著者
渡辺 能行 尾崎 悦子 松井 大輔 小山 晃英 栗山 長門
出版者
京都先端科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

過敏性腸症候群は腹痛や腹部不快感、便通異常を主症状とした消化器症状が持続、または寛解と増悪を繰り返す機能性消化管障害の一つである。これまでの国内外の研究では偏りのある有病症例が対象となっていて罹患率や罹患のリスク要因も全く検討されていないので、主として臨床症状に基づいた診断の国際基準である「RomeⅢ」日本語版質問紙票を用いた調査が既に5年前に実施されている40~74歳の一般京都府民3,910人において再調査を行い、その罹患率と罹患に関わるリスク要因を前向き研究として実施する。
著者
岡田 祥子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.54-63, 2016-01-31 (Released:2017-08-30)
参考文献数
22

本研究では、重度知的障害者通所施設において利用者本人よりも保護者の要望が優先されることが、どのような論理に基づいているのかについて考察した。意思伝達が難しく、暴力行為も見られるような利用者を支援する職員たちは、自らの安全よりも利用者を優先するような職業的責任を求められる。しかし、インタビューによると利用者が共に暮らす家族の安定も必要となり、時に職員は本人よりも保護者の要望を優先せざるを得なくなる。これは利用者本人の主体性を奪い、障害者の家族を抑圧すると批判されてきた考え方の根拠となる。だが、知的障害者が頼れる機関は少なく、職員は利用者本人だけではなく彼/彼女らを取り巻く環境への対応も求められている。本稿では、職員が「保護者のニーズ=利用者のニーズ」という観点に立ち、保護者のケアをすることが本人の幸せにつながるという論理を組み立てることで、自らを納得させ、現場に立ち続けていることを明らかにした。
著者
品川 邦汎 国田 信治 佐々木 寧 岡本 晃
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.431-436, 1979-12-05 (Released:2010-11-30)
参考文献数
13
被引用文献数
12 12

1973年6月から1978年10月にかけて大阪府下で米飯煩を原因食とするB. cereus食中毒7事例が発生した. 4事例は焼めし, 2事例は弁当, 1事例はにぎりめしが原因食品であった. 潜伏期が0.5~4時間 (平均2時間) で嘔気, 嘔吐を主症状とする嘔吐型が6事例, 2~12時間 (平均10時間) の潜伏期で下痢を主徴とする下痢型1事例であった.対照として食中毒とは関連のない生米, にぎりめし, 巻ずし, いなりずしのB. cereusによる汚染の実態を調べた結果, 生米の65.9%がB. cereus陽性で, 菌数はほとんど102/g以下であった. にぎりめしは65.5%が陽性で菌数は102~104/gのものが多かった. すしは41.5%が陽性で, 菌数はほとんど102/g以下であった.食中毒事例, 生米およびにぎりめし, すしなどの米飯類から分離したB. cereusの性状を比較した. 食中毒由来菌株は100%デンブン分解性陰性であったが, 生米由来菌株では16.7%, 米飯由来菌株では61.8%が陰性であった. 各分離株の芽胞の熱抵抗性を比較した. 食中毒由来菌株の全ては, 90℃, 60分, 100℃, 10分, 30分, 105℃, 5分の加熱ではすべて耐えた. 生米由来菌株では, 90℃, 60分に耐える菌株は92.9%, 100℃, 10分では26.2%, 100℃, 30分では9.5%, 105℃, 5分では7.1%であり, 一方, 米飯由来菌株では, 90℃, 60分に耐えるもの97.0%, 100℃, 10分では70.1%, 100℃, 30分では38.8%, 105℃, 5分では32.8%が耐え, 分離株の由来により, 芽胞の熱抵抗性に明らかな差が見られた.
著者
下瀬 健一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.482-489, 2017-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
25

竜巻は,他の気象災害と比べ発生頻度は高くなく被害が及ぶ範囲も狭いが,ひとたび発生し我々の生活圏を直撃した場合,構造物や農作物への被害による経済的損失のみならず,人的被害を引き起こす.そのため,竜巻の予測・監視が防災上非常に重要であるが,竜巻は短時間かつ局所的に発生する現象であるため,竜巻を直接観測することは困難であり,その発生メカニズムは未だ十分に解明されていない.ゆえに,竜巻の予測・監視技術は発展途上であり,竜巻の発生メカニズムと予測・監視技術は今なお積極的に研究開発が続けられている.本稿では,これまでの研究でわかってきた竜巻発生のメカニズムとそれを基に気象庁で開発されている予測・監視技術について解説し,竜巻発生時に必要とされる避難行動などを日本における竜巻の事例を交えながら紹介する.
著者
濱島 高太郎 津田 理
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.128, no.8, pp.536-539, 2008-08-01 (Released:2008-08-01)
参考文献数
6

