著者
杉浦 令人 鈴木 美保 村田 元徳 亀頭 千鶴 江島 幸子 小野 早智子 佐藤 ゆかり 花輪 千草
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0162, 2006

【目的】脳卒中後遺症患者の大腿骨頚部骨折の発生率は、一般高齢者にくらべ4から12倍といわれている。大腿骨頚部骨折後のリハビリ訓練においても、脳卒中後遺症が阻害因子となり、骨折前の状態に復帰するまでに長期間かかる傾向にある。今回、当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)における脳卒中後の大腿骨頚部骨折患者の特徴を調査し、脳卒中後の大腿骨頚部骨折リハビリ訓練の強化点を検討したので報告する。<BR><BR>【対象】2003.4.1から2005.8.31までに、当院回復期病棟入院の大腿骨頚部骨折患者で、脳卒中既往のある37例(以下、脳卒中群)中、脳卒中に対しても当院でリハビリを行った7例を対象に、詳細な調査・検討を行った。年齢は平均73.7±9.4歳、全員女性、脳梗塞6例、くも膜下出血1例であった。また、この期間内に当院回復期病棟に入院した脳卒中の既往のない大腿骨頚部骨折患者は13例(以下、既往なし群)であった。<BR><BR>【方法】当院データベースをもとに、大腿骨頚部骨折の受傷側、受傷事由、入院期間、麻痺側運動機能変化、関節可動域変化、ADL変化、歩行率、歩行速度などについて調査した。また、脳卒中退院時評価と、大腿骨頚部骨折退院時評価の比較もおこなった。麻痺側運動機能はBrunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)、関節可動域はRange Of Motion(以下、ROM)、ADLはFunctional Independence Measure(以下、FIM)にて評価した。<BR><BR>【結果】7例について受傷側は7例とも麻痺側、受傷事由はトイレへの歩行移動時での転倒6例、ベッドからの転落1例、入院期間101.1±51.0日、BRS下肢II:1例、III:3例、IV:1例、V:1例、VI:1例、ROM膝関節伸展脳卒中退院時0°:7例、頚部骨折退院時0°:2例、-5°:2例、-10°:3例、FIM運動合計脳卒中退院時71.7±5.4点、頚部骨折退院時72.3±8.5点、認知合計脳卒中退院時31.9±3.8点、頚部骨折退院時31.4±3.2点、歩行率脳卒中退院時60.424.2step/min、頚部骨折退院時43.3±15.2 step/min、歩行速度脳卒中退院時13.6±8.2m/min、頚部骨折退院時8.9±2.7 m/minであった。脳卒中群と既往なし群の比較では、入院期間は脳卒中群86.3±41.0日、既往なし群67.8±40.6日であり脳卒中群が18.5日長かった。FIMは、運動合計入院時:脳卒中群55.9±17.2点、既往なし群58.3±24.1点、退院時:脳卒中群68.3±16.1点、既往なし群71.1±21.8点であった。<BR> <BR>【考察】受傷側は、7例では100%麻痺側、脳卒中群全体でも92%であり、諸家の報告どおりであった。女性が多いのは、骨粗鬆症の関与も考えられるが、受傷事由も考え合わせると、介護者への遠慮により能力以上の行動をしがちな状況の可能性がある。今回の調査から、脳卒中後の大腿骨頚部骨におけるリハビリの強化点としては、不十分な関節可動域および効率の悪い歩行・歩容の改善が挙げられた。また、家屋改修や介護指導も、再度評価しなおす必要があると思われた。 <BR><BR>
著者
大月 勇太 今田 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O2035, 2010

