著者
阿部 泰記
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究において地方劇・地方志・善書などの文献資料と包公廟を実地調査した結果、従来からの研究を以下のように体系的に整理することができた。権力者の悪行から庶民をまもったことで有名な北宋時代の包拯に対して、後世の民衆は語り物・演劇などの分野で物語を創作してその遺風をしのんだ。物語では包拯の豪毅な性格を特異な風貌で描写し、包拯が非道を挫いて弱者を救済する話は時代が下るとともに膨張し、民衆は祠廟を建立して包拯を祀り、包拯は今日にいたるまで民衆の心の中に生き続けている。民衆は知謀と超能力を有し天地を共鳴させる人物を救済者として期待した。民衆が好む物語には貞節な妻、孝行な息子、書生の出世などの類型があり、包拯はその中で主人公を救済する重要な役目を果たした。後に包拯の物語は百話の規模で創作され、小説『龍図公案』や地方劇など今日までさまざまな物語が語り継がれている。特に石玉崑が語った説書『龍図公案』は公案に武侠を参入させて大流行し、四護衛を従えて銅〓で悪人を斬首する豪腕な包拯像を民衆に印象づけた。各地に林立する包公廟には、包拯と一緒に四護衛・銅〓が奉祀されている。包拯の祭祀は文化大革命以後とだえたと報告されていたが、信仰の自由が認められた今日では全国的に復活する傾向にある。本研究で調査した図書館は京都大学・東京大学・早稲田大学・東洋文庫・中国国家図書館・中国戯曲研究所・首都図書館・湖北省図書館・漢川市文化館・湖南省図書館・湖南師範大学・上海図書館・淅江省図書館・広東省中山図書館・順徳市図書館・台湾中央研究院・台湾国家図書館・政治大学である。また実地調査した包公廟は、台湾高雄県・台北市・雲林県・香港・マカオ・広東省番禺市・肇慶市・同市硯洲・湖南省長沙市・濁陽市・醴陵市・攸県・平江県・湘陰県・宜章県・江西省萍郷市・万載県・宜春市・河南省准陽県など約50カ所である。
著者
伊澤 宏毅 刑部 正博 守屋 成一 土田 聡
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.205-208, 1996-08-25
被引用文献数
5 16

交配実験で得られたチュウゴクオナガコバチ(Ts)とクリマモリオナガコバチ(早期羽化型(TbE)および晩期羽化型(TbL))の種間雑種におけるマリックエンザイム(<i>ME</i>)の分離パターンを明らかにするとともに,この遺伝的指標をもとに野外での種間雑種出現の可能性について検討した。<br>1) TbL×TsのF<sub>1</sub>はすべて<i>SS</i>であったが,TbE×TsのF<sub>1</sub>の<i>ME</i>はすべて<i>FS</i>であった。これらのことから,TbEとTsの交配雑種については<i>ME</i>により判定できると考えられた.しかし,TbLとTsとの交配雑種は<i>ME</i>では判定できなかった。<br>2) 安芸津および大栄個体群のO/T値はすべて1.3以下で,<i>ME</i>もすべて<i>FF</i>であった。一方,つくば個体群では種々のO/T値を示す個体が混在しており,<i>ME</i>は<i>SS</i>, <i>FS</i>および<i>FF</i>の3タイプに分かれ,TbEとTsの交配雑種の存在が確認された。
著者
佐橋 謙 吉田 靖 田中 芳男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.769-776, 1993-10-31
被引用文献数
1

表題の現象について,計約50箇所の岡山県下の気象官署および公害監視網の資料により解析した.その結果,当時岡山県下には,2回の突風が観測された地域,強風は1回だけでそのとき風向変化は伴っていない地域,1回の強風だが風向変化が伴った地域,の3種類の領域があったことがわかった.また,強風であるにもかかわらず僅か2〜3km離れた地点で,まったく違う時間変化を示す例がいくつか見いだされた.
著者
馬場 二夫 森田 茂 杉田 たき子 石綿 肇
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.51-53, 1995-10-01

