著者
石橋 賢一 城 謙輔 作部 保次 影山 幸雄 鶴岡 秀一
出版者
独立行政法人国立病院機構(千葉東病院臨床研究センター)
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

アクアポリン11(AQP11)ノックアウトマウスの解析と、線虫のアクアポリン(AQP-CE1~AQP-CE11)の解析を中心におこなった。AQP11がないと嚢胞腎になって腎不全で生後1ヶ月で死ぬ。嚢胞ができる前に近位尿細管に空胞ができるがこれが小胞体を中心とした拡張であることが電顕でわかっていたが、その原因として細胞内オルアネラのpH異常が関与している可能性があきらかになった。これは近位尿細管細胞の初代培養でノックアウトマウス由来のはエンドソームのpHの低下がよわくなっていたことからの類推である。また、ノックアウトマウスの異常がAQP11の直接作用によることが、抗体による組織染色で近位尿細管細胞のみが染まり、また細胞膜ではなく細胞内が染色されることから類推される。まだ空胞変性から嚢胞形成に至る過程が不明である。また培養株細胞(HEK細胞))にGFPでラベルしたAQP11を一過性に発現させると、やはり細胞膜には発現せず、細胞内にとどまっているが、小胞体マーカーと一致して発現しており、in vivoの発現様式に類似していた。空胞ができる1週令の腎臓のRNAのマイクロアレイを行い2倍以上変化する遺伝子を10同定し解析中である。腎臓皮質に限局した嚢胞腎の症例はみあたらなかった。生き延びた稀なノックアウトマスは子孫をつくれるが、精巣の萎縮、とくに精細管上皮の細胞数の減少がみられた。線虫のアクアポリンすべてについてプロモーターの下流にGFPをつけて発現細胞の同定をおこなった。オーバーラップした発現が観察された。また11個のアクアポリンすべてについてRNAiによる遺伝子破壊をおこなったところフェノタイプの異常は認められなかった。オーバーラップしたアクアポリンによる代償で異常が認められなかった可能性もあるので2重。3重の遺伝子破壊を計画している。
著者
西村 知紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

価電子帯端に強いフェルミレベルピンニング(FLP)を生じる金属/ゲルマニウム(Ge)界面においても、Geの結合する(非金属)元素や界面近傍のGeの構造の変調が大幅にピンニング準位をシフトさせた。このことは界面及び界面近傍のGe原子の結合構造がピンニング準位と相関していることを示している。一方界面への極薄絶縁膜の挿入は膜種によって大幅に異なる緩和の挙動を示しており、金属/Ge界面のFLPの強さの起源は単純な界面準位もしくは金属からの波動関数の染み出しによる描像では難しく、より複合的な効果を考える必要があることを示している。
著者
岸本 章宏
出版者
公立はこだて未来大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

