著者
青木 伸一 水野 亮 岡本 光雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1036-1040, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
4
被引用文献数
3 5

夏期に底層で貧酸素化が著しく進行する猪鼻湖において, 長期間の継続的な観測に加えて, 自動昇降装置を用いて水温, 塩分, DOの鉛直分布の連続観測を行った. 期間中台風の来襲があり, 強風による密度成層の破壊と淡水流入による成層の再形成が交互に生じ, これに伴って底層の貧酸素水塊にも解消・再形成の過程が観測された. 本論文では, この変化過程を示し湖水の貧酸素水塊の消長と密度構造の変化の関係について論じている. 急激な鉛直混合と底層での速い酸素消費により貧酸素水塊がダイナミックに変動していることが示されている.
著者
福田 友美子 田中 美郷
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.17-26, 1986-12-29 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

6〜11歳の聴覚障害児40名(平均聴力レベル50〜130dB)を対象にして、文のイントネーションと単語のアクセントを検査材料に用いて、発話の音声サンプルを録音した。それらの基本周波数を観測し、疑問文と平叙文の分末の音程の変化の差や単語のアクセント型による前後の音節の音程の変化の差を分析した。一方、各検査項目についての発話の品質を、聴覚的に判定して、正しい発話と誤った発話とそれらの中間の発話に分類した。そして、これらの音響的分析の結果に基づいて、標準的な発話の場合の音声の性質を参照して、正しい発話の領域を設定すると、聴覚的判定の結果と良く対応した。従って、このような音響的分析の結果から、文のイントネーションや単語のアクセントの品質を客観的に評価できることが示されたことになる。さらに、このような評価方法より得られた結果と対象児の聴力レベルの特性との関係を調べたところ、発話の声の高さの調節は低い周波数域の聴力レベルと密接に関連しており、250Hzと500Hzでの聴力レベルで境界を設定することによって、高さの調節能力を予測できることが示された。
著者
宮澤 靖
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.1065-1070, 2009 (Released:2009-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年、高齢者が増加し今後、日本は今までに経験をしたことがない高齢化社会を迎えようとしている。それに伴って、従来施行されてきた栄養サポートの理論が少しずつ変化してきている。特に高齢者の場合は、潜在的に生理機能が低下し栄養サポートでは極めて重要な「骨格筋」が減少して、器質性多疾患に陥っている患者が散見される。高齢者の栄養サポートのポイントは「動いて食べる」ことにつきるが、認知症の発症にて食行動の意欲が減少したり、長期臥床において十分な体動が得られない症例も少なくない。特に体動の少ない高齢者や長期臥床患者においてはエネルギー提供量の過不足による新たな問題も生じるため慎重に検討しなくてならない。本稿においては、高齢者の栄養学視点から見た特徴や従来、多くの施設で施行されているエネルギー必要量の算出式の問題点、身体計測等を概説する。
著者
和田 実 荒川 修 高谷 智裕 柳下 直己 井口 恵一朗 太田 貴大 宇都宮 譲
出版者
長崎大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

メコン川流域における淡水フグの有毒性は広く知られているものの、野生の淡水フグにおける毒性の強弱や組成に関する知見は著しく断片的なままである。メコン側流域各国では、地元自治体が危険性を啓発しているにもかかわらず、流域住民のフグ食は止まらず、中毒による健康被害が社会問題化している。本研究は、フグ食中毒被害が顕著なカンボジアにおいて、被害多発地域に位置する新設大学と連携し、淡水フグの種類と毒性の季節変化、毒化機構、ならびに住民のフグ食に対する潜在的な需要を明らかにし、淡水フグの無毒化養殖を試行する。
著者
黒川 洸 谷口 守 橋本 大和 石田 東生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.121-126, 1995-10-25 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2

SPRAWL AREA HAS FORMED BY RAPID URBANIZATION IN METROPOLITAN SUBURBAN AREA. INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT, SUCH AS PROVIDING ROAD, PARK AND SEWERAGE BECOME VERY DIFFICULT AND INEFFICIENT, IF SPRAWL AREA HAS ONCE FORMED. THIS RESEARCH AIMS TO CALCULATE THE EFFECT OF COST REDUCTION BY EXECUTING PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT BEFORE OUTBREAKING URBAN SPRAWL. INCREASE OF PROPERTY TAX BY PRE-INFRASTRUCTURE IMPROVEMENT IS ALSO CALCULATED. IT IS CLARIFY THE COMPENSATION COST ACCOUNT FOR LARGEST PART OF ALL COST REDUCTION.
著者
清水 真由美
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.341-350, 2021-10-08 (Released:2022-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
3

