著者
三島 亜紀子
出版者
日本ソーシャルワーク学会
雑誌
ソーシャルワーク学会誌 (ISSN:18843654)
巻号頁・発行日
vol.30.31, pp.A1-A12, 2015-12-31 (Released:2017-10-23)

2014年に採択されたソーシャルワークのグローバル定義には,「多様性(diversity)」の語が加えられた.本定義や英米の社会福祉教育などにおいて,多様性が示す範囲は人種,年齢,障害,階級,性的指向性など幅広い.今後,日本でも広義の「多様性の尊重」という価値観がソーシャルワークの実践や社会福祉教育のなかでさらに重要視されるようになるだろう.本稿では,語源や各種定義や基準におけるdiversityの意味を概観した後,多様性に関する歴史的経緯や思想的背景を考察した.今後,多様性をキーワードとして,ソーシャルワーカーとして多様な属性をもつ人々を抑圧する社会構造を批判的に分析できる知識とそれぞれ異なる配慮をする能力を身につける必要があることを指摘した.加えて多様性が重複することもあること,今後のソーシャルワーク教育では「隠れたカリキュラム」への配慮も欠かせない点をあげた.
著者
三島 亜紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.113-124, 2016-05-31 (Released:2019-02-15)
参考文献数
47

2014年7月に採択された「ソーシャルワークのグローバル定義」で,ソーシャルワークは「学問」であると初めて明記された.その「知(knowledge)」は学際的なものであり「ソーシャルワーク固有の理論的基盤および研究」に加え,「他の人間諸科学の理論」も援用するとされる.さらに「地域・民族固有の知(indigenous knowledge:IK)」もこれらと同等の一つの知と明記された.本稿ではほかの学問分野におけるIKに関わる議論も参考にしながら,これが重視された背景や日本における展開を考察する.ソーシャルワークの知の変化の背景として,ソーシャルワークには先住民族をはじめ社会的弱者を迫害した歴史があったことを真摯に受け止めなければならないという機運が高まったこと,ソーシャルワークの知はサービス利用者と共に生み出すことをよしとする風潮が生まれたこと,西洋的な価値観に基づくソーシャルワークへの批判などがあり,これが新定義に反映されたといえる.
著者
前川 勝文
出版者
緑書房
雑誌
養豚界 = The pig magazine (ISSN:09159622)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.51-53, 2018-11
著者
河野 美幸 梶本 照穂 小沼 邦男 野崎外 茂次 伊川 廣道 北谷 秀樹 和田 知久 川中 武司 中村 紘一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.1132-1137, 1991-12-20 (Released:2017-01-01)

The normal position of the anus is not defined objectively. Using a simple technique, the anal position index was designed to define the position of anus in neonates and infants as follows: the ratio of the distance between the scrotum and the anus to the distance between the scrotum and the coccyx for males and the distance between the vagina and the anus to the distance between the vagina and the coccyx for females. The anal position index in neonates was not affected by body weight. In male infants, the anal position index was not affected by age. But in female infants, the anal position index decreased from neonatal period to three months of age but no significant difference was demonstrated from three months of age to twelve months of age. We think that the anal position index is useful as an objective parameter to assess the localization of the anus.
著者
松本 範裕 畠山 武 橋本 良一 中谷 治夫 田淵 志良 中田 俊彦 北野 弘
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-44, 1986

石川県の奨励品種の中で早生種は加賀ひかり, 越路早生, ホウネンワセ, ハツニシキがある。加賀ひかり, 越路早生は平坦部, ホウネンワセ, ハツニシキは山間部の主要早生種として作付されている。県内の山間部は標高500m以下にあるものの平坦部に比べて環境条件, 土壌条件が厳しく, もともと低収地帯であることに加えて冷害年の時には大きな被害を被る。山間部の主要早生品種であるハツニシキ・ホウネンワセとも倒伏し易く, 生産力が低く, 品質の年次変動が大きいなど生産・流通の両面で問題点が指摘されている。ここに紹介する新品種「能登ひかり」は大粒で腹白粒が出易いものの食味が良く, 強稈, 多収でいもち耐病性が強く, 搗精歩合が高いなど生産・流通両面にわたって長所が多く, 立地条件の悪い山間・山麓地帯向けの早生品種として今後の普及が期待されるものである。
著者
小林 正法 服部 陽介 上野 泰治 川口 潤
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.405-414, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

Intrusive thoughts and difficulty in controlling thoughts are common, not only for people with psychological disorders, but also for healthy people. Individual differences in thought control ability may underlie such problems. The Thought Control Ability Questionnaire (TCAQ), which consists of 25 items, was developed by Luciano et al. (2005) in order to measure individual differences in the perceived ability to control unwanted intrusive thoughts. The purpose of the present study was to develop the Japanese version of the TCAQ and evaluate its reliability and validity. We translated the English version of the TCAQ into Japanese. We also conducted confirmatory factor analysis with a one factor solution, similar to the previous study. Based on the analysis, we excluded items whose factor loadings were lower than .30, resulting in 22 items for the Japanese version of the TCAQ. The model exhibited acceptable goodness-of-fit. The Japanese version of the TCAQ also demonstrated good reliability as well as evidence of construct validity. Thus, the development of the Japanese version of the TCAQ was successful.
著者
星野 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.455-457, 2020-05-25