【目的】<BR>安定した四肢の運動を行うためには体幹の安定性が重要である。歩行においても同様に安定した歩行のためには体幹筋の協調的な活動は不可欠である。臨床場面でも、体幹筋群に対するアプローチを行うことで歩行が安定する症例を経験することがある。体幹筋の筋活動を高める目的で骨盤挙上運動を行い、その実施前後の歩行時における内外腹斜筋群の活動を表面筋電図(以下、EMG)にて計測した。<BR>【方法】<BR>対象は健常男性2例であった。身体特性は年齢26.5±2.1歳、身長171.5±4.7cm、体重64.4±2.0kgであった。被検筋は両側内外腹斜筋、右側中殿筋とし、10mの自由歩行を行い歩行中のEMGを計測した。その後、端座位で両上肢を体幹の前面で交差し、右側骨盤の挙上運動を10回実施した後、再び10mの自由歩行時におけるEMGを計測した。10mの自由歩行の前には1分間の安静座位をとるようにした。筋活動の計測には、EMGシステムkm-818T(メディエリアサポート社)を用い、サンプリングレートは1kHzであった。電極はP-00-S(Medicontest社)を使用し、フットスイッチとしてFlexiForce(NITTA社)を右側足部の踵部及び母趾に貼付した。<BR>計測したデータは、整流処理した後、10mの自由歩行中の5歩行周期分の立脚相、遊脚相それぞれの平均筋電位量を加算平均した。次に運動実施前の値を100%とし実施後の平均変化率を算出した。<BR>【説明と同意】<BR>被検者には事前に研究の目的と方法について説明し、本研究に対する理解と協力の意思を確認した上で行った。<BR>【結果】<BR>骨盤挙上運動後の平均変化率は、右側内外腹斜筋の立脚相で115.2%、遊脚相では125.4%であった。左側内外腹斜筋は立脚相で99.1%、遊脚相では104.1%であった。また、右側中殿筋の平均変化率は立脚相で87.7%、遊脚相で79.6%と減少傾向を示した。<BR>【考察】<BR>運動後に右側内外腹斜筋は賦活化され、歩行時の立脚相、遊脚相ともに筋活動の増加傾向が認められた。同側中殿筋の筋活動は立脚相、遊脚相ともに減少傾向であった。歩行時の中殿筋は、ミッドスタンスにおける骨盤の遊脚側への落下を制御する遠心性活動と、ターミナルスタンス~プレスイングにおける股関節の相対的な外転に作用すると言われている。今回の検討では骨盤挙上運動が歩行時の内外腹斜筋群の筋活動を高め得ること、それに反して中殿筋の筋活動が減少したことから内外腹斜筋と中殿筋の関連を精査していく有用性が示唆された。臨床場面においては体幹筋群へのアプローチが動作時の下肢筋群へ影響及ぼすことも意識しながら行うことが肝要である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>歩行時の筋活動に関する先行研究は、下肢筋に着目したものが大半で体幹筋に関するものやこれらの相互関係について述べた報告は少ない。局所のみにとらわれないアプローチの重要性を定量的に検討した報告である。
著者
中崎 秀徳 堀 和将 牛山 さほ子 美崎 定也 山口 英典 大島 理絵 手島 雅人 堀 拓朗 大坂 祐樹 高橋 泰彦 鈴木 晴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】近年,予防医学の重要性が増しており,障害を未然に防ぐことは大切である。また,病院の中だけでなく,地域生活の中で予防することが重要である。当法人における「痛み予防教室」は,「通院しないまでも予防法を知りたい」,「気軽に参加できる教室は興味がある」といった地域住民のニーズにより企画され,地域住民の関節痛予防および改善,関節痛に対する適切な運動方法の提示・指導を目的に行っている。「痛み予防教室」は,当法人のグループ病院から選出された運動教室運営委員によって構成されている。運動教室では,主に膝関節,股関節をテーマにして,関節痛の原因と予防に関する講義,関節痛の予防体操,筋力測定を1時間程度行っている。当初は,病院を退院された患者や近隣住民に対して,グループ病院内で1ヶ月に1回行っていたが,平成25年11月より,都内のカルチャーセンターより委託され,無料で運動教室を開始した。また,今年度は,カルチャーセンターの秋季イベントでの開催依頼を受け,当法人監修による個別健康相談会を実施した。今回,カルチャーセンターと連携して運動教室を行った実績および個別健康相談会での結果について報告する。【方法】平成25年11月から平成26年11月までの期間において,運動教室に参加した者および秋季イベントの個別健康相談会に参加した者を対象とした。運動教室の調査項目は,1)開催数,2)延べ参加者数,3)講座内容とし,後方視的に抽出した。個別健康相談会の調査・測定項目は,1)参加者の属性(年齢,性別),2)等尺性膝伸展筋トルク(伸展筋トルク)とし,「膝が痛い」,「股関節が痛い」など個別に相談がある参加者に対してのみ,疼痛等に関する問診表,生活の広がり[Life-Space Assessment(LSA)]および転倒自己効力感尺度[Fall Efficacy Scale(FES)]に関する質問に回答させた。統計解析は調査項目の記述統計を行った。さらに,伸展筋トルクとLSA,FESの関連をみるため,相関分析を行った。【結果】運動教室の開催数は12か月間で22回であった。運動教室の延べ参加者数は367名(1開催の平均数:16.7名,範囲:4-27名)であった。講座内容は膝関節講座11回,股関節講座11回であり,それぞれの参加者数は膝関節講座180名(平均16.4名),股関節講座187名(平均17.0名)であった。今期の個別健康相談会は2回実施し,延べ参加者数は91名であった。本相談会の対象者の属性は,年齢[平均値±標準偏差(範囲)]61.9±11.1(38-88)歳,男性10名,女性81名であった。そのうち,膝や股関節に痛みなどがあり,個別相談を行った参加者は20名(男性2名,女性18名)であった。参加者からの主な相談内容は,「関節痛に関すること」,「予防法や運動方法を知りたい」などがあり,相談後の感想として,「わからないことを相談できてよかった」,「自宅でも運動してみる」,「現在の筋力がどのくらいなのかわかった」などの声が聞かれた。また,個別相談者の伸展筋トルクは1.25±0.31(0.63-1.88)Nm/kgであり,LSAは100.2±22.4(52-120)点,FESは34.6±4.7(27-40)点であった。LSAでは,20名中6名が満点(120点)となり,天井効果が認められた。相関分析の結果,伸展筋トルクとLSAに相関は認められなかったが,伸展筋トルクとFES(r=0.52)に相関が認められた。【考察】対象者の活動範囲は伸展筋トルクと関連していなかった。天井効果は,対象者の能力が指標の上限に達して測定できない場合であり,特定の対象を評価した場合に生じるといわれている。LSAに関する先行研究では,高齢者を対象としたものが多いが,本研究の対象者は平均年齢61.9歳であり,先行研究と比較して若い参加者が多かったため,対象者の活動範囲を十分に評価できなかった可能性が考えられる。一方,対象者の転倒自己効力感は伸展筋トルクと関連していた。これは先行研究を支持する結果であった。下肢筋力の低下は,転倒恐怖感を招くことが予想される。運動教室において膝伸展筋力を測定して,対象者にフィードバックすることは,自身の現状を知ることによる自己効力感の向上に寄与するものと考えられる。参加者に対して,アドバイスや運動指導を行ったことにより,参加者のニーズに対応でき,地域住民の関節痛予防に貢献できたと考える。今後は縦断的に調査を続け,運動教室の痛み予防効果を明らかにすることが課題である。【理学療法学研究としての意義】理学療法士が地域の予防活動に積極的に参加することにより,地域住民の関節痛予防に貢献することができる。また,地域活動に参加することにより,理学療法士の認知度が向上し,予防分野での職域拡大につながると考える。
著者
城下 貴司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【目的】我々は足趾エクササイズについて,第42と43回理学療法学術大会では臨床研究を,第46回では表面筋電図による実験研究を,第47と48回では横断および縦断研究で形態学的研究を行ってきた。いずれもタオルギャザリングエクササイズ(以下TGE)と足内側縦アーチとの関連性は低いと報告したが,その根拠を示す必要性があった。我々は足趾底屈エクササイズの表面筋電図解析は既に報告した,本研究は足趾底屈エクササイズと併せたTGEの表面筋電図解析を比較することに着目し,TGEの運動学的根拠を示すことを目的とした。【方法】機材は小型データロガシステムpicoFA-DL-2000(4アシスト)とFA-DL-140ディスポ電極を使用しサンプリング周波数は1kHz,5~500Hzの周波数を抽出,時定数0.03secとした。対象は特に足趾や足関節運動をしても問題のなく,過去6ヶ月間,足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者14名14足,年齢24.6±6.3歳とした。実験項目は全趾での底屈エクササイズ,母趾での底屈エクササイズ,2から5趾での底屈エクササイズ,そしてTGEとした。足趾底屈エクササイズは被験者に端坐位姿勢,大腿遠位端に3kgの重錘をのせ趾頭で踵を挙上させるように底屈エクサイサイズ(等尺性収縮約5秒間)をおこなった。膝および股関節の代償運動抑制を目的に,被験者の体幹前傾,膝の鉛直線上に頭部を位置させた。TGEは被験者に端坐位姿勢,足趾完全伸展から完全屈曲を1周期とし,母趾頭にフットスイッチを貼付し1周期を算出した。電極は腓骨小頭直下の長腓骨筋,内果やや後上方の内がえし筋群,腓腹筋内側頭筋腹,腓腹筋外側頭筋腹の4カ所に貼付した。足趾底屈エクササイズの解析は定常状態と思われる等尺性収縮5秒間の内,2秒間の筋電積分値(IEMG)を採用した。全趾による底屈エクササイズのIEMGをベースラインとして他の条件を正規化(%IEMG)した。TGEの解析は3から5周期を計測し,定常状態と思われる任意の1周期を採用した。エクサイサイズ別の各筋出力の比較はKruskal Wallis検定後,Mann-Whitney検定を採用した。統計ソフトはSPSS21.0を使用した。【説明と同意】すべての被験者に対して,実験説明書予め配布し研究の主旨と内容について十分説明をした後,同意書に署名がされた。また本研究は群馬パース大学および早稲田大学の倫理委員会の承認のもと行った。【結果】母趾底屈エクササイズでは,長腓骨筋が126.3±9.8%,内がえし筋群が112.4±13.1%,腓腹筋外側頭が79.2±8.1%,内側頭は90.2±5.9%であり,有意に長腓骨筋が腓腹筋内外側頭よりも高値を示した(p=0.003,0.000)。2から5趾底屈エクササイズでは,長腓骨筋が64.4±5.2,内がえし筋群が161.9±25.2%,外側頭は76.1±7.8%,内側頭97.8±5.0%を示し,内がえし筋群が長腓骨筋や腓腹筋外側頭よりも有意に高値を,長腓骨筋が腓腹筋内側頭よりも有意に低値を示した(p=0.000,0.003,0.000)。TGEでは,長腓骨筋が44.5±6.1%,内がえし筋群が145.1±21.4%,腓腹筋外側頭が18.8.±2.9%,内側頭は26.3±4.8%であった。内がえし筋群が他の筋群よりも有意に高値を示した(p=0.000,0.000,0.000)。【考察】本研究は筆者が考案した足趾底屈エクササイズとTGEを表面筋電図解析で比較したものである。足趾底屈エクササイズの筋放電パターンに関しては,本研究は先行研究と類似した。足趾底屈エクササイズとTGEを併せて比較すると,本研究のTGEおよび2から5趾底屈エクササイズは内がえし筋群が優位となり,母趾底屈エクササイズは長腓骨筋が優位な筋放電パターンを示した,すなわちTGEと2から5趾底屈エクササイズの筋放電パターンが類似した。形態学的変化に着目した先行研究では,TGEおよび母趾底屈エクササイズは足内側縦アーチとの関連性は低く,2から5趾底屈エクササイズと足内側縦アーチとの関連性は高かった,すなわちTGEと母趾底屈エクササイズの形態学的な研究結果は類似した。以上から,形態学的研究と表面筋電図解析による結果が一致しなかった。表面筋電図解析だけでは形態学的研究の根拠を示すことが困難であった。本研究の内がえし筋群の電極は後脛骨筋,長趾屈筋,長母趾屈筋のクロストークによるものである,単独筋ごとに明確な変化を示せない表面筋電図の限界があった,そのことは形態学的研究と結果が一致しなかった原因の一つと考えられた。今後は上述の矛盾した結果についてさらに研究していく課題が残された。【理学療法学研究としての意義】本研究から,足趾の評価治療は全趾を評価するのでなく足趾ごと評価治療することの必要性の意義を改めて示した。足関節の研究において表面筋電図のみで臨床的な現象を解釈することの困難さも示せた。
著者
荒木 智子 斉藤 幸義 鳥居 俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0953, 2005