外国人技能実習生の来日後の健康問題と対処行動を明らかにするために,6名の外国人技能実習生に半構造化インタビューを実施した。逐語録を作成し,研究参加者が経験した特徴的な健康問題と対処行動について,事例ごとにまとめた。さらに,すべての事例について,インタビューガイドの項目ごとに,質的帰納的に分析し,各項目の特徴を示した。特徴的な健康問題は,食欲不振・体重減少,寒冷じんましん,凍瘡(しもやけ),月経痛・膀胱炎,智歯周囲炎,副鼻腔炎であった。質的帰納的に分析した結果,外国人技能実習生は,来日後の健康問題として,【日本の気候風土に起因する健康問題】,【仕事に起因する健康問題】,【環境の変化に起因する健康問題】,【既往症の再発】を経験していた。健康問題発現後の対処行動としては,【母国の医薬品の使用】,【セルフケアによる健康状態の改善】,【信頼できる人への相談】,【医療機関の受診】があった。また,受診後の行動には,【服薬アドヒアランス行動】,【予防的な保健行動】,【高額な医療費による治療継続の断念】があった。日本の気候風土・仕事・環境の変化に起因する健康問題に対して,基礎的な知識,予防や初期段階での対処方法について健康教育や保健指導などにより啓発し,疾患の予防や初期段階での適切な対処行動がとれるように支援することが重要である。
著者
岩下 康子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.69-77, 2018 (Released:2020-09-10)
参考文献数
21

本稿は、帰国技能実習生の調査活動をもとに、外国人技能実習制度(以下「技能実習制度」)が彼らに与えた影響についての一考察である。外国人労働者受け入れに関しては受け入れの是非を問う議論が1980年代に盛んに行われた後収束し、制度上の問題、実習生の人権問題や受け入れ企業の実態が議論の的となってきた。2010年度に法改正が行われ、実習生の労働者性が認められた後も、悪質な労働環境等がメディアに取り上げられ、人材育成は建前であるというイメージが定着したままである。一方、帰国した実習生たちのその後に関する研究は少ない。本稿は、帰国したインドネシア実習生を対象とし、技能実習経験がその後の彼らの人生にどのような影響をもたらしたかを考察する。方法としては、半構造化面接を用い、被調査者の了解を得てビデオに収め逐語記録を作成、分析を行った。技能実習によって、彼らは技能獲得以上に、日本語と日本人の勤勉さと追究心、仕事に対する情熱を学んだことがわかった。
著者
永山 功
出版者
一般社団法人 ダム工学会
雑誌
ダム工学 (ISSN:09173145)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.243-248, 2018-12-15 (Released:2018-12-26)
参考文献数
4
被引用文献数
2

フィルダム,盛土,斜面の安定計算には円弧すべり法が広く一般に用いられている。しかし,その理論は意外と正しく理解されておらず,誤った使用例もときおり見受けられる。本稿は,円弧すべり法の原理に立ち返って理論的再考察を行い,その正しい使用法について論じたものである。
著者
福盛 貴弘 金濱 茉由
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-24, 2019-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
21

本稿では、エセ大阪弁の音声学的特徴について記述することを目的としている。エセ大阪弁とは、日常的に使われていない語形や音調によって、大阪弁話者が違和感を覚える言葉を指す。大阪弁話者がエセ大阪弁を受けつけない理由として、音調における社会的機能が挙げられる。こういった背景をふまえて、言語形成地を東日本で過ごした被調査者10名を対象として、提示した文を自身が考える大阪弁の音調で読んでもらった。結果として、句音調が負の言語転移となる、式音調が脳内辞書に入っていない、アクセントの下がり目の位置を意図的に変えてしまうといった要因が、エセ大阪弁の音調を構成する要因となっていることが検証された。
著者
久保田 裕道 本林 靖久
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

危機的状況にあるブータンの祭礼芸能の変容実態と、その要因となる社会的環境の変化とを民俗学の手法を用いて調査・分析を行い、画像・映像を併用した報告書を作成する。対象は、タシガン県メラ村を中心とし、その他ブータン各地の事例との比較も行う。方法としては、現状を①形態的変容、②意味的変容、③縮小・休止・廃絶等に分類し、その要因を(a)伝承的必然性(b)社会的要因(c)精神的要因(d)活用的要因等に当てはめて分析を行う。その上で分析結果が、祭礼芸能の保護にどのように結びつくのかを併せて考察し、最終的な無形文化遺産保護の提言につなげる。また、現状での新型コロナウイルス感染症による変容実態をも検証する。
著者
勝俣 昌也 石田 藍子 豊田 裕子
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.164-172, 2013-12-26 (Released:2014-05-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

