著者
落合 哲行
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

電子系における量子ホール系やトポロジカル絶縁体における特異な輸送特性を光の系に移植し,これまでにない光輸送特性を実現するのが本研究の目的である。そのため、磁気光学効果や電気磁気光学効果をもつ物質からなるフォトニック結晶をターゲットとし、電磁場の第一原理計算などにより、系のもつトポロジカルな構造を明らかにした。その結果、様々な特性をもった、光カイラルエッジ状態や光ヘリカルエッジ状態を理論的に実現した。また、なぜそのような結果が得られるのかを系のもつ対称性や自由度の解析と、有効ハミルトニアンを用いて明らかにした。
著者
大津 起夫 宮埜 壽夫
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

心理学をはじめとする行動諸科学の研究においては,多変量統計データの統計的分析が,研究を進める上で重要であり,適用領域の拡大とともに分析対象となるデータの規模も急速に大型化してきている。本研究においては,近年進展の著しいコンピュータの並列処理機能(マルチコア化)を前提に,これまで心理統計および心理測定分野で開発されてきた統計モデル(特に,大規模な非線形の潜在変数モデル)の推定法の高速化をおこなった。また,大規模なテストデータを対象としてモデルの推定を行い,特に試験問題の潜在構造と難易度比較についての分析例をした。非線形因子分析モデルの推定においては,6コアPC上で,3倍超の高速化を実現した。
著者
時岡 晴美
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

