著者
西村 伸子
出版者
東亜大学
雑誌
東亜大学紀要 (ISSN:13488414)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.17-34, 2009-01

キューブラ・ロスのOn Death and Dyingは1969年に発表され,アメリカの医療界だけでなく世界中に衝撃を与えた。アメリカでは,それ以後,死にゆく患者へのケアの取り組みが始まった。ロスの発表から30年以上を経て,この著書の中に示されている死までの5段階プロセスは,アメリカではどのように評価されているのだろうか。さらに,死にゆく患者への取り組みが直ぐに推し進められた背景にはどんなことがあるのか。一方,日本ではロスの5段階プロセスをどのように捉えてきているのか。日本が死にゆく患者への取り組みに遅れた理由は何か。これらを論証するために,ロスの5段階プロセスを基軸にしてアメリカと日本の文献から検討し,論じることにした。ロスの5段階プロセスについては,アメリカではこの30年間に各方面からの研究者によってその妥当性が論じられ研究が重ねられてきている。アメリカでは1960年代,活発な公民権運動が医療の分野にも波及した。さらに1970年代では,人格の尊重が医療倫理の指導原理となった。このような時代の流れの中でOn Death and Dyingは発表され,アメリカでは死に対する反省の契機となった。以後,死にゆく患者のケアは急速に進んだ。日本では1972年にOn Death and Dyingが翻訳されている。以後,ロスの死にゆく患者の5段階プロセスが医学書や看護の書籍で紹介され始めた。それは,2000年以後も記述にはあまり変化なく紹介されている。日本は,大戦後アメリカ医療への遅れを取り戻すための努力が継続され,先端医療の導入が最優先された。1990年代から少しずつ患者の人権尊重が意識され始め,2000年頃から,死にゆく患者へのケアが急速に論じられるようになった。死にゆく患者への取り組みとしては,アメリカに比較して約30年の遅れを生じることとなった。
著者
山本 秀樹 甲斐 郷子 大里 真理子 椎野 努
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.849-860, 1990-06-15
被引用文献数
9

本論文では 会話シミュレーションを基にした語学訓練用知的 CAI システムにおいて 学習者に適切な指導を行うための意図の理解とそれに基づいた会話制御を行う方式について述べた.本システムを使用する学習者は シミュレートされている場面に関係した意図だけでなく 英語の知識に関した意図を持つ.この意図が 明示的に示されない場合 システムは それを学習者の誤り 発話文の表層の情報などから理解しなければならない.学習者の意図を考慮した発話を行うために システムの会話制御部を シミュレーション会話制御部 教育会話制御部 および会話制御切替部から構成する.シミュレーション会話制御部は 目標指向の会話モデルに基づいた会話を制御する.発話の中に 目標-副目標関係 目標-手段関係が検出できる場合は 発話は会話の流れに沿っているといえる.会話制御切替部は 学習者からの教育会話の要求や 会話の中の誤りによって教育会話を起動する.教育会話は 学習者の誤った知識を正すなどの教育目標を連成すべく制御される.教育会話の目標が達成されたら 教育会話が起動される以前のシミュレーション会話に制御を移動する.本方式により 従来のシステムと比較して柔軟な教育が可能になり学習効果が向上する.本システムで採用した会話制御部の構成は シミュレーション会話制御部を他の教育対象のシミュレータと入れ換えることにより 英会話以外の知的 CAI システムに対しても応用可能である.
著者
前田 優 小林 三世治 真柄 俊一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.229-237, 1990-12-15

