著者
石井 光夫 鈴木 敏明 倉元 直樹 荒井 克弘 夏目 達也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

・本研究は,中国,韓国,台湾,香港,シンガポールなど,いわゆる中国文化圏に属する東アジア諸国・地域を対象に,大学入試の多様化という視点から,その制度や改革動向を調査分析したものである。・我が国が過度の受験競争などへの対策として「選抜方法の多様化」「評価尺度の多元化」を方針の下に大学入試改革を展開してきた経緯から,同じような問題を抱え,改革を試みているこれらの国・地域の大学入試と我が国のそれとを比較検討することによって,我が国の入試改革に参考となる視点を得ることが本研究の狙いであった。・本研究では,実地調査や文献調査によって1)一般選抜における選抜方法・判定基準,2)特別選抜(推薦入学や我が国のAO入試に類似する大学独自の選抜等)における選抜方法・判定基準,3)高等学校との連携協力(広報活動,高大連携活動)のそれぞれの項目を柱に,政策方針,制度改革等のあらましを把握したのち,とくに「入試の多様化」という観点から,改革の背景や経緯,改革の具体的措置,個別大学の入試実態等を明らかにするとともに,各国・地域における共通性や特徴,問題点などを整理分析した。・報告書においては,とくに入試多様化を精力的に進める中国,韓国,台湾について,その共通点と相違点を比較分析し,我が国入試改革にとっての新たな視点をいくつか提示した。結論としては,我が国及びこれらの国・地域では同じような動機・目標を持って入試の多様化を進めており,多様化の度合いにおいては我が国は進んでいるとみられるものの,学力の担保,公平性確保のための情報公開になお課題をもつことを指摘した。また,我が国の入試改革にみられない「教育格差・社会経済的に恵まれない層への配慮」といった観点を韓国や台湾などの例によって指摘した。
著者
与謝野 有紀 林 直保子 都築 一治 三隅 一百 岩間 暁子 佐藤 嘉倫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済資本、人的資本、文化資本に続く第4の資本としての社会関係資本の形成プロセスと機能について、社会的諸資源、近隣ネットワークや社会参加といったライフスタイルとの関連で理論的、実証的に明らかにしようとするものである。手法としては、質問紙調査、実験、コンピュータ・シミュレーション、フィールドワークをもちいた。また、2004年1月に面接調査法による調査を行い、ランダムにサンプル1000ケースに対して707ケースの回収をみた。日本での社会関係資本に関する本格的な面接調査は本調査が最初であり、日本の社会関係資本の状況を知る上での基礎データを提供するとともに、他の手法と補完しながら、以下の知見を最終的に得た。(1)社会関係資本の主要素として一般的信頼感に焦点を絞って解析した結果、信頼の生成メカニズムに関する現行の主要理論(「信頼の解き放ち理論」)のプロセスは、日本では一切確認されない(2)一般的信頼感の生成のためには、近隣ネットワーク、自主的な参加を前提とするクラブへの参加など、中間集団に対するコミットメント関係の形成が重要であり、これらの中間集団において醸成された個別的な信頼感は、他者一般に対する信頼感を形成する重要な基礎となる。また、この知見は共分散構造分析によるデータ解析とコンピュータ・シミュレーションによって同時に確認されており、頑健性が高い。(3)社会関係資本の形成のための投資と回収のプロセスを「社会関係基盤」概念を提出することで定式化し、さらに近畿調査データを用いて、この点を実証し、社会関係資本のセーフティーネットとしての機能と階層固定化機能の両者を確認した。(4)社会関係基盤については、フィールドワークからも投資、回収概念の高い適用可能性が確認された。これらの研究成果については、論文、著書のほか、日独先端科学技術会議(学術振興会・フンボルト財団共催)や本研究を中心に企画された第39回数理社会学会シンポジウムで報告されている。
著者
上川 一秋
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

