著者
倉澤 悠維 三浦 靖史
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-34, 2019-10-01 (Released:2023-01-06)

目的:2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、訪日者を含む身体障害者補助犬(以下、補助犬)使用者の搭乗が想定される国内航空事業者の補助犬受け入れの取り組みの現状を把握し、課題を明らかにする。 方法:2018年1月に国内線を運航する航空会社15社(グループ)を対象とし、電話、メール、問い合わせフォームを用いて、各社の予約・問い合わせ窓口に聞き取り調査を実施した。質問項目は、「補助犬搭乗時の緊急時の誘導方法」、「社内マニュアルへの補助犬への対応に関する記載の有無」、「補助犬搭乗時の他の乗客への配慮、周知」、「一便あたりの補助犬の頭数制限」「海外の渡航者からの補助犬に関する問い合わせの有無」の5点であった。 結果:11社(グループ)(73.3%)から回答を得た。緊急時の誘導方法が補助犬搭乗時と非搭乗時で同様であったのは9社(81.8%)、マニュアルに補助犬への対応が含まれていたのは10社(90.9%)、マニュアル等に補助犬搭乗時の他の乗客への配慮や周知について記載があったのは9社(81.8%)であった。1機当たりの補助犬の頭数制限がなかったのは9社(81.8%)、海外渡航者からの問い合わせ履歴があったのは3社(27.3%)であった。 考察:約9割の会社が補助犬に対してマニュアルを用いて対応しており、補助犬に関するマニュアルの整備と利用が一般化していると考えられたが、会社により対応の詳細は異なる場合があった。 結論:補助犬への対応は多くの国内航空事業者で類似しているが、詳細は異なる場合があることから、予め、自社の対応を補助犬使用者に分かり易く提示しておくことが望ましいと考えられた。
著者
市川 学 石峯 康浩 近藤 祐史 出口 弘 金谷 泰宏
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-35, 2017 (Released:2017-10-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2

地震に代表される自然災害の多いわが国では、災害発生時に被災地の医療を支援するため、避難者の健康を管理するために、DMAT・DPAT・DHEATなどに代表される保健医療支援活動従事者が、被災地において支援活動を行う。本研究では,発災直後から復興期にかけて保健医療支援活動従事者が、どのように組織され、どのような活動をどのように行なっているかを論じる。また、近年では、保健医療支援活動を支える情報技術も整備されつつあり、情報を利活用する災害時の保健医療支援活動についてマネジメントの視点を交えて説明する。
著者
野田 哲平
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1273-1276, 2023-12-20 (Released:2024-01-01)
参考文献数
9

聴覚障害はコミュニケーションの障害を続発させ, 社会参加を阻害する因子となる. 2001年5月, 障害の医学モデルと社会モデルを統合し得る枠組みとして WHO 総会において国際生活機能分類 (International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF) が採択された. 生活機能として心身機能・身体構造, 活動, 参加があり, 生活機能に影響を及ぼす要素として背景因子である個人因子と環境因子がある. この ICF を聴覚に当てはめると, 聴覚障害が学習やコミュニケーションなどの機能に影響を与えて活動制限を来し, さらに就学や就労に影響が出現する. これらは学業や仕事など社会活動への参加制約となる. この生活機能の問題と, その背景因子としての環境因子や個人因子それぞれに介入し, 制約や制限を軽減していくことが求められる. 社会モデルの考え方ではさまざまな角度から障壁を低減することを目指すが, 一方で聴覚障害者側も, 自分がどのように困っていてどうすれば解決・改善するのかといった建設的な意見を, 環境や社会に対して提示することが重要である. この能力や技術は「セルフアドボカシー」と呼ばれる. 一朝一夕に身に付くものではなく, 幼少期からの指導が重要である. 本稿では, ICF から見た聴覚障害と, セルフアドボカシー指導の試みについて述べる.
著者
范 麗霞 村尾 修
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.36, pp.681-686, 2011-06-20 (Released:2011-06-20)
参考文献数
19