育児支援型住宅の使い方には、緩い関係で繋がろうとする現代家族のライフスタイルと家族関係が現れており、共有空間は家族の貴重なコミュニケーション機会を保持する効果がある。近隣や地域との関係は、従来の地縁ではなく、家族をサポートする制度の利用や自発的な参加による諸活動を契機として生じている。このような21世紀型市民のライフスタイルを支援するための取り組みや制度を、複合的・多面的に整備する必要がある。
著者
森島 繁 村松 郁延 鈴木 史子 西宗 敦史
出版者
福井大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本年度は受容体の活性化後に見られる3分子からなるトランスポートソームの形成の分子機構を、Snapinの変異体を用いて明らかにしてきました。私たちは、α_1受容体と結合したSnapinとTRPCチャネルと結合したSnapinが1:1に小胞体膜上で結合することにより、このSnapinを2分子含んだ4量体トランスポートソームが形成されるという仮説をたてました。この仮説は、昨年度の実験で相当確からしさを増してきましたが、本年も以下の実験にて下記の結果を得ました。この結果は現在論文にまとめ、投稿を準備しています(すべての結果を記載することは出来ません)。1. 変異体Snapinを用いたSnapin-Snapin複合体(ダイマー)が形成される。今年度は、Snapinの変異体を用いて、昨年度と同様にSDS-PAGEによるダイマー形成の有無、bimolecular fluorescence complementation analysis (BiFC)法を用いて、Snapin-Snapin複合体ダイマーが形成されるかどうかを明らかにしてきました。Snapin-Snapin複合体に関与するドメインについては、膜内に入っている領域である戸考えられているN末であることが明らかになり、これはSnappingが小胞体膜上で会合するのに大変都合の良い構造であることが明らかになりました。2. α_1受容体との結合に関与するSnapin蛋白のドメインの同定、ならびに、TRPCとの結合に関与するSnapin蛋白のドメインの同定上記と同様の手法を用いて、Snapinと受容体、Snapinとイオンチャネルとの結合に必要なドメインも明らかにしました。また、変異体を作成し、Snapinとこれらのタンパクが結合出来ないと、ROCが起こりにくい事などを、Fura-2を用いたRatiometryなどによって明らかにしました。
著者
宮本 紀男 平間 淳司
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.植物葉面で観測される対傷害防御または応答シグナルの観測系(下記)を本研究に駆使できるように構築・整備完了した。(1)葉面極微弱生物フォトン発光計数システム(2)葉面微弱クロロフィル発光計測システム(3)自発性微弱AE(超音波放出)信号計測系(4)葉面電位信号計測系統 並びに(5)2室分離型カプセル状シャッタ/遮光暗室を製作した。2.上記(1)と(2)について、フォトン発光、クロロフィル発光の葉面2次元分布(イメージング)画像構成プログラムの立ち上げ調整を完了した。これにより、同一個体の任意の葉に加えた冷熱刺激が、冷熱刺激を加えていない同一個体の別の葉に伝達している兆候をクロロフィル蛍光強度変化により検出できることを突き止めた。3.植物個体内部の対傷害防御指令に対応するmRNAの発現を検知するための遺伝子解析システムの導入と同システムの立ち上げ、調整を完了した。このシステムを用いて害虫の加害を受けた稲と受けていない稲のそれぞれのmRNAの検出手法を確立した。この手法により、加害を受けた稲と受けていない稲のそれぞれのmRNAに有意差が確認された。上記2.3の結果から、植物個体内部の情報伝達機構や情報の内容を探知できる可能性が裏付けられた。植物同士の情報交換機構についても把握できる見通しが得られた。
著者
野村 孝徳 沼田 卓久 似内 映之
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コヒーレントディジタルホログラフィを用いた形状および反射特性の計測手法を提案した.低コヒーレントディジタルホログラム群から試料の形状および反射特性を求める手法を提案し実験的に実証した.さらに計測精度向上のため,精度低下の要因となるスペックル雑音の影響を低減する信号処理的アプローチを提案した.いずれもディジタルホログラム群から得られた再生画像群に対し信号処理を施した.局所統計量に基づく(1)局所平均法,(2)局所分散法と,光源のスペクトル分布に基づく(3)曲線近似法の3種類を提案した.(1)は他の再生画素と比較してスペックル雑音の輝度が極めて大きいまたは小さいことを利用したもの,(2)はフォーカス位置ではスペックルのコントラストが最大となることを利用したもの,(3)はある画素に着目した場合,再生画像群内でその画素の輝度の変化は光源のスペクトル分布に従うことを利用したものである.(3)に関しては光源のスペクトル分布をガウス分布とし非線形最小自乗法により曲線近似をおこなった.これらの手法を適用した結果,適用前と比較して形状計測の精度が向上した.特に(3)の手法が有効であり,適用前は30%程度あった,レーザー変位計による形状計測結果との差を数%以下にすることに成功した.ワンショット位相シフト法を実現する手法として波面分割法を2種類(検光子アレイを用いるものと位相子アレイを用いるもの)を提案した.前者は光学実験データを用いた模擬実験により,後者は偏光イメージングカメラ用いた実験的により,それぞれの有用性を示した.
著者
野川 春夫 萩 裕美子 山口 泰雄