探索アルゴリズムはコンピュータサイエンスにおける基本的な手法であり、重要な応用分野の一つとしてゲームがある。ゲームの利用者の観点からは、探索アルゴリズム(ゲーム木探索アルゴリズム)が高速にかつ正しく問題を解けることが要求される。ところが、これまでのゲーム木探索アルゴリズムは、探索効率を落としたくないために正当性を保証しないアルゴリズムを利用するか、または解の正当性を保証したいために何千倍も遅い非効率なアルゴリズムを用いるかというどちらかの妥協を行ってきた。本研究では、このような探索効率と正当性の問題を解決するのが目標である。平成18年度の研究では、探索アルゴリズムの正当性を理論的に証明でき、効率的であることが分かったので、平成19年度は、研究目標にある通り、探索アルゴリズムのさらなる効率化を行った。囲碁とチェッカーを探索の題材に選び、コンピュータ上に開発したアルゴリズムを実装し、実験的に効率の良いアルゴリズムであることを示した。本研究の大きな成果として、チェッカーが引き分けであることを証明し、Science誌に掲載され、2007年度の科学的進歩の第10位にランクされた。また、最新の関連研究を調査し、本研究との比較を行い、開発した手法が優れていることが分かった。さらに、囲碁を題材にして、ランダム・サンプリングを用いた方法と効率に関する研究を開始した。ランダム・サンプリングを行う対象としては、囲碁を用いた。ランダム・サンプリングと木探索を組み合わせると非常に有効であることが、実験的に分かった。
著者
太田 裕之
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では,「環境や社会や後生への配慮」といった,ある種のモラリティが重視されつつある時代のニーズに応えるため,人々のモビリティにおけるモラリティの向上,および,共同利用(シェアリング)の普及に資するための,自動車会社からなすべき社会コミュニケーションのあり方を把握し,望ましいクルマ社会のありかたと,その状態への移行戦略を模索するための基礎的知見を得ることを目的とし,特に,カーシェアリングやエコカーを題材とした,受容性把握,受容性向上施策,受容後の意識やライフスタイルの変化についてアンケート調査等を通じ検討を行った.(1)社会コミュニケーションがモラリティ商品の購買行動や受容行動に及ぼす影響把握既存の単体製品(エコカー)およびカーシェアリングを題材に上げ,前年度に全国の免許保有者を対象としたインターネット調査を実施した.今年度はこれら両製品の現状における受容意向,および受容性の向上に資する要因を取りまとめ論文・学会発表を行った.また,上述の調査結果を踏まえ,カーシェアリングの加入促進を目的とし,オリックス自動車(株)の協力の下,実際にカーシェアリングが実施されている地域において,周辺住民や事業所を対象とした現場実験を実施し,加入促進に資する条件を取りまとめた.(2)モラリティ配慮商品の購入が人々の意識・ライフスタイルに与える影響把握モラリティ配慮商品とし,既存のエコカーを題材に上げ,新規買換購入直後6ヵ月以内の自動車保有者を対象とし,購入直後6ヵ月以内,および,その後8ヵ月経過後において,走行距離の変化を調査した.結果,エコカー購入者の方が,走行距離がより上昇するとの結果が得られた.また,開発段階の一人乗り電動式小型可搬式モビリティを題材に上げ,実際に社会に導入された場合における影響を心理学的な観点から分析した.
著者
渡邉 慶
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

計画初年度および2年度の研究の結果、ニューロン活動記録実験(本実験)に用いる行動課題として、Dual task paradigm(二重課題法)と呼ばれる刺激提示方法を用いることが本研究の目的に最も適していることが明らかになった。二重課題とは、被験者に同時に二種類の異なる課題を行わせる実験手法である。この時、二重課題を構成するそれぞれの課題の正答率は、個々の課題を単独で課した場合の正答率より低下することが、二重課題干渉(Dual task interference)として知られている。本研究で用いた二重課題では、サルに、視野内の異なる場所に配置されたリング状の視覚刺激の輝度の微細な変化を検出(注意課題)させる傍らで、視野内の5カ所の内のいずれかに提示される別の視覚刺激(正方形の一様光ディスク刺激)の場所を記憶させる(短期記憶課題)という二種類の課題を同時に課した。行動データ解析の結果、2頭のサルにおいて、二重課題干渉が起こることが示された。即ち、両課題を同時に行った二重課題場面における各課題の正答率が、注意課題と短期記憶課題を別個に行った場合の正答率に比べて、顕著に低下した。更に、サル前頭連合野から単一ニューロン活動を記録・解析した結果、2頭のサル両者において、前頭連合野のニューロン活動が二重課題干渉を示すことが明らかになった。即ち、短期記憶課題を単独で課した場合に記録された記憶関連活動が、同一の課題が二重課題の一部として行われた場合には、顕著に減衰することが示された。更に、二重課題場面における記憶関連ニューロン活動の減衰の大きさは、行動レベルで観察された二重課題干渉の大きさと相関していることが示された。従って、行動レベルで観察された二重課題干渉という現象は、前頭連合野の単一ニューロンの挙動によって説明されることが示された。本研究の結果は、多くの心理現象の説明に幅広く用いられてきた「認知資源」という心理学的概念に、神経科学の立場から直接的な証拠を提示するという意義を持つ。
著者
石垣 健二
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

「間身体性」とは,人間の関係性の基盤であり,それは「自己と他者」の身体の間で相互理解を可能にする「身体の働き」であると同時に,そこで得るところの「身体的な感じ」である.体育やスポーツにおける身体運動の実践のなかでは,「身体的な感じ」を得ることによって,「身体的な感じ」としての「われわれ」が成立するのであり,このことが間身体性の育成にほかならない.したがって,学校教育でおこなわれる体育やスポーツの身体活動は,子どもたちにとって殊に重要である.今後,体育学における間身体性の研究は,他者の身体運動を記述する方法論の構築とその方法による具体的な「身体の働き」の抽出が必要となるだろう.
著者
中浜 健一 森田 育男
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