保険診査時の血液検査の一項目としてフルクトサミン(FA)を導入した。FAは採血時の1-3週前の平均血糖濃度を反映しているといわれている。今回,糖尿病などの糖代謝異常疾患の医学的選択資料のひとつとして利用できるかを検討した。過去ならびに現在に尿糖陽性,糖尿病,およびその疑いのあった153例のうちFAが異常値を示したものは51例であった。FAとヘモグロビンA1(HbA_1)との相関係数は0.828と強い関連を認めた。尿糖(±)以上の群ではFA,HbA_1の平均値はすべて異常値を示し,尿糖(-)群でもそれぞれ17%,15%の例で異常値を示した。今日までに血糖コントロールの指標としてHbA_1の信頼性は十分確立されてきた。しかし,生命保険診査という限られた状況において,他の生化学検査と同一試験官で採血できるFAで,HbA_1と同程度の情報を得られるなら,利便性,コストの面からFAの方がメリットがあると考えられる。
著者
Munby Ian
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学人文論集 (ISSN:09199608)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.133-145, 2004-07-31

日本の大学におけるスピーキングテストについての問題点・選択肢・提案 英語の授業でスピーキングテストを効果的に行うことは教師にとって非常に難しい。日本の大学において,大勢の同等レベルの学生の場合ではさらに困難である。この論文の目的はそれに関係する重要な問題点を明らかにし,いくつかのテストの例を提示した。内容は,北海道の大学の英語教師25名による彼らが好んで用いるスピーキングテストに関してのアンケートのデータを用い,テスト様式,実行方法,評価方法を収めた。それをサポートとするものとして,大学生にテストを行った自分自身の経験,公的な英語試験のスピーキング試験官としての経験,言語テスト理論についての文献を利用した。最後にテストについてのアイディア・提案を示した。
著者
井村 洋一
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02869756)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-7, 1979-03-31

本紀要:第5巻に記載したように、試験管中に長期間培養されたゾーリムシに対し、100KHz程度の脈流はその分裂能力を顕著に促進することが認められた。この現象は空気以外は閉塞された試験官中の単細胞生物に関するものではあるが,一般に多細胞生物の加齢はその細胞の分裂能力と相関するといわれるので,本報文は以上の細胞レベルにおける電気的効果は,これを酵素による分子レベルで意味づけようとするならばどのような現象が想定されるであろうかということを,枯草菌α-アミラーゼを用いて実験的に推理したものである。結果として,細胞内に対イオンとして最も多量に存在するK^+はNa^+に比較してα-アミラーゼに不可逆的に結合し,その活性を阻害する性質が強いこと、さらにこの阻害はパルス電場によって復活させうることが認められた。
著者
藤井 春三
出版者
公益社団法人日本航海学会
雑誌
航海 (ISSN:0450660X)
巻号頁・発行日
no.26, pp.8-12, 1967-09-25
著者
北村 一親 KITAMURA Kazuchika
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
アルテスリベラレス (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
no.83, pp.1-27, 2008-12

かつては言語学者が言語の起源を追究することは学界において世界的に忌避されており,50年ほど前の日本の言語学会においても同様で,鈴木孝夫が記号論的視点から「鳥類の音声活動」と題する講演を行った際,出席者から「たしか100年前にフランスの言語学会で,人類言語の起源は今後言語学では一切扱わないことを宣言したが,それを知っていますか」という旨の質疑を受けたという。2 bis) しかし,時は移り,幸いにも現在ではこのような軛から解放されて言語の原初の姿を模索する様々な試みがなされるようになってきており,例えば,手話言語3) やクレオール諸語4) に言語の原初形態を見出そうとする動きがある。筆者は将来的にクレオール諸語における注目すべき諸点を考察するために,さまざまなクレオール諸語,すなわち大航海時代および植民地主義時代の所産であるフランス語,英語,ポルトガル語やオランダ語(そしてこれらの諸言語に付け加えるならばスペイン語やその他の非印欧語)を基体とするクレオール諸語を言語の原初形態を探求しうるのかどうかも含めて研究することを企図している。しかし,研究を始めるにあたり「クレオール語」を定義する必要があり,またその前に統一的な理解が難しい「クレオール」という概念の検討が必要不可欠と考え本稿を起稿する次第である。なお,クレオール諸語の中でも特にカリブ海に浮かぶ大アンティル諸島イスパニョーラ島の西3分の1を占め,1804年にラテンアメリカで最初に独立したハイチ共和国の国語であるハイチ・クレオール語およびフランスの海外県である小アンティル諸島のマルチニーク,5) グワドループ等におけるフランス語を基体とするクレオール諸語(フランス語系クレオール語)を他のクレオール諸語と比較することを中心に据えたいので本稿の欧文標題をハイチ(・クレオール)語で表した。また,本稿標題が「クレオール語で」という表現で止めているのは今後の研究も想い描きながら,この言語,すなわち「クレオール語」であらゆる可能性を示したいという筆者の願望の故であることをここに明記しておく。
著者
北村 文雄 野田坂 伸也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.32-37, 1975-03-20
被引用文献数
2