On 12 May 2008, the severe earthquake struck Sichuan province in China, which claimed 69,226 lives and injured 374,643 people. Drawing a lesson from this extremely strong earthquake, also as an important respect of urban disaster prevention, the evacuation area construction was carried out in many places in China after the Wenchuan Earthquake. Based on the collection of latest construction information and a site survey about facilities and surroundings of existed evacuation area, this report introduces and analyzes the construction condition of emergency evacuation areas in central zone of Beijing. It also discusses on some problems found in the survey.
著者
松川 杏寧 髙岡 誠子 木作 尚子 柴野 将行 有吉 恭子
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-117, 2022-11-01 (Released:2023-04-26)
参考文献数
24

This study aims to explore the elements necessary to solve the problem of shelter quality in disaster-affected areas in Japan. The researchers identified twelve positive deviant good practice evacuation shelter management cases from four significant disasters over the past ten years. Interviews with twelve leaders were transcribed. Three disaster researchers from sociology, public health, and architectural backgrounds as well as two crisis management practitioners independently extracted key terms from the same transcript. Through the Affinity Diagram method, eight mutually exclusive super-conceptual clusters emerged. Five out of eight super-clusters corresponded with areas that were prescribed by the National government-issued Evacuation Shelter Management Guideline. Three unique super-clusters also appeared to be characteristic of the competent shelter operation.
著者
柴田 伊冊
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理 (ISSN:24328731)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-77, 2019 (Released:2019-12-10)

危機状態若しくは通常とは異なる緊張状態にあるときに言語に課される役割を、航空管制(英語)の場合と、日本の消防の場合の比較によって明らかにする。航空管制(英語)の場合が、極めて合理的な思考方法によって整理され、世界規模での標準化を行っているのに対して、日本の消防の場合は、基本形提示による言語の使用のほか、実際の運用では人的な経験の程度や知識の有無に依存する傾向がある。日本語について、その「曖昧さ」が言語として優れた面であるとする評価があるが、日本語の解釈が客観性の追究よりも、人的な要素を重視する方向にあるということが本論の結論になる。
著者
石原 凌河 田浦 亘 池上 将史 小味渕 悠希 寺西 亮太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1016-1023, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
19

本稿では、西日本にある簡易委託駅計28駅を事例として、外部団体による鉄道駅の管理と契約の実態について明らかにした。調査対象である簡易委託駅のうち、切符の販売業務を委託している団体を業種ごとに分類したところ、「基礎自治体直接雇用型」、「観光協会型」、「個人商店型」、「市民団体型」、「第三セクター型」、「交通事業者型」の6種類に分類することができ、鉄道事業者とは異なる多様な外部団体が鉄道駅の業務を担っている実態が明らかとなった。 <br />多様な団体が簡易委託駅の委託先となっているものの、鉄道駅の土地・建物は基礎自治体が所有したり、基礎自治体が駅舎の管理や切符の販売業務を外部団体への委託を働きかけたりするなど、鉄道駅の簡易委託化に関しては基礎自治体の役割が大きいことが確認できた。<br />以上の結果を踏まえて、分類ごとの鉄道駅の管理・委託の詳細と特徴を明らかにしながら、それぞれの団体に分類される要因と外部団体への委託に対して期待される効果と外部団体に鉄道駅の管理を委託する上での基礎自治体の役割について考察した。
著者
宍倉 正展 越後 智雄 行谷 佑一
出版者
一般社団法人 日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.53, pp.33-49, 2020-12-25 (Released:2021-07-11)
参考文献数
25