破骨細胞分化を司る接着分子として我々が発見したMac-1(CD18/CD11b)が結合する相手分子について研究を進めた。マウスの骨髄由来の単核球細胞をM-CSFとRANKLで刺激し、破骨細胞分化を誘導する実験系において、先ず中和抗体を用いた実験を行った。Mac-1の相手分子として考えられたICAM-1(CD54)またはICAM-2(CD102)の中和抗体(ラットモノクローナル抗体)を用いた結果、ICAM-2を中和したときのみは骨細胞分化が抑制された。さらに、他のICAM-2の中和抗体(ヤギポリクローナル)を用いても同様の結果が得られたこと、また中和抗体の効果に用量依存性があったことから、Mac-1が結合する相手分子はICAM-2であると考えられた。次にマウスの骨髄由来の単核球細胞をフローサイトメーターで分析した結果、CD19陽性のB細胞と思われる細胞およびTCRbeta陽性T細胞がそれぞれ20%、1%存在していることが確認され、それらの細胞ではICAM-2の陽性率は70%以上であった。破骨細胞分化におけるリンパ球系の細胞の関与を排除するために、リンパ球を欠くマウス(SCIDマウスおよび対照となるマウス)の骨髄由来単核球を用いて破骨細胞分化に及ぼすICAM-2中和抗体の効果を調べたところ、破骨細胞分化は野生型の骨髄由来単核球と同程度に抑制することを確認した。以上の実験結果から、破骨細胞の分化にはは骨細胞前駆細胞が発現するMac-1とICAM-2が重要な働きをしていることがわかった。現在はICAM-2とMac-1の結合による細胞内の情報伝達機構、特にSykおよびAktのリン酸化について詳細に検討している。
著者
永松 裕希 上村 惠津子 小島 哲也 田巻 義孝 三枝 夏季 松川 南海子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 学習障害を中心とした発達障害児の読み能力に焦点を当て, その改善を図るための評価ツールおよび援助プログラムを開発することを目的として実施された。研究内容は3つから構成され, 第一が, 読みにおける眼球運動を測定する簡易型の眼球運動評価ツールの標準化, 第二が, 簡易型眼球運動評価ツール(DEM)の妥当性の検証, 第三が読み能力の学年推移と影響因の検討, および読み障害児に対してのプログラムの開発と, その有効性の検証であった。
著者
森 仁志
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

現代社会では、スポーツのナショナル・チームが国際試合で繰り広げるパフォーマンスやプレースタイルは、国民を表象する記号として機能する。本研究の目的は、ラグビーを事例として、代表選手の身体を通じて「日本らしさ」が語られ意味づけられるプロセスを提示・分析することにある。具体的には、日本と英国の国際試合をめぐる言説を両国のメディアから収集することによって、ラグビー「母国」と「後進国」のヘゲモニックな関係性のなかで、記号としての「ジャパン」(日本代表)=国民の表象が、いかに生成・流通・消費されてきたのかを明らかにする。
著者
向江 頼士
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

