著者
水野 由香里
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌 (ISSN:18820271)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.82-93, 2013-11-20 (Released:2017-08-01)

This study examines the requirements for the retention of collective strategy among multiple companies without profit reciprocity. In general, the joint order system, which is a collective strategy method, has collapsed because it results in conflicts of power and interests among members. In such cases, members use the system only to generate profits; thus, the joint order system becomes a zero-sum game. However, there are some cases, like Kyoto Shisaku Net, where the joint order system has proven successful. The success of such a system can be attributed to relationship building with the intent to improve the ability to yield valuable results and maintain a non-zero-sum standpoint. Through the case study of Kyoto Shisaku Net, we confirmed three major requirements that need to be fulfilled if the joint order system is to be retained as a collective strategy. First, members must share the purpose of the joint order system as a collective strategy. However, an important addition to this fact is that the members should consider the joint order system as an opportunity to explore and exploit, rather than use it just to earn profits. Second, members should acquire different unique technologies, which will enable them share their roles and expertise. This, in turn, can help evade the possibilities of cannibalization, power opposition, and system collapse. Third, as an extension to the first point, mechanism to control and avoid opportunism should be embedded in the system. On one hand, members contribute to the joint order system by paying annual fees and performing their duties. On the other hand, they receive returns in the form of an enhancement in the dispatch and collection of information as well as scope of proposal development, an improvement in personal skills, strengths, and competitiveness, better possibilities of skill conversion on possession of technologies, and increased creativity, all of which will be helpful for running their companies' businesses in future. Thus, the results obtained by participating members are based not just on independent efforts, but on a collective strategy.
著者
村井 政史 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.29-34, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
13

症例1は72歳男性で,重たいものを持ち上げるなどの重労働を約半年間行い,全身に痛みを自覚するようになった。肩の凝りと痛みが著明なことから葛根湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。 尿の出が悪化し麻黄の副作用と考え減量し,治療効果を高める目的で蒼朮と附子を加味したところ,体の痛みはほぼ消失した。症例2は53歳男性で,頚椎捻挫受傷や外科的手術歴があり,全身に痛みを自覚するようになった。左右の胸脇苦満が著明なことから大柴胡湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。便が出過ぎて日常生活に支障を来すため大黄を減量し,肩凝りが著明なことから葛根を加味したところ,体の痛みは消失した。線維筋痛症は治療に難渋することが多いが,煎じ薬ならではのさじ加減により,副作用を軽減し治療効果を発揮させることができた。
著者
長柄 毅一 三船 温尚 清水 康二 青柳 泰介 上杉 彰紀 西秋 良宏 田賀井 篤平 Ranganathan Srinivasa Shinde Vasant
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

錫を15%以上含む青銅合金は、鋳造法もしくは熱間鍛造法によって成形され、仕上げに焼き入れ熱処理が施されることから、我々はこれを熱処理型高錫青銅と呼んでいる。この技術は古くは古墳時代に日本へ伝来し、現在においてもアジア地域を中心に残されているが、その起源と伝播経路を明らかにするため、インドで出土した紀元前の遺物の成分分析や金相学的調査を行った。現時点で最も古いのは、メガリス期の遺跡から出土した銅鋺であり、紀元前1千年紀の前半には登場したことがわかった。
著者
西谷 直之
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

がん細胞の特定の分子を狙い撃ちする分子標的治療薬の登場で、がん治療は画期的な進歩を果たした。しかし、その多くはキナーゼと呼ばれる同族のタンパク質に作用する薬剤であり、薬剤の作用点は限られている。さらなる分子標的治療の発展のためには、キナーゼ阻害薬に並ぶ新たな薬剤やその作用点の同定が重要な課題である。本研究では、がん化に関連する細胞内情報伝達を阻害する天然由来の化合物を医薬品の原型に育て上げることを目的とする。この化合物は、キナーゼとは異なる情報伝達分子に結合するため、新規の分子標的治療薬の開発につながると期待している。
著者
金銅 英二
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.307-316, 2014-11-25 (Released:2015-12-23)
参考文献数
18

