著者
清家 久美 MONTE CASSIM 千賀 裕太郎 嘉田 由紀子
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.本研究の目的と計画本研究は、(1)現在までの国内における地域づくり(まちづくり・村づくり)の状況を把握すると共に、(2)いくつかの手法-<地元学>手法とKJ法-による地域づくりによる持続可能な地域環境システム構築の可能性の限界を検討し、(3)どのような方法ないしは視点によって地域を考えていくことが、地域づくりに最有効であるかを検討することを目的としている。をおこなっていく。2.研究計画と到達点上記の目的のためには具体的に、(1)研究的視点による地域づくり、まちづくり、村づくりの背景と先行研究の整理、ならびに事例研究の検討(2)実践的視点による、地域づくり、まちづくり、村づくりの事例整理と検討(3)研究的視点による<地元学>手法の明確化と方法論的検討(4)実践的視点による<地元学>手法の機能と問題点の検討(5)地元学についての追跡調査(6)総括を研究的結論を計画していた。到達点最終到達点として、以下の6つをあげることができる。(1)地元学手法による調査:3年間の調査実績(2)調査法の評価・位置づけ:地元学調査法についての評価と部分的モデル化(3)地元学周辺でおこっている「ばかん巣プロジェクト」について:「ばかん巣プロジェクト」の実態把握とその議事録(4)NPOの活動:本研究の中心的テーマ・いくつかのNPO活動に見られる地域活性化の実態把握とその分析・学会発表(5)観光への展開:由布院と別府の観光についての論文化(6)教育への展開:「地元学」の教育への応用・過去5年間にわたる「学生150人による地元学調査」の実施とその総括
著者
岡野 栄之
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

神経系に発現している遺伝子の多くは、選択的スプライシングにより遺伝子産物の多様性を形成し、偏在的に発現している遺伝子の中でも神経系における特有の構造と機能を獲得しているものが知られている。この結果生じる遺伝子産物の多様性は、複雑な神経系の発生過程と可塑性等において重要な役割を果していることが予想される。しかしながら、この神経系における選択的スプライシングの機構、特にそこに関与する遺伝子産物に関しては、殆ど知見がない。申請者は、神経系のスプライシングを調節していると考えられる神経細胞特異的RNA結合性蛋白質をコードするmusashi遺伝子を、ショウジョウバエ神経系に異常を有する変異体のスクリーニングにより同定することに既に成功している。loss-of-function typeのmusashi変異体においては、成虫の外感覚器を構成する細胞群(Neuron,Glia,Tricogen,Tormogen)の発生過程における運命決定における異常が観察された。即ち、NeuronとGliaの前駆細胞(Neuron Glia Progenitor,NGP)がTricogenとTormogenの前駆細胞(Socket Shaft Precursor;SSP)に形質転換していることが明らかとなった。従って、ショウジョウバエmusashi遺伝子産物は、RNA結合性蛋白質として、post-transcriptional levelにおいて下流遺伝子群の発現を調節することにより、神経発生過程における細胞の運命決定を制御していると考えられた。更に我々は、より複雑で高次の神経系を有する哺乳類におけるmusashi遺伝子ファミリーの役割を明らかにするために、musashi遺伝子のマウス相同分子(mouse-musashi)の単離にも成功しており、これも神経系特異的なRNA結合性蛋白質をコードすることを明らかにした。mouse-musashi遺伝子産物は、神経系の未分化幹細胞において発現しており、ショウジョウバエの相同分子との類似性より、これも、哺乳類神経発生過程における細胞の運命決定を制御していると考えられた。又、本分子のRNA結合能の証明についても成功しており、今後下流標的遺伝子の同定をおこなって行きたい。
