著者
山本 佐恵
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.98, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究の目的は、田中一光(1930-2002)のデザイン活動の初期にあたる1950年代に焦点をあて、田中における前衛美術の影響について考察することである。彼が青年期を過ごした関西では、 グラフィックデザイナーは美術家と活発に交流し、独自の美意識やデザイン感覚を発展させた。 事実、田中に強い影響を与えたのは早川良雄と吉原治良であることはよく知られている。 50年代の田中の活動においては舞台美術も重要であり、吉原が舞台美術を担当した52年の国際ファッションショーでは助手を務め、また吉原が主宰した具体美術協会が57年に開催した「舞台を使用する具体美術」の大阪公演では演出助手を務めている。さらに注目すべきは、吉原によって前衛書道への開眼に導かれた点である。森田子龍が創刊した『墨美』を吉原から何度か借りたことで、田中は前衛書道に関心を持つようになる。前衛書道の造形は田中に刺激を与え、後に制作したシルクスクリーン作品やモリサワのポスターなどに興味深い類似性がみられる。前衛書道への開眼は、田中がグラフィックデザインにおけるカリグラフィやタイポグラフィの効果について研究する上で役立ったと推測される。
著者
臼崎 翔太郎
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

研究期間は、透過物体越しに撮影した際の反射(以降、透過的反射とする)も含むSNS投稿画像内の人間映り込み箇所の検出を目的とし、提案手法(反射成分を分離するモデル+人間の検出モデル)と、既存手法(人間の検出モデル単体)を比較し、提案手法が「通常の映り込み」と「透過的反射の映り込み」の両方を精度よく検出できるか検証する。2枚の画像を重ねた疑似透過的反射画像や、カメラで撮影して作成した実際の透過的反射画像で「透過的反射による映り込み」の検出精度を、反射成分の無い画像で「通常の映り込み」の検出精度を確認し、両者において高い水準で人間を検出できるかを確かめる。
著者
濱西 栄司
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、公共的な場における運動行為の特徴とリアル/オンラインの展開・成果をめぐる因果的メカニズムを、非組織論的な観点から国際・歴史比較的に明らかにすることにより、民主社会における運動行為のありようや成果・意義をめぐる討議と合意形成の空間の創出に資する新たな学術的基盤を構築することにある。具体的にはWebGISやGPS/SNSビッグデータを用いて、国内外の運動行為のリアル/オンライン展開と成果を記述・アーカイブ化し、国際・歴史比較から運動行為の各社会・各時代における特徴・傾向、その複雑な因果的メカニズムを組織戦略、個人的運動行為と相互作用、物理的・社会的環境などから明らかにしていく。
著者
鈴木 舞
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

社会の重要課題のひとつである犯罪を事前に予測する事は、古くから試みられ、様々な手法が確立されてきた。近年ではビッグデータや人工知能(AI)を活用した高度な犯罪予測が可能となり、欧米をはじめ日本でも実際の運用段階に至っている。犯罪予測は、安全・安心な社会実現に寄与するとして、人々からの期待も大きいが、様々な課題も指摘されている。本研究の目的は、近時その高度化が進んでいる犯罪予測が、多様な要素の相互作用の中でどのように実施されているのか、そして犯罪予測に関していかなる課題が生じているのかを、科学社会学の観点から考察する事である。
著者
小田 龍聖
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

都市住民による観光を中心とした森林の活用への期待は大きく、特に森林のキャンプ場としての活用に期待が集まっている。多様化するキャンプ場の需要に合わせ効率的に施設整備を進めるためには、利用者ニーズを把握し、キャンプ場が人々に提供するコンテンツを評価する必要がある。そもそも都市の人々のキャンプ場の利用ニーズはどこにあるのだろうか。本研究は、アンケート調査やインタビュー調査に加えてSNSビックデータを活用し、森林キャンプ場の利用実態や利用者ニーズを経時的、広域的に把握、分析し、今後の森林キャンプ場整備の方向性を示すとともに、SNSによる調査手法の妥当性、有用性について検討する。
著者
濱西 栄司
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、公共的な場における運動行為の因果的メカニズムと特徴を、非組織論的な観点から国際・歴史比較的に明らかにすることにより、民主社会における運動行為のありようや効果をめぐる新たな学術的基盤を構築する。WebGISとビッグデータを用いて、国内外の運動行為の展開を精緻に記述・アーカイブ化し、その国際・歴史比較から運動行為の各社会・各時代における特徴・傾向、通底する因果的メカニズムを明らかにし、その成果に基づいて、今後の民主社会における運動行為のありようや効果をめぐる学術的知見の提供を目指す。
著者
北本 朝展 橋本 雄太 加納 靖之 大邑 潤三
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