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の目的は、スポーツイベントに参加するツーリストの消費行動と支出傾向を調査することによって日本人のスポーツ・ツーリズムの実態を明らかにすると共に、スポーツ・ツアーがスポーツイベント開催地にもたらす経済効果を考究することであった。具体的には、1993年2月末にフィールド調査(奥日光クロスカントリースキー大会)で収集したデータの分析を行い、その研究成果を平成5年度の日本体育学会(11月大阪府)において発表するとともに、鹿屋体育大学研究紀要第11巻に『スポーツ・ツーリズムに関する研究II』として掲載される。また、1992年11月に実施した日本最大のウォーキングイベントである日本スリーデーマーチ(埼玉県東松山市)の調査データを分析・検討し、国際保健体育レクリエーシヨン協議会(ICHPER)第36年次世界大会(横浜市開催:1993年8月18〜22日)に『A Study of Japanese Sport Tourists』として発表し、Proceedingsに掲載されている。さらに、日本ウォーキング研究会第3回定例発表会(1993年9月28日:東京)において発表した。1993年11月には全国レベルの生涯スポーツイベントである日本スリーデーマーチの追跡調査を実施し、本助成金の研究成果報告書『スポーツ・ツーリズムと経済効果に関する研究』(印刷中)の参考資料として発表することになつている。生涯スポーツイベントよりもエリートスポーツイベント的な全国レベルの大会としてトライアスロンジャパンカップイン佐渡大会(新潟県佐渡島:1993年9月)を遊び、トライアスリートのフィールド調査を実施し、データの分析・検討を行い、前述の「奥日光クロスカントリースキー大会」と「日本スリーデーマーチ」の研究成果と併せて、月刊社会教育に『地域におけるスポーツイベントの動向』として発表し、さらに日本のスポーツ・ツーリズムの実態とその経済効果をまとめ、研究成果報告書『スポーツ・ツーリズムと経済効果に関する研究』(印刷中)を作成した。
著者
國武 國武
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ブルーベリー葉におけるアントシアニン生合成において、光照射時の温度や光源が大きな影響を与えることが明らかとなった。また、葉においてはシアニジン系のアントシアニンが主として生合成され、アントシアニン生合成の制御機構が、果実とは異なる可能性が高いことが分かった。cDNA サブトラクションおよび degenerated PCR により 9 個のアントシアニン生合成関連遺伝子を単離することに成功した。アントシアニン生合成遺伝子の多くは、24 時間程度の強光照射により、発現が増加した。アントシアニン生合成機構は、光ストレスからの防御のため、素早く反応している可能性が高い。
著者
加藤 文昭
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は電子スピンを有するラジカル高分子を合成、磁性電極とラジカル高分子からなる単層素子での磁気抵抗効果の発現およびそのスピン多重度との相関を見いだすこと、またラジカルを太陽電池等の有機電子デバイスへ応用する事を目的とする。本年度は、スピン量子数が2/2であるラジカル分子および非磁性金属電極からなるスピンバルブ素子を作成し、極低温磁場中での電流電圧特性評価を行った。ラジカル分子の安定な酸化還元能に着目し、色素増感太陽電池(DSSC)の電荷輸送媒体として適用、各種電気化学、光化学測定より色素還元能や電子交換反応速度を評価から、DSSC発電特性向上の指針を見いだした。以下実施した具体的実験事項を示す。1)ラジカル分子(S=2/2)によるスピンバルブ素子を作成、SQUID磁束計内にて外部磁場中での抵抗値変化測定した2)異なる反応性や酸化還元電位を有するラジカル分子(S=1/2)をDSSCの電荷輸送媒体として適用、特性を評価・比較した以上の実験から次の結果を得た。ラジカル分子を中間層、ITOおよび金を電極としたスピンバルブ素子において最大で2%の負の磁気抵抗効果を発現した。分子内スピン相互作用の有無により輸送される電子のスピン散乱過程が変化し、磁気抵抗効果が発現したものと考えられ、ラジカルによるホール輸送過程が電子スピン方向により制御・維持されることを示した。また、ラジカルを用いたDSSCでは、ラジカルの酸化還元電位と相関し開放電圧が向上した。反応性の増大にともない変換効率が向上し、DSSCの特性向上の指針を示した。
著者
神川 龍馬
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまでにEFLのみを有すると考えられてきたカタブレファリス類において、Poombia sp.はEF-lalphaを有することを逆転写PCRによって明らかとした。本種のEST解析をその後に行ったところ、本EF-lalpha配列が同定されたがEFL配列は同定されなかったことから、本種はEF-lalphaのみを有することが強く示唆される。本解析によってカタブレファリス類においても、EFLおよびEF-lalpha遺伝子は混在しており、このような分布を示すに至った両遺伝子の複雑な進化過程が予想された。カタブレファリス類はクリプト藻類やゴニオモナス類と近縁であるとされている。クリプト藻類はEFLのみを有し、そしてゴニオモナス類はEFLのみを持つ種、EF-lalphaのみを持つ種、両遺伝子を持つ種が混在することが明らかとなっていることから、カタブレファリス類・クリプト藻類・ゴニオモナス類への進化過程で遺伝子の独立した喪失が起こったことが強く示唆される。また、in vitro実験系において通常のEF-lalphaと同様に、珪藻EFLタンパク質がGTP加水分解活性にともなうタンパク質合成能があるかを再検証することを試みた。EFLの機能解析に供するサンプルを作成するため、昨年度と異なり、C末領域にタグを追加したEFLリコンビナントタンパク質を大量発現する大腸菌を作成した。C-末端領域に結合させたHQタグを利用してカラム精製を行った。このリコンビナントタンパク質がGTPおよび蛍光アミノアシル-tRNAに結合するか調べた結果、本リコンビナントタンパク質はGTPおよびアミノアシル-tRNAに結合することが分かった。本研究成果は、追試実験が必要であるものの、この段階で特別研究員を辞退したため、追試および条件最適化の検討を行うことはできなかった。
著者
越後 成志
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

