著者
太田 一昭
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

シェイクスピア劇とその同時代劇作家の作品の出版状況を歴史的文脈において調査分析し、英国ルネサンス期の出版のありようを実証的に記述した。併せて、本研究の調査で得られた知見に立脚して『リア王』ほかの初期版本の本文を分析し、その特質を明らかにした。本研究は、筆者のもう一つの研究課題である英国ルネサンス期の演劇統制史研究と密接に関連している。最終的には、統制史研究の中に戯曲出版史の研究成果を組み込む予定である。
著者
大屋 多詠子
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

読本演劇化作品について調査をすすめ、特に山東京伝の読本の演劇化作品の分析とその上演状況、またこの上演が曲亭馬琴に与えた影響について考察した論文を発表した。また馬琴と交流のあった上方の版元河内屋太助の出版活動について、特に読本と根本(歌舞伎台帳を出版したもの)の出版に注目し、その活動が読本作者に与えた影響を考察し、口頭発表を行った。
著者
松田 聡
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

モーツァルトが活動をした1780年代のウィーンにおける宮廷劇場のオペラ公演について,同時期のイタリアの諸都市、とりわけフィレンツェ,ミラノとの比較を行い,それぞれの公演の特徴と3都市間のレパートリーの相関関係について考察した。その結果,ウィーンのブルク劇場の演目は,フィレンツェのペルゴラ劇場よりミラノのスカラ座の方がより共通するものが多く,特に80年代末期にはそれが顕著であること等が分かった。
著者
瀧野 揚三
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

本研究は、学校心理学的な観点から、学級経営に介入する手法を開発し、それを評価することを目的としている。初年度は、学級介入方法の具体化と評価視点の探索的検討を、次年度は、介入の方向性、経過面接の構造化をより確かなものにするために、継続的に教師用RCRTの測定を行なった。本年度は、5人の教師とその担当学級を対象にした介入を行い、その成果を検討した。個別の関わりに加え、小グループを形成することによって、相互に理解し助言しあえる自助グループの形成もねらいとした。対象の教師には、6月、7月、9月、12月、2月の計5回の研修に継続的に出席してもらい、それぞれの教師用RCRTの結果を用いながら参加者の学級経営の事例検討、自己達成予言的に学級経営の具体的方針の提出、数人の児童に焦点を当てた意図的な関わりの報告、親近感についての調査の実施などが具体的な実施内容である。参加した教師は、教師用RCRTの結果の読み取りができるようになり、またその資料を元にしながら、学級経営の様子を他の教員に語ることができた。このように自らの学級経営の状況を客観化するなかで、意図的な関わりの対象になる児童の特定、関わりの内容についての設定をすることができた。短期の目標とやや中期の目標を立て、またその目標をグループのメンバーに報告するなかで、データをもとにした実施可能な学級経営の実践につながった。別の評価の視点としては、児童による親近感調査を行い、その結果に基づく児童への関わりの修正もできた。継続的な研修の中で、他の教師からの共感や助言の機会を持ち、また自分の実践を他の教師に理解してもらえるように表現できるようになった。これらのことは、学級経営に介入する手法として、継続的な小グループセッションで教師用RCRTを用いることが有効であることを確認した。
著者
金 顕哲
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は日本型マーケティングの全容を明らかにすることである。日本企業の典型的なマーケティング活動は何なのかを軸にその因果関係を解明することである。そのために主に文献調査とアンケート調査方法を利用する計画である。初年度の去年は、おもに文献調査を行ったが、二年目の今年は、2件のアンケート調査を行った。1件目は、日本企業のマーケティング活動全般に関するアンケート調査であった。製品戦略と価格戦略、チャネル戦略、広告プロモーション戦略に分け、各企業がどのようなマーケティング活動を行っているのかを調査した。調査では、最近のマーケティング活動と10年前のマーケティング活動に分け、比較する形式を取った。調査対象は上場企業2000社であったが、アンケートの量が多かったのが回収率は8%に満たなくてデータも良くなかった。現在、分析中であるが、ただ営業を重視する日本企業の姿勢は特に明確になっている。この調査結果を踏まえ、もう一つのアンケート調査では営業活動を重点的に調査した。日本企業はどのような営業活動を行っているのか、なぜそのような活動を選択しているのか、その成果はどうなのかなどを調査した。この調査では、1件目の調査の低い回収率の教訓を生かし、店頭公開企業をも調査対象にするなどの工夫をした。現在、回収中であるが、回収率は20%前後になりそうである。これからデータを入力し、分析する予定である。2件のアンケート調査の分析作業は今年の冬休みを利用し、集中的に行う予定である。