成果は、社会資本理論を、修正するかたちで発展させたことである。学校組織において、教師間の連帯は、生徒を教育的によい方向に導くことができる、という仮説を米国の2次的データをもちいて検証した。また日本の教師とのインタビューをも参考にした。社会資本理論によれば、個人間の連帯は情報の交換を促し、個人間の信頼関係を強める。学校という場においては、教師間の連帯が強いほど、教師が生徒ともつ関係の効果が強い、という仮定から本研究はスタートした。結果は逆であった。同僚関係の薄い教師ほど、生徒をよい方向に導いていることを分析が示した。いわゆる「一匹狼的」な教師(同僚とあまり話をしない教師)ほど、生徒の問題行動を制御し、また大学進学率をも高めている様子がデータによって示された。文献調査は、教師の仕事は生徒との関係が主であり、同僚関係を密にすることが教師の関心事ではないという知見を与えた。多くの教師にとって、生徒とのかかわりが仕事の楽しみである、という「教師という職業の特徴」を理解することの重要性が分かった。またデータ分析によると「一匹狼」的教師ほど、・関わりのある生徒に対しては強いコミットメントをもっている。・生徒と関わるさいに、同時に親やカウンセラーともかかわる率が高い。・教えがいがあり見込みのある生徒を選んで、コミットする度合いが高い。米国、日本両方で、学校改革が盛んななか、教師はこれまで以上に同僚同士の協力関係を結ぶことを求められている。例えば、ティームティーチングや、共通の基準に基づいたカリキュラムを作成するうえで、教師は同僚とともにすごす時間が長くなることが考えられる。とすれば、学校改革自体が教師という職業に与える影響をも視野にいれた研究が必要となるであろう。従来、学校改革研究は同僚間協力が絶対善としがちである。確かに、教える技術を磨くための同僚関係は重要であろう。しかし、生徒に人間的に働きかけ、生徒の進路や生活指導をするうえでは、個人の教師が、個人の生徒にコミットしつつ働きかけることが有効なのかもしれない。本研究の理論的貢献は、社会資本論を学校という場の理解に応用するさいに、教師文化の特質を理解することの重要性を訴えた点である。
著者
住友 元美
出版者
奈良女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、主に、近現代日本の高等教育における女子大学の位置づけに関して、以下の研究を行なった。I、1、戦後に新たな家政学樹立の必要性を輪じていた今和次郎の「家政論」およびその後の「生活学」研究について史料解読を行なった。2、戦前・戦後に展開された女子高等師範学校および女子専門学校による大学昇格運動について史料の分析を行なった。3、戦後に誕生した新制大学における「一般教育」導入の意義について史料調査し、先行研究の検討を行なった。以上から、戦後の新制大学創設期に学問として独立していく(させられていく)家政学と今が提唱した「新しい家政学」とを比較検討して、戦後家政学の確立と女子大学誕生との関係を明らかにし、戦後女子大学(「家政学部」を女子大学の特徴として掲げる大学)が、戦後新制大学の規範的存在となる可能性を持つものであったことを示して、日本高等教育における女子大学の意義について言及した。(「戦後日本の高等教育における女子大学誕生の意義-今和次郎の「家政論」をてがかりに-」)II、Iに引続き、今の「家政論」を主なる史料として、戦後日本の復興(民主主義化)と新たな家政学樹立および「一般教育」との関係について検討した。(論文作成中)
著者
熊野 七絵/石井 容子/亀井 元子/田中 哲哉/岩澤 和宏/栗原 幸則 石井 容子 亀井 元子
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.1, pp.175-188, 2005-03-15
被引用文献数
1

国際交流基金関西国際センターで実施されている外交官・公務員日本語研修では、職務に寄与する口頭運用能力の習得に重点が置かれており、その評価のため外交官・公務員研修独自のオーラルテスト開発が進められてきた。本稿では、評価の妥当性を検証すべく行った平成14年度の最終オーラルテストの分析結果から、初級レベルの外交官・公務員日本語研修で目指すべき日本語運用能力や評価のあり方について考察する。分析の結果、初級レベルであっても、基本的な文型に専門性の高い語彙を入れ込み、結束性ある段落を構成することで、ある程度まとまった専門的な内容を伝えられること、会話の開始や展開のキーとなる表現の使用が職務上の場面に対応するために重要な要素であることがわかった。あわせてこの分析結果をもとに行った評価基準改訂について報告する。
著者
柴田 明穂
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、国際法理論と環境条約交渉のインターフェイスを分析することを通じて、形成途上にある条約制度がそれを基礎づけ枠づける国際法の理論的支柱とどのように関連づけられたのかを、動態的に解明することを目的として行われた。その結果、一般国際法理論たる責任(liability)概念が「学者外交官」の主張により環境条約交渉に反映されることもあったが、現場の交渉状況を反映した政治的判断により、条約解釈に関する一般国際法との整合性を排して特別法を創設する国際法の断片化現象が顕著であることが分かった。
著者
伊藤 教子 初田 亨
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.558, pp.271-277, 2002
被引用文献数
2

