- 著者
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鈴木 勉
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.150, no.3, pp.124-128, 2017 (Released:2017-09-09)
- 参考文献数
- 8
覚せい剤,麻薬及び向精神薬などの規制薬物の化学構造の一部を改変し,規制を免れているのが「危険ドラッグ」である.当初デザイナー・ドラッグや合法ドラッグと呼ばれていたが,紆余曲折を経て現在は「危険ドラッグ」と呼ばれている.そこで,「危険ドラッグ」誕生までの経緯につてまず解説する.また,「危険ドラッグ」は日本で用いられている用語であり,海外では主にnew psychotropic substances(NPS)と呼ばれているので注意が必要である.「危険ドラッグ」の明確な定義はないが,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」において,「指定薬物」は「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む)を有する蓋然性が高く,かつ,人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として,厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの」と定義されている.指定薬物と「危険ドラッグ」は同じではなく,「危険ドラッグ」の方が指定薬物より広い意味があると思われる.「危険ドラッグ」も依存性薬物であり,乱用の流行,さらに規制との関係で数々の「危険ドラッグ」が販売されては消えてゆく.そこで,「危険ドラッグ」の種類とその年次推移についても紹介する.さらに,「危険ドラッグ」は中枢神経系に作用して興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を示す物とされている.そこで,その薬理作用についても解説する.