著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、アメリカ合衆国の医療保険が1950年代から1960年代にかけて医療保険分野で、どのように政治的ダイナミズムが変化し、1960年代にメディケア(高齢者向け公的保険)とメディケイド(貧困層向け公的保険)が成立したのかを明らかにすることである。より具体的には、退役軍人向けの医療プログラムと、福祉政策の発展がどのように利益集団政治を変容させていったのかに焦点を当てる。平成20年度は国内外で主に資料の収集を行った。特にワシントンDCでの資料調査では退役軍人団体であるAmerican Legionに関する古い資料を入手することができた。本研究の最終年度に当たる平成21年度は主に前年度に収集した資料を使いながら論文執筆を行い三本の論文を執筆した。
著者
水谷 雅彦 伊藤 和行 出口 康雄 杉村 靖彦 神崎 宣次
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、曖昧なままにとどまっており、それゆえ様々な混乱の原因ともなっている「健康」概念を、哲学的、倫理学的な観点から再考したものであり、「障害」問題や「エンハンスメント」などの問題のみならず、「健康食品」に関する問題に関しても重要な提言をするに至った。
著者
月本 昭男 佐藤 研 山我 哲雄 市川 裕 澤井 義次 鎌田 繁 池澤 優 河東 仁
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究はユダヤ教,キリスト教,イスラム教における神観につき,比較宗教史的観点から、4.で述べるように、四つの側面から実証的総合研究を行った。そのうち、(1)「古代ユダヤ教における一神教成立の解明」については、下ガリラヤのテル・レヘシュ遺跡発掘調査により、古代イスラエル最初期の宗教に関する実証的なデータが発見され、成果の一部はV国際宗教史会議(トロント大学、2010年8月)および「国際ガリラヤ会議」(立教大学、2011年5月)で公表した。(2)~(4)の課題の研究成果については、以下の報告4を参照されたい。
著者
青木 久美子 ブレイ エリック キムラ バート リム ロン ユー キムラ メアリ 石橋 嘉一 宮添 輝美 モルナー パル
出版者
独立行政法人メディア教育開発センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究においては、最近インターネット上で無料で使用可能となっている様々なコミュニケーションツールを用いて、国境を隔てて繋ぐクラスベースの遠隔教育に焦点をおいて、実際にそういったツールを活用して実験授業を行うことにより、課題等の認識、及び、解決策を見出すといったアクションリサーチ研究方法により、その可能性を追求した。また、授業方式として、従来の講義中心の授業ではなく、学生に主体性を持たせるプロジェクト型授業による遠隔教育の学習デザインを探求した。
著者
KUONG TEILEE
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

「カンボジア王国における21世紀の財産権概念の変化とその展開」という文脈で2001年土地法と2007年民法典との関係を検討し、分譲マンションの建設や外国国籍を持つ住民の住宅購入を規制する新しい法制度の設立に関する調査を行った。従って、近年カンボジア国内で進行している立法整備に基づき、とりわけ不動産に対する所有権概念の展開とその新しい動向が理解することができ、今後の研究課題も一層に明らかにすることができた。1993年以降の憲法規定によって土地に対する私的所有権はカンボジア国籍を持つものに限られるため、外国国籍を持つ長期居住者は住宅の購入ができなかった。それは、不動産売買業界や金融機関及び外資企業を含める分譲マンションを建設している企業の事業展開に不利を与えると同時に長期滞在の外国人にとっても多少生活上の支障に導くことになった。この状況を改善するために、2007年民法典に規定する「土地の構成部分」に対する例外条項(123条)及び「共有」(202条)という規定を利用し、国会は2010年に「外国人が共有する建設物の私的部分に対する所有権法」(以下「共有建設物法」)を採択した。従って、外国国籍を持つものに不動産の所持・売買と処分に関する権利を部分的に認める方向になっている。この配慮は、憲法の国益重視原則と市場経済のグローバル化の現実との関係を見直すようにも理解することができる。しかし、2001年の土地法と2007年民法典との関係については曖昧な論点を残したまま2010年の「共有建設物法」が採択されたことに法的な問題があると言わざるをいない。例えば、土地の構成部分の例外として認められる住宅を外国人が購入する場合、その付着する土地にまで外国人の共有を認める形で土地所有権を与える傾向についてはどのように理解すべきかなど、引き続き検討する必要がある課題が若干残っている。
