著者
熊谷 晋一郎 向谷地 生良 加藤 正晴 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

当事者研究には、他の研究と同様、新しい知識を「発見」するための方法という側面と、生きやすさをもたらす「回復」の側面がある。まず発見については、自閉スペクトラム症のメカニズムに関して当事者研究の中で提案された「情報のまとめあげ困難説」を、他分野の専門家と協力しながら理論的に精緻化した。またその仮説を、発声制御、顔認知、パーソナルスペース、ボディイメージ、聴覚過敏や慢性疼痛などに適用して検証実験を行った。次に回復については、横断調査、追跡調査によって効果検証を行うとともに、当事者研究の方法をプロトコール化し、当事者主導型の臨床研究による介入研究を行った。
著者
大山 正
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.57-64, 1985-04-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
22
被引用文献数
14 8
著者
渡邊 裕 新井 伸征 青柳 陽一郎 加賀谷 斉 菊谷 武 小城 明子 柴本 勇 清水 充子 中山 剛志 西脇 恵子 野本 たかと 平岡 崇 深田 順子 古屋 純一 松尾 浩一郎 山本 五弥子 山本 敏之 花山 耕三
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.77-89, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
11

【目的】摂食嚥下リハビリテーションに関する臨床および研究は,依然として未知の事柄が多く,根拠が確立されていない知見も多い.今後さらに摂食嚥下リハビリテーションの分野が発展していくためには,正しい手順を踏んだ研究が行われ,それから得られた知見を公開していく必要がある.本稿の目的は臨床家が正しい知見を導くために,研究報告に関するガイドラインを紹介し,論文作成とそれに必要な情報を収集するための資料を提供することとした.【方法】日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌に投稿される論文は症例報告,ケースコントロール研究,コホート研究,横断研究が多いことから,本稿では症例報告に関するCase report(CARE)ガイドラインと,The Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology Statement(STROBE 声明)において作成された,観察研究の報告において記載すべき項目のチェックリストについて紹介した.【結果】CAREガイドラインについては,症例報告の正確性,透明性,および有用性を高めるために作成された13 項目のチェックリストを説明した.STROBE 声明については研究報告の質向上のために作成された,観察研究の報告において記載すべき22 項目のチェックリストを解説した.【結論】紹介した2 つのガイドラインで推奨されている項目をすべて記載することは理想であるが,すべてを網羅することは困難である.しかしながら,これらのガイドラインに示された項目を念頭に日々の臨床に臨むことで,診療録が充実しガイドラインに沿った学会発表や論文発表を行うことに繋がり,個々の臨床家の資質が向上するだけでなく,摂食嚥下リハビリテーションに関する研究,臨床のさらなる発展に繋がっていくと思われる.本稿によって,より質の高い論文が数多く本誌に投稿され,摂食嚥下リハビリテーションに関する臨床と研究が発展する一助となることに期待する.
著者
菊池 浩光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.105-138, 2013-12-25

古来から,心的外傷になるような衝撃体験は日常生活の中にあったはずで,神代の「古事記」の中にも外傷体験と思われるエピソードが見出される。本論では,わが国で人びとが心的外傷体験をどのように受けとめて対処してきたのかについて論じる。 明治期以降,日本は急速に近代化を進め,鉱工業や土木業が隆盛になり,労働災害後の,とりわけ頭部外傷を伴うさまざまな症状への対応が求められるようになった。すでに西欧で議論されていた心的外傷概念は,「外傷性神経症Traumatische Neurose」や「災害神経症Unfallsneurose」として移入された。これらの疾患は,現在のPTSD の近似概念と考えられてきたが,ヒステリーや器質的疾患が含まれるなど多義を擁して統一見解に至らず,また,多くの医家には賠償欲求が引き起こす心因性のものとして受けとめられていた。わが国では,戦前,戦後を通して心的外傷研究には関心が寄せられず,阪神・淡路大震災(1995)の発生で初めて注目を集めるようになった。
著者
椎名 ゆかり
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.146-152, 2014-04-01 (Released:2017-04-13)

アメリカの図書館でマンガが所蔵されるようになったのは近年のことである。長い間マンガ,特に「コミック・ブック」と呼ばれるマンガの刊行物は,「子供向けの低俗な読み物」として時には規制運動も巻き起こるほど批判され,図書館はむしろ「コミック・ブック」に対して批判する側であった。その図書館が21世紀に入り,マンガを積極的に支持し,所蔵対象にするようになっている。本稿では,マンガが図書館に所蔵されるようになった歴史的経緯を概観し,この変化の起こった要因の一部に,マンガが「グラフィック・ノベル」として再発見された点や日本マンガ人気があった点を考察することにより,アメリカ社会におけるマンガの文化ヒエラルキーの変遷を検証する。
著者
木村 信広 中尾 彰太 月木 良和 萬田 将太郎 松岡 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.455-461, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
6