陶磁器製の食器からの鉛とカドミウムの溶出濃度の調査と,アメリカ食品医薬局(FDA)により提案された鉛の規制値案への適合率を調べる目的で,以下の実験を行った.溶出条件は,わが国の現行試験法(国際標準化機構,ISO,でもほぼ同一条件)である4%酢酸を用いて25℃で24時間の条件で実験をおこなった.鉛およびカドミウムの測定はICPによった.実験に用いた83種の市販試料のうち,鉛の溶出は44試料で,また,カドミウムの溶出は26試料で認められた.試料内側(食品と接触する面)から溶出した鉛の平均値±S.D.,最高値,最低値はそれぞれ0.48±1.32, 8.78, 0.00 μg/cm^2であった.カドミウムでは,それぞれ0.01±0.03, 0.25, 0.00 μg/cm^2であった.鉛の溶出は,ゆう薬のある54試料中16試料で,また,ゆう薬の無い29試料全てで認められた.平均値は,前者で0.04±0.18 μg/cm^2,後者では1.28±2.00 μg/cm^2であった.カドミウムの溶出は,ゆう薬のある54試料中9試料で,また,ゆう薬の無い29試料中17試料で認められた.平均値は,前者で0.00±0.01 μg/cm^2,後者では0.03±0.05 μg/cm^2であった.本実験に用いた83試料中1試料で規格値(抽出液中5 ppm)を超える7.37 ppmの鉛が溶出した.これらの結果は,約20年前に同一溶出条件の下で行われた調査結果と比べ,1/10またはそれ以下であった.以上の結果を,わが国の現行規格(ISOの規格案も同じ)に従って分類してTable 3に示した.違反事例の1試料を除き,最高値でも規格値よりかなり低濃度であった.また,深さが2.5cmを超える73試料のうち57試料(78%)では鉛の溶出がFDAの規格案である0.1 ppm以下であった。
著者
馬場 謙介 南 俊朗 伊東 栄典
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.60-67, 2009

インターネットやそれを利用したサービスが普及するに合わせて図書館資料も従来の紙資料からディジタル資料へと比重を移してきている.インターネットの利用が非常に進んだ国としてよく知られている韓国の図書館はこのような変化の中でどのようなサービスを行っているのかを調査するために2010年3月初旬ソウル市内にある先進的な図書館を訪問した.本稿は我々の訪問先である恩平区立図書館,正讀図書館,ソウル大学図書館,および韓国国立図書館などにおける図書宅配サービスや図書電子化に関する調査結果を報告し,また,それを踏まえて次世代の図書館サービスの在り方を考察する.
著者
上田 麻理 藤本 一寿
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.301-308, 2010-07-01
被引用文献数
2

雨天時は,降雨による環境悪化によって視覚障害者が屋外歩行時に危険に晒されているという意見が聞かれる。視覚障害者も雨天時に屋外を歩行する機会が少なくないことから,雨天時の視覚障害者の歩行の安全確保は重要な課題であり,その解決は急務である。本研究は,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備の第一歩として,視覚障害者のための雨天時の歩行環境の問題点を明らかにするために,視覚障害者と歩行訓練士を対象に三つのアンケート調査を実施した。その結果,雨天時は,"傘にあたる雨音"等の降雨騒音によって,視覚障害者が歩行時に利用している聴覚情報の聴取が妨害されていることが分かった。そこで,雨天時の環境騒音レベルを測定してみたところ,降雨量がやや強い雨の状態で晴天時に比べ15dB以上高かった。このことから,視覚障害者の雨天時の歩行環境整備として,聴取妨害となる降雨騒音の低減が必要であると結論した。
著者
高橋 良二 RODRIGUEZ BENITEZ E.
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