著者
東 順一 坂本 正弘 梅澤 俊明 島田 浩章 坂本 正弘 東 順一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,タケの有する高シンク機能の統御機構の解明を目指して実施したものである。中心的な解析手法としてイネのマイクロアレイを用いた。これは,タケの遺伝子がイネの遺伝子と相同性が非常に高く,イネのマイクロアレイが利用可能であると考えたからである。タケノコ,全長5m39cmの幼竹の第17節間の上部と下部,成葉からmRNAを抽出,cDNAを合成してマイクロアレイ実験に供した。アレイ解析の結果,解析した約9,000個のクローンのうちタケノコで特異的に発現したクローンが78個,節間下部で特異的に発現したクローンが635個あった。タケノコではDNA複製やタンパク合成に関与する遺伝子が多く,細胞増殖が盛んであることが伺われた。また,ジベレリン関連遺伝子の発現量も多く,伸長成長に関与すると言われてることを分子レベルで明らかにすることができた。節間下部でとくに発現量の多いクローン34個を選抜して解析したところ,ショ糖合成酵素やセルロース合成酵素などの糖代謝関連遺伝子が多かった。また細胞間連絡に関与している遺伝子や,水輸送に関与するアクアポリンなどの遺伝子の発現量も多かったことが注目される。節間下部でとくに発現量が多かったショ糖合成酵素の遺伝子(以下Susと略)に着目して解析をおこなった。Susはの3クローンのクローニングに成功した。うち2つのクローンはSus1グループに属し,1つはSusAグループであることがわかった。RT-PCRによる発現解析ならびにSus1抗体を用いたウェスタン解析の結果から,伸長成長期にあたる幼竹段階ではSus1の発現量が多かったのに対して,組織が成熟するにしたがってSusAクローンの発現量が増加した。このように,組織・時期においてショ糖合成酵素内におけるクローンの役割が交代しており,タケの伸長成長期において重要な役割を担っていることが強く示唆された。
著者
島田 浩章
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イネの種子形成機構の全体像を分子レベルで把握するため、種子形成期に発現する遺伝子を網羅的に解析した。アンチセンスSPK形質転換体は胚乳形成に異常を起こし、水モミを生じるので、この組換え体を利用して登熟初期に働く遺伝子を調べた。マイクロアレイ実験により、125種の遺伝子の発現に変動が認められ、そのうち顕著な変動を示す遺伝子についてRT-PCRによる発現量の確認と、これらの遺伝子に対するアンチセンス形質転換体の作成を試みた。一方、穂の形態形成異常を示す変異体を利用したマイクロアレイ解析およびディファイレンシャル・ディスプレイー解析を行い、多数の遺伝子発現の変動を見いだした。SUMO1遺伝子はこの変異体で発現量の変動が認められたため、このアンチセンス形質転換体を作成し、表現型を調べた。その結果、SUMOの発現抑制をした形質転換体では穎の消失などの穂の形態異常が認められた。このことから正常な穂の形態形成にSUMOが重要な役割を果たしていることが強く示唆された。この他に、CEN-P類似タンパク質、F-boxタンパク質、GASRタンパク質での発現量の変動が認められた。GASR遺伝子の発現について詳細に調べたところ、この遺伝子は幼穂形成の成長点付近での強い発現が観察された。
著者
井上 要二郎
出版者
久留米大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

