著者
山田 博之 岩波 健 島宗 亮平 佐々木 裕泰
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
交通・物流部門大会講演論文集 2016.25 (ISSN:24243175)
巻号頁・発行日
pp.2109, 2016 (Released:2017-06-19)

Large overshoot sometimes occurs during use of air-spring car-body tilting by which a car-body is tilted using inflated or deflated air-springs. The large overshoot causes the contact loss between the pantograph and the contact wire. Therefore, we developed a controlling method of the overshoot by using the vertical motion damper equipped in parallel with the air-spring. The detail of the vertical motion damper, the controlling effect of the damper on the overshoot, and the overview of the running test is described in this paper.
著者
東山 雄一 田中 章景
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.272-290, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
108

Broca野,Wernicke野,角回そして弓状束で構成されるWernicke-Geschwindのモデルは,脳の言語モデルとして広く知られている.しかし,詳細な画像検査に裏打ちされた症例の蓄積と,脳機能画像研究を中心とした脳神経科学の進歩を背景に,Broca野やWernicke野以外の様々な脳領域がヒトの言語活動に関与していることが明らかになっている.さらに近年では拡散MRIを用いた数々の物理モデルの登場により,ヒトの白質線維の走行を詳細に評価することが可能となり,多数の機能領域とそれらを橋渡しする複雑な白質線維から構成されるネットワークとして脳を捉える考え方が主流になりつつある.本章では,こうした古典モデルに代わる新たな言語モデルと,その展望について概説を行う.
著者
中島 学
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.30-45, 2019-10-20 (Released:2022-04-26)

本研究は,少年院における改善更生・社会復帰支援等の処遇を「少年矯正」と位置づけた上で,今日的な課題を明らかにし,その対応と今後の処遇理念について大きく三つの段階により検討を行なった.その第一が,近年の法改正等に伴い成人矯正にも浸透してきている「矯正モデル」の構造とそこに内在する立ち直りを阻害する課題を明らかにした.第二に,少年矯正の再構築として,家族療法等で展開されてきている「物語論」に準拠し,自己同一性の獲得(人格的自己同一性)とその語り直しにより形成される自己同一性(物語的自己同一性)に着目することにより,「矯正モデル」の課題に対応しえる「立ち直りの自己物語」モデルの可能性を検討した.その上で,成長発達途上にある少年に対して,その「最善の利益」となりえる施設内処遇の新たな処遇理念として,対話と関係性という相互主体性が形成される場(共生)と,そのような相互主体性が支援者たる職員の成長を促す(共育)場としての「共生・共育」の可能性の検討を通し,「少年矯正」の再構築を行なった.
著者
伊豆 英恵 山田 康枝 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.664-671, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

マウスを用いた高架式十字迷路試験によって,清酒の飲用摂取による抗不安作用を検討した。1)エタノールまたは普通酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),対照と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ2.7倍と3.4倍,滞在時間が3.2倍と3.9倍に増加しており,普通酒もエタノール同様に抗不安作用があり,さらにその作用がエタノールよりも高い傾向にあった。2)普通酒または吟醸酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較して,吟醸酒でオープンアームへの進入回数が1.7倍,滞在時間が1.6倍に増加しており,普通酒よりも吟醸酒の抗不安作用が有意に高いことがわかった。3)吟醸酒に含まれるのとほぼ同程度となるように吟醸酒香気成分であるカプロン酸エチル(10mg/l)または酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加してマウスに飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ1.5倍と1.4倍,滞在時間がいずれも1.5倍に増加しており,カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが抗不安作用を有意に促進することが明らかになった。4)通常,清酒に含まれる濃度範囲では,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,イソアミルアルコールはADHによるエタノール代謝を阻害しないことがわかった。
著者
大久保 史佳 小笠原 太一 竹林 佐那 野㟢 祐未 吉川 幸雄 難波 美帆
出版者
学校法人 グロービス経営大学院大学
雑誌
グロービス経営大学院紀要 (ISSN:27584046)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-106, 2023-11-30 (Released:2023-12-05)

