著者
北村 新 宮本 礼子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.45-53, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
29

本研究では,脳卒中片麻痺者12名を対象に,彼らが生活のなかで麻痺手の使用・不使用にいたる主観的体験をインタビュー調査により明らかにした.分析は,戈木版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.結果,脳卒中片麻痺者は【麻痺を呈した身体での生活場面】のなかで,【麻痺手を使う必要性の実感】,【健側手で生活ができることの実感】,【意識的な麻痺手使用の試み】,【意識する他者の視線】という経験を通して,【麻痺手を使用する手段・場面の選択】と【麻痺手を使用しない手段・場面の選択】に帰結することがわかった.麻痺手使用を支援するうえで,対象者が行う作業の特性や,個人的意味づけを考慮した関わりが重要であると考える.
著者
依田 高典 石原 卓典
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.132-142, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
23

金銭的インセンティブとナッジがどのような人間の行動変容をもたらすのか,行動経済学的なエビデンスの蓄積が進んでいる.本稿では,フィールド実験を通じた健康増進の先行研究の結果を概観し,京都府けいはんな学研都市で行った著者らの研究結果も紹介する.
著者
佐々木 周作 大竹 文雄
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.110-120, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
54
被引用文献数
1

本稿では,これまでに,医療・健康分野でどのような行動経済学研究の成果が蓄積されてきたかを整理する.本分野の研究は,患者を対象に,以下二つの分類で進められてきた.一つは,患者の意思決定上の行動経済学的な特性が積極的な医療・健康行動を取りやすくしたり,逆に,阻害したりしていることを明らかにする実証・実験研究である.具体的には,リスク回避的な人ほど積極的な医療・健康行動を取りやすいこと,一方で,時間割引率の大きい人・現在バイアスの強い人ほど取りにくいことがさまざまな医療・健康分野で観察されている.もう一つは,患者の行動経済学的な特性を逆に利用して,積極的な医療・健康行動を促進しようとする,ナッジの介入研究であり,実際に,ナッジが患者の行動変容を促すことが,多くの研究で報告されている.さらに,近年の研究動向として,医療者を対象にした行動経済学研究を紹介するとともに,長期的かつ安定的に効果を発揮するナッジの開発の必要性について議論する.
著者
田中 陽一 大住 倫弘 佐藤 剛介 森岡 周
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.117-122, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
21

地域在住の慢性疼痛症例に対し,疼痛強度の日内変動と日々の心理状態・身体活動量の調査を行った.症例は事故により右腕神経叢を損傷し,受傷以降右上肢に自発痛を有していた.14日間の調査の結果,疼痛の日内変動と身体活動量との関連では,低強度活動(家事や歩行などの立位を含む運動)が多いと疼痛強度が低下し,低強度活動が少ないと疼痛強度が増加する傾向が確認された.今回の低強度活動は,症例が日々の生活において重要度が高いと判断した「散歩」や「デイサービスの利用」などであることから,本人が重要と感じ,かつ低強度の運動時間を維持できる活動を行うことが,疼痛強度の低下に寄与したのではないかと考えられる.
著者
砂野 唯
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.866-873, 2014 (Released:2018-04-09)
参考文献数
14

科学的にも,また,文化人類学的にもアフリカのアルコール飲料の研究は魅力的である。アフリカのアルコール飲料には様々な原料が使用されており,未だに十分な調査がされていないものや希少な酒は数多い。本稿では,食事として摂取されるエチオピアの珍しいアルコール飲料について解説して頂いた。
著者
東山 雄一 田中 章景
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.45-62, 2018-03-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
56
被引用文献数
1

外国語様アクセント症候群(foreign accent syndrome:FAS)とは,同じ母国語を使用する第三者が“外国語のようだ”という違和感を持つような発話障害を特徴とした症候群である.比較的稀な症候ではあるが,これまで100例以上の報告がなされており,発話障害の特徴として,音の高低や強弱,リズム,音調などのイントネーションの異常といった超分節素の障害や,母音・子音変化などの分節素の障害が報告されている.脳卒中以外にも様々な原因疾患で生じることが知られており,その責任病巣については左中心前回など左半球による報告が多いが,右半球や脳幹,小脳病巣での報告もあり多様である.このように,FASは原因も病巣も様々であることから,そもそも“症候群”として扱うほどの一貫性や普遍性があるのか,発語失行(apraxia of speech:AOS)との異同についてなど未解決の問題が山積している.今回,FASを呈した自験例の紹介と既報告例を振り返ることで,FASの特徴や発現機序などについて考察を行った.特に日本人FAS例は,英語アクセント型と中国・韓国語アクセント型の2つに分類されることが多く,AOSの特徴が目立つ例では,母音や子音の長さの変化を特徴とした英語アクセント型に,AOSの特徴が目立たずピッチの障害が目立つ例は中国・韓国語アクセント型になる可能性が考えられた.また,失語症を伴わないFAS既報告例の病巣を用いたlesion network mapping解析を行った結果,喉頭の運動野(Larynx/Phonation area)として報告されている中心前回中部が,FASの神経基盤として重要である可能性が示唆された.
著者
村瀬 敬子
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-19, 2010-09-01