著者
大河内 直彦 山田 桂太
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,地質時代の海底堆積物中に含まれるクロロフィル(光合成色素)およびその分解生成物の窒素安定同位体比(15N/14N比)測定を,世界ではじめて地質学試料に展開した。多くの海洋表層環境において,窒素は生物生産を制限している重要な栄養塩である。その栄養塩と生物生産の動態を,窒素同位体比を用いて復元した。ナミビア沖,日本海,南極アデリー海から採取された堆積物を分析した結果は,最大過去250万年間におけるそれらの海域の窒素サイクルの大枠を示した。
著者
有光 秀行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フェリックス・リーバアマンの旧蔵書で、東京大学図書館のオンラインカタログ上で「リーバアマン文庫」としては未登録の文献100点あまりを発見した。それらとあわせ、上記オンラインカタログで登録済みの文献すべてについて、献辞の有無や、書き込みの状況を調査した。ハインリッヒ・ブルンナーやヒューバート・ホールといった著名な学者たちとの知的交流や、中世史研究のみならず、第一次世界大戦など同時代の世界情勢に寄せる深い関心が明らかになった。
著者
早川 誠
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

討議民主主義の実践の度合いを見るため、品川区議会の議事録を材料に、発言の内容の検討・評価を行った。基準としては、海外の研究者によって提唱されている「討議の質指標」(DQI:Discourse Quality Index)を用い、発言内容を主観的に評価するのではなく、客観的に評価することにつとめた。その過程で、本会議と委員会での討議の質が異なることが判明し、広範な政策分野に関連する予算委員会審議での指標の検討が有意義であるとの結論が得られた。
著者
日置 弘一郎 波積 真理 大木 裕子 王 英燕 関 千里
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

景徳鎮の現況は活性化しているものの、クラスターとしての機能は低いことが確認された。現在の活況は文革期に多くの磁器製品が壊され、それを再度求めることによって引き起こされたもので、製品としては古典的な作品の写しが大半である。つまり、クラスター内で製品を作る技能や起業への志向は強いものの、どのような製品を作るべきかを指示するプロデューサーが不在である。現在の状態で需要が飽和すると、作るべき製品についての方向を示すことができなくなる。現在、技能と人件費の安さで海外ブランドのOEMを行うというオファーが多く寄せられ、その意味では中国の他産業と同様の道を歩むものと思われる。
著者
須賀 隆章
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

今年度は第一に、源平合戦図屏風の特色を整理し、戦国合戦図屏風を含めた江戸初期の合戦図屏風の表現の特徴を明らかにしようとした。そして第二に、屏風とは異なる媒体を含めた分析を行い、合戦を視覚化することの意味、歴史的実態との関係を見直す作業を進めた。第一の点に関して、源平合戦図屏風でも多くの作品の残る「一の谷・屋島合戦図屏風」の江戸初期の作品に中世の合戦絵巻からの引用と考えられる「首取り」の図像が共通して見られることを確認した。更にこの図像は、同時代の合戦を描く絵巻や戦国合戦図屏風にも見られることを指摘した。「首取り」の図像が繰り返し描かれた背景には、「自己」と結び付くかたちで武士を描かせる享受者の存在が関係している。源平合戦図では戦場における教訓として、戦国合戦図では自らまたは祖先の活躍を示し家の正統性を語るものとして、「首取り」の図像が享受されたことが想定される。