<はじめに>代用音声の開発は、当初興味を示したR社の協力が昨今の不景気で得られないため、発声源の開発より先に発声源を取り付ける位置について検討した。<目的>どの部に発声源を置けば口腔内に音を導けるか、骨の厚み・空洞・口腔への伝導に着目して検討した。<方法>骨導補聴器の振動体を発声源の代用に用いた。これを合成樹脂の頭蓋骨モデル(頭蓋のみ空洞)、人体頭蓋骨モデル、及び被験者を対象に各頭頂部、側頭部、前額部(前頭洞前壁)、頬部(上顎洞前壁)にあて、各部位5回調べた。骨導補聴器のマイクより同じ大きさの音を入れ、その振動体を接触させ最も共鳴した(音の大きい)部を調べた。さらに、被験者では5人に口の形で音が変化するかも調べた。<結果>大きい順は、合成樹脂:側頭部>頭頂部>前額部>頬部。人体頭蓋:側頭部>頭頂部>前額部=頬部。被験者:頬部>前額部>側頭部>頭頂部。口の形により音が変化:頬部のみ。<考察>最も共鳴したのは壁が薄く、空洞のある部であった。模型は両方とも頭蓋に大きな空洞があり、頭頂部と側頭部で最も共鳴した。頭頂部が劣るのは骨が厚いためと考えられた。人体頭蓋と被験者は、前額部(前頭洞)と頬部(上顎洞)に空洞をもつため大きく共鳴する。実際の人(被験者)では頭蓋は空洞でないため、前額部・頬部が優り、より空洞の大きい頬部が最も共鳴する。頬部は口腔に近いこと、共鳴腔の上顎洞は中鼻道を介して口腔とつながっていること等もその原因と考える。これは口を開けると頬部だけ音が大きくなること、さらに口の形に合わせて小さな母音が聞こえる事などからも説明できる。頬部(上顎洞前壁)は、音響学的にダクト(共鳴音を排出する穴)をもつバスレフ型スピーカーボックスに近い形をしている。解剖学的にも口腔内から簡単にアプローチでき、厚い軟部組織で覆われるため、代用音声の装着部位に適していると考える。
著者
吉田 城 増田 真 田口 紀子 廣田 昌義
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

基盤研究(A)(2)「フランス文学における心と体の病理-中世から現代まで」は当初4年間の計画でスタートした。数度にわたる準備会合によって各分担者の主要研究テーマを決定した。吉田は19世紀〜20世紀フランスの文学と病理(ゴンクール兄弟、プルースト、など)、廣田はパスカル・モンテーニュにおける病気、田口は近代小説にあらわれた夢のディスクールの分析、増田は18世紀思想における狂気と病理、稲垣はユーゴーと狂気の問題、多賀は薬物と文学の関わり、嶋崎は中世フランス文学における病の問題、小倉は女性と病の文化史、松村はバルザックと19世紀医学の問題を中心に据えた。定期的な研究会合を通じてそれぞれの研究発表をめぐって活発な議論が交わされた。これらの討議の内容をフィードバックする形で各自が論文を執筆した。文学も病理も人間の探求という点で一致するが、時代と文化の文脈を抜きにしてはその関係も論じることができない。したがって、報告書としてまとめることのできた各論文は、かなり実証的な射程に収まるものになった。詳細は別冊の報告書を参照のこと。
著者
伊藤 太二 伊庭 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、AP-1結合配列を持つ標的遺伝子の発現誘導に刺激特異性が見られる現象を支える分子機構を解明すべく、SWI/SNF複合体にsubstoichiometricalに結合する因子の同定と生化学活性の解析を行った。特に、BRG1に結合する因子群の中に見いだされたp54^<nrb>及びPSFに焦点を当て、これとSWI/SNF複合体構成成分との結合に関する生化学的解析とその結合が果たす役割について精査し、以下の成果を得た。1.p54^<nrb>はSWI/SNF複合体構成成分のうち、BRG1、Brm、BAF60aと直接結合する。一方、Ini1との直接結合は見られない。2.p54^<nrb>及びPSFはBRG1型及び、Brm型SWI/SNF(もしくはこれらに類似した)複合体に結合する。3.p54^<nrb>及びPSFは初期転写、splicing、'A to I'にeditingされたRNAの核内保持等に機能する多機能性タンパク質である。したがって、これと結合するBrmがalternative splicing過程に関与しているか精査した。