Marine terraces (probably Holocene terraces) divided into three levels of L1 to L3, representing the activity of off-shore active faults, have been developed along the northern coast of the Noto Peninsula, central Japan. To evaluate the mean vertical displacement rate and recurrence interval of off-shore active faults, this study tries to estimate the emergence age of terraces using an idea of time predictable model with the rate of relative sea-level fall. In the Saruyama-oki segment off the northwestern coast, assuming the ages of the L1 terrace to be 6,000 or 3,500 years ago based on previously reported peak age of post-glacial transgression, it is inferred that the mean vertical displacement rate is 0.87 mm/year or 1.49 mm/year, and recurrence interval is 2,000 or 1,200 years. However, the emerged sessile assemblages indicate the shortest interval of 300 years because the height and age suggest that two uplift events of 0.7 m and 0.8 m occurred in the 9th century and 12th to 13th centuries, respectively. In the Wajima-oki and Suzu-oki segments off the north-central to northeastern coast, the height distribution of the lower terraces indicates undulating deformation with two peaks, which is consistent with the height distribution of the late Pleistocene terrace. This suggests the characteristic displacement and its accumulation due to the fault activity of these segments. Under the same assumptions for estimating the age of terraces, the mean vertical displacement rate and recurrence intervals are 0.67-0.72 mm/year or 1.14-1.23 mm/year and 900-1,400 years or 500-800 years respectively. The age of emerged sessile assemblage indicates that the latest event of the Wajima-oki segment can be correlated to the historical earthquake of AD 1729.
著者
佐野 一成
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.293-299, 2018-12-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
5

目的:過去の取り組みから災害リハビリテーション(以下,リハ)支援におけるリハビリ専門家の役割について報告する. 方法:2011年に発生した東日本大震災の災害支援のために,多くのリハ関連団体が協働した.その災害リハ支援活動を継続するために,大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team: JRAT)が設立された.JRATはリハ専門職を対象とした全国研修会を開催し,各都道府県にJRAT組織を創設したことで全国各地での災害リハ支援が可能となった. 結果:JRATの支援対象は,特別な配慮を必要とする「CWAP: Children Woman Aged people Patients」と呼ばれる乳幼児,女性,高齢者,患者である.JRATは2016年の熊本地震において,避難しているCWAPの活動性を向上させることが,廃用症候群やエコノミークラス症候群などの新たな疾病の発生を予防できると考えた.そこでJRATは各地で避難所の環境改善を提案し,虚弱高齢者へは床からの立ち上がり方法を教えると同時に,活動性向上のために歩行運動や下肢運動を指導した. 結論:近年,リハ専門職による災害支援チームの組織化が進んだ.これからもJRATは災害リハビリ研修を通して人材を育成し,災害時には被災者の役に立ちたいと考えている.
著者
前野 悦輝
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.681-683, 2002-09-05 (Released:2019-04-05)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
城山 英明 村山 明生 梶村 功
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.149-158, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

米国の航空事故調査は, NTSBが主導し事故原因の究明と再発防止を図っている.NTSBは,関係当事者から専門的知見を集めるパーティー・システムに基づく調査,実効性の高い勧告システムを特徴とするほか,事故犠牲者や遺族に対する一元的支援も実施する.米国では,航空事故への責任追及の手段としては,個人への刑事訴追は極めてまれであるが,懲罰的損害賠償(民事責任)や高額の民事罰(行政処分)が,本来刑事の有する処罰機能を代替し,航空会社やメーカーなど組織への制裁手段として機能している.日本においても,米国の実態の全体像を踏まえた,航空事故調査体制の充実や法的責任追及のあり方に関する議論が行われることが期待される.
著者
天野 暁
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.774-780, 2020-09-18 (Released:2020-10-22)
参考文献数
32
被引用文献数
1

現在の脳卒中リハビリテーション領域の上肢機能関連研究においては,Fugl-Meyer Assessment(FMA)とAction Research Arm Testが重要な位置を占めている.両ツールともに,本邦における使用環境も整っており,通常の臨床業務での利用も推奨される.仮にFMAの実施時間が負担になるのであれば,短縮版FMAを導入することで,臨床業務とのバランスが取れる可能性がある.臨床研究デザインを評価視点で一段階引き上げたい場合には,適切な信頼性が確認された遠隔評価システムの導入を検討することによって,評価者盲検化を達成できる可能性がある.