神経障害性疼痛は,知覚神経が機能異常を起こし痛みを惹起している.近年,神経障害性疼痛の発症メカニズムに関して様々で活発な研究が行われ,神経障害性疼痛に関与する神経伝達物質や関連分子が神経回路のどの部位でどう作用しているのか,その詳細が明らかになりつつある.正常状態の場合,知覚神経細胞は末梢で各種の刺激を受けると,その刺激情報は電気的な信号に変換され中枢へと伝えられる.一方,中枢側の終末では電気的な変化を受け,神経伝達物質が放出される。その物質が次の神経細胞の細胞膜上の神経伝達物質受容体に結合し,再び電気信号変換が惹起され,さらに上位中枢へと伝えられる.これらの電気信号変換や神経細胞間の伝達機構において,過剰興奮や過敏反応,脱抑制などが生じ,神経障害性疼痛が発症していることが明らかになってきたが,まだ全てが解明されたわけではない.現在までに明らかになっているメカニズムを概説し,神経障害性疼痛に対する理解を深め,臨床現場の様々な痛みへの最良の診断方法や治療法が一日も早く確立されることに期待したい.【顎咬合誌 34(3):307-316,2014】
著者
井上 豪 岡島 寛 浅井 徹
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集 第51回システム制御情報学会研究発表講演会
巻号頁・発行日
pp.101, 2007 (Released:2008-06-16)

4WS車両は,2WS車両では不可能な平行移動が可能であるなど,運動自由度が高い車両であることが知られている.このような制御対象で軌道追従を行う場合,冗長な自由度を適切に利用すれば,乗り心地や車両の安定性など,追従以外の性能の改善が期待できる.そこで本研究では,2つある入力自由度を追従に関する部分と性能改善に関する部分に分離することで,最適制御問題の枠組みで乗り心地などを考慮した制御を行う.その際,数値例により有効性の検証を行う.
著者
香川 哲也 小林 達則 上山 聰 岡林 弘樹 末光 一三 荻野 哲也
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.365-373, 2015-04-01 (Released:2015-04-17)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

症例は63歳の女性で,来院2時間前に軽度の間歇的腹痛を自覚した.同日排便がなかったことから便秘と判断し,浣腸薬を使用したところ,症状が増悪したため当院救急外来を受診した.理学的所見は乏しかったが,経過観察目的で同日入院した.発症9時間後,腹痛が増悪して持続痛となり,11時間後には意識レベルの低下と頻脈,頻呼吸が出現した.腹部単純造影CTにて,腸管気腫および門脈ガス血症を伴う,全結腸の高度拡張を認めた.S状結腸には4 cm大の便塊が認められ,宿便による閉塞性大腸炎,敗血症性ショックの診断にて緊急手術を行った.便塊による閉塞部から近位側の全結腸が壊死に陥っていたため,結腸亜全摘術および回腸人工肛門造設術を施行した.昇圧剤持続投与,エンドトキシン吸着療法などの集学的治療により救命しえた.宿便による閉塞性大腸炎の本邦報告例は,自験例を含めて13例のみと極めてまれであるため報告する.
著者
今井 匠太朗 淺田 義和 伊藤 彰 片野坂 俊樹 白鳥 成彦 高松 邦彦 松本 清 森 雅生
出版者
日本インスティテューショナル・リサーチ協会
雑誌
大学情報・機関調査研究集会 論文集 第12回大学情報・機関調査研究集会 論文集 (ISSN:24363065)
巻号頁・発行日
pp.66-71, 2023-11-19 (Released:2023-11-24)

データの可視化や分析の知識はIR担当者に必要な素養の1つである。効果的な意思決定のためには適切に処理されたデータ分析が重要であるが、このような能力に長けた人材は不足しており、IRの普及を困難にしている。この状況を踏まえ、IRで実践的に利用するデータサンプルを提供し、IRスキルの涵養や質向上を目指すプラットフォームを立ち上げる。データサンプルは合成データを配布し利用可能とする。この合成データに基づいたデータ分析のサンプルや教材の配布、またデータそのものの改善等を集約し、 IR人材の育成とその質向上を目指す。本稿では、プラットフォーム立ち上げの背景からコンセプト、将来構想について論述する。
著者
牧野 晶子 朝長 啓造
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

ヒトに致死性脳炎を引き起こすリス由来新型ボルナウイルス(カワリリスボルナウイルス;VSBV)は、新しい脅威となる人獣共通感染症の病原体である。本研究では、同ウイルスの病原性発現機構の解明を目的とした。VSBVと遺伝的に近縁であり、ヒトに低病原性と考えられるボルナ病ウイルス(BoDV)の組換え技術を応用し、高病原性のVSBVとのキメラウイ ルスを人工合成して、ラットにおける病原性を評価した。VSBVのX/P遺伝子を持つキメラBoDVは、野生型のBoDVと比較した高い致死率を示し、脳内ではサイトカ インの発現上昇が観察された。VSBVはBoDVよりも高い病原性を持つ可能性が示された。
著者
大江 秀樹
出版者
福井大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