元々BRG1の発現を欠くヒト非小細胞肺癌由来H1299細胞株において、Brmのノックダウンを行い、SWI/SNF複合体の機能を失わせたところ、Brmのノックダウン後二ヶ月以内に、細胞の老化を伴うgrowth arrestが観察された。4.3で観察されたgrowth arrestはテロメアの短小化を伴うものであり、Brmをノックダウンすると、AP-1の標的遺伝子であるtelomerase reverse transcriptase(TERT)遺伝子の初期転写量が減少し、かつその転写産物が受けるaltenative splicingのパターンが変化し、不活性なTERTタンパク質をコードすると考えられるmRNAの割合が増加することが判明した。5.H1299細胞内では、Brm、p54^<nrb>はTERT遺伝子のプロモーター領域及びalternative splicingのacceptorを含む領域に特異的に局在している。本研究から、p54^<nrb>を含むSWI/SNF(もしくはこれに類似した)複合体は、恐らくはAP-1をはじめとする転写制御因子群によってTERT遺伝子のプロモーターに動員され、転写開始を誘導した後、その複合体分子が引き続いてalternative splicing過程にもcisに作用し、活性のあるTERTタンパク質の効率良い発現に多段階で機能すると考えられた。そして、AP-1の標的遺伝子群の中でも、特定の遺伝子群に対してのみ、p54^<nrb>を含むSWI/SNF複合体が多段階で機能し、効率良い遺伝子発現制御を行っている可能性が示唆され、AP-1の持つ多機能性を説明するための端緒が見いだされた。
著者
安楽 泰孝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度までに静電相互作用力を形成駆動力とする100-300nmのNano-PICsomeを容易に作り分けることに成功した。しかしながらこれらの粒子は生理条件下での安定性が低いため、申請目的にあるような生体内でデリバリーキャリアとして応用する際に問題が生じる。そこで当該年度では、まず水溶性の縮合剤である1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)を用いてPIC膜中にアミド結合を形成することで、生理条件下でも安定にサイズと構造を維持可能な架橋Nano-PICsomeを調製することに成功した。さらにこの架橋Nano-PICsomeは、従来のNano-PICsomeとは異なり「耐凍結乾燥」「耐遠心濃縮安定性」を有していることをも明らかとした。また、加える架橋剤の量でPIC膜の透過性をコントロールできることも示し、選択透過性を有するNano-PICsomeという新しいベシクルキャリアの提案を行った。さらにサイズの異なる架橋Nano-PICsome(100-200nm)を調製し、担がんマウスの尾静脈より循環血液中に導入することによって、その血中滞留性および臓器分布を評価した。その結果、100-150nmの架橋Nano-PICsomeは、がん組織における血管壁が物質透過性の亢進を示すという性質(EPR効果)に基づいて、がん局所への高い集積性を示すことを明らかとした。一方、サイズを大きくした150-200nmのNano-PICsomeは、約20時間という著しく長い血中半減期を達成出来ることが明らかとなった。この値は、これまで報告されている他の中空粒子型キャリアと比較して、同等かもしくはそれ以上であり、今後、生体内長期循環型デリバリーキャリアとして応用展開される可能性が示唆された。このように本研究は、サイズと構造が厳密に制御された中空粒子を設計する独創的な指針の提案や得られた成果の薬物送達システムとしての高い有用性から考えて、バイオマテリアルの分野において極めて秀逸であると考えられる。
著者
瀬戸口 剛 小林 英嗣 堤 拓哉 佐藤 滋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