著者
瀧野 揚三
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

期間中の研究成果を、個人を対象とした学級経営に関する1回の介入的支援方法の改善と評価、小グループを対象とした年間を通した継続的な学級経営の介入的支援方法の開発と評価、学校危機後、PTSDやトラウマを抱える児童生徒が在籍する学級の経営を行う教師への介入的支援方法の開発と評価の3つの観点から報告書をまとめた。教師用RCRTを実施し、その結果をフィードバックする方法ですすめたが、1回だけの介入では調査に回答する負担に見合う学級経営への介入的支援になりにくいことが課題として残っている。教育実習後の学生に対しても導入し、実習の事後指導において、実習中の児童・生徒への見方を内省し展望することに有効であることが分かった。継続的に小グループで研修を重ねるなかで教師用RCRTの結果を活用するように学級経営の事例検討と、学級経営に意図的、計画的な取り組みを進めることができた。電子メールを活用してコメントするケースもあった。グループ内で実践への共感や取り組みのアイディアが出される等、相互援助的な関係が形成された。学校危機後の学級経営には、心理教育的な支援も行い、授業の観察やカウンセラーとの連携も行われ、配慮の必要な児童生徒への関わり方が明確化され、支援が進められた。教師や学級の状況の変化を捉えることができ、支援の具体化のために教師用RCRTの活用は有用であった。
著者
木部 暢子 松永 修一 岸江 信介
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1、従来、言語地図は手作業により記号を一つ一つ押していく方法で作成されていたが、この研究ではパソコンのデータベースソフトを利用して、正確かつ効率的に言語地図を作成する方法を開発し、さらに、記号から音声の出てくる「声の言語地図」の作成を試みた。2、研究の遂行のために、次のような作業を行った。まず、南九州37地点(熊本県2地点、鹿児島県19地点、宮崎県16地点)の音声の特徴について調査し、基本単語約150語の発話をDAT(デジタルオーディオテープ)に収録した。収録した音声データは1単語ごとに編集しなおし、5,550(150単語×37地点)の音声ファイルからなる音声データベースを作成した。次に、この音声データベースを基にして「南九州言語地図」(記号言語地図)を作成した。この作業には岸江信介他(2000)「エクセルとファイルメーカープロを利用した言語地図の作成」の方法を用いた。最後に「南九州言語地図」の記号と音声データベースをリンクさせて、声の出てくる「南九州声の言語地図」を完成させた。なお、ファイルメーカープロが一般にはあまり普及していないソフトであることを考慮し、これをPDFファイル形式に置き換えることにした。3、その成果をまとめて以下の2種類の報告書を作成した。(1)『南九州声の言語地図』 (冊子版)(2)『南九州声の言語地図』 (CD-ROM版)4、研究の遂行にあたり、広く専門家の意見を乞うため、研究期間中に以下の発表を行なった。(1)「南九州地方における音声言語地図の開発と作成の試み」日本方言研究会第74回研究発表会(東京都立大学) 2002年5月(2)「声の言語地図」ネットワーク構想国語学会デモンストレーション(徳島大学) 2002年11月
著者
荏原 小百合