「歴史ビッグデータ」とは、現代のビッグデータ解析技術を過去の世界に延長し、過去の世界を新たな視点から探る研究である。人工知能(AI)やシミュレーションなど最新のデータ駆動型モデルを活用するには、くずし字で書かれた史料に残された記録をどう入力すればよいだろうか?史料とデータ駆動型モデルを結合する鍵を握るのが、文書空間と実体空間を結合する「データ構造化」ワークフローである。そこで、文書のテキスト化やマークアップなど文書空間に関する技術と、地名エンティティなど実体空間に関する技術を研究し、分野横断的研究基盤に実装することで、歴史地震学や歴史気候学などの分野で歴史ビッグデータ研究を推進する。
著者
氏家 昭夫
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.115, pp.12-24, 1976-09-30 (Released:2010-03-12)
著者
高安 美佐子 尾崎 順一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

約100万人のスマホGPSデータを解析し都市圏の人流に関する基本的な特性を明らかにした。大都市圏での人流パターンを流域という視点に基づいてマクロ的に捉える新しいデータ解析手法を確立し、流域のサイズの分布や形状が都市に依存しない普遍的な特性を持ち、さらに、Covid-19の感染下でも基本特性が維持されていることを見出した。また、人流を電流とみなすアナロジーによって、都市圏の交通流を近似する電気回路モデルを構築し、新たなシミュレーション手法の基盤を構築した。さらに、基本的な感染症の数理モデルをGPSデータに基づく人口集中の効果を考慮するように改良し、感染者数の増減を予測可能とするモデルを開発した。
著者
大佛 俊泰 沖 拓弥 岸本 まき
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

災害発生後の混乱や群集事故等の二次的被害を低減するためには,まず,「どのような人(年齢・性別・職業)が,いつ(季節・曜日・時刻),どこで(場所・施設),何を(滞留・移動目的)しているのか」という,都市内滞留者・移動者の精緻な人口動態を推計し,これを用いた群集の誘導や制御を行うことが必要である。本研究課題では,複数の人口動態データを組み合わせることで,詳細な属性情報を備えた精緻な都市内滞留者・移動者に関するデータベースを生成する方法を構築し,大地震発生後の流動人口を予測するシミュレーションモデルを開発することで,被害・混乱の抑制方策を支援するための技術を開発した。
著者
武藤 敦子
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

企業内で利用されているICカードとリーダーを用いた入退室管理システムから得られる社員の執務室・会議室への入退室履歴データを人の移動履歴データとして利用し、人間行動の定量的分析を行った。分析方法として、「個人への視点」と、「繋がり関係への視点」の2種類を引き続き検討した。「個人への視点」では、これまでの研究において提案した、個人の移動時間のパターンと個人属性との関係性を分析する手法に対し、より分析者が結果の解釈を可能とする可視化手法を提案した。提案手法は、非負値多重行列因子分解とクラスタリングを組み合わせた手法であり、本手法を用いて入退室データから新たな行動パターンの算出に貢献した。当該年度においては、国際会議発表として1件行った。「繋がり関係への視点」としては、これまでに提案してきた会議室ネットワークから算出した社員の活躍評価指標に対し、その物理的意味付けを行った。その結果、企業が判断する活躍者の要素に、会議参加数、会議で関わった人数、管理職との会議割合、部署と役職の多様さが関係していることを統計的に明らかにし、本内容について国内会議発表として1件行った。また、入退室データから各社員の移動に関わる負担度を算出する手法および、移動負担度の高い社員の負荷を軽減できる会議室割当最適化システムを提案し、実際のデータを用いて大幅な移動時間短縮を確認した。当該年度においては、国内会議発表として1件行った。
著者
藤江 匠汰 渡辺 知恵美
雑誌
研究報告アクセシビリティ(AAC) (ISSN:24322431)
巻号頁・発行日
vol.2023-AAC-23, no.7, pp.1-8, 2023-11-27