【はじめに】マラソン大会に出場する市民ランナーの数は増加している.それに従い障害発生数も増加している.しかし十分に選手をケアしているものは少ない.多くは同意書の対応がほとんどである.我々は複数の職種でランナーのサポートを行っている.今回2004年9月18日~23日の日程でマウイマラソンにトレーナーとして帯同した.中には医学的問題を生じたケースもあり,医学的なサポートの必要性について検討したので報告する.<BR>【概要】参加者は2004年9月19日,第34回マウイマラソンに出場した.これは制限時間が8時間,コースも平坦であり,初心者も気軽に参加できる.参加者20名であった.参加者はフィットネスクラブに所属し,月間約数十km~700kmという距離を走っている.帯同スタッフはコーチ1名(米国RRCA公認指導者),トレーナー2名(以下TR.PT,鍼灸師)であった.<BR>【事前の対策】ランニングセミナーを数店舗で,多くは夜間に実施している.また日曜日に合同練習会を実施している.帯同したTRもセミナー・練習会に参加し,コーチ・TR(帯同以外にNATA-ATC1名)とともに参加者の相談や評価・リコンディショニングを行った.必要に応じ,医療施設での検査結果を相談に役立てた.出発前日まで特にケアを必要とした参加者は3名で,肉離れ1名,貧血1名,オーバートレーニング症候群疑い(以下OTS疑い)1名であった.<BR>【現地での対応】到着初日に相談デスクを設置し,参加者に対応した.また19日未明より19名にテーピングを実施した.全員が完走し,ゴールテントにおいてアイシング,ストレッチ,マッサージを実施した.全日程を通じて相談,マッサージ,ストレッチを毎日実施した.また全員が翌日よりランニング・ウォーキングに参加した.筋肉痛が出現した例もあったが,ごく軽症であった.<BR>【トレーナーの役割】我々に求められたのは「いかなる状況でも完走(完歩)を目指す」ということであった.トップランナーと異なる点として帰国後の生活に支障が及ばないこと,無理をすることで二次的な問題を起こさないことが求められた.それに次いで安全に完走できることを方針とした.具体的には貧血の参加者にはHRを用いて調節をすることを説明,OTS疑いの参加者には歩いても十分に完走は可能と説明した.その方針決定にはTRと参加者だけでなくコーチも関与した.<BR>【まとめ】国内外の大会は増加しているがレース前後のケアをしているものは少ない.今回の特色は1)事前より参加者と接点をもち状況を把握した,2)コーチ,PT,鍼灸師,NATA-ATCから多彩な考えが出された,3)完走で充実感を得た,4)リコンディショニングの徹底により疲労を最小限に抑えた,5)それを実現できる日程であった5点が挙げられる.今回の経験よりレース前後のケアやその必要性を感じた.PTの知識や経験が医療現場ではない場所でも生かされることの可能性を感じた.
著者
村上 平 山田 義範 髙橋 雄平 隠岐 裕子 松坂 大輔 難波 邦治 古澤 一成
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.B-36_1-B-36_1, 2019

<p>【はじめに】脊髄損傷者は、麻痺の影響で活動量や基礎代謝が低く、健常者よりも生活習慣病のリスクが高い。そのため、健常者以上に活動量を増やすことが重要といわれている。健常者では、1日の身体活動で消費するエネルギー量(以下:身体活動量)において理想とされる目標値があり、歩数などを指標としている。しかし、車椅子で生活する脊髄損傷者には1日の身体活動量に関する報告がなく、具体的な指標もない。今回、入院中の脊髄損傷者の車椅子走行から身体活動量を推測する目的で、1日の車椅子走行の速度、時間、距離、漕ぎ数を計測した。</p><p>【方法】2011年から2017年の間に当センター入院中、車椅子駆動を移動手段とする胸髄損傷者16名を対象とした。年齢は39.7±14.1歳、性別は男性15名と女性1名、体重は57.3±7.7kg、損傷レベルは上位胸髄4名と下位胸髄12名、AISはA13名とC2名とD1名である。</p><p> 日常的に使用しているモジュラー型車椅子に、漕ぎ数と走行距離が計測できる車椅子活動量計測装置を24時間装着し、得られた車椅子走行のデータから、平均速度、走行時間、走行距離、漕ぎ数を算出した。また、我々の先行研究における「車椅子駆動速度別の運動強度」を用い、「1.05×体重(kg)×運動強度(METs)×運動時間(時)」によって身体活動量を算出した。</p><p>【結果】1日の車椅子走行において、平均速度は2.8±0.6 (1.6~3.7) km/h、走行時間は1.4±0.5 (0.6~2.4) 時間、走行距離は4.1±1.9 (1.2~8.7) km、漕ぎ数は2964.2±1308.5 (1317~6645) 回、身体活動量は176.3±72.6 (76.9~365.8) kcalであった。( )内は最小値~最大値とした。</p><p>【考察】厚生労働省は、生活習慣病予防として、健常者では身体活動量の約300kcalを歩行で補うことを目標値としている。本研究の対象者が1日の車椅子駆動で補うとすると、多くの者が目標値を下回ることがわかった。この結果は、院内生活における活動範囲と速度の制限が、入院中に体力低下を招く可能性を示しており、脊髄損傷者の身体活動量を把握する上で非常に参考となる。身体活動量の増加を図るには、速度よりも走行時間を増加させる方が現実的である。従って目標値を満たすには、2時間30分以上の車椅子走行が望ましいと推測される。</p><p> 今回、損傷高位や麻痺の程度が身体活動量に影響すると予測したが、残存機能が良好でも低値を示した症例は存在した。車椅子駆動は歩行と同様に目的的行動であり、活動意欲が低いと走行時間の減少に伴い身体活動量が低下する。そのため、日常生活動作だけでなく、身体活動量の評価と介入も重要であることを再認識する結果と言える。</p><p> 脊髄損傷者における身体活動量の増加には、座位時間の拡大だけでなく実際に駆動することが重要であり、入院中から活動意欲を高めていく役割を理学療法士は担っている。その手段として、日常生活以外の運動習慣作りや、身体活動量のフィードバック、スポーツなど社会参加に向けた情報提供が、身体活動量の増加に貢献できると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言の内容に基づき行い、個人に不利益がないよう得られたデータは匿名化し、個人が特定されないよう配慮した。</p>
著者
菊地 知明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1177, 2007

【はじめに】<BR>当院は、回復期リハビリ病棟50床、一般病棟53床、合計103床となっている。リハビリ対象患者の多くは回復期リハビリ病棟の患者だが、一般病棟患者の中でも常に15~20数名の患者はリハビリを実施している。リハビリ科としては、PT12名、OT8名、ST1名在籍しているが、スタッフは十分とは言えず、その限られたリハビリ量を回復期と一般病棟患者の差別化を行いつつも適切に配分する為、当院では3又は5人のチームを形成して対応している。今回当院でのチーム担当制を紹介すると共に今後の対応策について考察したので報告する。<BR>【内容】<BR>PTは、A、B(3人、回復期病棟患者のみ担当)、C(5人、回復期と一般病棟両方担当)の3チーム、OTはD(3人、回復期病棟患者のみ)、E(5人、回復期と一般病棟両方担当)の2チームとなっている。ABDの回復期病棟患者のみの対象チームは常に担当患者を15名前後とし、出来る限り多くのリハビリを提供するよう心掛けている。一方CEの回復期及び一般病棟両方を担当しているチームは担当患者を30名前後とし、その中でも出来る限り回復期対象患者に多くのリハビリを実施するよう工夫している。具体的な対策としては、一般病棟患者に少ないリハビリ量でもより効率的に対応する為、訓練頻度をケースに応じて変更(週3~6日又はOTと交互に介入等)、1回の訓練時間の縮小、病棟スタッフとの連携(ADLの介入、自主トレの管理等)等を行った。その他Cチームは、毎日朝夕、全患者の申し送りを行い、スタッフ間の意見統一及び一般病棟患者の訓練頻度等の調整を実施している。Eチームは、ノートを作成し、紙面で重要事項や病棟でのADL等の介入方法を確認している。<BR><BR>【考察】<BR>チーム制を導入した利点としては、第一に今回の目的である回復期と一般病棟患者の差別化は、ある程度達成したとういう点である。実際回復期病棟患者はリハビリ全体で1日6~7単位日々実施しているのに対して、一般病棟は3~4単位となっている。また他の利点としては、個人の技術レベルの差が出にくい、相談しやすい、病棟との連携が取りやすい等の意見があがった。逆に欠点としては、一般病棟患者を一定のチームに偏らせた為、患者層や事務作業量の違い、またチーム人数が異なる事により、情報交換や意見統一の難しさ等の意見があがった。当院では、今後もチーム担当制を中心に考えているが、今後は人数に関しては3人を基本スタイルとして行っていく予定である。また、一般病棟患者の振り分けに関しては、もう少し柔軟なすなわち現在PTでは1つのチームのみの対応だが、出来れば2チームで対応し、チーム毎の仕事内容及び量に開きが出ないよう対応していきたいと思う。<BR>
著者
布施 彩音 今田 康大 大野 智貴 若林 敏行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-105_2-H2-105_2, 2019