イ)造園樹木の生長におよぼす土壌硬度の影響を知るために,イチョウおよびオトメツバキを用いて実験を行った。ロ)供試樹木の地上部の生長は,高硬度区は悪く,年代を経るにしたがってその程度がいちじるしくなる。低硬度はむしろ生長がよい。地下部も同様の傾向を示し,高硬度区で生長は悪いが,予想以上に根は伸長し,また,地下部発達度(地下部/全体(花葉を除く))も大きい。低硬度区は根の状態はよいが,地下部発達速度は小さい。低硬度区が生長がよい原因は,土壌が適度に固いために根がよく土壌を把握し,効率よく働いているためであると考えられる。ハ)イチョウにおいては,高硬度区は落葉が早く,低硬度区は逆に遅くなる現象がみられた。また,オトメツバキにおいては,高硬度区は花蕾が年代が新しいうちはよく生じ,また低硬度区では花蕾が非常によく生ずる。これらは植物体内の栄養条件に関係があるとみられる。ニ)土壌水分については,高硬度区は乾燥しやすく,雨後一時間に水分含量が多くなってもその後の乾燥も早い。低硬度区は比較的よく水分を保持している。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.52-62, 1988-10

1982〜1987年に,竜ヶ崎市流通経済大学構内において,1日13回の帯状センサス法を用いて,チョウの日周活動性の調査が行われた。4〜10月にかけて計26回の調査で,7科44種10,782個体が目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての日周変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査時間帯への個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,二つの活動時間帯と二つのチョウ群集を分類した。2.早朝および午後遅くから夕刻にかけての時間帯は,サトキマダラヒカゲ,ヒメジャノメに代表される好陰地性群集の活動の場である。3.日中の時間帯は,ヤマトシジミ,ヒメウラナミジャノメ,オオチャバネセセリ,アゲハ,イチモンジセセリ,モンシロチョウ,アオスジアゲハ,ツバメシジミ,コミスジに代表される好陽地性群集の活動の場である。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-20, 1995-03

1986年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科44種3,091個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=2,048),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(オープンランド,モザイク,森林)と二つの群集(オープンランド群集,森林群集)を区別した。2.耕作地とその周辺域には,モンシロチョウ>ヤマトシジミ>キタテハ>イチモンジセセリが優占する計18種からなるオープンランド群集が成立していた。3.森林には,オオチャバネセセリ>ヒカゲチョウ>キチョウ>ゴイシシジミ>アゲハ>>ヒメウラナミジャノメ>サトキマダラヒカゲ>コチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ>コミスジを優占種とする計26種を含む森林群集が成立していた。4.これら二つの群集の移行帯的性格をもつたモザイクが第三の環境として区別され,オープンランド群集と森林群集の混合体となつていた。5.種数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,個体数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,多様性については,両群集ともにモザイク>森林>オープンランドの順となった。6.1986年には,調査地にある森林の一部が造成地に変わったため,そこではチョウは生息不能となったが,全体としては目撃種数,目撃個体数ともに増加し,特に,造成地に隣接する森林では特定の種の集中化が見られた。全体として,1985年の環境変化から回復傾向にあるが,以前の状態とは大きな違いがある。
著者
翠川 三郎 藤本 一雄 村松 郁栄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
no.1, pp.51-56, 1999-11
被引用文献数
34

