著者
森野 博章 ホアイソン グエン 相田 仁 齊藤 忠夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.289, pp.37-42, 2001-09-07

1〜10テラビット/秒の容量をもつ将来の大容量ルータのためのスイッチファブリックの実現方法として、多段接続網により数千ポートの入出力ポート対を扱う手法が考えられる。しかし従来の多段接続網方式の多くは固定長パケットスイッチングを対象として提案されており、回路設計を含めたIPパケットスイッチングへの最適化の検討はほとんど行われていない。筆者らは、IPパケットのための多段接続スイッチとして再ルーティングと最短経路ルーティングの原理に基づくリングシャッフルパターンスイッチを提案しているが、本稿では、本方式の回路構成方式の検討を行う。提案方式についてシミュレーションによる評価および回路設計を行い、この結果をもとに、64×64のサイズのスイッチをLSIに納めLSIを多段接続して4000ポート程度を扱うスイッチファブリックを実現する見通しについて示す。
著者
大沼 美由紀 木村 敦 佐々木 寛紀 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.46, pp.155-160, 2012-05-15

本研究はSNS利用が既存友人との対人トラブルに及ぼす影響について日本人青年男女を対象とした2つの調査により検討した.調査1ではSNS(mixi,Facebook,Twitter,その他)ユーザを対象とし,SNSでの既存友人との交流において対人トラブルを経験したことがあるかどうかについて,トラブルの種類,およびSNSのどのようなツール・機能がトラブルに関わったかを開放型質問を用いた調査により検討した(N=41).その結果,約70%のユーザがSNSで既存友人とのトラブルを経験したことがあると回答した.また,とくにmixiでの日記・つぶやきに記載された本人や友人に対する悪口が対人トラブルの原因となることが多いことが示唆された.調査2では,調査1で抽出された主要なSNS(mixi)での対人トラブルが,SNSでの交流に特有のものかどうかを定量的調査により検証した(N=92).その結果,気分を害するような否定的発言をする友人は対面時よりもSNSでより多くそのような否定的発言をすると感じる傾向が示された.
著者
岡本 謙一 重 尚一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.723-733, 2008-07-01
被引用文献数
6

熱帯降雨観測衛星(TRMM:Tropical Rainfall Measuring Mission)は,1997年11月28日に打ち上げられて以来,現在に至るまで,約10年以上も順調に,熱帯.亜熱帯降雨の観測を継続している.TRMMは,世界で初めてのアクティブフェイズドアレー方式の降雨レーダ(PR)を搭載しており,台風などをはじめとする様々な降雨システムの三次元構造の観測にその威力を発揮してきた.論文では,TRMM衛星のミッションの目的,搭載センサの概要,TRMM降雨レーダシステムの概念設計時の諸検討,TRMM降雨レーダシステムの概要,TRMM降雨レーダデータ解析処理アルゴリズムシステム,様々な観測成果(台風,潜熱加熱など),TRMMを継承する全球降水観測計画(GPM:Global Precipitation Measurement)主衛星搭載2周波降水レーダ(DPR)並びに更に次世代の衛星搭載の降雨レーダ技術についての展望などについて解説する.
著者
高橋 大志 寺野 隆雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.618-628, 2003-08-01
被引用文献数
10

本研究は,リスクマネジメントが市場全体にもたらす影響をエージェントベースアプローチにより分析したものである.はじめに金融工学の分野において報告されているリスクマネジメント手法の有効性を確認した後,過度のリスク管理が実施される場合や周りの投資家動向を考慮する投資家が多数存在する場合などの特殊な条件下においてはリスクマネジメントが市場価格を適切な水準から乖(かい)離させる可能性のあることを確認した.
著者
斎藤 英之 小林 邦勝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.98, no.426, pp.53-60, 1998-11-20