積雪寒冷都市では、冬季における除雪エネルギーを低減し、快適な都市空間の創造は大きな課題である。本研究では北海道内都市を対象に、都心部の公共空間での堆雪量と除雪エネルギーを低減させる都市デザイン手法、およびプロセスを開発した。都心部でも高層ではなく中層を主体とした街区空間をデザインが望ましい。さらに、堆雪量と除雪エネルギーの低減には、風雪シミュレーションを並行させた都市デザインプロセスが重要である。
著者
算用子 麻未
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

長く採った挿し穂の基部と先端の両端を挿しつけアーチ状にしたアーチ型挿し木の実用方法として、小崩壊が起こり、裸地化した林道法面への緑化を考える。アーチ型挿し木での緑化の特徴は、アーチ部分へ土砂が堆積、固定されると、その土砂に植物が侵入してくることも期待できることにある。今回はアーチ型挿し木の可能な崩壊地の形態や、有効な挿し穂の配置方法の検証を目的とする。試験は東京大学附属演習林である千葉演習林と秩父演習林で行った。挿し穂の長さは80cm、両端の挿しつけ深さは各20cmとし、挿し穂を階段状に配置した。一部の挿し穂には挿し穂の抜け防止針金を実施した。樹種は千葉演習林でウツギを、秩父演習林ではフサフジウツギとバッコヤナギを使用した。また、秩父演習林では挿し付け直後にシカによる食害が発生したため、柵を設置した。千葉演習林では試験区を3ケ所設置したが、全体の生存率は35.2%と非常に低い。これは主に水分条件の悪さが影響したためと考えられる。挿し穂の抜け防止針金は非常に有効であったが、挿し穂が枯死してしまうと挿し穂が折れることが多く、それでは意味を成さないので、やはり挿し穂の生存率を上げることが重要であると言える。秩父演習林は、秋までの生存率がフサフジウツギで81.7%と非常に高かった。フサフジウツギは、シュートの成長もよく、ウツギと比べて葉も大きいため、視覚的な緑化効果は非常に高い。しかし、今回の試験地は冬季に積雪があり、その重量に耐えきれず多くの挿し穂が流亡し、3月には生存率が38.3%まで落ち込んだ。結果として、アーチ型挿し木だけで崩壊の進行や積雪による挿し穂の流亡を防ぐことは困難であり、実用するためには、斜面長の短い斜面に限るか、間伐材を利用した方法との併用など対策が必要であると言える。また、今回は試験期間が短かったため、アーチ部分への土砂の体積は観察されなかった。
著者
谷口 栄一 QURESHI Ali Gul
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

動的な手法における集配送車両は,スケジューリング期間の最初に平均旅行時間に基づいた事前最適ルートにより運行を開始する.しかしながら,ルートは集配送車両が顧客に到達するたびに,更新された旅行時間に基づいて変更される.すべての顧客は,ルート変更した配送中の車両により初めて配送されるか,すでに配送されているかどちらかであり,初期の顧客集合から除去される.ルート変更時点において集配送車両の現在位置が,車両にとって新たなルートの始点として扱われる.本年度は,上述の動的な枠組みを備えたセミソフトタイムウィンドウを有する配車配送計画問題(D-VRPSSTW)に対する厳密解法のコード化を試みた.これまで行われてきたD-VRPTWに対する解法アプローチの多くは,挿入法や局所探索のような近似解法に基づいているものであったため,本研究で取り組んだ厳密解法を構築するにあたり,数理計画手法の調査を行い,最終的にMATLAB上で実行可能なコードを得た.得られたコードに対し,シミュレーションされたデータセットに加え,東京南部を対象地域の道路ネットワークを再現した実践的かつ大規模なデータセットを用いて検討を行った.得られた結果について,2009年5月にトルコにおいて開催された第4回貨物輸送・ロジスティクスに関する国際ワークショップおよび2009年6月にメキシコにおいて開催された第6回シティロジスティクスに関する国際会議において紹介し,国内外の学術的および実務的な物流従事者と議論した.