当研究科で開発した骨再生材料であるoctacalcium phosphate(OCP)と豚皮膚由来のアテロコラーゲンとの複合体は自己修復不可能と言われる骨欠損へのインプラントで骨架橋を形成したが、組織学的所見で、僅かではあるが母床骨と異なっており、形成された骨が歯科矯正的な歯の移動に際し障害を与えることが考えられた。そこで、イヌに人工的な顎裂を形成し、顎裂部へ骨再生材OCP/Collagen埋入後、イヌ自身の骨髄穿刺液を播種した群と播種しない群とで骨形成を比較することを目的とし実験した。その結果、骨再生材料(OCP/Col)へ骨髄穿刺液を播種した群の骨形成がよりよい骨形成が得られた。
著者
隅田 有人
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

近年、炭素-炭素結合切断反応に焦点を当てた有機合成反応の開発がさかんに行われるようになっている。しかしその多くは比較的結合解離エネルギーの小さいsp^2炭素もしくはsp炭素間を切断するものであり、最も結合解離エネルギーが大きいsp^3炭素-sp^3炭素結合切断反応の例はわずかしかない。また、これまでニッケル触媒による炭素-炭素結合切断反応の報告例は他の遷移金属に比べて多いとは言えない。本研究では、ニッケル触媒によるsp^3炭素-sp^3炭素結合切断を伴う新規有機合成反応の開発を目指し、以下の研究成果を得た。まず、トリメチレンメタン等価体(TMM)は環状化合物を合成する上で非常に有用な四炭素源として広く知られている。その発生には高温等の厳しい条件が必要であったが、パラジウム-TMM等価体を効果的に発生させる方法が報告された。一方、ニッケル触媒によるTMM発生法はメチレンシクロプロパンを用いた手法に限られており、その際パラジウムとは異なった反応性を示すことが知られている。そこで、ニッケル触媒による分子内にカーボナートを有するホモアリルアルコールを用いたTMMの発生法の確立を目指した。これにより、斬新なTMM発生法を提案することができる。また、前年度の結果を受けて、ニッケル触媒によるアリール亜鉛反応剤とアリルマロン酸エステル誘導体の反応について検討を行った。前者では種々の検討を行った結果、目的を達することができなかった。一方後者では、基質であるアリルマロン酸エステルのsp^3炭素-sp^3炭素結合切断を伴いながら、アリール亜鉛と反応し、アリルアレーンが収率よく得られた。これにより、単純なアリルマロン酸エステルも基質として用いることが出来ることが明らかになった。これは今後飛躍的な進展が見込める大きな研究成果であると確信している。
著者
猪子 香代 西園 文 大澤 真木子 石井 かやの
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

子どもの抑うつは、学校の友人関係が、中学生年代では関係があると考えられる。また、「いじめ・いじめられ尺度」を作成し、また、家族、友人などとの関係における喪失・不安・怒りを引き起こすような「抑うつ誘因エピソード尺度」を作成した。#いじめ・いじめられいじめと自殺の関連が、マスコミで話題になり、一般の中学校においても、関心の高いところとなった。心理の暴力について、加害者、被害者、それに暴露された子ども、いずれも援助の対象と考える。今回は、これらの3つの側面からの質問紙を作成し、一般の中学生の生徒を対象に抑うつとの関連を検討した。共分散構造分析において、「いじめられ」の潜在因子は抑うつに関連があった。しかし、「いじめ」体験のこどもは「いじめられ」「いじめの目撃」体験と関連がある。「いじの目撃」体験のある子どもは「いじめられ」に関連がある。#抑うつについては、生活の中の出来事について、それをどのように認知するかということで、感情や情動に違いがみられるといわれている。抑うつの誘因になると考えられるエピソード尺度を作成し、一般中学校を対象に抑うつとの関連をみたところ、友人関係の不安、家族の言い争いが抑うつとの関連がみられた。いじめの問題も含めて、子どもたちの友人関係への不安への対処をどのようにするかということが重要と考えられる。子ども自身の特性を理解できるとともに、それぞれの子どもに対応したマニュアルを作成している。
著者
林 文男
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究材料としてカワトンボとミヤマカワトンボを用い、精子の量と質の比較を行った。2種ともに,メスの体内には,交尾嚢と受精嚢と呼ばれる2つの精子貯蔵器官を有している.一方,オスの交尾器の先端には,交尾嚢の中の精子を掻き出す器官(耳掻き状の反転部)と受精嚢の中の精子を掻き出す器官(ブラシ状の側突起)が備わっている.ミヤマカワトンボでは,交尾嚢,受精嚢ともに多くの精子が貯えられており,精子の生存率は交尾嚢,受精嚢ともに高く維持されていた.これに対し,カワトンボでは,受精嚢が著しく小さく,ここに精子を貯えているメスの割合は少なかった.また,受精嚢内に精子が貯えられている場合でも,精子の生存率は交尾嚢に貯えられている精子よりも低い傾向があった.つまり、カワトンボでは,受精嚢は精子の貯蔵器官として利用されていないと考えられた.それにもかかわらず,カワトンボのオスの交尾器には,ミヤマカワトンボと同様ブラシ状の側突起が発達していた.従来,オスの側突起は受精嚢の中の精子を掻き出すための器官としてのみ考えられてきたが,他の機能(交尾嚢内で交尾器の位置を確保したり,支持したりする機能など)を有する可能性があり,今後の検討が必要である.ミヤマカワトンボでは,交尾中および交尾直後の精子の挙動を明らかにするために,ハンドペアリング法によって交尾を行わせ,途中で交尾を中断させる実験も行った.その結果,交尾嚢内の精子については,オスによってほぼ全てが掻き出されることがわかった.しかし,受精嚢内の精子については掻き出しは不充分であった.受精嚢は左右の細長い袋からなるが,多くの場合,オスは片方の袋の精子しか掻き出せなかった.つまり,メスの生殖器のうちの受精嚢は,オスによる精子の掻き出しを防ぐ機能を有していると考えられた.
著者
渡辺 学 高田 博行
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