日本の国立公園では,法的に管理運営を強制することができない中,数多く存在する「ステークホルダー(所有者,事業者,関係当局,地域等)間の合意形成の難しさ」が共通の課題としてある.本研究では,自然を保全しながら国立公園の管理運営がうまくいっている尾瀬国立公園と複数の国立公園を比較し,ステークホルダーの合意形成の難しさという課題をいかに解決することができるかを明らかにしようとした. 尾瀬国立公園は,福島県,栃木県,群馬県及び新潟県の4県にまたがり,本州最大の高層湿原である尾瀬ヶ原(約760ha)を始めとした大小の湿地群(池塘)であり,日本の国立公園全34公園中19番目の広さを誇る. 調査の結果,尾瀬国立公園では,植生回復事業による湿原面積の回復や湿原保護のための木道敷設など自然の保護と人々の観光利用の促進に,民間企業が多大な貢献をしていることが明らかになった.一方,国立公園ごとに地域性や歴史といった特性の違いがあり,それによって生じる課題やステークホルダーの積極的な関わりに向けての動機付けの方法なども多種多様であるので,国立公園毎に適した体制づくりや運営方法が存在すると考えられる.
著者
平賀 正樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_170-2_178, 1989-04-14 (Released:2018-11-05)

近年,情報処理分野で日本語プログラミング言語が話題になっているが,その中の代表的なものにMindがある.Mindは,もともとForthから派生したパソコン用コンパイラ言語である.そして,その日本語記述能力による初心者用言語というイメージに反して,最近では開発用言語として使用されている場合が増えてきている. 本稿では,このMindの概要を述べるとともにそのプログラム記述能力などについても言及する.またMindによるアプリケーションの開発事例を紹介し,今後の課題も含めて考察する.
著者
Naoto Jimi Natsumi Hookabe Shinta Fujimoto Hiroki Kise Akito Ogawa Masashi Tsuchiya
出版者
The Plankton Society of Japan, The Japanese Association of Benthology
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.178-184, 2023-11-27 (Released:2023-11-30)
参考文献数
18

Three distinct species of fauveliopsid polychaetes were collected from deep-sea sediments in the northwestern Pacific Ocean off Japan. Two of these species were obtained from bathyal and abyssal depths in the Shikoku Basin and were identified as Fauveliopsis levensteinae and Laubieriopsis hartmanae, which have been previously reported from the abyssal plains of the North Pacific Ocean. The third species collected from bathyal depths off Yakushima is new to science and described as Laubieriopsis verrucosa sp. nov. This new species can be distinguished from its congeners by having numerous body papillae across the whole body, 21 chaetigers, and an unpaired genital papilla on the right side of the posterior margin of chaetiger 8. A key to identify Japanese species of Fauveliopsidae is also included.
著者
名嘉真 武男
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.242-245, 1979-04-01 (Released:2012-03-22)
被引用文献数
2 2

著者らは昭和48年1月から昭和53年8月までの6年8ヵ月間の皮膚カンジダ症1727例について病型分類をおこなつた。ステロイド外用剤ともつとも関係が深いと考えられる乳児寄生菌性紅斑とカンジダ性間擦疹が多く, とくに乳児寄生菌性紅斑ではステロイド外用に起因する汎発型がしばしば観察されるほか口囲カンジダ症, カンジダ性毛包炎, 口唇カンジダ症が少数ながら散見されるようになつた。またステロイド外用の既往のあるものが乳児寄生菌性紅斑で96%, カンジダ性間擦疹で83%, さらに他疾患とくにステロイド外用を行なつている口囲, 肛囲, 間擦部の病変にカンジダ症が続発している症例が多く, また乳児カンジダ症と入浴との関係が深いことをしめした。試験管内実験ではデキサメサゾン, ベタメサゾン添加サブロー培地ではCandida albicansの増殖は促進されるが, 非ステロイド抗炎症剤のbufexamacはC. albicansの増殖曲線にはなんらの影響もあたえないことをしめした。臨床的にもステロイド外用を受けた皮膚カンジダ症の病巣は汎発化の傾向をとり多数の衛星状に点在する丘疹, 膿疱が特徴的な所見であることをスライドで供覧した。
著者
Tamami Iwamoto Kazuaki Hosoda Reiko Hirano Hideaki Kurata Akiyo Matsumoto Wataru Miki Masumi Kamiyama Hiroshige Itakura Shigeru Yamamoto Kazuo Kondo
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.216-222, 2000 (Released:2011-09-20)
参考文献数
42
被引用文献数
185 224