著者
ROY C. SIDLE (2007) SIDLE Roy C (2006) BRARDINONI F. BRARDINONI Francesco
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究における調査計画は、南アルプスの山地流域(長野県と山梨県)で地すべり堆積物の動態を調べることを目的として立てられた。具体的な研究対象流域は、釜無川・尾白川・大武川・小武川と野呂川である。現在までに、以下の研究段階が実行された。1)6つの年代(1954・1968・1975・1983・1997・2005)の空中写真のセットの判読。2)デジタル空中写真画像を利用した地すべり発生と堆積物層の各点のGIS解析によるマッピング。3)航空写真を元にした見積りの補正因子の存在を調べるための、地すべりの大きさ(長さ、幅、深さ)と堆積物の勾配の現地測定。研究サイトへのフィールド調査は、富士川町と甲府市の砂防事務所の協力で行われた。野外作業には、釜無川・尾白川・大武川・小武川における地すべりイベントの試料を測定することを含んでいる。現在は積雪があるのため、さらなる野外作業は5月中・下旬に野呂川で計画している。予備的な結果では、地すべり活動が高く岩質に依存しているということが明らかとなった。地すべりの起こる頻度は、火砕物層で最も高く、花崗岩層で最も低く、石灰岩と砂岩でその間を示した。さらに、1970年代に行われた広範な森林伐採は、20年間にわたって土砂生産の割合を加速させてきたと考えられる。
著者
近藤 哲也 PHARTYAL Singh Shyam PHARTYAL SINGH SHYAM
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

・野外での実験秋における種子の成熟期には,C.giganteumの種子は未発達の胚を有しており,胚は,翌年の高温期の夏を経た秋に生長を開始した。播種してから二回目の冬の終わりから春の初めにかけて発根し,雪が解けた春に出芽した。すなわち,種子が散布されてから出芽までには18-19ヶ月の長い期間を要した。・室内での実験野外での実験では,種子散布後,「(秋→冬→春)→夏→秋→冬→春」の2回目の春に子葉が出芽した。しかし,室内の実験では,野外の夏→秋→冬→春を模した25/15℃(120d)→15/5℃(90d)→0℃(90d)→15/5℃の温度推移を与えることで,胚が生長し,発根して出芽した。すなわち,C.giganteumの種子は秋に結実するにもかかわらず,その後の(秋→冬→春)の温度は,胚成長,発根,出芽に不要であることが示された。夏→秋の温度を与えられて完全に胚が伸長した種子は,その後,90日間の冬の温度を経験させることによって幅広い温度で,高い発根率と出芽率を示した。GA3は,胚の生長に対して効果はなく,したがって,その後の発根と出芽にも効果はなかった。・種子の貯蔵採取直後の種子は,96%の高い発芽率を有していた。-20℃と0℃で密封乾燥貯蔵した種子は,貯蔵後450日を経ても80%以上が生存していたが,15℃,20℃,そして室温で貯蔵した種子は450日の貯蔵後には,生存率が20%にまで低下した。
著者
日浦 勉 工藤 岳 笠原 康裕 彦坂 幸毅
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1、ミズナラの最大光合成速度は温暖化処理によって変化しなかったが、窒素含量は低下したため窒素利用効率は上昇した。イオン交換樹脂法によって土壌中の無機体窒素量がどのように変化したかは現3定量中である。2、葉中の窒素含量の低下と硬さの指標が上昇したため、植食性昆虫による食害は低下した。3、ミズナラの堅果生産量は枝の温暖化処理によって3〜5倍に上昇した。そのメカニズムは今のところ不明である。4、土壌中のバクテリアの量や組成は2年間の実験では変化が見られなかった。5、林床植物の総植被率は、林冠閉鎖が完了する6月中旬に最大となり、その後低い値で安定する傾向が見られた。林床に到達する光エネルギーとの対応関係が示された。夏緑性植物の地上部生育開始時期は、温暖化により早まる傾向が見られたが、その程度は種により異なっていた。一方で、秋の生育終了時期には明瞭な違いが認められなかった。すなわち、生育初期に温暖化の効果が大きいことが示された。半常緑性植物のオシダの越冬葉は、温暖区ではほとんどが冬の間に枯死していた。これは、温暖区では積雪がほとんどないため凍害による損傷が強かったためと考えられた。さらに、当年シュートの伸長は温暖区で遅くなる傾向が見られた。越冬葉の損失により、新葉生産のための養分や資源転流がなくなったことが影響していると予測される。土壌温暖化による積雪環境の変化は、冬期の越冬環境を変化させ、植物の生育にマイナスの効果をもたらす可能性が示唆された。以上の結果より、温暖化が植物にもたらす影響は、種や生活形により多様であることが示された。温暖化の影響予想には、個々の植物が有する生理特性を考慮する重要性が示された。