生産現場で栽培した飼料用米の化学組成の情報をえるために,国産飼料資源活用総合対策事業に参加した17協議会から,平成20年と平成21年産の飼料用米(玄米が14品種25サンプル,籾米が10品種17サンプル)を入手して分析した。さらに,保管条件による酸化劣化の程度を明らかにするために,玄米と籾米を28°C相対湿度80%の条件で保管して脂肪酸度の変化を調査し,4°Cで保管したときと比較した。測定したすべての玄米の化学組成と籾米の化学組成のあいだに差があった(P<0.01)。総エネルギー,粗蛋白質,粗脂肪,総リンの含量は玄米のほうが高く,粗灰分,カルシウム,NDF の含量は籾米のほうが高かった。さらに,玄米の必須アミノ酸含量のほうが,籾米の必須アミノ酸含量よりも高かった(P<0.05)。また,調査した玄米と籾米の粗蛋白質含量と総リン含量には正の相関があった(P<0.05)。28°C相対湿度80%で保管すると4°Cで保管するよりも脂肪酸度が高く(P<0.01),玄米として保管するほうが籾米として保管するよりも脂肪酸度が高かった(P<0.01)。28°C相対湿度80%で保管しても,籾米であれば脂肪酸度は変化しなかった。玄米と籾米の粗蛋白質含量と総リン含量の正の相関は,施肥量が多いと粗蛋白質含量が高くなったことを示唆している。保管中の酸化劣化の結果は,常温で保管するなら,籾米で保管するのが望ましいことを示唆している。
著者
Takuhiro Moromizato Ryoto Sakaniwa Takamasa Miyauchi Ryuhei So Hiroyasu Iso Kunitoshi Iseki
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.390-397, 2023-08-05 (Released:2023-08-05)
参考文献数
31
被引用文献数
2

Background: Serial weight decrease can be a prognostic predictor in chronic hemodialysis (HD) patients. We investigated the impact of long-term post-HD body weight (BW) changes on all-cause mortality among HD patients.Methods: This longitudinal cohort study and post-hoc analysis evaluated participants of a previous randomized controlled trial conducted between 2006 and 2011 who were followed up until 2018. Weight change slopes were generated with repeated measurements every 6 months during the trial for patients having ≥5 BW measurements. Participants were categorized into four groups based on quartiles of weight change slopes; the median weight changes per 6 months were −1.02 kg, −0.25 kg, +0.26 kg, and +0.86 kg for first, second, third, and fourth quartile, respectively. Cox proportional hazard regression was used to evaluate differences in subsequent survival among the four groups. BW trajectories were plotted with a backward time-scale and multilevel regression analysis to visualize the difference in BW trajectories between survivors and non-survivors.Results: Among the 461 patients, 404 were evaluated, and 168 (41.6%) died within a median follow-up period of 10.2 years. The Cox proportional hazard regression adjusted for covariates and baseline BW showed that a higher rate of weight loss was associated with higher mortality. The hazard ratios were 2.02 (95% confidence interval [CI], 1.28–3.20), 1.77 (95% CI, 1.10–2.85), 1.00 (reference), and 1.11 (95% CI, 0.67–1.83) for the first, second, third (reference), and fourth quartiles, respectively. BW trajectories revealed a significant decrease in BW in non-survivors.Conclusion: Weight loss elucidated via serial BW measurements every 6 months is significantly associated with higher mortality among HD patients.
著者
保住 純 和泉 潔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-028, pp.56, 2022-03-12 (Released:2022-10-21)

For traders, it is important to minimize execution costs and achieve more efficient order execution. Since the mechanisms for incurring costs are unclear, being able to properly account for them will lead to lower execution costs and higher revenues. In order to achieve order execution with minimal costs, methods that model and infer market principles have been used. In recent years, model-free offline reinforcement learning methods have widely been utilized. However, the data on financial instruments contains a lot of noise, which makes learning hard and makes it difficult to converge to the optimal trading method. In this paper, we propose an optimal order execution method that improves performance by imposing constraints on the model. Through experiments, we have found that by imposing appropriate constraints, we can improve the performance of the optimal order execution method. We show that by setting appropriate constraints, we can achieve improved order execution compared to conventional methods.