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ロシア連邦サハ共和国におけるホムス(口琴)の伝承に関する調査を行い、人と音文化の関わりについて考察するため、本年は二度サハに渡航した。当初首都と近郊、遠方都市の伝承状況の差異に注目したが、ホムス演奏は村や都市で個別に演奏される他、国内、諸外国でと多岐にわたり、ホムスを巡る人々の動向は、その個々の焦点化だけでは全体像が見えないとホムシストから助言があった。筆者の研究は多角的で実践性も多分に含んだ音を通じた人のネットワークの試みのため(調査では司会や演奏を含む参加型参与観察)、その指摘を反映した調査内容を以下に列記する。1.愛知万博でのサハ文化団のマンモスラボ開会式儀礼、ロシアパビリオンサハ週間を司会等行い参与観察(期間:05年3月18日〜4月3日)。マンモスラボ閉会式同行調査(9月30日)。2.「ヨーロッパとアジアのホムスコンサート」出演及び同行。3.共和国文化大臣と副首相に愛知万博への文化団派遣の意図聴取。4.サハ共和国国立高等音楽院ホムス講師に集中的インタビュー。本調査で明らかとなったことは、共和国政府(初代大統領が1990年代半ば日本を始とする各地に演奏家を連れて回った等)、祭り、学校、コンクール、ホムシスト、国際口琴大会、サハ語によるテレビ、ラジオ放送と広範囲のファクターが立体的・多層的に絡まり合い、現時点で観光や音楽産業と強い結びつきが無くとも、内外からその音世界が強い関心を集める世界でも稀有な状況を浮かび上がらせていることだ。この多層的に出現する音の空間が、互いに絶妙なハーモニーを奏でる現状がこの独自性を裏付ける鍵と指摘したい。また、筆者も会員の北海道標茶町塘路口琴研究会「あそう会」は、会の発足が1991年以来のサハのホムシストとの演奏交流に由来し、演奏・製作技術の創造的な場を持ち続けてきた独自性も指摘する。本成果は『季刊北方圏』131号〜134号等に反映した。
著者
前城 淳子
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は琉歌の中でも詠み歌の琉歌作品の研究を進めるための基盤作りを目的としている。本年度は前年度までに行った(1)詠み歌作品の収集と整理、(2)各地に保存されている琉歌集の収集を引き続き行うとともに、研究の取りまとめを行った。(1)では大正期の新聞(『琉球新報』『沖縄毎日新聞』)に掲載された琉歌作品の収集とデータベース化を中心に行った。新聞に掲載された琉歌を、1結社詠(結社単位で新聞に発表されたもの)、2琉歌大会詠(全島規模で開催された琉歌大会の詠草が新聞に掲載されたもの)、3募集歌(新聞社側の募集に応じて天長節やお正月などに応募された作品)、4寄稿歌(主に個人で琉歌を新聞に寄稿したもの)の4つに分類し整理した。また、それぞれの分類ごとの特徴等について「大正期の琉歌-『琉球新報』『沖縄毎日新聞』をもとに-」としてまとめた。(2)では天理大学図書館、沖縄県立図書館や琉球大学付属図書館など沖縄県内の図書館に所蔵されている琉歌集の調査を行った。天理大学図書館に所蔵された「琉歌集」は琉歌を読むもの(文芸)として編纂したものであり、本研究にとって重要な資料である。春、夏、秋、冬、恋、雑、仲風の7つの部立をもつこの歌集は、同じ部立構成をもつ『古今琉歌集』との詳細な検討が今後必要であろう。また、琉球大学付属図書館に所蔵されている「喜納誌」と記された「琉歌集」は節名が記されていないことから詠み歌的な歌集であると思われるが、部立が示されていないためどのような方針で歌集が編纂されたか不明である。本研究によって大正期の新聞に掲載された琉歌約4,000首の収集と整理が行われた。これによって詠み歌琉歌研究の基礎資料が整ったことになる。また、各地に保存されている琉歌集の収集と整理が進められ、60余の琉歌集を確認することができた。
著者
佐藤 正樹
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「十六世紀フランス語散文物語の文体論的研究」は、フランス語散文物語という当時生まれたばかりのジャンルの形成をマクロな観点から記述することを目標とした。十六世紀前半期の俗語散文物語は大きく二つのグループに分けられる。ひとつは騎士道物語に由来するいわゆる「ロマン」の流れを汲むのもで、もうひとつはボッカチオの『デカメロン』に由来する「ヌーヴェル」の系列である。「ロマン」の特徴は、伏線が絡まりあいながらどこまでも続く延長可能性にあり、作中人物は傑出した性質を帯びているのが普通である。主題的には、まず遠い「過去」の物語であること、作中人物の移動範囲が極めて大きいこと(「遍歴」の主題)、そして目くるめく超自然的な「驚異」が物語を進ませる原動力としてちりばめられていることが挙げられる。一方の「ヌーヴェル」の特徴は、物語が現実世界の断片として描かれるという点にある。したがって、物語に超自然的要素な要素は入り込まない。また、作中人物は傑出した性質を持つものとしては描かれず、出来事が淡々と描かれる。この書き方には年代記の影響があるかもしれない。さて、十六世紀を通じてより多く出版されたのは「ロマン」の流れを汲む作品のほうである。当時の読み手は、奇想天外でいつ果てるともない「ロマン」に、物語の醍醐味を感じていたのであろう。「ヌーヴェル」は、読者層にはそれほど浸透しなかったものの、「ロマン」の道具立ての陳腐化をいち早く感じ取り、俗語表現の可能性を追求しようとする一部の書き手に影響を与えた。「ロマン」と「ヌーヴェル」は、十六世紀にはまったく違うものとして生産・受容されていた可能性が高いが、ラブレーの作品はこの二つを意図的に混淆して作られているように見える。今後の研究では、特異なラブレーの創作プログラムを、「ロマン」と「ヌーヴェル」の緊張関係という観点からより明らかにしていきたい。