The correlation of the new J.M.A. instrumental seismic intensity with the former J.M.A. Seismic intensity and ground motion parameters is examined. The 215 strong-motion records with the intensity of 0 to 7 are used for the analysis. The instrumental seismic intensity computed from the records agrees well with the former seismic intensity determined from human response or observation of damage. The instrumental intensity shows slightly higher correlation with peak ground velocity than peak ground acceleration, and shows highest correlation with the parameters such as the product of the peak velocity and the peak acceleration.
著者
加藤常員 小沢 一雅
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.1950-1959, 1996-11-15
被引用文献数
3

分類操作は 大きく階層的分類と非階層的分類に分けられ それぞれに多くの手法(クラスタリング手法)が提案されている. 本論文では 多値の遺伝子表現を採用した遺伝的アルゴリズムに基づく非階層的クラスタリング手法を提案する. 一般にクラスタリング手法は クラスタの評価基準および分類の具体的な手順を定めるものである. 非階層的クラスタリング手法では データを k 個のクラスタに分割する際 分割数 k は与えられるか 手法の一部として決定される. 非階層的クラスタリング手法の主たる戦略として まず仮のクラスタ分割を与え 評価基準がよりましな分割に逐次改良していく方法(分割最適化法)がある. この方法では 初期の分割あるいはクラスタの核といった初期条件が最終の分割結果に根本的な影響を及ぼし ときとして局所最適解(分割)に陥る場合も多い. 一方 遺伝的アルゴリズムは 局所最適解を回避することができる多点探索の特長を持っている. 本研究は 遺伝的アルゴリズムの多点探索能力をいかし ロバストな非階層的クラスタリングの実現をめざすものである. 提案する手法は 優性遺伝をモデルとした新たな遺伝的アルゴリズムによって構成されている. 本手法の特性を確認するため 分割最適化法の代表的な手法である k-means 法に基づく比較実験を行った. 実験では 2変量データ(点配置パターン)を用い 評価基準は平方和分解の原理に基づくクラスタ内平方和の総和を採用した. 実験結果として 在来の手法では数%しか最適な分割を得ることができない対象に対して 本稿で提案する手法によれば 80%に近い割合で最適な分割が得られることを確認した.This paper treats a clustering procedure by using the genetic algorithm. As is well-known, existing clustering procedures are classified into two types; i.e., hierarchical and non-hierarchical types. In this paper, a non-hierarchical clustering procedure based on the genetic algorithm has been presented. We call it GA procedure. Our GA procedure can be characterized by its strong power of the multi-point search. From this, the probability to obtain the optimum solution can be made higher than existing procedures. In our experiment, the GA procedure and a typical existing procedure for the so-called k-means method have been compared in terms of probability to obtain the optimum solution and other related aspects. For three kinds of experimental point patterns, the GA procedure had shown its robustness in searching the optimum solution.
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-16, 2005-07

1991年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科39種1,713個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=1,552),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.目撃総個体数5以上のチョウ31種の19の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(人家周辺域,荒地森林)と二つの群集(森林群集オープンランド・モザイク群集)を区別した。2.森林やそれと隣接する荒地では,ヤマトシジミ>アゲハ>オオチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ=イチモンジセセリを優占種とする計23種が森林群集を構成していた。3.荒地や人家周辺域には,キチョウ>モンシロチョウ>キタテハ>ツバメシジミを優占種とする16種からなるオープンランド・モザイク群集が成立していた。4.種数個体数ともに過去10年間の最低となったが,オープンランド・モザイク群集の台頭と優占種への目撃個体数の集中度合いが減少し,均等性が増大した結果多様性はむしろ上昇した。
著者
川西 武夫
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.872-890, 1932