<p>【症例紹介】</p><p>&nbsp;症例は年齢17歳、性別男性、部活動はバレーボールであった。病歴は3年程前より明らかな誘因なく、両膝関節外側に疼痛が出現、他院にて成長痛疑いで経過観察していた。運動中の痛みは顕著ではなかったことから運動を継続していたが、1年程前から疼痛頻度が増加し、運動後には歩けない程の痛みを呈すようになった為、当院を受診した。主訴は「膝を曲げ伸ばしすると外側に痛みが出る」、Hopeは「日常生活での痛みをなくしたい。6ヵ月後の引退試合に痛みなく出場したい」であった。</p><p>【評価とリーズニング】</p><p>医師診察としてMRIにて半月板損傷、靭帯損傷、軟骨損傷は除外され、腸脛靭帯炎の診断で理学療法開始となった。初回介入時、両側の膝蓋骨下極から傍外側にかけて腫脹、熱感が認められたが、膝蓋跳動は陰性であった。非荷重位での膝関節完全伸展位から約30°屈曲時に膝蓋骨の傍外側でクリックと同時に疼痛を認め、同部位の圧痛も確認できた。Active、Passive両者ともクリック、疼痛程度に変化はないが、上記以外の角度では症状は見られず、安静時痛、夜間痛も認めなかった。部活後、長距離歩行後(1km程度)など運動後のNRS(右/左)は10/10と著明な疼痛を訴えていた。右側に関しては歩行時にひっかかり感も訴えており、日常生活にも支障があった。また疼痛の出現頻度も右側に多く認められた。静的アライメントは大腿、下腿外旋位でわずかに膝内反位、膝蓋骨外上方偏位、外側傾斜を呈しており、膝蓋骨の内下方への動きが制限されていた。膝関節の可動域は屈曲130°/135°、伸展−5°/-5°でエンドフィールは軟部組織性であった。Grinding test、Ober test、Ely test、SLRは全テスト両側で陽性となったが左右差は無かった。</p><p>クリニカルリーズニング:外側滑膜ヒダ障害と診断された先行報告と今回の症状、疼痛部位が類似していたことから、クリックは外側滑膜ヒダが膝蓋大腿関節に挟み込まれることで生じており、これが疼痛を惹起している原因だと考えた。さらに膝蓋骨が外上方偏位、外方傾斜を呈していることで膝蓋骨傍外側に、より圧縮ストレスが生じていると考え、徒手的に膝蓋骨を内下方へ誘導したところ、わずかにクリックが減少した。これらのことから膝蓋骨のマルアライメント修正することにより症状を軽減できるのではないかと考えた。</p><p>【介入内容および結果】</p><p>介入は週1回の外来理学療法を実施した。治療介入はまず疼痛誘発の原因と思われた膝蓋骨のマルアライメントを中心に理学療法を実施した。具体的には膝蓋骨傍外側を中心に超音波を実施し、炎症が強い時期には非温熱にて炎症緩和を、炎症緩和後は温熱にて膝蓋骨周辺組織の伸張性の改善を図った。その上で外側膝蓋支帯、膝蓋下脂肪体周囲のリリース、膝蓋骨のモビライゼーション、腸脛靭帯-外側広筋間のリリースを実施し膝蓋骨の外側傾斜、外方偏位の修正、内下方への可動域制限の改善を図った。また膝蓋骨の内下方への誘導を目的にテーピングを貼付したところ、歩行時の疼痛がわずかに減少したことから、日常生活、部活の際に貼付するよう指示した。その結果、介入から2ヵ月程で膝蓋骨外側の腫脹が軽減し、クリック、疼痛の程度も軽減した。介入開始から4か月ではNRS(右/左)は6/1となり、運動後の疼痛出現頻度も減少した。過度な運動後は疼痛が出現するものの、直後のアイシング、セルフケアにより疼痛自制内でコントロール可能となった。本人の希望であった引退試合に出場することもでき、日常生活にもほぼ支障がなくなったため、外来理学療法終了とした。</p><p>【結論】</p><p>先行報告において外側滑膜ヒダ障害は、膝関節30〜75°で膝蓋骨傍外側にクリックを伴う疼痛が出現するとされており、本症例の症状と類似していた。外側滑膜ヒダ障害は非常に稀であり、過去に保存療法で症状が軽減した報告は見当たらない。診断には関節鏡検査でのみ確定診断が得られるが、本人が希望しなかったため今回確定診断には至らなかった。しかし膝蓋骨のマルアライメントを修正したことで症状が軽減したことから、外側滑膜ヒダ障害と疑われる症例に対し理学療法の有効性が示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に従い対象者には口頭及び文書で同意を得た。</p>
著者
生田 旭洋 太田 友規 大野 善隆 後藤 勝正
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0233, 2008

【目的】骨格筋は、力発揮という力学的な仕事をする器官である。そのため、骨格筋を構成する骨格筋細胞は他の細胞とは異なった特有の形態と構造を持っている。形態的な大きな特徴の1つは、筋の収縮方向に(筋が力を発生する方向に)細く長いことである。この形態的特徴から、骨格筋細胞は骨格筋線維あるいは筋線維と呼ばれている。骨格筋は力学的な仕事の負荷に応じて機能的かつ形態的な適応を示すことは良く知られているが、組織としての適応は個々の筋線維の適応変化による。一般に、骨格筋線維は遅筋線維と速筋線維の2種類に大別される。例えば、遅筋線維はエネルギー産生オルガネラであるミトコンドリアを多く含むことから酸化系酵素活性が高く持久性に優れるが、ミオシンATPase活性は低く収縮速度が低いという性質を持つ。一方、速筋線維ではミトコンドリア含有量は少ないがグリコーゲン顆粒が多く含まれ、解糖系酵素活性値が高く、そしてミオシンATPase活性が高く収縮速度が高いという特性を持つ。さらに、筋線維の直径を比べると、遅筋線維に比べ速筋線維が太いとされている。しかしながら、ラットのヒラメ筋では遅筋線維は速筋線維に比べて太いことが知られており、必ずしも遅筋線維が速筋線維に比べて細いとは言えず、組織としての骨格筋の存在様式や収縮機能などの特性に応じて、筋線維の太さが決定されている可能性が指摘されている。そこで本研究では、異なる存在様式ならびに収縮機能を有する骨格筋における遅筋線維と速筋線維の形態的特徴を比較検討し、骨格筋の機能的特性と筋線維タイプの関係を明確にすることを目的とした。<BR>【方法】実験には、生後8週齢の雄性マウス(C57BL/6J)を用い、両後肢よりヒラメ筋、長趾伸筋、足底筋ならびに腓腹筋を摘出した。摘出した各筋は結合組織を除去後に秤量し、即座に液体窒素により急速凍結し、-80&deg;Cにて保存した。凍結組織をクリオスタットにて、厚さ10 μmの連続凍結切片を作成し、HE染色ならびにミオシンATPase染色(前処置pH 4.35)を施した。染色した切片は顕微鏡にて観察・撮影し、筋線維タイプの同定ならびに筋線維直径の計測を行った。<BR>【結果】ヒラメ筋では遅筋線維が多数を占め、断面積に占める割合も大きいものであった。個々の筋線維の断面積を比較すると、ヒラメ筋では遅筋線維が、長趾伸筋、足底筋ならびに腓腹筋では速筋線維が高値を示した。<BR>【考察】以上より、速筋線維が太く遅筋線維が細いという法則は必ずしも全ての骨格筋に当てはまるものでなく、組織としての収縮機能に適合するように数的に多くを占める線維が大きな直径を有することが明らかとなった。<BR>【まとめ】リハビリテーションを行う上で筋機能に配慮した処置が必要になると考えられた。<BR>
著者
香川 真二 千田 廉 木村 愛子 前田 真依子 米田 稔彦 星 信彦 岡田 安弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0457, 2006

【目的】<BR>近年、歩行解析に三次元加速度計が広く利用されている。しかし、定量的な加速度解析や歩行周期の特定に関する報告は少ない。そこで、三次元加速度センサとデジタルカメラ映像を同時にパーソナルコンピューター(以下、PC)へ記録できるシステムを用いて、腰背部に取り付けた加速度データと歩様の関係を詳細に検討した。さらに、健常者と変形性股関節症(股OA)患者の加速度変化をリーサージュ図形により可視化し、各方向へのバランス評価を行った。また、各軸の加速度変化を周波数解析し、OA患者と健常者間の定量的な比較を行った。<BR>【方法】<BR>20人の健常者(平均年齢: 62.2)と20人のOA患者(平均年齢: 58.3)を対象とした。全ての対象者に研究趣旨を説明し同意を得た。被験者全てに腰背部中央に無線型加速度センサ(サンプリング周波数:600Hz, Microstone)を取り付け、さらに、主要関節部位に発泡スチロール製マーカー(直径: 3 cm)を装着し、自由歩行として約20mの歩行をサンプリングした。加速度センサデータと歩行動作画像は同時にデジタル化しPCへ記録した(Digimo)。<BR>【結果】<BR>加速度変量のピークと各歩行動作は単純には一致せず、個体間でも共通した傾向は見られなかった。しかし、健常者およびOA患者とも左右・上下での加速度がmid stance時に0に近い値を示し、この時点において「等速状態」であることが示された。PC上に加速度変量をリサージュ図形として可視化し、左右、前後および上下のバランスを視覚的かつ定量的に比較した。OA患者は左右・上下・前後とも健常者より、不規則かつ大きく変動した。2次元の加速度で合成される2次元ベクトル値(スカラー)の総和平均を比較すると、OA患者は健常者より有意に増加していた(p<.01)。mid stance時を基準にし、Fast Fourier 変換 (FFT)を用いて、加速度のパワースペクトルを算出した。OA患者における左右および前後方向での高周波領域(5-20Hz)のパワー値は、健常者より有意に高い値を示した(p<.05)。<BR>【考察】<BR>今回の結果から三次元加速度計波形の左右・上下成分加速度よりmid stanceの特定が可能となり、mid stanceを起点として歩行解析を行うことが、定量的解析方法の基準となることが期待される。加速度変化の可視化により、視覚的に歩様バランスを判断できる可能性も示唆された。患者への説明用データとしても有用であると考える。左右・前後成分でOA患者の高周波領域のパワー値の有意な増加は、体幹・骨盤の挙動を代表した異常歩行と関係することが示唆される。定量的加速度波形解析は、時間的変化を比較できることから、リハビリ過程の評価の一つとして有効であると考えられる。
著者
中本 順 傳 秋光 松本 大輔 西山 花生里 池添 冬芽 田野 香菜 松井 尋美 中山 知未 坂元 真由美 山下 修司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.D0482, 2006