著者
岸本 実
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、環境についての客観的知識を提供する環境諸科学を総合するのみならず、環境倫理、風景、アメニティなどの環境についての主体的な意味を総合する、風土を中心概念とする環境教育力リキュラムにおいて、子どもの学習評価はいかにあるべきかを明らかにすることであった。客観的な知識および論理的な思考だけでなく、主体的で個性的な意味づけの多様性の評価方法として、ポートフォリオ評価法を手がかりとした。研究方法として、具体的な風土教材を開発した。これまで、琵琶湖を対象にした教材を引き続き研究するとともに、あらたに、中国内モンゴル自治区の草原の砂漠化をテーマとした環境教材の開発を行った。砂漠化の原因としては、過放牧、過開墾、乱伐という三つが原因とされるが、それらが清代、清末から中華民国、中華人民共和国における人民公社による大規模のうち開発、そして生産請負制の導入という歴史的な経緯の中でどのように関連しながら砂漠化の要因を形成してきたかを分析する教材を作成した。さらにそうした歴史をふまえて、今日的な環境政策である生態移民をどのように受け止めるのかをロールプレイを通して主体的に学ぶ生態移民ロールプレイの開発を行った。さらに、風土概念を社会科カリキュラムとその教育評価にどのように位置づけるのかを検討するために、アイルランドの公民政治カリキュラムにおけるスチュワードシップの概念とその教材と評価方法に注目した。
著者
JUANITA Heigham ROBERT Croker
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究者達は、2010年の春学期を用いて前年度の予備研究データ分析及び本研究に関連する最近の研究についての調査を行うと共に、2011年秋学期の教師トレーニングワークショップとボランティア活動のための準備を行った。9月には椙山女学園大学及び南山大学の学生14名を対象に、3回の教師トレーニングワークショップを実施した。各分野の専門家により小児の発達についての概論、初級言語レッスンの準備と授業管理についての講義が行われた。さらに学生達はデモンストレーションレッスンにも参加した。ワークショップの模様はビデオ録画され、参加者はワークショップの体験についてアンケートの記入、提出を行った。ワークショップに続き、トワイライトスクールでの毎週の授業準備として、研究者達は週2回の生徒とのミーティングにおいて短い授業デモンストレーションを提供した。デモ授業は学生の参考のためにビデオ録画された。ミーティングでは学生も授業演習を行い、デジタル録画される生徒同士のフィードバックセッションに参加した。参加者には研究者が作成した授業計画が与えられた。多くの学生は前年度にも同じプロジェクトに参加していたため学生間の習熟度に開きがあり、一部の学生は提供された計画に従って準備を行う必要があったが、他の学生は与えられた授業計画に自分なりの変更を加えて準備を行った。トワイライトスクールの実際の授業は10月から12月にかけて行われた。11人の参加者(元の14人のうち3人はスケジュールの都合で不参加)は名古屋市の4つの小学校(星ヶ丘小学校、西山小学校、伊勝小学校、千石小学校)の各校でそれぞれ8回、200人以上の小学生に授業を行った。各参加者は授業の後、考察文を作成し研究者達に提出した。11月後半、研究者達はJALT全国会議にて2010年のプロジェクトについて発表を行った。現在、研究者達は集計されたデータの分析を行っており、本研究についての最終報告は2011年に公開する予定である。
著者
米田 継武
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