事例 実習受入先の病院では、4種混合、結核およびB型肝炎の予防接種を済ませていることが学生の受け入れの要件になっています。学生に接種状況を確認したところ、未接種の学生が数名いました。それぞれ理由を尋ねると、「病原体をあえて注射するなど拒絶する」「隠れた副反応が怖いので接種したくない」「自費での接種は経済的に厳しいので、感染リスクは自己責任で負う」「自分の信じる宗教でワクチンを禁止している」などと言って、接種を拒否しています。予防接種をしない場合、実習未履修となって卒業ができなくなります。学校としてどのように指導すべきでしょうか。
著者
山迫 淳介 高松 陽一郎
出版者
愛媛大学農学部附属演習林
雑誌
愛媛大学農学部演習林報告 (ISSN:04246845)
巻号頁・発行日
no.51, pp.29-30, 2012-03

ヒラズゲンセイCissites cephalotes(Olivier, 1792)は,ツチハンミョウ科の甲虫で,東南アジアから日本まで広く分布し,真っ赤で鮮やかな色彩が特徴の大型甲虫である。その体液には有毒物質のカンタリジンが含まれ,皮膚に付くと,かぶれや水ぶくれなどの炎症を起こすため,衛生害虫でもある。本種は,国内では高知県ではじめて発見され,その後,高知県や徳島県で多数記録されているが,他地域ではわずかに知られている程度であった。しかし,近年になって四国のみならず,九州や関西地方にまで急激に分布を広げていることが知られており,地球規模の温暖化との関連が示唆されている(初宿,2008)。
著者
加藤 宏郎 坂口 守彦 大井 康之 丸尾 信 豊田 薫
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.76-83, 2000-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
6

魚介類の官能的鮮度評価法に代わる迅速かつ簡便な鮮度評価方法の1つとして, 10kHz以上の高周波域での電気的評価方法の開発を試みた。電気インピーダンスやその要素の周波数特性による材料評価法はインピーダンススペクトロスコピー法とも呼ばれ, 生物組織では損傷や鮮度低下など細胞レベルの劣化情報を迅速に得ることができる。本報では, マダイ背肉部分の抵抗・リアクタンスなどの周波数特性や複素インピーダンス軌跡の氷蔵期間中の変化を測定し検討した。その結果, 鮮度変化に伴い明らかに変動する実用的鮮度指標として, 電極分極インピーダンスが微小となる10kHz~1MHzの高周波域から算出した Cole-Cole の円弧半径, 異なる周波数 (10kHzと1MHz) における抵抗比と差, 中心緩和周波数, リアクタンスのピーク値などを選び出した。
著者
鉄口 宗弘 東 庸介 三村 寛一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.59-68, 2012-02

本研究は大学女子サッカー選手を対象に,運動後に市販酢酸飲料を摂取させ,その後の疲労回復に及ぼす影響について検討を行った。その結果,サッカー練習後の市販酢酸飲料は,翌日の疲労自覚症状を減少させる傾向を示した。高強度運動としてのウィンゲートテスト後の市販酢酸飲料摂取により,運動後5分と10分の血中乳酸濃度がスポーツドリンク摂取時に比べて低値を示す傾向を示した。また,対象全員が味に対して高評価を示し,ほぼ全員が運動後に摂取可能であると回答した。以上より,市販酢酸飲料は運動後でも比較的摂取しやすく,運動後の疲労回復効果および運動翌日の主観的な疲労を軽減させる可能性が示唆された。
著者
Ning Wang Naoko Kitamoto Ryo Ohsawa Tatsuhito Fujimura
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
Breeding Science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-112, 2008 (Released:2008-06-19)
参考文献数
22
被引用文献数
9 15

Radish (Raphanus sativus L.) is a useful vegetable with diverse features and worldwide distribution; however, the diversification and domestication history of cultivated radish has not been well documented. In order to understand genetic relationships among radishes around the world and the resulting diversity, we analyzed 65 accessions of cultivated radish collected from 21 Eurasian and North African countries using 221 amplified fragment-length polymorphism (AFLP) markers. These accessions formed four groups according to their provenance (Europe, Middle East, South Asia, and East Asia) in a neighbor-joining (NJ) tree. Despite geographical barriers, there might thus be a frequent exchange of germplasms within each region. The average genetic diversity did not differ significantly among the groups, ranging from 0.267 (Middle East) to 0.297 (East Asia), indicating that no obvious bottleneck effect in each region has occurred during the spread of this species.
著者
鈴木 昌子
出版者
学校法人 山野学苑 山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-23, 1996

古代より日本の女性の美は垂髪にありと,いわれてきた。桃山時代から江戸時代にかけて結髪が流行していたが,あの絢爛豪華な元禄時代を迎えようとしていた貞享年間(1684〜1688)に結髪が発展せず,菱川師宣の「見返り美人」図に見られる「玉結び」が流行していた。当代随一といわれた有職故実の学者である高橋宗恒が,工人に種々の形の笄(当時に笄と簪との区別がない)を作らせた。また,この宗直が簪を発案したともいわれ曖昧になっている。一本脚の簪を宗恒が,二本脚の簪を宗直が紹介した。宗恒は笄の発案者と囃したてられたが,彼はそれを紹介した人である。古代において高髻から垂髪へと移行した過程と同じような傾向にあった垂髪を喰い止め,日本髪の基をつくった彼と,当時の社会情勢を踏まえながら考察したい。