乾燥、高温等の環境ストレスによって大豆の種子に裂皮(種皮の亀裂)が発生し、外観品質が悪化して商品価値が低下する。特に、納豆、煮豆等、種子の形で流通する商品においては裂皮の発生は致命的であるため実需者から高度抵抗性品種の育成が強く求められているが、年次によって裂皮が多発する。本研究では、難裂皮性品種と易裂皮性品種の交雑後代を供試し、裂皮抵抗性のQTL解析を行うことにより選抜マーカーを開発する。難裂皮性品種「エンレイ」と易裂皮性品種「ナスシロメ」とのF_6系統(100個体、各30個体)を圃場で栽培し、個体ごとに開花日を調査した。開花始40日後に上位半数の莢を摘除し、裂皮の発生を促した。成熟期に種子の裂皮指数(裂皮無:0〜甚:4)を1粒ごとに評価し、個体および系統の難裂皮性を調査した。さらに、成熟期、莢数、子実重等の生育特性を評価した。MAPMAKER/EXP. ver. 3.0を用いて連鎖地図を作成し、QTL Cartographer ver. 2.0を用いて、composite interval mappingによって開花まで日数、成熟まで日数、裂皮指数、莢数、子実重、100粒重のQTL解析を行った。その結果、成熟まで日数を支配するQTLが1個見いだされた。主茎長を支配するQTLが2個見いだされた。種子数、子実重、100粒重を支配するQTLが、それぞれ1個、1個、3個見いだされた。難裂皮性を支配するQTLが2個見いだされた(D1 b連鎖群のACI2とM連鎖群のACI1)。ACI1とACI2は、昨年度にF_3系統でも検出され、年次・世代間で再現性が認められた。ACI1とACI2は、早晩性や粒大を支配するQTLとは異なった位置に見いだされ、それらのQTL近傍のマーカーを用いることにより、早晩性や粒大とは無関係に難裂皮性を選抜できることが明らかになった。
著者
石田 久之
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大学の訪問等により、支援の組織化状況とその課題、学内各種組織の役割分担、基本的な支援ポリシー等を調査した。大学での支援は三つに分けられる。第一に、学習や生活で、自身をコーディネートできる能力をつけるための支援。次に、情報保障である。三番目が出口支援であるが、これは単なる就活支援ではなく卒業後の生き方へのアドバイスも含むものである。学内リソースを有機的に結びつけ、学生毎にこれらを遂行することが求められている。
著者
矢島 正見 山本 功
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.74-94, 1994
被引用文献数
2

1. Aim The purpose of this paper is to study how a kind of comics called "YUUGAI (harmful) comics" became the social problem, and how petitions which ask for the revision of the Tokyo prefectural ordinance were presented to the assemblies. 2. Methods We investigated them by two methods. First, we collected the petitions presented to the Tokyo Metropolitan Assembly or to the 23 ward assemblies. We analized them: by whom, when, how were they presented? A tatol of 156 petitions were collected. The main groups which represented the petitions were CHOUNAIKAI (neighborhood associations), SEISHOUNEN'IINKAI (juvenile committee), women's groups, PTAs, and volunteer probation officers. Second, we interviewed the representatives of the petitioners. A sample of 32 persons were interviewed. We asked them their knowledge and opinons about "YUUGAI comics," and how they presented their petitions. 3. Findings (1) Only three types of compositions were found among these petitions. These were not written independently but copied from one another. And we suppose the original composition was the notification given by the Liberal Democratic Party. (2) The movements were developed not on their own initiatives. They were asked to petition by the other groups concerned. Most of them were police and the organs concerned. So, we conclude that the "YUUGAI comics" problem was developed through the network of police, neighborhood associations, PTAs, and so on. The petitions for the revision of the ordinance were directed by police and the organs concerned.
著者
Lee Tae-Young Park Young-Youn
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.299-323, 1996-06-25

本論分は, シベリア高気圧からの吹きだしに伴って朝鮮半島上でしばしば発生するメソスケールトラフの実態を事例解析し, さらに3次元数値モデルを用いてその形成メカニズムを調べた結果を報告する. 1986年2月14日〜15日における事例解析によれば, 14日の朝からトラフの形成が始まり, 午後になると, はっきりしたトラフが形成された. この日の半島上の地上気温は通常より高かった. 翌日の早朝には, トラフは減衰する傾向を示したが, 日中には再び発達し, 中国大陸上の高気圧が東に抜けるまで持続した. 数値シミュレーションは, メソスケールトラフの時間発展の様子や空間的な広がりなど, 解析結果に見られた主な特徴をかなりよく再現した. 条件をいろいろ変えて行った数値実験の結果から, 1986年2月14日〜15日に観測されたメソスケールトラフは朝鮮半島の山岳による力学的効果と半島の陸地とそのまわりの海洋との熱的効果の重なったものであることがわかった. 熱的効果とは, 寒候季に半島上が比較的暖かい日の昼間は, 陸上の顕熱フラックスが半島周辺部の海面上顕熱フラックスよりかなり大きくなることを意味する. 半島北部で発達するトラフは, 主に北部山岳の力学効果と熱的効果によって形成される. 一方, 半島南部で発達するトラフは, 主に海抜高度の高い地域の熱的効果及び半島上と周辺部の海面上の熱的コントラストによって形成される.
著者
湯浅 友幸 白山 晋
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.29, pp.1-7, 2010-12-09