随意的に素早い筋運動が投・跳・打・蹴などの日常動作の根本にありその神経的機構が、主として大脳皮質由来の機能に依存するという立場で研究を進めている。研究の基本は運動の元になる動き以前の力発生解析であり、パラメータは研究開始以来筋電図放電量(時系列区間解析)、筋電図周波数特性、および随伴する脳電位活動特性である。現象の一般的事実抽出に主眼をおいた1、2年目から、この3年目は個人差の類型特定という点で特に加齢に伴う分布変動を、健常人の広い年齢層を対象に、膝関節伸展運動及び筋電図の量的・時間的特性から有効なパラメータを求める計画をたてた。また全体的な目的からは神経筋系統合観点また、筋電図学上の観点から、筋の駆動のための神経プログラムの内容を探索がなされる必要があることから、運動単位動員と脳波の連関現象も引き続き検索した。しかし3年目初期に、制御パラメータの確立には中枢性の機序背景、中でも1側運動の神経支配が中枢側でも実行されているかどうかという確認計画を挿入して行う論理的な必要が生じた。そこで今年度研究は、3つの方向性で進められることになった。つまり、(1)素早い力発揮の所要時間が健常人の年齢別分布、(2)1側動作における両側運動皮質の振る舞い。(3)素早い力発揮時の運動単位脱動員に関連する皮質活動電位を捉える、であった。計画(1)についてはこれまでの進捗と同方向なので順調にデータ蓄積を果たし、学会発表を行い(国内1と国際1但し後者は21年6月)論文の執筆が可能な状況に到達した。(2)は新たな基礎実験であったが、予想外に進行させることが出来て国内学会(1)に成果を発表できた。(3)の検討は(2)という新たに加えられた実行プランに影響を受け昨年同様実験進度の低い状況となった。総じてこの手法により、個人差の類型特定という点と、実際のすばやい'運動'に適用を拡延して行くこととで研究の土台は確実に構築された。
著者
山下 美樹 遠藤 孝夫 池田 幸夫 神山 貴弥
出版者
広島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成17年度は、東奥義塾における教育の実態を探る為の基本的資料の発掘、並びにその収集という平成16年度の取組みの上に、さらに下記6項目についての資料収集を行った。1.昨年度収集した外人教師ジョン・イング(JHON ING)以外に、東奥義塾草創期からその衰退期にいたる外人教師に関する資料。2.昨年度からの継続として、弘前第二小学(現和徳小学校)の教員の質を裏付ける履歴書、並びに諸資料の発掘。3.弘前第二小学の教員によって組織された「自他楽会」と称する読書会、勉強会にかかわる諸資料の収集。その中には、約600冊に上る「書物」の一覧表、貸出簿等が含まれている。4.地元新聞「東奥日報」における、学校記事を含む明治期の教育関係関連記事に関する全資料。5.明治10年から18年に西津軽郡山田小学校で学んだ成田らくの授業ノート(算数、理科)。6.藤崎村における外人教師ジョン・イング(JHON ING)の動向。特に青年教育(農業指導)に関する資料の発掘。これらの資料は、直接的に、また間接的に東奥義塾における教育の実態を明らかにするものである。なお、本研究成果は平成18年度中に下記8章で構成される図書として広く公に資する予定である。1.福沢諭吉がめざした日本の近代化-窮理に託した福沢の願い-2.藩校「稽古館」から東奥義塾へ-全国にあった文化の原点-3.東奥義塾での革新的な動き-自然科学の授業はかくあるべし-4.天覧授業(授業再現)-明治天皇を仰天させた5人の塾生-5.東奥義塾生海を渡る(留学の記)-私費による留学-6.文学社会(総合学習の精神ここにあり)-これぞ福沢のめざした近代の精神-7.自由民権運動への流れ(東奥義塾党)-東奥義塾の光と陰-8.東奥義塾が果たした役割-地方には地方の意地があり、それが革新的な教育を生む
著者
寺崎 秀則 田上 正 津野 恭司
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

1.未熟胎仔ヤギでのto and fro venovenous bypass ECLA安全性と有効性の実証:帝王切開にて娩出した, 在胎118〜139日, 体重700〜3190gの未熟胎仔ヤギ6例で, 頚静脈よりthin wall catheterを心房まで挿入して1本のカテーテルで交互に脱送血をくり返すto and fro venovenous bypass ECLAを実施した. 在胎132日以上, 体重2400g以上の3例は, 18時間〜32時間のECLA実施後, 気管内チューブを抜去でき, 自力でガス交換と経口摂取が可能となった. 在胎120日, 体重2000gの1例は, 87時間のV-VバイパスECLAの後離脱できたが, ベンチレーターで管理中に急に呼吸不全状態となりECLAを再開した. しかし, ガス交換補助が不十分であったため, V-VバイパスからV-Aバイパスへ変更した. 