Marine animals produce astaxanthin which is a carotenoid and antioxidant. In this study we determined the in vitro and ex vivo effects of astaxanthin on LDL oxidation. The oxidation of LDL was measured in a 1 ml reaction system consisting of increasing concentrations of astaxanthin (12.5, 25.0, 50.0 μg/ml), 400 μM V-70 (2, 2'-azobis (4-methoxy-2, 4-dimethylvaleronitrile)), and LDL (70 μg/ml protein). Astaxanthin dose, dependently significantly prolonged the oxidation lag time (31.5, 45.4, 65.0 min) compared with the control (19.9 min). For the ex vivo study 24 volunteers (mean age 28.2 [SD 7.8] years) consumed astaxanthin at doses of 1.8, 3.6, 14.4 and 21.6 mg per day for 14 days. No other changes were made in the diet. Fasting venous blood samples were taken at days 0, +14. LDL lag time was longer (5.0, 26.2, 42.3 and 30.7% respectively) compared with day O after consuming astaxanthin at doses of 1.8, 3.6, 14.4 and 21.6 mg for 14 days compared with day O, but there was no difference in oxidation of LDL between day O (lag time 59.9 + 7.2 min) and day 14 (57.2 ± 6.0 min) in the control group. Our results provide evidence that consumption of marine animals producing astaxanthin inhibits LDL oxidation and possibly therefore contributes to the prevention of atherosclerosis.
著者
バーナード・タンチェリエ 天野 治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.863-870, 2006 (Released:2019-04-05)
参考文献数
1

発電に占める原子力の割合が80%のフランス。石油ピークにもびくともしない, エネルギー先進国だ。しかし, そこに至るためにフランスでは, これまでさまざまな取組みを行ってきた。本稿では「2006年春の年会」で, 「世界のトップランナーに学ぶ (その4) ; 原子力発電を使いこなす―フランスでの日負荷追従運転実績とプラントに与える影響」というテーマで, タンチェリエ氏が講演した内容を対話形式に再構成。フランスの原子力のこれまでと現在, そして将来について紹介する。
著者
大石 雅寿
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.4-8, 2002-01-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
2

電波天文学の発展に伴い, これまでに発見された星間分子は120ほどにもなる。日本の研究者が発見した星間分子は17であり, 1980年代以降に発見された分子の約半数を見つけたことになる。星間分子は気相におけるイオン分子反応や星間塵表面反応により生成されると考えられ, 数10Kという極低温, また標準状態の1兆分の1程度の極低密度という極限状態に特異な化学を反映した短寿命分子が数多く見られる。しかしそのような環境にも関わらずダイナミックな化学反応が起きており, その研究からは私たちの「常識」を覆(くつがえ)す事実も次々と見出されている。
著者
清水 悠生 森本 茂雄 真田 雅之 井上 征則
出版者
パワーエレクトロニクス学会
雑誌
パワーエレクトロニクス学会誌 (ISSN:13488538)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.130-137, 2017-03-31 (Released:2018-10-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Nowadays, interior permanent magnet synchronous motors (IPMSMs), generally driven by PWM inverters, are mainly utilized as the traction motors of eco-friendly vehicles. As a result of the carrier harmonics of the input current by PWM inverters, harmonic losses of IPMSMs become higher than those of IPMSMs with ideal current input. This paper discusses the characteristics of the proposed double-layered IPMSM and the conventional single-layered IPMSM with current inputs where the PWM carrier frequencies were set to 5, 10, and 20 kHz, respectively, which reveals the influence of various carrier frequencies on the performance of IPMSMs.
著者
久保 元芳 赤荻 冴
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.127-141, 2023-08-31 (Released:2023-09-17)
参考文献数
26