【目的】<BR>今日わが国の慢性透析患者は20万人を超え、さらに透析療法の進歩により、透析治療の長期化、透析者の高齢化といった新たな問題が生じている。また、透析患者の主な原疾患は糖尿病性腎症が第1位となった。こういった背景から、昨今、慢性腎不全血液透析患者(以下、CRF-HD患者)に対するリハビリテーション医療の考え方が適用されつつある。そこで、今回我々はCRF-HD患者に対するリハビリテーション医療のための基礎検討として、CRF-HD患者の日常の運動量とQOLの実態を検討した。併せて、透析導入となった原疾患(慢性腎炎&lsaquo;非DM群&rsaquo;と糖尿病群&lsaquo;DM 群&rsaquo;)により差があるのか、あるとすればどのような差異がみられるのかを検討した。<BR>【方法】<BR>対象は、姫路市内の某病院で外来維持透析を受けている、調査に同意したCRF-HD患者で、50〜60歳男性13名である。透析導入となった原疾患(慢性腎炎&lsaquo;非DM群&rsaquo;と糖尿病群&lsaquo;DM群&rsaquo;)の2群に分類した。4週間以上装着されたLifecorder EXデータとSF-36の下位尺度項目評価データなどを、Peasonの相関係数、unpaired Student-t検定で検討した。<BR>【結果】<BR>1)両群の年齢、透析期間、体格、ルーチン血液検査には有意差を認めなかった。2)全体的(n=13)には、身体機能と運動量(1日平均消費カロリー)は正相関した(R=0.738, p=0.0039)。しかし、群別では非DM群(n=6)では相関せず(R=0.593, p=0.215)、DM群(n=7)で正相関した(R=0.821, p=0.0237)。3)身体機能などでは非DM群と有意差なし(身体機能;DM: 60±16.33S.D., 非DM:72±17.664S.D., p=0.2294)にも関わらず、DM群では全体的健康観のみが有意に低かった(DM: 34.282±4.499S.D.,非DM:42.5±7.583S.D., p=0.0339)。4)非DM群とDM群間には、運動量に有意差は認めなかった(非DM:85.833±37.706 Cal/day,DM群:61.143±56.893 Cal/day,)。(1日平均歩数は、非DM:3577±1497歩, DM群:2328±1794歩と有意差は認めなかった。)<BR>【結論】<BR> 1)今後は自己判断の身体機能を実際に心肺持久力などの体力検査で検討し、可能な症例には体力改善を通じて自信をつけさせ、DM群のQOL改善を図ることが重要と考えられた。2)透析導入後の運動制限継続は昨今否定され、運動による透析合併症予防効果も期待されつつある。健常人の健康維持向上には、1日1万歩が推奨されている。従って、透析患者は非DM 、DMに関わらず可能な限り運動量を増加させる必要があり、適切な運動処方を作成して実践し検証する必要があると考えられた。<BR>
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>臨床において,腸腰筋の短縮による股関節伸展制限や股関節屈曲拘縮は問題となることが多く,腸腰筋の伸張性を維持・改善するためにストレッチングがよく行われている。ストレッチングの基本的な方法は筋の作用と反対方向へ伸張することであり,腸腰筋のストレッチングとしては股関節を伸展する方法がよく用いられている。しかし,腸腰筋には股関節屈曲作用に加えて,腸骨筋では股関節外転および内旋,大腰筋では股関節内転および外旋作用があると報告されている。そのため,股関節伸展に加えて股関節の内・外転もしくは内・外旋を加えることで,より腸腰筋は伸張される可能性が考えられる。近年,せん断波エラストグラフィー機能により,組織に伝わるせん断波の速度を測定し,組織の硬度(弾性率)を算出することが可能になり,弾性率は筋の伸張の程度を反映していることが報告されている。そのため,この弾性率は腸腰筋のような深部筋の伸張程度を非侵襲的に評価できる有用な指標とされている。本研究の目的は,股関節伸展に股関節内・外転や内・外旋を加えることで腸腰筋をより伸張できるかどうかを明らかにすることである。<b>【方法】</b>対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性10名(平均年齢23.6±2.2歳)の利き脚(ボールを蹴る)側の腸腰筋とした。対象者をベッド上,背臥位にて安静にした安静時と,ストレッチング肢位は反対側の股関節を最大屈曲することで骨盤を後傾位に固定し,検査側の膝関節は大腿直筋の伸張の影響を考慮し,軽度屈曲位とした状態を基準とした。その後,対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に股関節伸展する条件(伸展)と対象者が最大限耐えうる角度まで股関節内転,外転,内旋・外旋した状態から最大限股関節伸展する条件(内転,外転,内旋,外旋)の計5条件とし,安静を加えた6条件の施行は無作為の順番で行った。腸腰筋の弾性率(kPa)の評価は,SuperSonic Imagine社製超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用い,大転子の高さの鼠径部で腸腰筋を同定し,測定を行った。弾性率の測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。統計学的検定は,各条件における腸腰筋の弾性率をBonferroni補正におけるWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1162),文書および口頭にて研究の目的・趣旨を説明し,同意を得られた者を対象とした。<b>【結果】</b>腸腰筋の弾性率は安静時24.6±19.4kPa,伸展71.7±45.0kPa,内転60.9±27.2kPa,外転78.3±45.1kPa,内旋115.8±49.9kPa,外旋93.5±45.7kPaとなった。統計処理の結果,安静時に対して伸展,内転,外転,内旋,外旋のすべてのストレッチング条件で有意に高値を示した。また,伸展の弾性率と比較すると,内旋では有意に高値を示したが,内転と外転および外旋では有意差は認められなかった。<b>【考察】</b>本研究の結果,安静時と比較して全てのストレッチング条件で弾性率は有意に増加したことから,本研究で用いたストレッチング肢位はいずれにおいても腸腰筋を伸張することが可能であることが明らかとなった。また,伸展と比較して内旋で有意に増加したことから,一般的によく用いられている腸腰筋のストレッチング法である股関節伸展方向へのみのストレッチングよりも股関節伸展に内旋を加えることで,より腸腰筋を伸張できることが示唆された。その理由として,腸腰筋のなかで大腰筋は股関節外旋作用を持つと報告されており,股関節伸展に内旋を加えることで大腰筋がより伸張された可能性が考えられる。一方,他の肢位で腸腰筋がより伸長出来なかった理由として,腸骨筋は安静時には外転の作用があるが,内転すると内転作用に変化するため,内転することで腸骨筋が緩んだ可能性が考えられる。また,股関節伸展に外転・外旋を加えると腸骨大腿靭帯が伸張されるため,股関節伸展に外転や外旋を加えたストレッチング条件の最終可動域では腸腰筋よりも腸骨大腿靭帯が伸張され,腸腰筋の弾性率の増加にはつながらなかった可能性が考えられる。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>臨床において腸腰筋のストレッチングは股関節伸展が用いられることが多いが,股関節伸展に内旋を加えることで,より効果的に腸腰筋を伸張することができることが示唆された。
著者
浜岡 秀明 伊賀崎 央 吉田 泰子 押川 達郎 村松 知佳 鶴澤 礼実 柴田 陽三
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.J-59_1-J-59_1, 2019