ぐるくろん酸ガ化學上葡萄糖ノ酸化物ナルハ既ニ多數ノ學者ニヨリテ定メラレ,生體内ニ於テモソノ成生ハ葡萄糖ヨリ來ルト一般ニ假定セラル.サレドぐるくろん酸ガ葡萄糖以外ノ物質ヨリ成生セラルヤ否ヤニ付テハ未ダ解決セラレズ.サキニ私ハ家兎ノ飢餓實驗ニ際シぐるくろん酸ガ葡萄糖ノミヲ唯一ノ源泉トセズ,直接又ハ間接ニ蛋白ヲモ母體トスル事實ヲ確證セリ.今コノ事實ヲ更ニ追及センガタメふろりぢん糖尿犬ニ付テ實驗シ次ノ成績ヲ得タリ.1)飢餓犬ニふろりちん及ビあどれなりんヲ注射シテ肝臟並ビニ筋肉ニ於ケルぐりこげん量ヲ最少限度ニ消耗セシメタル後,かんふるヲ注射スルニ尚尿中かんふをぐるくろん酸ノ排泄セラル丶ヲミタリ.即チかんふるト結合スベキぐるくろん酸ハ葡萄糖又ハぐりこげんノミナラズ,他ノ體物質(蛋白及ビ脂肪)ヲモ母體トスルヤ明ナリ.2)犬ヲ3-4日間飢餓セシメ毎日ふろりぢんヲ注射スルモ尚夥シキぐりこげん量ヲ動物體内ニ保有ス.何トナレバ該動物ニあどれなりんヲ注射セバ尿中多量ノExtrazuckerヲ排泄スレバナリ.サレドカクノ如ク處置シテ該動物ハ肝臟及ビ筋肉ニ於ケル最後ノ糖源貯蓄ヲ固渇シ,更ラニ第2ノあどれなりん注射ハ最早Extrazuckerノ排泄ヲ起サザルニ至ルヲミタリ.3)正常犬ガかんふる注射後排泄セシ尿ニ酵母ヲ加ヘテ醗酵セシメ糖ノ消失シタル後,かんふおぐるくろん酸ハ旋光法又ハ還元法ニヨリテ定量セラル.サレド酵母ノ作用時間長キニ亘レバ短キモノト比シ光學檢査ニヨル左旋度ハ却ツテ増加シ,鹽酸ヲ以テ加水分解セル後ノ還元力ノ増加ハ益々減少スルガ如シ.4)ふろりぢん糖尿犬ノ尿ヲ酵母ニヨリ醗酵セシ後ニ多少トモ左旋度ヲ示ス.該左旋度ハふろりぢんト同時ニかんふるヲ注射シテ排泄シタル尿ヲ酵母ニヨリ同樣ニ操作セシモノヨリ遙カニ弱シ.サレド何レノ場合ニ於テモ鹽酸ヲ以テ加水分解セル後ノ還元力ハ加水分解前ト比シ増加セズ.サレバふろりぢん糖尿犬ノ尿中ニ存スルかんふおぐるくろん酸ノ實在ハ,醗酵試驗ニヨルモ不可能ニシテ,鉛錯及ビあんもにあくニヨリ沈澱セシメ還元法ヲ應用シテ初メテ證明スルヲ得タリ.5)犬ヲ飢餓トふろりぢん及ビあどれなりんヲ以テ處置シ肝臟並ビニ筋肉ニ於ケルぐりこげん量ヲ最小限度ニ消耗セシメタル後,尚飢餓ノミ6日間繼續セシメふろりぢん糖尿ノ止ムニ至リテかんふるヲ注射スルニ尿中排泄セラル丶かんふおぐるくろん酸ノ量ハ該動物ガ普通食ニ際シテ同量かんふるノ注射ニヨリ形成セシかんふおぐるくろん酸ノ量ト殆ンド同量ナリ.即チ飢餓犬ニ於テかんふるト結合スベキぐるくろん酸ハ直接又ハ間接ニ蛋白或ハ脂肪ヨリ發生スルヲ知レリ.
著者
川西 武夫
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.289-302, 1932