1937年,K.Wagnerによって5頂点からなる完全グラフK5をマイナーに持つグラフの構造が特徴付けられたが,6頂点以上の完全グラフに関しては何も知られていない状況であった.ところが,2003年にB.Moharたちは,「グラフが閉曲面に埋め込める」という位相幾何学的な条件を付加することにより,「射影平面上の5-連結3-representativeグラフはK6をマイナーに持つ」という定理を証明した.この結果により,K6をマイナーに持つためのある程度意味のあるグラフ構造が記述されたが,まだ十分条件を与えるに留まっていた.そこで本研究では,曲面上のグラフを「三角形分割(各面が三角形であるような曲面上の単純グラフ)」に限定した.B.Moharたちの定理よりも条件は強くなっているが,射影平面,トーラス,ダブルトーラス,クラインの壷,種数3の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示している.これらの結果を皮切りに,完全グラフをマイナーに持つ曲面上のグラフ構造とその関連についての研究を行った.今年度の研究結果の一つとして,種数4の向き付け不可能な閉曲面上の三角形分割がK6をマイナーに持つための必要十分条件を示した.この結果から「種数4の向き付け不可能な閉曲面の全ての5-連結三角形分割と全ての4-representative三角形分割はK6をマイナーに持つ」という系を得られた.また,その他の閉曲面上のグラフの研究として,四角形分割から偶三角形分割への拡張可能性についていくつかの結果が得られた.
著者
山口 泰雄 武隈 晃 野川 春夫 杉山 重利 大沼 義彦 高橋 伸次
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度は、昨年度の研究成果を整理し、本年度の研究計画を立てた。海外調査は、「北米班」と「オセアニア班」に分かれて、イベント調査と団体調査を実施した。北米調査においては、障害者の国際スポーツ統括団体である「スペシャルオリンピック」の事務局を訪ね、ヒアリング調査と関連資料を収集した。加盟国は150ヶ国に上り、100万人が活動している。また、オーランドで開催されている「全米シニアゲームズ」のフィールドワークを行った。会場は、ディズニーワールドの中のディズニースポーツセンターで、センターに登録されたボランティアが大会のサポートを行っていた。カナダにおいては、厚生省の「ヘルス・カナダ局」を訪ね、フィットネス活動に関するボランティアの概要をヒアリングした。また、フィットネス活動の広報団体である「パーティシパクション」の事務局を訪ね、「トランスカナダ・トレイル2000」事業におけるボランティアの活動概要の資料を収集した。「オセアニア班」は、ニュージーランドの政府機関である「ヒラリーコミッション」を訪ね、ボランティア指導者のキャンペーンやスポーツクラブにおけるボランティアのヒアリング調査と関連資料を収集した。オーストラリアにおいては、政府機関である「オーストラリア・スポーツ委員会」を訪ね、VIPプログラムとボランティアを含めた「アクティブ・オーストラリア」キャンペーンの資料を収集した。2000年2月には、カナダのMcPherson教授を招聘し、研究分担者が集まり、平成11年度における研究成果の研究報告会を行った。同時に、わが国におけるスポーツボランティア活動の定義、分類、および今後の振興方策を議論・整理した。
著者
友田 勇 石田 卓夫 新井 敏郎 鷲巣 月美
出版者
日本獣医畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

競争馬,種牡馬,種牝馬,未調教2歳馬の赤血球におけるグルコーストランスポート活性と解糖酵素活性を比較した.血糖値およびインスリン値は各群間で差はなかった.グルコーストランスポート活性,ヘキソキナーゼ(HK),ピルビン酸キナーゼ(PK),グルコース-6ーリン酸でヒドロゲナーゼ(G6PD)活性については種牡馬,種牝馬,未調教馬群の間に特に差はなかったが,調教を積んでいる競争馬ではグルコーストランスポート活性は平均5.8nmol/min/mg proteinであり,他の群の値の2倍以上,HK,PK活性も2-3倍と著しく増加していた.競争馬のG6PD活性は他の群のそれに比べ若干増加傾向が認められたが,有意な差はなかった.以上のように調教を積んでいる競争馬では血糖値,インスリン値などはとくに変化しないにも関わらず,赤血球のグルコーストランスポート活性および解糖系酵素活性が未調教馬に比べ,著しく増加していることが明らかとなった.これは調教に伴う基礎代謝の亢進によりグルコース利用が高まっていることを反映したものと推察された.犬の正常な乳腺細胞と乳腺腫瘍細胞におけるグルコーストランスポート活性およびサイトソル酵素活性を比較した.乳腺腫瘍細胞のグルコーストランスポート活性は正常乳腺細胞の約2倍,腫瘍細胞のHK,PK活性は正常細胞の3-4倍,乳酸脱水素酵素(LDH)は約2倍であった.これらのことから,乳腺腫瘍細胞ではグルコースの取り込みやその利用が正常乳腺細胞に比べ著しく亢進していることが明らかとなった.また,悪性度の高い腫瘍では,LDHアイソザイムのV型活性が優位になる傾向が認められた.GLUT1のC末端の15アミノ酸残基の合成ペプチドでウサギを免疫し,抗GLUT1抗体を作製した.この抗体を用い,ヒト,犬,猫,豚,馬,牛,羊の赤血球膜に存在しているGLUT1の検出を試みたところ,全動物種にGLUT1抗体と特異的に反応するバンドが認められた.
著者
堀 昌平 FERRANDIZ Romero M.E. FERRANDIZ ROMERO MARIA ENCARNACION MARIA ENCARNACION FERRANDIZ ROMERO
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では制御性T細胞(Treg)分化と機能発現に関わる抗原特異性とTCRレパトワを解明することを目的とし、Treg由来核移植ES細胞クローン1D2から樹立した1D2-TCRβマウスを用いて以下の研究を行った。(1)Treg由来TCRの特異性の解析:1D2クローンがTreg由来であることを証明してその特異性を明らかにするためにRAG欠損マウスの骨髄細胞に1D2 αβTCRを発現させるレトロウィルスを感染させ、これを放射線照射したRAG欠損マウスに移入してTreg分化を解析した。その結果、この1D2 αβTCRを発現する細胞から確かにFoxp3+ T細胞が分化することを見出し、このクローンがTreg由来であることを明らかにした。(2)Tregおよびaborted TregのTCRレパトワ解析:最近我々は、Treg分化の過程で一部のFoxp3+ T細胞がFoxp3発現を失ってヘルパーT細胞へと分化する可塑性を示すステージがあることを見出し、このような細胞をaborted Tregと名付けた。Tregとaborted Tregの関係、そしてそれらの特異性を明らかにするために、1D2-TCRβマウスにFoxp3^<EGFPCre>, ROSA26^<RFP>, TCRCα+/- allelesを交配により導入し、ここからTreg(EGFP+), aborted Treg (EGFP-RFP+), non-Treg (EGFP-RFP-)を単離してVαレパトワを解析した。その結果、これらのレパトワは多少の重なりはあるものの全体として異なっており、ある特定の特異性を持ったFoxp3^+ T細胞のみがTreg分化においてabortされることを見出した。
著者
伊吹 禎一 樋口 勝規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