第二の点に関して、「東照宮縁起絵巻」(日光東照宮蔵)に描かれた家康像、合戦像を分析した。まず家康は天海や家光の意向を反映して、仏道に発心し武人として成功を収める人物として造形されていることを明らかにした。そして、絵巻にのみ見られる合戦場面は「武」の威光を求める家光の当時の状況と関係していることを指摘し、中世絵巻の構図や図像を利用した上で、家康の合戦での勝利を強調していることを明らかにした。家康の勝利の演出は戦国合戦図屏風にも共通し、彼の勝利を演出する表現は媒体を超えて選択されたとも想定される。以上の分析に共通するのは、過去の作品のイメージをどのように利用したのかという問題である。この問題は他の絵画作品にも共通し、先行研究の蓄積も多い。しかし、本研究が対象とする合戦図屏風や合戦絵巻といった作品では、そのような研究が進んでいるとは言い難く、この問題の検討は武装した武士の姿を描く絵画を位置づける上で必要不可欠な作業である。
著者
花崎 憲子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パラチノースは非う蝕性で、甘さ控えめの機能性糖質甘味料である。パラチノースと砂糖の配合比を代えて焼菓子を調製し、品質と嗜好性を検討した。パラチノースクッキーの形状は横広がりがなく、大きく膨張した。パラチノースクッキーは破断試験や官能評価でかたいと評価された。パラチノースクッキーは咀嚼時間、咀嚼回数、筋活動量が他に比べて有意に大きく、歯がため菓子として利用できると考えられる。
著者
松村 良之
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北海道大学教育学部附属乳幼児臨床発達センターの5、6歳児5名を対象にインタービューを行い、子供の所有権の概念の獲得について、以下のような知見を得た。(1)5、6歳の幼児といえども、所有権の概念(,..は誰のもの)が存在する。(ii)客体の支配可能性が所有の条件であることは被験者すべての発言が一致している。(iii)家のものと自分のものとの区別ははっきりとは存在していないように思われる。(iv)子供の理解では、所有権の始期あるいは発生原因の重要なものとして、売買があるように思われる。(v)売買の理解が所有権の概念の獲得に結びつくと仮定した場合、その理由は現実の所持の移転ではなく、売買の対価性にあるように思われる。そして、対価性に所有権の獲得の根拠があるとするならば、この問題はアダムスらに始まる分配の公正の心理学と結びつくであろう。実際、被験者の幼児は公正ではない分配を受けると(例えば友達はお菓子1つで自分は2つ先生から分配を受ける)、所有についてとまどいを感じているのである。(vi)売買に加えて、贈与という概念も理解されていて、それも所有権の根拠になっている。ただし、それは家族間など特定の人間関係に限られているように思われる。(vii)所有権の消滅については子供がどのように考えているかはよくわからない。ただし、占有(現実の所持)を失っているだけでは所有権は消滅しないと考えているらしい。(viii)貸す、借りるという概念も子供に理解されている。長く貸したり、借りたりしていることにより、所有権が消滅したり、移転することはないということは理解されている。
著者
石川 昇 前田 克彦 亀井 修 岩崎 誠司 田邊 玲奈 木俣 美樹男 金子 俊郎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.研究代表者、研究分担者、地域の博物館等職員から構成する研究協議会を設置した。博物館・大学に蓄積されている環境学習に関する学習資源(情報・機器)と地域の環境課題について検討を行い、カリキュラムの研究開発、実践方法、評価について協議した。2.環境学習カリキュラムの実施モデル地域において、地域の博物館等職員と学校教員が協力しワーキンググループを設け、継続的に環境学習カリキュラムの開発・運営を行った。3.研究代表者・研究分担者は、博物館・大学のもつ学習資源(研究や教育普及活動の蓄積・情報・機材)を検討し、「総合的な学習の時間」で活用可能な環境学習カリキュラム(教材・プログラム)を開発した。児童・生徒の環境観を形成する環境学習カリキュラムとして研究代表者・研究分担者の専門領域から水、土壌、地形、気象、地質、植物・動物、民俗、美術を取り上げ、組み合わせることで地域の環境を総合的に理解できるカリキュラムの開発に努めた。4.研究代表者、研究分担者は博物館等を中心に5地域の学芸員・研究者・教育者等と共に学習方法を学校の「総合的な学習」等で試行を重ねることにより実践的に研究開発し、地域の環境を学ぶ教材、教具などを成果物として制作した。研究開発に当たっては、(1)主に環境の調査、資料整理と考察、成果の発表方法、(2)ワークショップの中で参加者が共有する方法、(3)多機関の継続的な連携・プログラム開発などに焦点をあてて開発した。