かんふるヲ注射セシ犬ガ尿中ニ排泄スルかんふおぐるくろん酸量ニ關シ,サキニ宮崎氏ガ旋光法ヲ以テ測定セシモノト,千葉氏ガHandel氏ふるふろーる蒸溜法ニヨリテ定量セシモノトノ間ニハソノ成績ニ著シキ相異アリ.余ハコノ相違ガ實驗方法ノ異ナルニヨルベキヲ想倒シ,先ヅ健康ナル人間及ビ家兎ノ尿ニツキ,又Neuberg u. Lachmannニ從ヒめんとーるヲ以テ中毒セシ家兎ノ尿ヨリ分離シタル純粹ノめんとーるぐるくろん酸ニツキ,更ラニ又めんとーる又ハかんふるヲ與ヘ當該抱合ぐるくろん酸ヲ含ム家兎ノ尿ニツキ夫々旋光法,還元法,並ビニHandel氏ふるふろーる蒸溜法ヲ應用シソノ成績ヲ比較研究シテ次ノ成績ヲ得タリ.1)健康ナル人間又ハ家兎ノ尿ハ光學的否活動性ナルカ又ハヨハキ左旋性ヲ示ス(-0.01-0.022°).該尿ハ僅カニ還元能力ヲ有シ(葡萄糖ニ換算シテ0.005-0.042%),且多クノ場合鹽酸ヲ以テ加水分解ヲ行ヘル後ニ還元物質ノ増加ヲ示ス.旋行法及ビ還元法ハ共ニ尿中ニ存スル抱合ぐるくろん酸ヲ他ノモノト區別シテ定量シ能ハザルモ,Handel氏法ニヨリテハ人間ノ尿100ccm.中5-10mg.家兎ノ尿100ccm.中4-15mg.ノぐるくろん酸らくとん量ヲ正確ニ定量シ得タリ.2)純粹ニ分離セシめんとーるぐうん酸(溶解點110°)ノ種々ノ濃度ノ溶液ヲ作リテ檢スルニ旋光法ニヨリ0.02-1.0%濃度ニ於テ正シキ含有量ヲ,還元法ニヨリ0.2-1.0%濃度ニ於テ正シキ含有量ノ70-80%ヲ測定シ得タリ.然ルニHandel氏法ニヨリテハ0.1-1.0%濃度ニアリテ正シキ含有量ノ僅カニ4-22%ヲ定量シ得タルノミ.而シテコノ際應用セヲル丶鉛錯及ビあんもにあくニヨルめんとーるぐるくろん酸ノ沈澱ハ60-90%ニ於テ可能ナルガ故ニソノ成績ガ如何ニシテ旋光法ノ成績ヨリ遙カニ少ナキヤノ原因トシテ獨リ沈澱ノ不完全ナルニ歸スヲ得ザルナリ.3)めんとーるぐうん酸ヲ含ム家兎ノ尿ハ旋光法,還元法ニヨル成績ガ互ヒニ略々相近キヲミタリ.シカモ同時ニ含有セラル丶右旋葡萄糖ノ比較的多量ナルニ際シ却ツテ還元法ニヨル成績ガ旋光法ニヨルモノヨリ大ナリ.然ルニHandel氏法ニヨリテハ旋光法又ハ還元法ニヨリテ得タル成績ノ僅カニ17-25%ヲ得タルノミ.而シテ鉛錯及ビあんもにあくニヨルめんとーるぐるくろん酸ノ沈澱ハ67-97%ナリ.4)かんふおぐるくろん酸ヲ含ム家兎ノ尿ハ還元法ニヨリ旋光法ニヨリテ得タル成績ノ35-48%ヲ得タリ.コノ兩者成績ノ甚ダシキ相異ニ關シテハ原因不明ナリ.Handel氏法ニヨリテハ僅カニ旋光法ノ4.7-9.0%還元法ノ12-17%ヲ測定シ得タルノミ.而シテ鉛錯及ビあんもにあくニヨルかんふおぐるくろん酸ノ沈澱ハ35-78%ニシテ之ヲめんとーるぐるくちん酸ニ於ケルモノト比シ一層不完全ナリ.