目的:小・中学校におけるWBGTの測定状況とそれに応じた熱中症予防の取組,WBGTの活用の利点や課題等を明らかにすること.方法:横断的実態調査研究として,関東地方A県内で無作為抽出した小・中学校の保健主事を対象に質問紙調査を実施し,小学校65校,中学校64校分を分析した.WBGTの測定状況や場所について,校種等によるクロス集計を行った.自由記述項目のWBGTに応じた対応例,WBGT活用の利点と欠点については,その意味を吟味したカテゴリー化を行った.結果:小・中学校ともに約90%でWBGTを測定しており,校庭・グラウンドや体育館が多い一方,教室,プール等は少なかった.WBGTに応じた対応を行っている小学校は81.5%,中学校は64.1%であり,21°C以上から水分補給や休憩の呼びかけがみられ,WBGTの上昇に伴って対応が多様化し,31°C以上では多くの学校で屋外の運動や活動を中止していた.WBGT活用の利点として,各種教育活動の実施程度について妥当な判断ができたり,児童生徒や教職員の熱中症予防への意識向上が図れたりすること,欠点として,WBGTに応じた対応で教育活動の計画的な実施に支障が出る場合があること,児童生徒の観察が疎かになること等が挙げられた.結論:小・中学校の多くでWBGTが測定,活用されているが,教育活動の計画的な実施との調整など,活用上の課題も明らかとなった.
著者
鳥居 邦夫
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.245-254, 1995-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

われわれは摂食時に口腔内に遊離してくる栄養素等の小分子量の物質を味覚として認識することにより, 食物を上手に選択して生存に必須なエネルギー源, 電解質源, 蛋白質源を, それぞれ甘味, 塩味, うま味として過不足の生じないように食べ, そして味が好ましくない毒物や腐敗物の摂取を拒否している.グルコースはエネルギー産生系の中心的な基質であり, 主として炭水化物を分解し, そして肝などで糖原性アミノ酸などから生合成されて得ており, 体温の維持と行動の熱源として利用される.運動等による熱源不足そして糖尿病発症により甘味嗜好性が惹起される.体液の恒常性維持, 特に血中電解質濃度や体液量は神経系, 内分泌系により厳密に調節されている.主要なナトリウムが欠乏すると強い食塩嗜好性が発現する.又, 本態性や高アルドステロン性高血圧症患者では, 唾液中Na濃度が上昇し, 並行して塩味閾値も上昇, 強い塩味嗜好性を示す.うま味物質はアミノ酸 (特にグルタミン酸) と核酸関連物質であり調味料として我国で発見された.うま味物質は動植物の組織に普遍的に分布し, 蛋白質摂取と密接に関わっていると考えられる.個々のアミノ酸はそれぞれ異なる味をもち, 特定アミノ酸の欠乏においては人も動物も味を手がかりに定量的に選択摂取することが出来る.味覚は又, 消化吸収を調節し生体恒常性維持に役立っている.
著者
小林 正秀 上田 明良 野崎 愛
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.87-92, 2000-09-25 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
5

これまで,カシノナガキクイムシの関与するナラ類集団枯損が,倒木の発生によって助長される危険性が指摘されてきた。そこで,生立木の伐倒丸太を被害地に放置する実験を行った。その結果,カシノナガキクイムシは倒木に穿孔し,倒木周辺では主に斜面下部の立木が穿孔されて枯損木が発生した。また,カシノナガキクイムシは伐倒丸太でも繁殖可能で,1年間放置した伐倒丸太から集団枯損に関係すると考えられている病原菌が分離されたことから,伐倒丸太から羽化した成虫は病原菌を媒介する可能性が示唆された。また,風倒木が発生している被害林分を調査した結果,ナラ類集団枯損被害は風倒木を中心に拡大していることが明らかになった。以上のことから,倒木の放置によってナラ類の集団枯損が拡大することが明らかになった。