日独両言語における若者語および若者語研究の最新状況を文献調査や国際レベルでの情報収集を通してつねに把握しながら、とりわけ携帯メールのテクストに現れた若者語の特性と相違点を明らかにすることを試みた。具体的には、アンケート調査に基づく日独携帯メールテクストコーパスの作成と対照比較分析により、まず共通点として話し言葉の特性が書き言葉に浸透していく様子が観察された。他方、ドイツ語においては、文字(言語記号)中心のいわば「単線的コミュニケーション」につながる表現形態が目立つのに対して、関西方言の関東方言との偏差をも視野に入れて収集を進めた日本語の文例を分析した結果、顔文字・絵文字が頻繁に出現するほか、(疑似)方言語法、古語語法、幼児語法(ベビートーク)も現れることが分かった。これらの語法に限定するかぎり、日本語ではメールテクストにおいて日常語の「話し言葉性」からの意識的シフトが行われることがあり、ドイツ語ではそれがないものと暫定的に推論することができる。これらの特徴はひとり言語現象としてとらえることができるのみならず、言語行動のあり方の特性として把握可能であるばかりか、全角入力が基本となる日本の携帯メールで顔文字・絵文字が頻出するなど、メディアや(メディア)テクノロジーのあり方とも関連していること、それらの規制を受けていることも明らかとなった。メディアジャンルとしては、研究分担者が電子掲示板に注目して、その言語的特徴を調査したことが研究の裾野を広げるのに大いに役立った。さらに、資料として「日独若者語対照基礎語彙表」をまとめることができた。この語彙表は、日常語にまでおよぶ日独の若者語語彙の意味機能的な対応づけの試みであるとともに、収集した携帯メールテクストのコーパスとも合わせて今後の日独若者語対照研究の基礎資料として裨益するものと思われる。
著者
和久屋 寛
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

一種の信号変換ツールとみなすことで、様々な分野で自己組織化マップ(SOM)が利用されている。ここでは、シーズ重視の立場から、(1)新しいアーキテクチャの構築、(2)新しい信号処理技術の開発、(3)工学的な応用に取り組んだ。その結果、時系列信号処理や部分データへの対応、発散式学習などの技術を生み出し、オンライン手書き文字認識、アニメーション作成、観光情報解析ツール、携帯情報端末への実装などの研究成果を得た。
著者
糸長 浩司 藤岡 泰寛 藤沢 直樹
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

URの団地建て替えに伴う具体的な団地(神奈川県茅ヶ崎市浜見平団地)での、団地再生と周辺住宅地を含めた地域再生の総合的な支援研究である。子どもの遊び空間の実態分析より、緑地空間の継承の意義を明らかにした。また、新しい集会施設とガーデンの計画と管理運営を団地自治会と協働することで、団地及び地域コミュニティ再生のための拠点空間として意義、支援グループの大学教育的視点からの継続性の必要性が指摘できた。
著者
西浦 和樹 田山 淳 沖林 洋平 池田 和浩 澤邉 裕子
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、創造的問題解決における心理メカニズム解明を目的として研究を実施した。本目的を達成するために、ブレインストーミング法(BS法)を代表とする集団的思考の方法を気軽に体験し、学習することのできるカードゲームを開発し、ストレス軽減と認知的対処方略を理解することのできる心理データの取得を行った。BS法がアイデア創出だけでなく、抑うつ感の軽減を促進すること、制御欲求の高い被験者は状況をより改善するように努めていることを確認した。
著者
五十嵐 誠一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

東アジアおける市民社会によるトランスナショナルなネットワークの実体を実証的に把握し、それらが東アジアの地域主義と東アジア共同体の形成過程でいかなる役割を果たしてきたのかを明らかにした。
著者
武内 博信
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ジルコニアにおける歯肉上皮細胞の接着はpolish、grindingおよびblasting処理に関わらず差はなく、細菌感染を考慮するとジルコニアアバットメントの表面はよりスムースな方が適していることが示唆された。また、ジルコニアおよびチタンの細菌除染に関しては、クロルヘキシジン、電解中性水およびプラスティックチップ超音波スケーラーは効果的であった。しかしチタンにおいては電解中性水による腐食が懸念された。一方でジルコニアは化学的除染にも安定であることが示された。