著者
丸田 恵美子 梶 幹男 及川 武久 上村 保麿 末田 達彦 池田 武文
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

中部日本の日本海側の山岳域では、森林限界は亜高山帯常緑針葉樹からなり、高山域では低木のハイマツ(Pinus pumila)群落が発達して、多雪に守られた独特の景観を形作っている。しかし、今後予想される気候温暖化に伴って少雪化が進むと、積雪の保護がなくなって、高い標高域での環境ストレスはむしろ増大することも予想される。そこで本研究では、(1)日本海側から太平洋側への冬季の環境傾度に沿って、森林限界付近で樹木が受ける環境ストレスを明らかにし、(2)日本海側の山岳として乗鞍岳(標高3026m)をとりあげ、その森林限界の優占樹種である常緑針葉樹のオシラビソ(Abies mariesii)に対して、冬季の積雪がどのように樹木を保護しているのかを明らかにするための調査を行った。太平洋型気候の山岳域では、冬季に土壌や幹が凍結して吸水が停止している期間に、乾燥した晴天が続くので、葉からのクチクラ蒸散が多く、枝での貯水だけではまかなうことができずに、シュートが枯損することが、最も重要なストレスの要因であった。一方、多雪の日本海側の中部山岳地域・乗鞍岳の森林限界では、冬季の乾燥は致死に至るほどではないものの、仮導管内の通導阻害が生じる。この通導阻害は、8月下旬に新しい木部の形成が完了するまで、気孔コンダクタンスを低下させるという形で残存し、年間の光合成量を減じているとみられる。さらにオオシラビソは3月から4月にかけて積雪面より上の幹の針葉が強光障害を受けて褐変枯損する。その結果、積雪面より上のシュートの針葉の寿命は短く、偏形化し、やがては物質生産の不均衡から幹は枯損する。しかし、積雪面以下の枝では雪に保護されており損傷を受けることはなく、針葉の寿命も長く密生し、この部分の物質生産が、枯損した幹の再生を支えていると考えられる。温暖化に伴って少雪化が進んだ場合、針葉の乾燥ストレスは致死に至るほど進み、物質生産の主な担い手である積雪面下の現存量も減少し、枯損幹の再生を支えられず、オオシラビソの生存ができなくなることも予想され、森林限界の下降を引き起こすかもしれない。したがって、積雪に保護されて成立している現在の森林限界や高山域の景観の維持は困難となる可能性がある。
著者
松木 武彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

日本列島と朝鮮半島における紀元前5世紀頃から紀元後7世紀までの武器・武具の発達過程を考古資料によってあとづけ、それぞれの地域における武器組成の変化から戦術および軍事組織の変遷過程を考察した。その結果、日本列島では紀元後1世紀以降に武器組成が単純化して儀器化が著しくなるのに対し、朝鮮半島では武器組成が複雑さを保ち、騎馬戦用の武器も含みながら日本列島よりは実戦的な発達を示すことが明らかになった。その背景として、北部の騎馬勢力との軍事的緊張が継続した朝鮮半島と、そこから離れた島嶼部であった日本列島との間の政治的・軍事的環境の違いを想定した。さらに、日本列島と朝鮮半島の武器・武具の組成・技術・形態を時期ごとに比較し、その変化をたどった。その結果、両地域の武器・武具は当初は共通するが、紀元後1世紀から4世紀にかけて親縁度が低くなり、5世紀に再び接近し、6世紀にはまた親縁度が低下する状況がみてとれた。その背景として、5世紀に両地域の政治勢力間で、軍事的側面を含む相互交流がもっとも強まったという歴史的事情を推測した。最後に、両地域の武器の比較を象徴性や認知の側面から深化させ、組成の差、意匠の選択、形態パターンという、言説的なものから暗黙的なものにいたるさまざまな位相での差異が、全体として「地域色」と総称される器物の空間的な変異を構成していることを分析し、それが両地域間のアイデンティティの形成に重要な影響を与えた可能性を指摘した。
著者
月田 承一郎 月田 早智子