203時間のECLAを実施したが, 生体肺のガス交換能が全く改善しなかったのでECLAを断念した. 解剖の結果, 気道ならびに肺胞内は膿性の分泌物が充満していた. ベンチレーターならびに気道管理不良による感染で重症肺炎を合併したものと考えられる. 体重700g, 1250gの2例は, 未熟度が高度で, 低酸素症の改善がないまま, バイパス開始2時間で低血圧ついで心停止をきたして死亡した. 生体肺のガス交換能と心機能が未熟で, V-Vバイパスでは生命維持に必要な心肺機能を補助代行できなかったためであろう. 超未熟児の重症例ではV-VバイパスECLAよりV-Aバイパスが良いと考えられる.2.ECLAの臨床応用:在胎34週, 体重2000gのRSD患者がベンチレーター療法で気圧外傷を合併し, ガス交換が不良で生命の危険が迫ったのでECLAを実施した. 3日間のECLAで救命できた.以上のように, 頚動脈を損傷しないで済むto and fro venovenous bypass ECLAは, 体重2kg以上の新生児重症呼吸不全の治療に臨床応用可能である.
著者
永森 静志 水谷 悟 新谷 稔
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

平成8年度におけるこのプロジェクトにおける成績は、申請者らが樹立したヒト由来肝細胞を、ガラス担体(シラン)を用いたラジアルフロー型バイオリアクター(RAD)で培養すると、担体の内部や表面に細胞が3次元的配列を保ちながら増殖した。これは走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡で観察可能であった。酸素消費量やグルコース消費量から算定し10^8cells/ml-matrix以上の高密度培養が可能で、200ml容量のRADで総細胞数は2.88×10^<10>個となった。他の重要な肝機能としてのアンモニア代謝や、薬物代謝としてナファモスタットメシレートやアンチピリンについて検討し、機能していることを確認した。RAD本体の改良は、坦体の粒子や孔の大きさ、表面のコーティングなど検討したが現在の坦体に勝るものは見つかっていない。体外循環量の減量には、50ml容積のリアクターの作成と回路チューブの狭小・短縮により総体外循環量を200ml以下に減量した。また体外循環回路の改良は血漿への酸素の供給やRADの血漿流速のコントロールが必要である。協同開発者の旭メディカルとエイブルによりフォローファイバー薄膜による酸素供給システムと、RADへの流速を維持するための血漿リサイクル回路を作成した。、その制御システムの基本的設計の終わり、実用化への開発を行っている。一方RADを生体に装着した際の安全性確認のために、ブタを用いて検討を加えた。実際のヒトへの応用を考え、頚静脈にカテーテルを挿入し毎分30mlの血漿を分離、これをRADに環流した。5時間の還流経過中ブタのvital signは安定していた。一般に体外循環システムで問題となる血管拡張、降圧作用のあるbradykininの血中濃度を測定したところ、細胞培養の有無に関わらず、増加傾向を認めなかった。このシステムの生体への安全性が明らかとなった。
著者
内藤 哲 正木 春彦
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

シロイヌナズナのシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)mRNAとtRNAに特異的な大腸菌ヌクレアーゼであるコリシンDとE5によるtRNAの分解制御機構の解析を行った。CGS mRNAはS-アデルシルメチオニン(SAM)存在下ではSer-94の位置で特異的な翻訳停止を起こし、これが引き金となってmRNAが分解されると考えられる。CGS遺伝子の第1エキソン領域とレポーター遺伝子をつないでpSP64ベクターに組込み,試験管内転写で調製したRNAを用いてコムギ胚芽抽出液の試験管内翻訳系での解析を行った。SAMに応答した翻訳伸長停止でリボソームは転座の段階でアレストしており、翻訳中間体のペプチジルーtRNAはリボソームのA部位にあることが示された。CGS mRNA分解中間体は約30塩基ずつ離れて複数個が検出されるが、これは最初に翻訳を停止したリボソームに後続のリボソームが追突した状態に対応していることを示す結果を得た。コムギ胚芽抽出液でRNaseの働きを阻害するとされるポリGを添加した解析により、少なくとも最初に停止したリボソームに対応する3'側のmRNA分解中間体に対応すると考えられる5'側の断片が検出され、エンドヌクレアーゼによる切断であることが強く示唆された。Try, His, Asn, AspのtRNAに特異的なコリシンE5の構造と基質認識を解析した。コリシンE5はジヌクレオチドGUをよい基質とするが、基質ポケットの空間制約が、基質tRNAのGUを含むアンチコドンループへの高い特異性を与えることを見いだした。tRNA(Arg)に特異的なコリシンDを出芽酵母とHeLa細胞で発現させると、リボソームやRNAポリメラーゼの合成が上昇する一方、Argの生合成が抑えられ分解経路が活性化されていた。また、tRNA障害が酵母の接合機能を昂進することを見いだした。