戦前・戦時期において国民教化メディアであったラジオは,女性の社会教育を目的とした「婦人・家庭向け」の番組を放送していた。本稿では「婦人・家庭向け」の番組のうち,料理放送に注目し,1930年代を中心に,ラジオが視聴者としての女性,なかでも「主婦」とどのような関係をとり結んでいったのかを明らかにした。「料理献立」は都市部に居住する一定以上の階層の「主婦」に向けて,料理の調理法をほぼ毎日,放送する番組であった。番組には栄養や味や家計等に配慮して,毎日異なる副食を家族に提供すべきだとする近代的な家事規範が織りこまれており,その背景には料理を「教養」としてとらえる文化があったといえる。一方で聴取者調査や番組にかかわる言説の分析からは,「料理献立」が,近代的な主婦へと女性を「統合」するだけでなく,階層や地域などの差を顕在化させる,いわば「分断」の契機をもはらんでいたことがわかった。それにも関わらず,日々の料理放送が1941年まで継続した背景を,戦時期における「栄養」と「団攣」という観点から考察した。

10 0 0 0 OA 口絵

著者
クレインス フレデリック
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-2, 2017-05-31
著者
波平 恵美子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.17-23, 2008 (Released:2008-07-23)

現代医学は極めて体系的に発達し普遍性の高い医療体系である。しかし,それは数十万年の間種を絶やすことなく生き抜いた人類が発達させた無数で多様な医療のひとつでしかない。このような立場を採る医療人類学は,様々な伝統的医療が具体的にどのように人々に採用され支持されているかを研究し,世界を席捲しつつある現代医療を相対化する。
著者
山根 秀公 松永 易 草川 剛
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.56, no.649, pp.80-87, 2008 (Released:2008-03-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

A flyable FADEC system engineering model incorporating Integrated Flight and Propulsion Control (IFPC) concept is developed for a highly maneuverable aircraft and a fighter-class engine. An overview of the FADEC system and functional assignments for its components such as the Engine Control Unit (ECU) and the Integrated Control Unit (ICU) are described. Overall system reliability analysis, convex analysis and multivariable controller design for the engine, fault detection/redundancy management, and response characteristics of a fuel system are addressed. The engine control performance of the FADEC is demonstrated by hardware-in-the-loop simulation for fast acceleration and thrust transient characteristics.
著者
鈴木 健二 古家 靖士 若松 俊輝
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.36, pp.739-744, 2011-02-20 (Released:2011-06-20)
参考文献数
14

The purpose of this paper is to report the survey of the department store in a local city implementing extension and reconstruction for increasing in floor area and improvement in function. Some results show as follows : (1)There is much room to extend upward, because the building was built as low-layer-building. So extensions were done not only to horizontal direction but also vertical direction. (2)While existing buildings were used as the department-store, changes of usage made differences of floor-height and floor-level in the building. (3)Although air-conditioning-systems were changed in 1970-1990s to keep up with the revisions of law, increasing in floor area and improvement of equipments are consisted by some means or other.
著者
玉井 孝幸 嵩 英雄
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.6_19-6_27, 2009 (Released:2012-03-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

日本には竹筋を用いた建造物の伝承は数多くあるが,現存しており調査確認された例は少ない。本報告は,竹筋を用いたといわれるコンクリートアーチ橋への調査結果である。調査の結果,写真などで確認できなかった竹片をコア調査によって目視確認できた。
著者
倉本 惠生 酒井 敦 酒井 武 田淵 隆一
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-111, 2000-03-20 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
1

四国西南部,四万十川流域において,暖温帯性針広混交林のリターフォールの季節変化と年間リターフォール量を調べた。1997年12月から1998年11月までのリターフォール量には明瞭な季節変化がみられ,1月,5月,および10-11月にピークがみられた。組成別にみると,広葉では,5月と9月に落下が集中し,枝と樹皮は10月の集中落下と1月の小ピークが観察された。その他の細片の落下は10-11月に激増しており,そのほとんどが針葉であった。年間リターフォール量は,3.94ton・ha^<-1>であり,うち33.5%が広葉で占められていた。また, 16.9, 6.0および43.6%は,それぞれ,枝,樹皮,および,その他の細片で占められていた。広葉のリターフォール量は,尾根部より斜面部で多く,針葉では逆に,尾根部で斜面部よりも多かった。これらの違いは,地形に対応した上木樹種組成の違いを反映していると考えられる。