下部尿路症状の中で最も生活に支障をきたす症状が夜間頻尿で、高齢者の多くにその症状がある。夜間頻尿の原因としては夜間多尿が最も大きな病因といわれている。われわれの研究室では抗コリン薬が夜間多尿を改善し、尿産生リズムを夜型から昼型へ戻す可能性を報告したが、そのメカニズムは解明できていない。しかし、腎機能や内分泌系への影響は否定的で膀胱自体からの尿が再吸収される可能性が示唆される結果が予備実験から得られた。その機序として、細胞膜を通して水分子を移動させる水チャネル分子であるアクアポリン(AQP)が関与していると考えた。このAQPと膀胱における水吸収との関係性を解明するために本研究を計画した。

1 0 0 0 週刊毎日

出版者
毎日新聞社
巻号頁・発行日
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著者
渋沢 三伸 矢野 一彦
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-5, 1990-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

Many authors described the clinical importance of asymmetry of the laryngeal framework. However, its pathogenesis is generally unknown. In this study, CT images of 315 Japanese subjects were investigated to define the laryngeal position relative to the midline of the cervical vertebra.The CT slice of each subject within 5mm cephalad of the cricoarytenoid joint was traced. Then, the deviation and rotation angles were measured using our method.Seventy one percent of the subjects' larynges deviated and/or rotated to the right side, while 17% to the left side. Six percent showed neither deviation nor rotation. As to the rest of 6%, deviation and rotation were in opposite directions. Besides, the length of the thyroid alae were measured in 282 subjects. Left ala was longer in 55%, and right was in 23%, and almost equal in 22%.The conclusions are as follows, 1. The majority of the subjects' CT images showed deviation and/or rotation of the laryngeal framework to the right side.2. So called idiopathic laryngeal deviation is a case which observed in those cases with remarkable deviation and/or rotation of the laryngeal framework.3. Aging seemed to be an important factor in accerelation of the laryngeal deviation and rotation.4. The type of diseases and the side of mass lesions had no statistical significance in deviation and rotation of the larynx.
著者
河本 正次
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.105-109, 2020 (Released:2020-03-17)
参考文献数
20
著者
近藤 康人
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.271-275, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
24

特定の花粉アレルゲンに感作されると,新鮮な果物や生野菜を摂取した際にIgE抗体の交差反応によって口腔内に限局した即時型アレルギー症状を来すことがある。この病態を花粉-食物アレルギー症候群(以下PFASと略す)という。症状は通常,口腔アレルギー症候群(以下OASと略す)の臨床病型を示す。我が国においてもカバノキ科花粉の飛散地域においてバラ科食物のPFASがみられる。一方,ヒノキ科花粉におけるPFASの原因アレルゲンはpolygalacturonaseファミリーによる報告のみであった。しかし近年,南欧でヒノキ花粉症患者にモモやオレンジのPFASが報告され,交差抗原性の原因としてgibberellin-regulated protein(以下GRPと略す)の関与が示された。そして2020年,本邦スギ花粉においてGRPが同定され,新規アレルゲンCry j 7として登録され,注目されている。
著者
赤松 礼奈
出版者
会計検査院
雑誌
会計検査研究 (ISSN:0915521X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.37-52, 2018-03-16 (Released:2022-03-25)
参考文献数
20

本稿は,大阪府内における粗大ごみ収集の有料化が排出量に与える効果を定量的に捉えることを目的とし,1998-2013年の市町村パネルデータを用いて分析を行った。限定された地域の調査ではあるが,42市町村と一定数の対象が確保され,また,収集手数料の変化などの有料化状況を正確に把握できるため,粗大ごみの排出量に与える影響を検証することができる。さらに,有料制と無料収集の自治体が府内に併存し,導入時期に差異があることが活用できるため,差分の差推計が可能である。収集手数料を代理する変数として,任意の3種類の粗大ごみの廃棄を想定しその費用の1㎏当たりの収集手数料を用い,頑強性の確認のため,他の指標も用いた。主要な説明変数は収集手数料,コントロール変数は先行研究にならい,昼間人口比率,平均世帯人員,一人当たり所得とした。推計の結果,有料化の導入が粗大ごみの排出量を有意に低下させることが示された。価格弾力性はおよそ-0.3となった。 本稿の貢献のひとつは,粗大ごみ収集サービスの価格弾力性を,私の知る限り,国内外の研究として初めて推計したことである。価格弾力性推計値はおよそ-0.3であり,これは家庭系一般ごみの先行研究の推計値より高い。理論的に,家庭系一般ごみよりも粗大ごみには代替的な排出手段が多いため,代替効果により価格弾力性は高くなると予想されるが,まさに理論的予想を確認する結果となった。