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

初年度においてケ-ジド化合物を用いた凍結システムが完成したので、2年度は、このシステムの評価も兼ねて、2種類の実験を行った。第一の実験は、ATP非存在下でアクチンフィラメントにフルデコレ-ションしたミオシンサブフラグメント1(S1)がATP濃度の急激な上昇に伴い、どのようにしてアクチンフィラメントから離れていくかを追跡しようというものである。ケ-ジドATP存在下でS1のアクチンフィラメントへの結合様式があまり変わらないのを確認したのち、このようなサンプルに光を照射し、その後の変化をディ-プエッチングレプリカ像のコマ取り写真として解析した。その結果、S1が光照射後15ミリ秒あたりからアクチンフィラメントから離脱しはじめ、その結合様式を大きく変えていく様子を初めて捉えることに成功した。得られた像が持つ意味を正確に理解するためには、まだ、多くの実験を進めなくてはならないと思われるが、少なくともこの実験によって、我々の開発したシステムにより、滑り運動系における蛋白質相互作用をきわめて高時間分解能の電子顕微鏡像として追跡できるという確信が得られた。第二の実験は、無負荷の状態で最高速度で収縮している瞬間の単離筋原線維を急速凍結し、そのクロスブリッジの様子を観察しようとするものである。この収縮は極めて短時間で終わってしまうため、ケ-ジド化合物のシステムを用いる必要がある。現在、光照射後最大収縮速度で短縮中の筋原線維の急速凍結に成功し、そのディ-プエッチングレプリカ像を得つつある。このような方法により得られる像が筋収縮の分子機構を考えるうえで重要な情報を与えてくれるものと期持出来る。以上、我々が開発したケ-ジド化合物を利用した急速凍結システムは、ほぼ完成しており、このシステムがきわめて強力な研究手段となりうることが証明された。
著者
澤田 紘次
出版者
八戸工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、結露に関するアンケート調査、結露被害の実地調査、室内の温湿度の測定調査からなっている。第1章では、アンケート調査結果について報告した。公営集合住宅約1000戸を対象とし、回収率は61%である。調査した住棟は建設年次により、平面タイプ、断熱仕様が異なり、6種類に分類される。アンケート調査結果によると、押入に被害の多い平面タイプと壁に被害の多い断熱仕様の住棟があった。アンケート項目で、結露に関係が深いのは、建物の種別、住戸位置、家族数などである。使用暖房器具と結露との関係は明確ではなかった。結露で困っていることの内容の記述では、73%もの住戸が切々と訴えている。窓が凍って開かない、窓からの流下水で畳が濡れる(33%)、押入の湿気・カビ(15%)、壁のカビ(17%)などが多い。第2章では結露被害の実地調査結果について撮影した写真を中心にして報告した。被害を訴えている住戸では、いずれも黒いカビが発生しており、生活に支障をきたすものであった。調査した住戸に共通していることは、換気に対する意識の低さである。第3章では、室内の温湿度の測定結果について報告した。昭和63年1月から2月にかけて、6戸について各一週間測定した。6戸を通じて、室内が常識を越えた高湿度になっている例は無かった。窓上の壁・梁型部分が断熱されていないタイプの住戸の中で、結露・カビが発生している住戸と発生していない住戸があった。前者は、開放型ストーブを使っていた。室内の露点温度は他の住戸に比較して高くないが、室温が居間でも7〜15℃と低く、このことが結露の要因である。後者では、北和室の窓前にFF式ストーブを置き、襖・扉を全て開放して、北側の室温度を高く保ち、非暖房室となる場所を無くしていた。全体の調査を通じて、同種の住棟でも、住まい方により結露発生に差があることが分った。住まい方と結露との関係について分析を続けたい。
著者
竹内 康 久保 和幸 西澤 辰男 姫野 賢治 松井 邦人 丸山 暉彦 前川 亮太 神谷 恵三