著者
池田 大樹
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

【研究目的】睡眠短縮(5時間睡眠)時において、自己覚醒が起床直後の睡眠慣性と日中の眠気に及ぼす影響を検討した。【研究方法】自己覚醒習慣のない労働者15名(平均年齢40.5歳,27-49歳)を対象に実験を実施した。実験は、参加者宅での3目間の生活統制(5時間睡眠)と1日の実験室実験からなっていた。生活統制期間は就床前と起床後に主観的・行動的眠気を測定した。また、実験室実験時は、1時間おきに主観的・行動的・生理的な眠気を測定した。なお、生活統制期間中は、毎朝目覚まし覚醒あるいは自己覚醒した。その後、再びもう一方の覚醒方法で自宅での3日間の生活統制と実験室実験を実施した。【研究結果】睡眠短縮により、起床直後や日中に強い眠気が認められた。一方で、自己覚醒すると、目覚まし覚醒した時と比べて、起床後や日中の覚醒度(ヴィジランスパフォーマンス)が高かった。このことから、自己覚醒は覚醒維持能力を高める可能性が示された。【意義】夜型化が進む現代社会において、人々の睡眠時間は減少している。特に労働者の中には、残業や交代制勤務などにより睡眠時間を十分に確保できない者も少なくない。そのようななか、睡眠不足はQOLの低下だけでなく,労働意欲の減退や就労場面での健康と安全を阻害する問題につながる。これに対して、本研究の結果から、自己覚醒は睡眠時間が短い場合でも睡眠慣性や日中の眠気予防に有効であることが示された。
著者
森本 孝之
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

まず,金融データの価格変化における飛躍の検出を研究し,米国同時多発テロ事件, 米連邦準備制度理事会の公開市場操作,日銀の外国為替平衡操作を取り上げ,市場への情報流入が価格変化にどのような影響を与えるかを分析した.さらに,高頻度収益率に生じる市場のミクロ構造ノイズを共分散行列から除去する効率的な手法の開発を研究し,ランダム行列の最大固有値の漸近的性質に着目し,そのノイズに対する統計的仮説検定を提案した.
著者
川添 尭彬 楠本 哲次 土佐 淳一 更谷 啓治 田中 昌博
出版者
大阪歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

前年度までに,咀嚼機能を診査・診断するにあたり,一般的に利用されている被験食品(チ-ズ,カマボコ,タクアン,ボンタンアメおよびスルメ)の機械的特性,すなわちテクスチャ-を定量化し,正常者における咀嚼機能との関連を明らかにした。今年度は,同じ被験食品を用いて,顎機能異常患者における嚥下閾までの咀嚼機能,特に嚥下までに要した咀嚼時間および咀嚼回数について分析を行い,正常者の結果と比較・検討した。その結果,1.顎機能異常患者では,どの被験食品でも正常者と比べて,嚥下までに要した咀嚼時間および咀嚼回数は増加していた。2.また,多変量解析を応用した統計処理の結果。顎機能異患者では,テクスチャ-のうち特にガム性の影響を咀嚼機能に強く与えていた。上記のことが明らかとなった。さらに,嚥下はできないが被験食品として一般的な市販ガム(ロッテ社製グリ-ンガム)について,チュ-イングによるガムのテクスチャ-の経時的変化を測定するとともに,正常者においてガムチュ-イング時におけるテクスチャ-の変化が咀嚼運動に及ぼす影響を分析し,以下の結果を得た。1.チュ-イングによってガムは,硬さだけが変化するものではなく,凝集性や粘着性などさまざまなテクスチャ-が,複雑に絡み合って変化していることが明らかとなり,その変化は,咀嚼運動にも大きく影響を及ぼすものであるため,以後,ガムを用いて咀嚼運動を分析する場合,どの時点でのデ-タであるのかを明確にするべきである。なお,詳細については,研究成果報告書を参照されたい。