本記事に「抄録」はありません。
著者
山口 敏
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.105-108, 1984-04-15 (Released:2008-02-26)
参考文献数
11

縄文時代の土偶や土器の人面把手に,上唇裂を表現したと思われるもののあることは,すでによく知られた事実である(野口,1964;大塚,1975)が,縄文時代の人骨に上顎裂の直接の証拠が発見されたのは,ここに報告する例が最初であろうと考えられる。この人骨は,1963年に北海道釧路市緑ケ岡遺跡の縄文晩期の第29号墓壙で,土器片,石斧,石槍等を伴い,大量のべんがらにおおわれた状態で発見された,熟年女性と推定される骨格である。骨の保存状態は良好ではなく,頭骨では左右上顎骨の歯槽部と下顎体しか保存されていない。左上顎骨は前顎骨に相当する部分を欠いているが,歯槽突起の外側面と内側面とが,犬歯歯槽の近心縁から内上後方に走る稜線で直接にあい接しており、この部に上顎裂があったことは疑いない(第1図)。これは,生前においては,上唇裂を伴っていたものと考えられる。口蓋突起が破損しているため,口蓋裂が伴ったかどうかは明らかでない。なお,右上顎骨の歯槽突起には異常は認められない。小臼歯と大臼歯の磨耗は,左右とも著しく進行しており,しかも咬合面が,通常の場合とは反対に,頬側上方から舌側下方に傾斜している。これは上下の歯列の大きさの関係に異常があったために生じたものと推測される。
著者
簗瀬 誠
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.160-165, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)

作業療法によって患者の主体的で多様な生き方を追求していく能力を引き出すには,対象である患者の適切な理解が必要である.しかし,同じ統合失調症の診断を受けた患者でもその在り方はさまざまであり,患者の抱える問題はバラエティに富んでいる.バラエティに富んだ問題を抱える患者を介入対象とするには,全体的に把握するホリスティック(全人的)な理解とアプローチが必要である.本論では,「精神症状および認知機能障害」「これまでの生活で形成された心理的傾向」「現在の状況に対する心理的反応」「生活技能の未習得あるいは喪失」「知識・情報の不足」「環境の未整備」の6つの観点から理解し,アプローチすることの有用性を述べた.
著者
塩見 大輔 大島 拓
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.27-29, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
10

バクテリアは細胞壁合成が阻害されると溶菌するが,高浸透圧条件下では一部の細胞が細胞壁が無くても生存可能なL-formと呼ばれる状態に変換し,増殖できる.本稿では,その変換機構を明らかにすべく,我々の研究チームが行ったL-formのリアルタイム可視化による成果を中心に紹介する.

1 0 0 0 OA 型理論I

著者
龍田 真
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1_25-1_33, 1991-01-14 (Released:2018-11-05)
著者
大場 隆之 中村 友二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.75-81, 2020-02-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
72

多様に進化した3次元集積技術をレビューする.電子情報産業は,半導体デバイスとシステムの機能および市場性を両輪として300兆円規模に発展した.これらを牽引(けんいん)してきたのが微細化と実装技術である.ところが,微細化は物理限界に近づき,また実装性能は頭打ちになりつつある.3次元集積技術は,これら2つの課題に対する新たなブレークスルーとして今後進展することが期待されている.本稿では,さらなる高集積化,高機能化に向け,前工程・後工程それぞれの世界で開発が進められた3次元積層技術を振り返り,筆者らが開発したウェーハレベル3次元集積技術について紹介する.
著者
滝口 雅文
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
23

HIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)は,HIVの増殖している細胞を殺すことで体内でのHIVの増殖を抑制するが,これらのCTLの認識を阻害する変異を持ったHIV(逃避変異HIV)が出現すると,体内ではこれらの変異体が優位になると推定されていた.最近の世界9か所のコホートでの約2800人のHIV-1感染者を解析した最近の研究で,CTLからの逃避変異HIVが蓄積してきていることを明らかにした.このことは,HLAクラスIとの結合やCTLからの認識を傷害する変異を持ったHIVが選択され,HLAクラスIに適合するようにHINは進化していることを意味している.このような免疫から逃避するHIVの進化は,ワクチンの開発に大きな課題を提示した.