<p>【はじめに】18トリソミーは多彩な合併奇形を有し、重度の発達遅滞を呈する予後不良の疾患であり、大規模な調査に基づく生命予後は1年生存率5.5~8.4%、生存期間の中央値10~14.5日とされている。今回、急性呼吸器感染症を繰り返す18トリソミー女児を担当する機会を得た。母親は潰瘍性大腸炎に羅患し、定頚が不十分である児を常に抱っこすることが困難なため、児は1日の大半を臥位で過ごしていた。そこで、前傾クッションを作成し、坐位保持を導入したので報告する。</p><p>【症例紹介】1歳6ケ月、女児。原疾患は18トリソミーで、Fallot四徴症等を合併した重症心身障害児(発達指数DQ12)である。某日、咳嗽後の嘔吐が頻回となり急性呼吸器感染症で入院した。入院時、鼻カニューラにてO2:3L、SpO2:87%、咽頭発赤、湿性咳嗽、陥没呼吸を認めたがチアノーゼはなかった。動脈血ガス(ABG)はpH:7.45、PaCO2:45mmHg、PaO2:34mmHgであった。</p><p> </p><p>【経過】入院後抗菌薬にて治療開始。第12病日に高炭酸ガス血症に伴う意識障害を呈し、第14病日にてんかん発作が出現した。第15病日に呼吸リハ目的で理学療法開始となる。第16~18病日には無酸素発作出現、第19病日のABGはpH:7.25、PaCO2:79.0mmHg、PaO2:33.0mmHgであり、高炭酸ガス血症を認め高流量鼻カニューラ(以下NHF)を装着した。4時間後には、pH:7.45、PaCO2:47.0mmHg、PaO2:29.0mmHgへ改善し、第23病日にNHFを離脱し鼻カニューラに変更となる。第24病日、前傾クッションを作成し坐位訓練を開始。バイタル著変なく、第34病日、自宅退院となる。理学療法開始時、鼻カニューラにてO2:3L、SpO2:70%台で陥没呼吸がみられ、脈拍は110~120回/回であった。追視は可能で、吸引時に微弱ながら啼泣がみられた。粗大運動能力尺度(以下GMFM)は臥位と寝返り領域が5.8%であった。臥位は頭頸部、骨盤右回旋位、左股内旋位で、入院前は左側臥位まで寝返りが可能だったが、理学療法開始時は困難だった。坐位は定頸不十分、体幹低緊張、骨盤後傾、右回旋位、左股内旋位で保持が困難であった。以上の評価から筋緊張の改善や、呼吸が安定しやすい、前傾坐位を取り入れた。退院時、GMFMは臥位と寝返り領域が17.6%へ改善。日中、笑顔で過ごす時間が増え、前傾坐位は見守りで保持が可能となり、周囲への反応や頭頸部のコントロールが向上した。</p><p> </p><p>【考察】呼吸と姿勢は密接に関係し、背臥位より腹臥位や坐位が呼吸に適しているとされ、特に前傾坐位では、重力により胸郭が下方に広がりやすく、舌根沈下や下顎後退を防げるとされている。園田らは、姿勢ケアは安定性のもとに運動の自由度を増す設定にすることで児の隠れた能力を引き出し、それを日常生活場面で取り込むことが大切と述べている。本症例でも、前傾クッションを作成し呼吸が安定しやすい前傾坐位を導入したことで、骨盤、胸郭が安定し、頭頸部のコントロールが向上し、運動発達の一助となったと考えた。</p><p> </p><p>【倫理的配慮、説明と同意】ご家族には、本症例報告の主旨と個人情報の保護について十分に説明し、書面にて同意を得た。</p>
著者
田中 貴広 建内 宏重 田中 一成 楞田 眞弘 大野 博司 山口 淳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A0648, 2005

【目的】<BR> 本研究の目的は、物的環境の違いが側方リーチ動作およびその際の自覚的安定性に与える影響を明らかにすることである。<BR>【対象】<BR> 健常者13名(男性3名 女性10名)、年齢26.1±4.6歳、身長161.5±6.5cmを対象とした。<BR>【方法】<BR> 左側方リーチ動作を測定条件1)テーブル設置なし、2)テーブル設置ありで測定した。順番は無作為とし、測定前に十分な練習を行った。テーブル端は左第5趾から30cm外側、高さは被検者の大転子の位置とした。<BR> 測定には三次元動作解析装置(oxford metrics社製VICON460)と床反力計(AMTI)を使用した。左第3中手骨頭部、左肩峰、左上前腸骨棘、左大転子、左足関節外果に反射マーカーを取り付けた。<BR> 左上肢を肩関節90°外転位に保持した立位姿勢(裸足、開脚10cm、開足15°)から検者の合図でできるだけ遠くに左上肢をリーチさせて、最大到達点で3秒間保持した。課題施行中にはできるだけ前方をみること、左上肢を肩峰の高さに保持すること、反対側上肢は体側につけ外転させないこと、膝を屈曲しないこと、両足底を床に接地していることを遵守した。また左側方リーチ動作施行前に両脚に均等に荷重し、両上肢とも肩関節90°外転位保持した立位(上肢外転立位)を3秒間測定した。<BR> 各測定条件において開始位置(上肢外転立位)から終了位置(左側方リーチ動作終了時)までの運動学的パラメータ(リーチ距離、骨盤移動距離、体幹傾斜角、下肢傾斜角、足圧中心移動距離)を求めた。測定は3回行い、その平均値を用いて分析した。<BR> 自覚的安定性の測定はvisual analog scale(10cm)を使用した。左端(0cm)を最低、右端(10cm)を最高とし、各測定条件での側方リーチ課題終了時の自覚的安定性を評価した。<BR> 検討項目は各測定条件での運動学的パラメータ、自覚的安定性の比較(対応のあるt検定)、各運動学的パラメータの変化率と自覚的安定性の変化率との関係(Peasonの相関係数の検定)とした。<BR>【結果】<BR> 各測定条件での運動学的パラメータの比較では体幹傾斜角を除く全ての項目において測定条件1)に比べ、測定条件2)で有意に大きかった(p<0.05)。<BR> 安心感は測定条件1),2)それぞれ5.9±1.4cm、6.6±1.6cmであり、測定条件1)に比べて測定条件2)で有意に大きかった(p<0.05)。<BR> 各運動学的パラメータと自覚的安定性との関係では明らかな相関関係は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 力学的補助がない状況でも側方リーチ距離が増加した。またその増加は体幹の傾斜ではなく、下肢や骨盤の移動量増加により達成される傾向にあった。自覚的安定性についても同様に増加した。しかし運動学的パラメータと自覚的安定性には明らかな相関関係が認められず、物的環境が無意識下に側方バランス能力に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
著者
深井 健司 羽田 清貴 加藤 浩 井原 拓哉 奥村 晃司 杉木 知武 川嶌 眞人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【目的】</p><p></p><p>我々は変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の膝関節における立脚初期の衝撃吸収作用に着目し,健常者と比較して膝伸展筋群を過剰に収縮させ衝撃吸収を行っていることを筋電図学的側面から報告した。この時期は床反力後方成分の制動区間に相当し,どのように床からの衝撃力を受けて運動量を変化させているのか明らかにされていない。そこで今回,力学的側面から立脚初期の衝撃吸収作用について床反力前後成分力積値及び床反力入射角度を用いて検討を行った。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>被検者は,膝OA患者14名(平均年齢70.0±7.9歳。以下,膝OA群)と健常成人15名(平均年齢35.0±11.7歳。以下,対照群)で全例女性であった。課題動作は5mの歩行路上の自由歩行とした。計測下肢から一歩目を踏み出し,床反力計を踏むように指示した。一歩目の歩幅の距離は被検者の身長の40%になるように設定し,5回実施した。計測は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon-MX13(Vicon Motion Systems社製)と床反力計(AMTI社製)1基を用いて実施した。床反力前後成分は体重で正規化し,後方成分を制動期平均力積値(Braking Mean Amplitude;以下,BA),前方成分を駆動期平均力積値(Propulsive Mean Amplitude;以下,PA)としそれぞれ求め,同時に立脚期時間も算出した。また,床反力前後成分と鉛直成分から初期接地時と後方成分ピーク値時の床反力入射角度を求め,90°以下を制動,90°以上を駆動と規定した。同時に,初期接地から後方成分ピーク値までの床反力入射角度の変化量も算出した。統計学的解析は,Dr.SPSSII for Windows11.0.1J(エス・ピー・エス・エス社製)を用い,2群間の比較は2標本の差の検定,床反力入射角度と角度変化量,BA,PA,立脚期時間との関連性の検討はSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>初期接地の床反力入射角度[deg]は対照群で93.26±4.29,膝OA群で86.13±4.01と対照群が有意に高値を示した。角度変化量[deg]は対照群で9.77±4.46,膝OA群で3.33±3.91と対照群が有意に高値を示した。PA[N・s/kg]は対照群で0.29±0.05,膝OA群で0.12±0.09と対照群が有意に高値を示した。立脚期時間[sec]は対照群で0.61±0.02,膝OA群で0.66±0.03と膝OA群が有意に高値を示した。また,初期接地の床反力入射角度は角度変化量とPAに正の相関(r=0.93,p<0.01,r=0.56,p<0.01),立脚期時間に負の相間(r=-0.56,p<0.01)を認めた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>初期接地の入射角度は膝OA群が小さく,90°以下では制動を示す。膝OA群は,初期接地より前方への加速を制動し,後方成分ピーク値まで角度変化量を減少させたまま維持されていた。これは立脚初期において床からの衝撃力を小さくし,前方への加速の制動を最優先させることで,立脚期後半での推進力を十分に発揮できず,立脚期時間を延長させることで歩行速度を維持している可能性が示唆された。</p>
著者
澤田 明彦 田中 健康 磯部 貴光 齋藤 幸広
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G1170, 2005