心停止症例に対する機械的CPRは,『JRCガイドライン2015』で胸骨圧迫の継続が困難な状況などにおける質の高い用手胸骨圧迫の代替手段として活用を提案されるなど,とくに傷病者の移動時や救急車の走行中の不安定な状況下における質の高い胸骨圧迫の継続が可能なデバイスとして期待されている。筆者の所属する消防機関では,CPA傷病者に対する病院前心肺蘇生中の胸骨圧迫中断時間の短縮を目的に,機械的CPR装置を導入しており,今回,実搬送症例データを基に機械的CPRの有用性を検証した。2013年1月からの3年6カ月間に,当消防本部の救急隊が対応した内因性院外心停止症例172例を,機械的CPR実施群107例と用手的CPR実施群65例に分けて比較分析した結果,機械的CPR実施群では用手的CPR実施群に比し,自己心拍再開率および社会復帰率に有意差を認めなかったが,Chest Compression Fraction(CCF)と特定行為実施率が有意に高かった(CCF;79.7% vs. 73.1%,p<0.01,特定行為実施率;43.9% vs. 24.6%,p<0.05)。欧米と比較して早期搬送が優先されるわが国の病院前救護体制においては,CCF改善とマンパワー確保の観点から,機械的CPRは有用である。
著者
定延 利之 田窪 行則
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.108, pp.74-93, 1995-11-30 (Released:2007-10-23)
参考文献数
26

This paper attempts to construct a dynamic model of dialogic discourse. We posit a cognitive interface between language and knowledge-base. This interface contains pointers or indices which control the access path to the knowledge-base and the temporary memorybase set up for each dialogue session. Utterances in a dialogue can be seen as instructions for operations on this interface:registering, searching, copying, and inferring, etc. We examine the nature of these operations by analyzing Japanese interjections such as "eeto" and "ano(o)". The mental processes which those interjections reflect can be well described using the data-base and the working buffer. "Eeto" reflects that the speaker is securing the working space in the buffer, whereas "ano(o)" reflects that the speaker is extracting linguistic information from the data-base.
著者
秦 康範 前田 真孝
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.107-114, 2020 (Released:2022-07-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

我が国は2008年をピークに人口減少局面に入っており、長期的な人口減少社会を迎えている。本研究では、洪水による浸水リスクに着目し、全国ならびに都道府県別の浸水想定区域内外の人口および世帯数を算出し、1995年以降の推移とその特徴について考察することを目的とする。対象地域は全国の都道府県で、使用するデータは500mメッシュの国勢調査(1995年~2015年の5年分)と国土数値情報浸水想定区域データである。地理情報システムを用いた解析の結果、浸水想定区域内人口および世帯数は、1995年以降一貫して増加しており、区域内人口は1995年(33,897,404人)から2015年(35,391,931人)までに1,494,527人増加し、区域内世帯数は1995年(12,165,187世帯)から2015年(15,225,006世帯)までに3,059,819世帯増加していることが示された。都道府県別の浸水想定区域内の人口および世帯数は、1995年を基準とすると、2015年において浸水想定区域内人口は30都道府県が、浸水想定区域内世帯数は47都道府県が、増加していることが示された。区域内人口が減少している地域を含め区域内世帯数が大きく増加しているのは、浸水リスクの高い地域の宅地化が進んでいるためと考えられる。
著者
青木 敏 竹村 彰通
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.283-302, 2007 (Released:2011-05-01)
参考文献数
60
著者
SYO KUROKAWA
出版者
Hattori Botanical Laboratory
雑誌
財団法人服部植物研究所報告 (ISSN:00730912)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.721-738, 2006-08-30 (Released:2018-09-19)

Sixteen phytogeographical elements are recognized in the lichen flora of Japan on the basis of their world distribution patterns, namely 1) holarctic, 2) bipolar, 3) alpine, 4) boreal, 5) Beringian, 6) eastern Asiatic-North American disjunctive, 7) northeast Asiatic, 8) pantemperate, 9) Sino-Japanese, 10) endemic, 11) pantropical, 12) paleotropical, 13) Indo-Malayan, 14) Pacific, 15) circum-Pacific, 16) Australian. Representative taxa belonging to each element are cited and their distributions are discussed in detail.
著者
伊賀 聡一郎 鉄川 弘樹
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.387-400, 2023-11-25 (Released:2023-11-25)
参考文献数
37

In this paper, we explore how humanists and technologists can work together in the field of HCI (human-computer interaction) at a corporate laboratory. We analyze six research cases at Xerox PARC to identify key insights. Our findings reveal three main perspectives: (1) It was found that the core responsibility for setting the research problem space has shifted over time from technologist-driven to humanity-driven research. Moreover, during the course of technologist-driven research, a conceptual shift occurred by leveraging the results of humanity-driven research. (2) Some projects led by the technologist side involve a back-and-forth transition between technologist-driven research and humanity-driven research. (3) As collaboration between the two sides becomes more process-oriented, the role of humanists expands to include setting the project’s problem space and goals. Finally, we provide insights into the future prospects for collaboration between humanists and technologists in corporate research laboratories based on our discussion of these findings.
著者
島宗 理
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-57, 1996-08-05 (Released:2017-06-28)

どんなテクノロジーでもそれが活用されるためには、まず採用されなければならない。スキナーは行動分析学の基本的枠組みと、それを社会問題の解決に役立てるための指針を示した。これを21世紀に活かすためには、テクノロジー普及に関する研究と実践が欠かせない。本論文では普及に成功した行動的プログラムの例と失敗した例を分析し、普及に関する実験的・理論的研究と、さらなる実践についての提言を行う。
著者
阿部 純大
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.179-183, 2023-09-25 (Released:2023-10-17)
参考文献数
11

This study reports on the morphological variations in Nothoserphus afissae (Watanabe, 1954), which are important for species identification. Neglecting these characteristics could lead to misidentification and an underestimation of species diversity among similar species. In this paper, I provide a redescription and updated diagnosis of N. afissae.