著者
堀之内 武 渡辺 知恵美 塩谷 雅人 石渡 正樹 小高 正嗣 西澤 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 地球流体科学における数値データのネットワーク利用を促進し, 同分野での情報爆発問題の解決に資するための共通基盤ソフトウェアGfdnaviを開発している. 平成20年度は以下を実施した.数値データと知見情報の融合的なデータベース化 : 昨年度開発した, データ解析で得られた可視化結果等をもとに科学的な知見を文書化しアーカイブし研究や情報公開に役立てる機能を, 強化した. 数値データおよび解析履歴と密接に結びついたブログ/Wikiによる共同研究という, 新しいスタイルでの共同研究をサポートするための提案と基礎開発を行った.Gfdnaviの相互検索・横断利用 : 昨年度より, Gfdnaviのオーバレイネットワークを構築し, 横断的にデータや知見を検索・利用するための手法を研究している. 本年度は, プロトタイプ実装を行った.次年度実装に向けた基礎研究 : 筑波大で開発された, httpベースのファイルアクセスライブラリにおいて地球流体データを扱う際のボトルネックを検討した. その結果今後の改良により, 特別なサーバソフトなしに, Web上に置かれただけの地球流体データをGfdnaviで扱えるようにできる見通しを得た. また, これまで用いていたSOAPによるWebサービスから, リソース志向のRESTfulなWebサービスに切り替えるための検討を行い開発に着手した(今後に継続).実利用の拡充と応用開発 : 2009年に打ち上げが予定されている環境観測衛星SMILESのデータ公開および科学チーム検証サーバにGfdnaviが採用されることになり, 人工衛星データむけの対応を行った(継続).
著者
中野 昌弘
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、不動点帰納法による検証能力の向上、適用可能規模の向上のため、テストに基づく発見的手法により帰納法の仮定を求め(補題発見)、従来手法では自動検証できなかった問題に対しても、自動的な検証を行えるようにすることを目的とする。SMTソルバとしてCVC3を利用して最弱事前条件計算を実装し、補題発見機能と不動点帰納法による不変性自動検証器を実装した。SMTを用いたことや補題の発見、各種手続きの効率化を図ることで、証明力の向上と数十倍程度の高速化を実現し、より規模の大きな問題であっても、自動で証明できるようになった。
著者
宗像 惠
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

ピエ-ル・ガッサンディは、古代原子論の復興者として近代科学の成立に貢献すると同時に、古代懐疑論との対決を通して認識論上、実証主義的立場を切り開したことで知られる。他面、彼は人文主義者として、また正統カトリック教会の僧として、近代思想とヨ-ロッパの思想的伝統との調停を図った。本研究の目的は、西洋近代科学の成立の哲学的背景、並びに哲学的意義を、ガッサンディの思想的営為に即して解明することにあった。この研究目的に到題するために、まず、ガッサンディが同時代の思想家達と行った論争を介して、時代の哲学史的・科学史的状況を浮き上がらせることを試みる同時に、古代原子論や懐疑論等の検討を行い、最後に、彼の主著『哲学集成』の検討を、哲学史的・科学史的文脈において行う、という方針を立てた。また、ガッサンディの思想が後代に与えた影響の検討をも併せて行うことにした。以上の研究課題は、短期間で全体的に達成することの困難な、多大なものであったが、デカルトやフラッド等の論争相手との思想の比較、古代原子論者エピクロスの哲学なでに関して、研究を深めることができた。また、ガッサンディ自身の主著の研究も着実に進行中である。未だ論文として発表するには至っていないものの、これらの研究の成果によって、西洋近代哲学全体の流れを展望することが、一段と容易になったと考える。本研究の成果のいわば副産物として、西洋近代哲学の歴史を概観する単行本の計画が現実化しつつあること、また、ガッテンディと並び、形而上学的志向を以て、西洋近代の初めに体系的に自然主義的立場を押し進めたスピノザの倫理政治思想についての研究が進み、発表段階に至っていることを、最後に御報告しておきたい。