ESIGN署名方式において、署名認証子を計算する式をうまく変形すれば、二つの文書に対して同時に署名できる。そこで、我々は平文を分割して署名する平文分割ESIGN署名方式を提案する。また、その方式を用いて借用書等の文書を分割し、金額や借用相手の名前等のプライバシーに関わる文書を署名検証者には送信せずに、借用者本人の名前等の文書に対する署名のみを検証させ、緊急時には二つの文書を検証することにより、二つの文書の関連性と全情報が明らかになるという平文分割ESIGN署名を用いた署名プロトコルについて提案する。
著者
長井 隆行 影広 達彦 金子 正秀 搏松 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.721, pp.103-108, 2001-03-22
被引用文献数
1

本報告では,複雑な背景を持つ情景画像から自動的に文字を抽出する手法について述べる.提案方法は.フィードフォワードニューラルネットワークをベースとしている.ニューラルネットワークは,画像中の小領域(ブロック)内の特徴量から.その領域が文字であるか非文字であるかを判別する.その際,文字の特徴量として.ウェーヴレット変換係数.独立成分分析の結果,特徴空間からの距離を組み合わせて用いることで.高精度の識別を行う.また.色による画像の領域分割をベースとした看板領域抽出手法も提案する.文字抽出法と看板抽出法を統合することにより.情景画像中に存在する文字を効率よく抽出することが可能となる.最後に.実際の情景画像を用いた実験結果により.提案方法の有効性を明らかにする.
著者
若林 佳織 布引 純史 藤井 憲作 安田 恒雄 稲垣 充廣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, 1996-03-11

近年、カーナビゲーションの普及が著しい。そこでは縮尺1/25000の地図が用いられている。その地図では、縮尺1/2500のような詳細地図に比べて交差点の角にある建物形状などがわからない。本稿では道路ネットワーク情報を用いた高品質な道案内地図の作成について報告する。
著者
玉木 秀和 東野 豪 小林 稔 井原 雅行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.35-45, 2013-01-01

Web会議に代表される小規模な遠隔会議システムは利用や導入の手軽さがあるが,映像,音声の品質に制限があるため,大規模で高精細な遠隔会議システムに比べ,円滑な会話がしづらい.Web会議システムを用いて,司会者のいない創造会議を実施すると,複数の参加者の発話が衝突してしまうことが多い.我々はWeb会議において発話の衝突を低減し,快適な会話を実現することを目標に研究を進めているが,発話衝突の原因とその影響は明らかになっていない.本論文では,音声会議において,発話衝突の原因の一つと考えられる音声遅延量を変化させることで,発話衝突確率の変化と,それによる精神的ストレスを測定する実験を行った.実験の結果,音声遅延量が600msの条件で発話衝突確率が最大となり,その後減少することが分かった.また発話衝突による精神的ストレスは,音声遅延量が増えるほど増加するという結果が得られた.
著者
小林 貴訓 杉村 大輔 平澤 宏祐 鈴木 直彦 鹿毛 裕史 佐藤 洋一 杉本 晃宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.2049-2059, 2007-08-01
被引用文献数
16

視野を共有する複数のカメラを用いて,三次元空間における人物の実時間追跡を行う.従来より,パーティクルフィルタを用いた人物追跡手法の有効性が報告されている.しかし,観測による仮説の評価は,カラーヒストグラムや輪郭の類似性など,比較的単純な指標が用いられることが多く,実環境での照明変動や複雑背景に対する精度や頑健さなどの点で,必ずしも十分なものではなかった.これに対して本論文では,Haar-like特徴を用いたAdaBoost学習によるカスケード型識別器を仮説の評価に応用することで,頑健かつ高精度に人物頭部を追跡する手法を提案する.更に,人物頭部の各方向に対応した識別器を複数準備し,パーティクルフィルタにより生成される仮説と各カメラの関係に基づいて,識別器を適応的に選択することで,人物頭部の向きに伴う見えの変動に対応し,追跡と同時に人物頭部の向きを推定する.実環境における実験により本手法の頑健性,有効性を確認した.
著者
藤田 拓也 安藤 由悦 佐藤 和彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.141, pp.29-34, 2011-07-09
被引用文献数
1

