する同化と反発の文化力学的過程があることが判った。
著者
川人 貞史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.議員立法の活性化の分析を進めるため,1947年の第1回国会から1998年の第144回国会までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データ・ファイルを作成した.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.4.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集し,データ入力した.2000年総選挙における小選挙区結果データおよび比例代表選挙結果データを小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.5.4で作成したすべてのデータを統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成し,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.