<B>【はじめに】</B>経済的な側面で未だ過渡期にある士会の運営は,多くの会員のボランティア的活動に支えられていると言える。職能団体である士会会員の本業が理学療法にあることは自明であり,士会業務が会員の本業を妨げないこと,また会員が負担を感じることなく士会の運営に関わることが望まれる。<BR> 士会の開催する研修会や講習会の参加登録者管理にも会員が携わるが,登録者リストの作成や登録完了の連絡など事務作業にかかる負担は少なくない。このような事務的な業務においては,会員が必要以上の負担を感じることなく関与できることが望ましい。<BR> 士会業務の省力化を実現するための,情報技術を活用したシステムについて紹介する。<BR><B>【システムの紹介】</B>研修会・講習会等への参加登録をオンライン上で可能とするために,Perl言語を用いたCGIプログラムを作成した。CGIプログラムは,ブラウザからのリクエストをウェブサーバ上で処理し,応答するための仕組みで,ユーザとウェブサイトのインタラクションを実現するために利用される。本システムは一般のウェブサイトに設置されているメールフォームあるいは商品注文フォームと同等のものであるが,参加登録に特化するために次の機能を持たせた。1)登録番号の自動生成と付与,2)参加者リストの自動生成,3)登録完了メールの送信。これらの機能によって,従来往復はがきでの登録の際に行っていた作業の大半が不要となった。<BR><B>【稼働例】</B>平成16年度神奈川県理学療法士会第4回講習会(平成16年度日本理学療法士協会神経系理学療法研究部会研修会との合同開催)における参加登録を,上記システムと従来同様の往復はがきによる方法で行った。往復はがきでの方法が,転載によるリスト作成および返信はがきの作成と作業が多かったのに比べ,今回のシステムを用いた場合に必要な作業は,定期的なリストのバックアップと稀にみられる入力エラー(多くはメールアドレスの誤入力)への対処のみであった。<BR> 講習会は100名を越える規模であり,従来の方法ではリスト作成もままならなかった。しかし,今回のシステムでは,リストが自動生成されていることで,その2次的利用,すなわち受講者名入りの受講証明書や領収書の発行もより容易に可能となった。<BR><B>【まとめと展望】</B>今回のシステムは,参加登録のみの単純なものであったが,担当者にかかる負担は少なかった。一部には有料の市販されたシステムもあるが,これと比較しても安価で自由度の高いシステムを構築することができたと考える。今後は研修会・講習会等の開催情報を入力することで,「開催案内ページ」「参加登録フォーム」「コンテンツ更新情報」といった必要なページが自動生成されるような,ユーザの利便性が高く,かつ,担当者の負担の少ないシステムの開発を目指したい。
著者
高田 治実 寺村 誠治 豊田 輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.223, 2003

<はじめに>疼痛・痺れは、ADLや精神面に大きく影響する。リハビリテーション施行の上でも、訓練の中止や遅延の原因になることが多い。疼痛の対処には、種々の方法があるが、我々はDNICアプローチで、疼痛に対する治療を行い有効な効果を認めているので報告する。<DNIC;diffuse noxious inhibitory controlsとは>DNIC(広汎性侵害抑制調節)は、1979年にLe.Barsらによって、麻酔したラットの研究で報告された。疼痛のある部位と別の部位を同時に刺激することにより、脊髄後角や三叉神経脊髄路核尾側亜核の疼痛を伝達する広作動域ニューロンの活動が抑制され疼痛が改善される現象である。1990年には人の屈曲反射に関する研究で、内因性オピオイドの関与の可能性が報告された。<DNIC アプローチとは>本治療は、DNICの現象を応用し、疼痛を起こしている筋肉(責任筋)を検査し、その筋肉を軽く圧迫した状態で、疼痛が改善する別の筋肉(反応刺激点)を圧迫刺激し疼痛を改善させる。<方法>疼痛・痺れおよび幻肢痛に対し本治療を施行。施行頻度は、可能な限り毎日行った。治療時間は、5分から60分。評価は、VAS、睡眠状態、食欲、心理状態、ROMおよびFFDなどを用いた。<症例>症例1: MT、49歳、女性、看護婦、頚椎ヘルニア。H14年3月30日・31日にハードなテニスの練習を行い、その後左頚部、肩甲帯から上肢にかけて疼痛・痺れ出現。4月12日より本治療を開始。症例2:T.F、58歳、男性、自動車リース業、変形性腰椎症、腰痛症。H13年8月胡座位で腰痛出現し寝返り不能となる。同年9月13より本治療開始。症例3:K.T、53歳、男性、医師、頚椎ヘルニア。数ヶ月前から右頚部、肩甲帯から上肢に疼痛・痺れ出現。H14年2月に前期症状が増悪、本治療開始。症例4:H.I、58歳、女性、調理師。約2ヶ月前から疼痛・痺れが増強し、H14年5月14日より本治療開始。症例5:T.S、26歳、男性、ビルのメンテナンス業、左前腕切断。H14年7月21日交通事故にて左手轢断、同年8月13日より幻肢痛・左腕の疼痛に対し本治療開始。<治療>症例1:本治療10回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例2:本治療8回施行により疼痛・痺れ共に消失。症例3:本治療23回施行により疼痛が消失。痺れはVASで1、気にすれば感じる程度となった。症例4:本治療施行により疼痛・痺れ共に消失。夜間痛も消失。症例5:本治療10末まで施行し、疼痛消失。痺れはVASで0から1、食欲、睡眠状態良好。<まとめ>今回報告した症例では、本治療で疼痛・痺れ、幻肢痛に対して著名な効果を認めた。今後は、本治療法の適応に関する研究も必要と考えている。しかし、DNICも理論的に不明な点が多いため、ケースを通して検証して行きたい。
著者
横川 正美 山田 正仁 菅野 圭子 柚木 颯偲 堂本 千晶 吉田 光宏 浜口 毅 高橋 和也 岩佐 和夫 駒井 清暢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3233, 2009

【目的】認知症予防のための方法は種々報告されており、運動に関しては有酸素運動が効果的であるとされているが一定の見解には至っていない.本研究では地域住民を対象に有酸素運動を主体とした運動機能プログラムを実施し、その効果について同時期に行われた認知機能プログラムと比較検討した.<BR><BR>【方法】前年度に地域で実施された脳健診の受診者から、脳老化関連疾患の疑われる者および介入法参加に支障をきたすような身体疾患のある者を除き、臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)が0または0.5にあたる健常者または軽度認知障害者379名に本研究への参加を募った.参加への同意の得られた36名のうち、介入前後の評価を実施できた29名を本研究の対象とした.介入法はプログラムを2つ設け、参加者を無作為に振り分けた.一つは認知機能プログラム(n=12)で、認知症の前段階で低下しやすいと考えられている実行機能を重点的に高める内容として、A.ゲームやパズル、B.地域の地図作り、C.自助具技術の習得を行った.もう一つは有酸素運動を主体とした運動機能プログラム(n=17)で、A.体調確認、B.テレビ体操(ウォーミングアップ)、C.ウォーキング、D.柔軟体操(クールダウン)を行った.2つのプログラムはどちらも週1回約1時間で合計14回、4ヶ月間にわたって実施した.認知機能プログラムはAからCをそれぞれ4回程度ずつ費やして行い、運動機能プログラムはAからDを毎回行った.対象者には介入前後に認知機能検査としてファイブ・コグを施行した.<BR><BR>【結果】参加者の平均年齢は72.2±7.1歳、平均教育年数は10.4±2.3年であった.2つのプログラムの間で対象者の年齢、教育歴による差はみられなかった.参加者の年齢層や日常的な活動の幅を考慮して、運動プログラムでのウォーキングは10分より開始し、6回目より15分に延長した.実施期間中に体調不良を訴えた者はなかった.介入前後の認知機能検査において、認知機能プログラムでは「手がかり再生課題」が12.6±5.6点から17.0±5.7点へ、「動物名想起課題(言語流暢性課題)」が12.8±4.0点から16.4±2.9点へとそれぞれ有意に改善した(いずれもp<0.01).運動機能プログラムでは「手がかり再生課題」のみ、11.5±5.3点から16.2±5.3点へと有意に改善した(p<0.01).<BR><BR>【考察】認知機能検査において、両プログラムで「手がかり再生課題」が改善し、記憶機能の改善が示唆された.アルツハイマー病では初期に記憶機能が低下するとされている.記憶機能の改善が示唆された今回のプログラムはどちらも予防プログラムとして効果的であることが考えられた.その一方で運動機能プログラムでは認知機能プログラムで示された言語流暢性課題の改善は得られなかった.今後は運動内容の再考や、さらに対象者が今回のプログラムで獲得した体力を維持し、長期的に認知症予防に取り組めるような支援方法の検討が必要と考える.
著者
上井 雅史 平野 弘之 伊藤 昭 田中 隆晴 伊東 馨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1153, 2010