Lake Chuzenji in Nikko is one of the famous foreigners resort that became prosperous from Meiji Era in Japan. Several cottages are now on existing, but recently Lakeside area is more famous sight seeing spot than foreigners resort. The foreigner cottage area of Chuzenji lakeside is formed around the minister and the diplomats from opportunity, the 21st year of Meiji, and it grows to be a scale that it is called with the foreigner cottage zone in opportunity, the 30th year of Meiji. An embassy cottage was built, too, and a cottage had the character that moved the foreigner of the minister and the diplomats upper classes to the center except for the individual cottage. "Tokyo Angling and Country Club" of the "Marunuma Fishing Club" rest which aimed at the amusement which was characteristic of the foreigner of Fly-Fishing is made in Showa term since Taisho end. It has a role as a place of the interchange of the diplomats and Japanese upper class people. There was a reason that the most part of the cottage owner of Chuzenji lakeside was a foreigner, too, and fell into the decline with war's beginning.
著者
広永 正紀
出版者
日本刀剣保存会
雑誌
刀剣と歴史
巻号頁・発行日
no.660, pp.20-22, 2004-07
著者
原岡 秀樹 遠峰 菊郎 川端 隆志 宮本 一彦 深渡瀬 角太郎
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.369-379, 1995-06-30
参考文献数
14
被引用文献数
2

三沢飛行場における海霧の予報に資するため,1992年6月22日から7月14日の間,飛行場の東南東約6kmに位置する三沢漁港において,小型係留ゾンデを用いて大気境界層内の観測を行い,海霧の発現前後の温湿度場及び風系の鉛直構造を調べた.海霧発現時には,高度300m以下に気温傾度が2℃/50m程度の逆転層が形成され,その底部は200m付近に位置することが多く,混合層内よりも逆転層下層の方が比湿が大きくなっていることが分かった.また,海霧が発現した場合は逆転層内に比湿の大きな湿潤域が存在していたのに対し,発現しなかった場合は湿潤域が存在しなかった.逆転層下層において比湿が小さいと,ここに湿球温位から見て不安定な層が形成され,逆転層底部での乱渦混合が凝結を妨げるように働くと考えられる.このことから,逆転層内に比湿の大きな湿潤域を持つ,逆転層下層において湿球温位からみて安定な場で海霧が発現し易いことが分かった.
著者
廣瀬 慎吾 武井 惠雄 荒井 正之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.123, pp.55-61, 2003-12-15

初等・中等教育における情報教育では,フルサイズキーボードを使用した,きちんとした文章作成能力の育成が重要である.本研究では,そのような目的に合った学童用モバイルシステムを提案する.このシステムはフルサイズの丸められるキーボードを備えているので,学童はランドセルへ入れて学校と家庭の間を持ち運び,教室内学習と校外学習の両方で同じコンピュータ環境を使って学習することができる.ハンディサイズの組込みLinuxコンピュータで学童用モバイルシステムを試作した.今後,実際の教室内学習と校外学習を通じて,学童のきちんとした文章作成能力の育成に有効であることを証明していく.In the information study in elementary and secondary education, training for writing the orderly text creation with the full-size keyboard is important. Then we propose a mobile system suitable for such purposes. Schoolchildren will be able to use the system for the classroom learning and home study, because the system has a full-size foldable keyboard and they can stow the system into their knapsacks and carry about it on one's way to and from school. We produced a prototype of the proposed system using a Linux built in computer of a handy size. We plan to evaluate the system through actual classroom learning and home study.
著者
本池 祥子 佐久嶋 ひろみ 仲光廣晃 清野 正樹 寒河江 雅彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.40, pp.41-48, 2001-05-12