研究活動を進める上で,関連研究の動向を知るために学術論文などの文献の探索・調査は重要な作業である.研究室に所属する学生が論文を収集する場合,類似のテーマを研究していた先輩が過去に収集した文献情報は大いに活用できる.しかし,研究室において文献情報を共有資源として活用する場合,経年により陳腐化している可能性が考えられる.本研究では,文献情報の鮮度を保つために,論文の著者名や所属などの情報をもとに継続研究を自動的に検索する参考文献管理システムを提案し,そのプロトタイプを関発した.本稿では,システムの概要と開発したプロトタイプについて報告する.
著者
岡本 泰治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.630, pp.167-170, 2003-01-28
被引用文献数
1

現在、携帯電話やPDA等に代表される携帯情報端末が普及している。これらは、小型・軽量の為、何時でも何処でも気軽に利用可能なのが最大の特徴である。将来、携帯電話を代表とするモバイルコンピューティングは用途に応じて、端末を持っていなくても好きな所でコンピュータを利用する事が出来る「ユビキタスコンピューティング」、コンピュータを装着することで今よりも自由の利く状態でのコンピュータの利用が可能な「ウェアラブルコンピューティング」へそれぞれ移行していくと考えられている。以上を踏まえ本稿では、その内のウェアラブルコンピューティングに着目し、指の動きをセンサで感知するサイバーグローブを用いた入出力の方式について考察する。
著者
長 秀雄 竹本 幹男 西野 秀郎 塚原 祐輔 佐藤 倬暢 佐藤 治道 中野 禅 山中 一司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.96, no.28, pp.41-47, 1996-04-26

レーザー干渉縞の位相速度走査法により励起した弾性表面波を用いて多孔質シリコン層の位相速度分散を30-90 MHz範囲で、また異方性を非破壊・非接触で測定した。音速測定誤差は1%以下と良好であった。位相速度は空孔率の増加とともに低下し、単結晶シリコンの1/2-1/3と極めて低かった。また、音速の伝播方向依存性を測定したところ90度の周期の異方性が測定され、周波数の上昇とともに最大・最小の音速差は小さくなり、空孔率0.500場合60MHzでは約30m/s程度であった。さらに、逆問題解析によって3個の弾性定数(C_<11>,C_<12>,C_<44>)と膜厚を独立した4つの未知数として推定した。その結果,空孔率の大きい多孔質シリコンはほぼ等方性であり、非晶質的であると思われる。
著者
吉川 雅博 三河 正彦 田中 和世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.93-103, 2009-01-01
被引用文献数
17

本論文では筋電義手を制御するための,筋電位を利用して意図する手の動作をリアルタイムで識別する手法を提案する.本手法では特徴量に積分筋電位信号と筋電位信号のケプストラム係数を用い,サポートベクターマシン(SVM)により学習と動作識別を行う. SVMは様々なパターン認識問題に有効であることが分かってきているが,筋電位を利用した動作識別においても有効かどうかは明らかになっていない. 8名の被験者によるオフライン動作識別実験の結果, SVMを用いた提案手法は線形判別分析, k-最近傍法,ニューラルネットワークを用いた手法よりも優れた識別性能を示した.また,リアルタイム動作識別実験を行った結果,動作識別が精度よく行われ,動作開始タイミングに遅れがなく応答性がよいことが示された.
著者
山本 泰智 佐野 元昭 関根 松夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.94, no.264, pp.17-22, 1994-09-30
被引用文献数
4

レーダは、現在、航空機や航舶の安全航行上必要不可欠な装置となっている。そして、レーダの信号処理では、いかにしてクラッタを抑圧しターゲットの検出を容易にするかが問題となる。本研究では、フラクタル次元を用いて適当な閾値を得ることにより、クラッタとターゲットの分離を試みた。我々は、X-バンドレーダを用いて、強雨とシークラッタに埋もれた2隻の船を観測した。実際に観測したデータからいくつかのサンプルを取り出して様々な閾値におけるフラクタル次元の変化を観ることに依って、最適な閾値を得ることができ、雨雲とシークラッタが抑圧されターゲットである船舶を検出できた。
著者
榎田 翼 若槻 尚斗 水谷 孝一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.197-204, 2013-05-01