【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)は関節組織の慢性の退行性変化と増殖性変化のため、関節の変形をきたす疾患である。老化現象に機械的な影響が加わり関節軟骨や骨の変形、半月板の変性、磨耗、筋萎縮、筋短縮、結合組織の変性がおきる。関節変形が初期から中期までの場合、保存治療が選択される場合が多い。膝OAに対する一般的なリハビリテーション(以下リハ)の内容は筋力強化が中心で、姿勢調整、動作パターンの改善、減量および生活指導などが行われる。近年では股関節周囲筋の筋力訓練を行うことで歩行能力や姿勢アライメントが改善するという報告がある。大腿四頭筋強化に股関節周囲筋の強化を加えて実施することがすすめられる。運動リハは可動域訓練、筋力訓練など痛みや疲労を伴う。敬遠される場合も少なくない。筋力強化のプログラム内容の増加が患者の負担になり、リハの継続を妨げる可能性がある。膝OAの運動療法は長期にわたるとリハ脱落群の増加が増える。モチベーション維持が大切である。今回、当医院の膝OA患者に大臀筋強化を実施した。その結果、実施前に比較し疼痛の軽減をみた。大臀筋訓練の影響を、文献的考察を交え検討した。<BR>【方法】対象は当医院に通院する、屋外歩行が自立レベルの患者11名14膝。通常の訓練後、歩行時VASを測定し大臀筋トレーニングを実施後、歩行時VASを測定しその前後で比較した。大臀筋トレーニングをMMT測定と同じ腹臥位、膝関節を90度程度屈曲した状態で行った。1クール10回を3セット実施した。腹臥位をとれない患者には側臥位で実施した。疼痛はVisual analog scale(VAS)を使用し0から100の目盛りを患者に示してもらい測定した。統計処理の手法にはt検定を用いた。<BR>【説明と同意】今回の研究は、内容、意義を説明して了解を得た患者に対してのみ実施した。<BR>【結果】大臀筋強化トレーニング実施前のVAS値が2.36±2.84であったものが、実施後には1.64+2.23と実施前に比較し減少(p<0.05)していた。<BR>【考察】膝OAの運動療法は、数多くの研究によって有効であることが知られている。いくつかの前向き、無作為の研究でSLR訓練をはじめとする膝関節伸展筋の強化で、それ単独でも膝OAの疼痛とADL障害の軽快に有効であるといわれる。その効果はNSAIDに優るとも劣らない。大殿筋の強化も骨盤帯の安定性増加や、関節軟骨の変形による股関節内転モーメント減少を緩和し、下肢、膝関節の姿勢アライメントの改善が期待できる。一方、運動療法で一定の効果を得るには、比較的長期の継続が必要である。時により疲労や筋肉痛をともない、長期にわたる筋力強化はモチベーションが大切となる。今回の研究で、大臀筋トレーニング実施前後で、VAS値が2.36±2.84から1.64+2.23と減少を示し、短期でも疼痛の軽減に有意な効果があることがわかった。一時的であっても、膝OAの主症状である疼痛の緩和によって、リハの満足度の向上、モチベーションの維持につながる可能性がある。大臀筋トレーニングは膝関節自体にストレスがない利点もある。疼痛緩和の継続が短いなどの意見や、運動方法、運動強度の設定などがあいまいだともいわれ、今後、比較検討が待たれる。<BR>【理学療法学研究としての意義】膝OAは日本全体で高齢化が進む中でますます増加しつつある。本研究は、大臀筋強化訓練による疼痛の一時的軽減が、膝OA患者のADL維持および、人工関節への移行時期を遅らせるための運動療法の継続を促すと考え行った。
著者
久米 正志 清水 雄二 南條 元 佐藤 英樹 佐藤 友彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P2269, 2010

【目的】厚岸町は北海道の東南部に位置し、総面積は739平方kmで、主な産業は水産業と酪農を中心とした農業である。厚岸町役場保健介護課健康づくり係では、一般高齢者を対象とした介護予防事業の一環として平成13年度から地域出前講座の転倒予防教室「ころばない講座」を始めた。高齢期における具体的な転倒予防のため、地区の自治会・老人クラブ等の開催要請に応える形で実施している。<BR>本研究では町内の各地域に明確な産業特性がある事から、ころばない講座受講者を居住地域毎に「漁村部」「農村部」「市街部」の3地域に分類し、産業特性の異なる各地域間にどのような違いがあるかを比較検討した。<BR>【方法】対象はころばない講座を受講した65歳以上の厚岸町民1598名(男性279名:平均年齢77.1±4.6歳、女性1319名:平均年齢75.1±5.4歳)である。ころばない講座は、検査・検査の見方・日常でころばないための講話・家庭でできる簡単な転倒予防体操で構成されている。検査項目は全身状態の検査として、血圧・体重・体脂肪・BMI・握力、転倒骨折評価として10m全力歩行・最大一歩幅・下肢長・40cm踏み台昇降である。転倒骨折評価は東京厚生年金病院転倒予防教室で行われている健脚度評価を利用した。<BR>本研究では各検査項目の中から転倒骨折評価に焦点を当て、10m全力歩行・最大一歩率(最大一歩幅/下肢長)・40cm踏み台昇降について、健脚度評価基準の転倒カットオフ値を基に3地域を比較検討した。統計処理には1要因の分散分析を用いて、有意水準を5%とした。<BR>【説明と同意】ころばない講座受講者に検査の目的を説明し、本人並びに厚岸町の健康づくりに活用する事の同意を得た。<BR>【結果】10m全力歩行<BR>男性:農村部5.22±1.18秒>市街部5.32±0.90秒>漁村部5.71±1.16秒<BR>女性:農村部5.95±1.70秒>市街部6.09±1.62秒>漁村部6.32±1.64秒<BR> 転倒カットオフ値は6.41秒であり、男女共にカットオフ値を下回る地域はなかった。男女共に各地域間で有意差が認められた。<BR>最大一歩率 <BR>男性:農村部1.32±0.16>漁村部1.31±0.17>市街部1.29±0.12<BR>女性:市街部1.32±0.19>農村部1.30±0.15>漁村部1.26±0.18<BR> 転倒カットオフ値は1.17であり、カットオフ値を下回る地域はなかった。男性は各地域間に有意差が認められなかったが、女性では有意差が認められた。<BR>40cm踏み台昇降(可能の割合を表示)<BR>男性:漁村部67%>市街部65%>農村部62%<BR>女性:農村部41%>市街部・漁村部34%<BR> 男女共に各地域間で有意差が認められた。 <BR>【考察】10m全力歩行・最大一歩率は、3地域男女共に転倒カットオフ値を上回った。3項目の転倒骨折評価を男女地域別に比較検討すると、最大一歩率の男性以外は各地域間に有意差が認められた。10m全力歩行での特徴は、同地域男女の序列が同じ事である。男女共に農村部が最も高く、市街部、漁村部と続く。共に肉体労働である農村部・漁村部で有意差が現れた事は印象的である。仕事の内容の相違や、酪農業は通年であるのに対し漁業は季節性である事も有意差の一因と考えられる。最大一歩率は男性では有意差が認められなかった。女性は有意差が認められ市街部、農村部、漁村部と続く。特に漁村部女性が低い値であった。40cm踏み台昇降は、漁村部では男性が最も高く女性が最も低い等、同地域男女の序列の相違が現れた。女性は農村部が特に高い割合であった。同地域男女の序列の相違は市街部で小さく漁村部・農村部で大きい事から、漁村部・農村部での男女の仕事内容の違いが影響している可能性が考えられる。漁業では主に男性が漁に出て船の乗り降り等で昇降動作を行うのに対し、女性の仕事は加工が主であるいう役割分担もみられる。<BR>各項目で各地域間に有意差が認められたが、それが現役世代の仕事内容からくるものか、引退後の活動歴が影響しているかを精査するためには今後更なる情報が必要である。本研究を基に、現役引退の度合い(家族経営が多いことから部分的な引退も考慮)・各業種における男女別の仕事量や内容の把握・引退年齢や引退後の運動・活動歴の情報も得ていきたい。そして本研究で明らかになった地域間の差や、同地域男女の序列の相違について、どのような因子が影響を与えているのかを明らかにし、各地域に合った予防的な健康づくりの方法を提案していく。<BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法士が保健・福祉と共働・連携し町民の健康づくりを行っていく事の意義は大きく、本講座を通して町民が高齢期における健康づくりを主体的に行う町になるように働きかけていく事ができる。また、厚岸町独特の産業・地域特性に焦点を当て研究を行う事で、受講者のみではなく町全体、更には産業特性が同様な地域に結果を還元する事ができる。