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高速で移動しながら連続的にたわみを計測する試験機は, 各国で開発が進められており,それを用いて舗装の支持性能を評価した結果は,舗装の維持管理に活用されつつある。 このような試験機の開発にあたり, 高速で移動する車両により計測されるたわみの特性を把握することを目的として,既存の車両に変位計を取り付け,いくつかの試験路において連続たわみの測定を行った。また,収集したデータを用いて舗装の健全性を評価する方法について検討を行った. 本研究では, 載荷位置直下のたわみと載荷位置から 45cm 離れた位置のたわみの差を用いて,舗装表面付近の健全性を評価する方法を提案し,比較的たわみの大きい健全な舗装に対して FWD 試験で得られるたわみと相関の高い結果が得られることを確認した。
著者
開發 一郎 山中 勤 近藤 昭彦 小野寺 真一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1998年から2002年までの河川水文データーの内、2001年と2002年のデータはまだ補正解析を要したので、1998年から2000年までの河川水文データを集中的に解析した。その結果、4月から10月までに流出が見られ、降雨に対する流出のレスポンスは明確であり、3月・4月には降雨-流出や凍土融解-流出という寒冷乾燥地域の水文特性を把握した。また、既存資料によるセルベ川流域の流出解析と水収支計算から降水量の約60%が蒸発散であった。自動水循環ステーション(WaCS)モニタリングを2002年6月から開始し、データ処理と現象解析を実施したが、2002年末からWaCSの電源系の故障のため解析に耐えうるデータがその後十分取得できなかった。2002年夏のデータ解析から、降雨に対応して4月から11月までの間が地中水循環の活発な時期であり、2003年8月には流域内の河川・湧水の集中水文調査(土壌ほかの一般調査を含む)から、降水量の多かった2003年の河川流量は2002年に比べて源流域で3倍,流下距離が30kmの下流域で数十倍であったことや流下距離が10km以前の河川は地下水流出域,それ以降は地下水涵養域であることおよび主流路に対して30km付近では周囲からの地下水が流出している場となっていることが示唆された。セルベ川とトーラー川の地表水・地中水の水質分析と同位体比分析の結果から、セルベ川流域の浅層地下水の平均対流時間が約1.3年でトーラー川のそれは約30年であることが分かった。モンゴル国自然環境省の自然環境モニタリングステーションのトーラー川流域からモンゴル全土にかけての土壌水分と地表面植生のルーチンデータの時空間解析を行い、降水量の植生への影響を明らかにし、今後の衛星リモートセンシングのための基本解析結果を得た。
著者
堀 彰 本堂 武夫 成田 英器 深澤 倫子 堀 彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ラマン散乱および中性子非弾性散乱スペクトルに見られる南極の氷床コア氷の特徴は、プロトンの秩序化を反映すると解釈されてきた。この秩序化を結晶構造から明らかにすることを念頭に、本研究では、主にX線回折法を用いて南極深層氷の結晶構造に関する以下の研究を行った。(1)X線回折法による結晶組織の評価X線回折法によりVostok深層コアの氷試料ロッキング・カーブを測定し、その幅から転位密度を求めた。転位密度は深さとともに減少し、最も深い3600m以深の氷の転位密度は10^8 1/m^2程度の低い値を示した。この氷が底部の湖の水が再凍結して成長したためであると考えられる。(2)粉末X線回折法による結晶構造の評価粉末X線回折測定では試料深さ依存性は見られなかった。また、プロトンが秩序化した秩序相(氷XI)に特有の(1121)反射の測定結果は、強度が非常に弱く、強力な光源である放射光を用いた実験が必要である。また、X線散漫散乱測定も今後の課題である。(3)粉末X線回折法による格子定数測定粉末X線回折測定データをリートベルト法で解析し、各深度の氷の格子定数を求めた。南極氷床氷は実験室の氷よりも格子定数が大きく、かつ深さの増大とともに格子定数も増加した。粉末化による残留応力の開放と、空気ハイドレートの解離で生じた空気の取り込みが原因として考えられる。(4)ラマン散乱による変形を受けた氷の格子振動モードの測定氷試料を変形させてラマン散乱測定を行ったが、スペクトルには特に変化は観測されなかったことから、南極氷床氷の特徴は氷の変形によるものではないと考えられる。(5)クラスレート・ハイドレートの生成過程と氷の結晶構造分子動力学シミュレーションの結果、気体分子は、これまで考えられてきた格子間位置(Tu)を安定位置とするのではなく、水素結合の間に入り込んで部分的に特有の構造を作ることが明らかになった。