著者
東山 篤規
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究によりつぎの2点が明らかにされた.1)地図をたよりに歩きながら,ある地点から別の地点に移動するときには,我々は距離,方向,ランドマーク(LM)の手がかりを用いていると考えられるが,この研究ではどのようにそれらを用いているのかを認知心理学的に明らかにしようとした.実験では,距離,方向,ランドマーク(LM)の3手がかりがすべて与えられた地図,1つあるいは2つの手がかりしか与えられていない地図を数種類用意して,各地図に対して正しく歩くことができた被験者数とその歩行速度を比較することによって,うえの3手がかりの相対的な効果性について検討した.我々の実験の結果によれば,もっとも重要な手がかりは,LMであり,ついで方向,もっとも重要度の低い手がかりは距離であった.竹内(1992)の「方向音痴尺度」をもちいて,あらかじめ被験者の方向音痴の程度を尺度化し,そのあと各被験者に対して,地図を見ながら方向の判断を求めたところ,判断エラーと方向音痴尺度の間には,まったく相関が認められなかったが,反応時間と方向音痴尺度との間には相関が認められた.すなわち,方向音痴の自覚が高い被験者は,方向判断のエラーの数は,通常の人と変わらないが,反応までに長い時間を必要とすることがわかった.
著者
竝木 崇康
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日英語における複合名詞と複合形容詞の意味研究の精密化を目指し、次のことをした。(1)ある種の「意味の稀薄化」が起きている複合語について「特質構造」の概念を用いて意味解釈の仕方の方向性を示した。(2)「~一流」、「~よろしく」等における「複合語に特有の下位意味」の特徴を考察した。(3)「食べ放題」などにおける「放題」という表現について、現代日本語における意味と用法、15世紀からの日本語における意味と用法の変化について考察し「放題」は複合語に関わる「文法化」の例と考えられると指摘した。
著者
古澤 賢治 路 林書 中川 信義 李 暁西 植田 政孝 LU Lin shu LI Shao Xi 路 林暑
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1.本研究は、中国の産業立地と広域経済圏の発展可能性を主たる課題とした.調査対象としては,北京,天津,山東,遼寧を含む環渤海領域と上海デルタを「竜の頭」とする長江経済圏を軸にし,それらの比較をしたいと考えた.広大な中国の研究は対象を絞り込まねばならないが,同時に中国の多様性を実際に体験し,様々な状況を比較検討する素地を固めることも不可欠である.2.具体的な研究課題としてはまず,90年代前半の大幅な外資導入によって引き起こされた中国各地の変化についての状況認識し,その意義を分析することであった.外資導入により,中国各地の変化は確かに急速であり,投資環境の整備で産業立地の改善は大きく進展した.とはいえ,各地の一部の指導者には中央政府の援助と外資導入に依存することを望むだけの者もいる.3.次の研究課題は,企業間,地域間の協力関係の進展についてであった.我々は各地における地域連携システム確立による広域経済圏の形成を調査した.しかし,企業の自律性は依然として行政的に阻害されており,地域間の協力関係は展開できないでいるのを改めて認識させられた.社会経済構造の根本的変革は容易ではなく,市場経済の発展に不可欠な地域経済の自由往来は思ったほど進んでいない.4.今回の調査研究ではまた,自動車と家電産業を中心に外資企業の進出状況と中国各地の産業拠点政策についても認識を深めた.国際的技術水準における格差は別にして,外資企業の中にも現地化に努力し,中国の技術者を養成する姿勢を示すものも多い.さらに各地の指導者の多くが,それぞれの特色を生かした発展の重要性を自覚し始めているように見えた.