卒直後歯科医師臨床研修での教育利用を目的とした、パソコンで行うシェードテイキング(歯の色選択)のトレーニングプログラムを作成し、その効果を検討した。研修歯科医のシェードテイキングの学習状況を調査したアンケートに基づき、歯の色に関する基礎的知識を問う課題と、シェードガイド(歯の色選択で使用する色見本)を複数提示し色を比較する課題で構成されたウェブシステム構築を行った。本システムにて実習の結果、知識と色の三属性のひとつである明度識別能の向上がみられ、臨床研修教育への利用が有効であることが示唆された。
著者
小山 英恵
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

ミューズ教育は、20世紀前半ドイツの学校音楽教育の指導的理念である。これまで、このミューズ教育の思想を実践に移したブリッツ・イェーデ(Fritz Jode, 1887-1970)の音楽教育論およびイェーデに対する批判的な見解に焦点を当てて研究してきた。今年度は、イェーデが自身の新たな音楽教育論を実践するために構想した音楽学校構想、および教師教育論について研究を進めた。まず、イェーデの構想により1923年に創設されたシャルロッテンブルク青少年音楽学校のカリキュラムについての研究を進めた。青少年音楽学校の理念は、すべての人々に「共同」の精神や「生彩に富む」の内面の「生」の表れとしての能動的な音楽活動を可能にさせることを目指すことにあった。この理念を実現するためにイェーデは、未来の音楽家や音楽教師の育成を担う音楽大学附属の青少年音楽学校を構想し、あらゆる社会的階層の子どもたちを生徒として呼び集めた。この学校のカリキュラムは、音楽授業と授業外の活動の2つからなっていた。次に、イェーデの青少年音楽運動における教師教育について、1925年に実施された民衆音楽学校のための教師教育講座および1926年以降に実施されたベルリンの国民学校教師のための学校音楽講座に関する2つの史料を取り上げて検討した。この教師教育の目的は、「音楽への能動的な参加」によって「生」や「愛における共同体」を人々の内面にもたらすという青少年音楽運動の理念を音楽教育において実現する教師の育成にあった。その教育内容の特徴は、音楽の専門的能力や教育者としての能力だけでなく、音楽のもつ人間形成の力を基盤とする青少年音楽運動の教育観や音楽観を育成しようとする点にあった。授業方法の特徴は、参加者が共同で考えを練り上げ新たな価値を生み出していくという「作業共同体」の方法論にあった。この方法論は、自らの価値判断において教育における課題解決を行う自律的な教師を育成しようとするものであった。
著者
今山 延洋 山下 晃功 橋本 孝之 糸山 景大 長谷川 雅康 永田 萬享 畑 俊明 竹野 英敏 尾崎 士郎 澤本 章 大橋 和正 余湖 静也 山口 晴久 土屋 英男 宮川 秀俊 安東 茂樹 安孫子 啓 田口 浩継 山本 勇 紅林 秀治 長澤 郁夫 吉田 誠
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