ネットワーク上の現象は大局的構造から説明されることが多く,局所的な見地から分析されることは少ない.本稿ではノードの性質に注目した新たな分析手法を提案する.提案手法では自己組織化マップ (SOM) を用いたノード分類に基づくシミュレーションの可視化と分析を行う.そして,2 つのシミュレーションモデルを用いた実験により提案手法の有効性を示す.Most researches concerning the influence of network strucuture on phenomena on the network are carried out based on relationships between global statistics of the network structure and characteristic properties of those phenomena, even though the local structure has a significant effect on dynamics of some pheomenon. In this paper, we propose a new analysis method for some phenomena on networks based on the categorization of nodes. First, local statistics such as the average path length, the clustering coefficient for a node are calculated and are given to each node. Secondly, the nodes are categorized by Self-Organizing Map (SOM) and are grouped. Characteristic properties of some phenomenon are visualized into the grouped nodes. From some numerical results using two simulation models, the validity of our method is examined.
著者
林 行夫 柴山 守 土佐 桂子 長谷川 清 高橋 美和 笹川 秀夫 小林 知 増原 善之 小島 敬裕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

タイ、ラオス、カンボジア、西南中国(西双版納・徳宏)での全9調査区画において771寺院の施設構成と位置情報、5500の出家者の移動データを収集し、全データを統合しタイでの移動経年データを地域情報学的手法(Hu2マップシステム、ラティスとオートマトン)で時空間解析し他区画への適応を試みた。文献から寺院と出家者の移動をデータベース化したミャンマーをふくめ地域間比較を可能とする『マッピング・データ集成I』(+1DVD)を作成した。

2 0 0 0 OA 口訳論語詳解

著者
野中元三郎 述
出版者
富山房
巻号頁・発行日
1920
著者
西田 ひろ子 西田 司 玉置 泰明 富沢 寿勇 根橋 玲子 SMITH Wendy A. SMITH Wendy SMITH Wendy. 石川 准
出版者
静岡県立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1.フィリピンおよびマレーシア進出日系企業における対人コミュニケーション摩擦についての質問票調査において、フィリピンでは、18社524名(フィリピン人従業員448名、日本人従業員76名)、マレーシアでは、26社637名(マレーシア人従業員484名、日本人従業員153名)の協力を得た。2.現地従業員の日本人に対する、また日本人の現地従業員に対する「コミュニケーション上の困難度」についてのインタビュー調査を実施。フィリピンでは14社、日本人20名、フィリピン人42名、マレーシアでは15社、日本人22名、マレーシア人48名の協力を得た。3.上記(1)の本調査協力企業のうちフィリピンでは15社において、またマレーシアでは17社において労務管理の実態調査(質問票及びインタビュー)に対して協力を得た。4.マレーシア人と日本人の勤労倫理、労働観念比較調査を実施。マレーシア進出日系企業1社を事例研究対象として選び調査を実施した。5.マレーシア進出日系企業における参与観察。日本人とマレーシア人の間に生じているコミュニケーション上の問題点を文化人類学的視点から調査した。6.マレーシア人及びフィリピン人の退社後の交友関係についての質問票調査を実施した。7.フィリピン及びマレーシア進出日系企業における、日本人上司と現地従業員部下の間の対人湖謬ンケーション摩擦調査を実施した。特に日本人上司のリーダーシップが現地従業員に受け入れられているかどうかを調査した。
著者
野見山 一生
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.13-23, 1982-01-20
被引用文献数
1

Cadmium has been thought to be carcinogenic for these ten years. The present author reviewed 98 papers on its carcinogenicity. Ten papers describing epidemiological studies on cadmium workers, re-evaluated by the present author, do not derive a solid conclusion that cadmium is carcinogenic. However, there still exists a certain probability that cadmium is a weak carcinogenic substance in the human, because of some data on chromosomal aberrations in cadmium workers, tumorigenesis at the site of cadmium injection in animals, and Leydig cell tumor formation in animals given subcutaneous injections of cadmium.