学校等での集合学習において、生徒一人ひとりの学習のペースやレベル、好み等の特質に合わせたマルチメディア学習環境を実現するために、「情報ランドセル」というコンセプトを提案する。今回、学習教材として小学生向けの英語教材を用意し、DVD-RAMによる「情報ランドセル」を実装して、岐阜市の小学4年生約120名を対象に実証実験を行ない、各生徒にとってよりふさわしい学習教材をより効率的に「情報ランドセル」上に配信する仕組を検証した。その結果、学習教材の必要度の差を利用して、バックグラウンドプロセスで配信する仕組を取り入れることで、生徒の学習を休止する影響をできるだけ小さくしながら、効率的に学習教材を配信できることが実証できた。The authors propose a concept of "Information Satchel", which provides a personalized learning environment for school children. Each "Information Satchel" acts as a personal container for learning materials adaptively selected for each child based on the status of learning such as progress, maturity, and interests. We implemented an experimental "Information Satchel" system using DVD-RAM, which selects appropriate learning materials and efficiently delivers them to each child. From the result of our system architecture evaluation, we confirmed, by downloading lea rning materials in a background process based on the necessity level of learning materials, the total cost of the delivery of learning materials could be reduced.
著者
石黒 浩 中村 泰 岩井 儀雄
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

22年度では,三者間の非言語コミュニケーションを用いた親和的な情報メディアの創出を目的として,病院の診察場面に陪席するアンドロイドを用いた実証実験に取組むと共に,ヒューマノイドロボットを用いたロボット演劇に取組み,アンケートを実施することで演出家による演技指導の中に含まれるロボットの自然な振る舞いについてのルールの抽出に取組んだ.さらに,小型で単純な構造を持つロボットを利用することで,人間がもつ対話に対する印象に与える影響を調査することで三者間でのコミュニケーションの仕組みの理解に取組んだ.これらの技術を支える動作認識機能を利用した動作生成メカニズムとして,視覚や聴覚に基づいた対話への陪席者として自然な自動動作生成法の開発も行った.病院での実証実験では,医師の後方に陪席アンドロイドを設置し,その振る舞いが患者の持つ診察に対する印象にどのような影響を与えるかを調査し,陪席者としてのアンドロイドが患者の笑顔や頷きに合わせてそれらの表情を表出することで,患者の診察に対する印象が向上することを明らかにした.この結果は,以前行った実験と整合性を取ることが可能なものである.また,以前の実験において課題となっていたアンケートの天井効果などの問題も克服した結果となっており,この知見に対する信頼性を向上することができた.ロボット演劇においては,動作生成システムに改良を加え,それを用いて40分の長編演劇である"森の奥"の上映を行った.アンケートにおいては特に共感性に着目した解析を行っており,人間の役者の共感に関わる評価と同様に,自身の共感性の高低によってロボットの共感に関する評価が分かれることが明らかになった.
著者
小山内 康人 豊島 剛志 馬場 壮太郎 外田 智千 中野 伸彦 阿部 幹雄 足立 達朗
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.291-398, 2008-07-30

第49次日本南極地域観測隊(JARE-49)夏隊・セール・ロンダーネ山地地学調査隊は,ドロンイングモードランド航空ネットワークを利用して航空機で日本から直接南極内陸山地に赴き,2007年11月23日〜2008年2月5日の75日間,キャンプ生活を送りながらスノーモービルと徒歩によりセール・ロンダーネ山地中央部地域の地質学的野外調査を実施した.また,ベルギー基地,インド基地等を訪問し,国際交流を実施した.今回の野外調査は,航空機を利用した南極内陸地域野外調査の初の試みであり,2007年度にスタートした国際極年(IPY)とも連動した国立極地研究所の一般プロジェクト研究(課題番号P-5-1:代表・本吉洋一)の初年度調査でもある.本報告では,設営面での計画の立案・準備から実施経過に至る過程について詳しく述べる.
著者
島田 淳子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.24-29, 1999-04-01