本論文は,金管楽器において吹鳴圧力に加え唇のアパチュアを変化させたときの吹鳴音高を計測することで,吹鳴圧力とアパチュアが吹鳴音の音高に与える影響を明らかにすることを目的とする.具体的にはアンブシュア可変機構を有する人工吹鳴装置を用いて,吹鳴圧力とアパチュアの大きさを制御しながら吹鳴音の計測を行った.結果として吹鳴圧力とアパチュアの相互関係により励起される吹鳴音の周波数が決定されることを確認した.また,アパチュアの大きさを徐々に大きくしていく場合と小さくしていく場合では吹鳴音の周波数が遷移するアパチュアの大きさが異なるという結果が得られた.更に,アパチュアを小さくすれば吹鳴音の周波数が高くなるという奏者の見解とは逆に,人工吹鳴においてアパチュアを大きくしたときに吹鳴音の周波数が高くなるという興味深い結果が得られた.
著者
林 等 中津川 征士 村口 正弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27

ドレイン接地FET(CDF)は、高入力インピーダンス・低出力インピーダンスという特徴を有し、多段増幅器の段間出力整合回路やトランスインピーダンス増幅回路に多用されている。本報告では、CDFとソース接地FET(CSF)の位相特性が逆特性であることを示し、CDFとCSFとを縦続接続した場合の位相歪について検討を行い、低位相歪化が図れることを示す。
著者
呉 奕鋒 西澤 振一郎 橋本 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.1159-1166, 2005-12-01
被引用文献数
2

近年, 電子機器内部に発生する電磁ノイズは, 機器筐体から完全に遮へいされていないため, 外部に放射される漏洩電磁波となり, 電子機器の誤作動を引き起こす電磁妨害波として問題とされている.このような漏洩電磁波を抑制するためには, 電磁ノイズの発生源となる基板表面の電流分布の特定が有効とされている.本論文では基板表面の放射磁界を測定し, 測定された放射磁界から基板表面の放射源である電流分布をグリーン関数法に基づいて推定する手法を提案し, その有効性を確認した.このような逆問題の解析法として, 連立方程式の解法に共役こう配法を利用し, Hansenらが提案したL-curve法を適用することにより, 電流分布の最適値を推定した.そして, 本手法を用いて一例として解析磁界の位置変化によるマイクロストリップライン(MSL)表面の二次元の電流分布について検討した.この結果, 磁界の推定距離が離れるにつれてストリップ上の電流分布のレベルがほぼ等レベルになることが観察できた.また, 測定と解析による電流推定についても比較検討した結果, 推定した電流の傾向が良好に一致することにより, 本提案手法の有効性を確認できた.
著者
佐々木 進 飯島 祐一 月周回衛星ワーキンググループ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.96, no.142, pp.49-55, 1996-06-28

宇宙科学研究所と宇宙開発事業団の共同ミッションとして、21世紀初頭の実施を目指した月探査周回衛星計画の準備が進められている。この計画は、H-IIロケットを用いて、月周回衛星、着陸実験機及びリレー衛星で構成される大型の探査機を月に送ろうとするものである。このミッションの目的は、月の起源と進化の研究、月環境の解明、月からの科学観測、及び、月面利用の可能性の調査、の4本柱から成っている。月の起源と進化の研究は、月面の元素や鉱物、月表層の構造、月重力分布、月磁場をグローバルにマッピングすることにより行う。月環境については、電磁環境、高エネルギー粒子環境、微粒子環境を計測する。月からの科学観測では、地球プラズマ圏の撮像と惑星電波の観測を行う。本稿では、月探査周回衛星計画で提案されている科学研究項目とその期待される科学成果について紹介する。