教師を目指す人に対して、技術科教員指導能力認定試験を創設し、3回実施した。日本で初めての試みである。試験は年1回実施され、教員養成で必要な修得基準に基づいて出題し、教員として身につけておくべきレベルの筆記・実技・模擬授業の能力を一次・二次試験によって判定した。3回の試験の実施の経験をもとに、今後の恒常的な実施の見通しを得るとともに、修得基準を見直した。
著者
鎌田 真弓 加藤 めぐみ 内海 愛子 田村 恵子 飯笹 佐代子
出版者
名古屋商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本課題では、1)オーストラリアにおける太平洋戦争の記憶の特徴と日豪の非対称性を明示し、2)そうした記憶から抜け落ちている、豪北部・東部蘭領インドネシア・パプアニューギニアでの現地住民や女性の戦争体験を掘り起こすことによって、3)国家や軍隊の「戦争の記憶」に回収されない戦争体験を提示し、地域史として共有可能な「戦争の記憶」の再構築を試みた。
著者
隅野 行成
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LHC実験で粒子の性質を精密測定するためのweight function法を提唱した。特徴は、(1)粒子の崩壊先に含まれるレプトンのエネルギー分布だけを用い、hadronizationモデルやジェットに関する不定性などの影響が少ない、(2)理想的には粒子の速度分布に依存しないため、パートン分布関数やinitial-state radiationの不定性の影響が小さい。まずヒッグス粒子の質量決定への応用可能性を示した。現在、トップクォークの質量決定法を開発している。また、高次輻射補正計算のためのアルゴリズムを開発した。これを用いて重いクォーコニウムのスペクトルに対する3次補正計算を完成させた。
著者
鶴田 英也
出版者
梅花女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

・日本心理臨床学会の自主シンポジウム(波多江洋介企画)において、これまでの研究の外観を発表した。具体的内容としては、バウムに対する2種のパースペクティブ、すなわち垂直・水平軸のパースペクティブと柄と地のパースペクティブについて、その発想のもととなったいくつかのモチーフとともに紹介し、さらに臨床例を提示した。・昨年度に根っこ描写ありなしの二枚法で収集したバウムについて、根っこ描写あるいは地平線描写と描き手のしっくり感についての連関について統計的検定を行った。結果、根っこなしの方がしっくり感があるものとして選ばれやすいという結果が得られた。地平線描写としっくり感との連関は見られなかった。また根っこを描いたバウムからより病的な様相を強く感じるということが多く、根っこ描写のもつ特性を得られたことは有意義であったが、それだけに根っこ描写をこちらから指示することの責任の重さを痛感させられる結果であった。なお、この内容については日本箱庭療法学会にてポスター形式で発表した。・再度沖縄にてバウムを収集した。根っこ描写、地平線描写について統計的処理を行った後、梅花女子大学大学院心理臨床学専攻の大学院生数名とケースカンファレンス形式で個々のバウムを検討した。その内容については心理臨床関連の学会誌に投稿発表する予定である。・京都の鞍馬寺から貴船神社にいたる山道にある通称"木の根道"を調査した。木の根道とは、根っこが地表に張り巡らされており、その昔源義経が修行の場としたともされている場所であるが、その一種異様な雰囲気は、沖縄の見事な板根をもつサキシマスオウノキを訪れた時に感じた感覚とも似ているようだった。特に根っこに関するバウムイメージを膨らませる貴重な体験だった。
著者
山本 芳弘
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究課題1として、住宅用太陽光発電を効率的に普及させるための太陽光発電買い取り制度について研究した。社会厚生や電気料金負担の観点からは、設置家計が電力販売量を増やすためにどの程度電力消費を抑制するかが鍵になることを明らかにした。研究課題2として、廃棄物系バイオマス利活用事業の効果的な運営形態について研究した。効果的な運営形態は、投入するバイオマスや生産物の種類等に関連することが示唆された。