本研究では,アジャイルなソフトウェア開発の普及に伴い,チームメンバー間およびユーザーとの直接対話の重要性を探求し,特にろう・難聴者がこれらの対話に平等に参加するためのストラテジーに焦点を当てている.小規模でフレキシブルなチームが推奨されるアジャイル開発において,即席で発生する対話の中で情報を得ることの困難さを克服するためのアプローチを提案する.予備実験を通じて「対話の常時可視化」と「ろう・難聴者による可視化の主導権の保持」という二つのコミュニケーションストラテジーの仮説を立て,実験を通じてこれらが対話の理解に与える影響を検証した.実験では,聴者二人とろう・難聴者一人の小規模グループを対象に,指定したコミュニケーションストラテジーを用いて対話を行った.その結果,対話内容の可視化が時には理解を妨げる要因となり得ることが明らかになった.また,音声認識技術も場合によってはグループ対話への参加を妨げる可能性があると示された.これらのことから,単にツールや手段を使うだけではなく,チームでのコミュニケーションストラテジーを経験に基づいて構築することが,ろう・難聴者がチームの対話に積極的に参加するためには不可欠であると示唆された.
著者
花岡 和聖
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ひったくりや不審者情報等の犯罪に対する予防の観点から、本研究計画では、ルーティン・アクティビティ理論や防犯環境設計の考え方に基づき、犯罪発生と、その周辺の(1)時間帯別滞留人口及び(2)物理的な景観特性との関連性を統計解析することで、犯罪理論の実証研究を実現することを研究目的とする。その実現のために、スマートフォンのアプリ利用者の位置情報に基づく時間帯別滞留人口や人工知能を援用した景観写真画像判読の成果といった位置情報を伴う「地理的ビッグデータ」を活用し、犯罪発生地点周辺の社会的・物理的環境特性の計測手法の精緻化・自動化を試みる。
著者
廣田 雅春
出版者
岡山理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ソーシャルビッグデータを分析することで,実世界のイベントや,人々の興味,観光スポットへのレビューなどを得ることが可能である.また,近年は観光産業が注目を浴びており,その中で個々人に最適な観光情報を提供することは,多様化した旅行形態において重要な課題である.ユーザの明示的な属性,暗黙的な属性,コンテキストは,データの欠損や,そもそもデータとして存在しないなど情報の提供に利用するのは困難な場合がある.そこで,本研究では,ソーシャルビッグデータにおいてそれらを推定する手法の開発,さらにユーザの多様な情報を包括的に考慮して旅行者に観光情報を提供するための技術の開発を目的とする.
著者
後藤 拓也
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.114-126, 2018-10-28 (Released:2019-09-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿では,1990年代以降のインドにおける農業空間構造の変化を示す事例として,「ピンクの革命」と称されるほど急速な発展を遂げているブロイラー養鶏産業に着目し,その産地形成プロセスを考察した。インドのブロイラー養鶏産業は,多くの大手養鶏企業が立地する南インドで先行的に産地形成が進むなど,伝統的に「南高北低」の地域性を特徴としてきた。しかし1990年代後半以降,それまで養鶏産業の立地が進まなかった北インドにおいて急速な産地形成が認められる。そこで,北インドのなかでも新興産地の代表例であるハリヤーナー州において現地調査を行った。その結果,調査対象地域では1990年代以降,多くの農家がブロイラー養鶏に新規参入し,大規模な「2階建て鶏舎」を相次いで建設するなど,従来の穀倉地帯が大きく変容していることが確認された。しかし調査対象地域におけるほとんどの農家は,ブロイラー養鶏を始めるに当たって,ハード面(鶏舎の建設資金)およびソフト面(飼養技術の習得)において十分な政策的サポートを受けていないことが判明した。そのため,調査対象地域におけるブロイラー養鶏農家の技術的水準は総じて低く,鶏病などの疫病リスクに対して脆弱な産地構造をもっているという課題が明らかとなった。