著者
松尾 正人
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、明治期の談話筆記と回想録の総合的研究をテーマとし、第1に明治中期に組織された史談会と同会が刊行した「史談会速記録」の全体像を追究し、その特質を分析した。第2に史談会幹事の岡谷繁実の活動を追究し、談話筆記作成の実態とその問題点を明らかにした。第3に各地の談話筆記と回想録を調査し、特に山口県文書館が所蔵する長州藩関係者の談話筆記や各種の日記・略伝などを収集してその内容を研究した。第4に高知県佐川町の青山文庫で田中光顕関係史料の調査・収集を行い、田中の回想録や伝記類に関係した史料を分析し、「史談会速記録」や伝記類に記述されなかった維新政治の裏面を解明した。
著者
丹羽 康貴
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

”夜ふかし”マウスをもちいてその行動を詳細に解析し始めたところ、Dox濃度を検討するための行動異常としては時間的にもマウスリソース的にも適切でないことが分かった。そこで同様の方法で作製した別の変異マウスをもちいてDox濃度の条件検討をおこなった。その結果、その変異マウスの表現型である体重減少と睡眠時間の減少をDox添加餌にて抑制することができた。また、それぞれ餌を変えるだけで、その表現型を抑制し、誘導し、再び抑制することにも成功した。これらの結果から得られたDox濃度条件をもとに、夜ふかし行動を抑える神経基盤がいつ決まるかを今後解析していく予定である。
著者
元木 幸一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゼーバルト・ベーハム作《ケルミス大版画》を中心に、居酒屋、歯医者、雄鶏合戦、ダンス、九柱戯、刃渡り、鶏ダンス、徒競走、競馬など諸モティーフの意味、起源を詳細に分析した。また宗教画と世俗画における画中版画と文献資料の分析から、農民祝祭版画の受容と販売形式を明らかにした。最後に、ニュルンベルク宗教改革がいかに祝祭行事に介入したかを歴史的に解明し、それがケルミスにどのように影響したか、そして《ケルミス大版画》がどのような機能を目指して制作されたかをまとめた。
著者
久米 弥寿子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、コミュニケーション技術教育における面接プログラム学習のモデルプログラムを構築し、効果的な面接学習プログラムを開発することを目的としている。今年度、新たに分析データを追加し、A看護系大学2年生のコミュニケーション技術の演習参加者169名に対して、事前に同意を得た139名を分析対象者としてコミュニケーション行動の出現傾向や面接の展開および技法の難易度の点から解析を行った。ロールプレイング1場面を1記録とし、計96記録について行動コーディングシステムを用い、コミュニケーション行動の出現頻度、持続時間を測定した。出現パターンは、各発話の単位時間における出現の有無(1-0サンプリング)の時系列データと隣接ペア構造によって捉えた。これらの状況分析の結果を基盤にして面接プログラム学習のモデルプログラム原案を作成した。時系列での出現パターンでは、「挨拶」「焦点をあてる」「OQ」「CQ」などがロールプレイング前半で多く、中間では「いいかえ」「情報提供」、後半には「個人的支援」「協力関係」が出現しており、場面展開に対応した出現傾向が示唆された。後半では、発話継続に困って「沈黙」になり、「関係のない笑い」「視線をそらす」が出現していて、発話を持続していくことの困難さが示された。さまざまな言語的コミュニケーション行動の出現、セッション設定時間内の演技の継続困難さなどから、改めてプログラムの目標設定については、1)「基本的傾聴技法」から「積極技法」など、段階的にコミュニケーション技術の活用を行うことができる、2)集中してロールプレイングにおける役割演技を行うことができる、3)各役割の体験によって他者の心理面への理解を深めることができる、という3点に焦点をあてるものが有効と考えられる。出現パターンの分析から、場面展開に応じたコミュニケーション行動の出現傾向が示された。また、「支持的コメント」や「助言」など傾聴技法だけではないものも含まれていた。このことから、一つ一つの技法の基礎知識に加え、実際の活用法や一つの面接場面の展開として捉えられるような視聴覚教材が有効であると考える。また、学生の準備状態に合わせて「傾聴技法」と「積極技法」を組み合わせた実際の具体例を示すことも重要であると思われる。
著者
野地 恒有
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代以降に移住者の開拓によってその集落が形成された島において、定住化のための「持続する生業体系」 の特徴について調査研究した。その結果、周辺社会との間に張りめぐらされた海縁ネットワークにより定住生活は持続され安定されること、移住先の定住生活を成立させる生業体系とは外部との海縁ネットワークの体系であること、その海縁ネットワークを作り出すその島独自の(ほかの地域に依存しない)生業手段・技術が必要であること、などを明らかにした。
著者
佐藤 卓己 佐藤 八寿子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では 20 世紀日本を代表する国民的メディア・イベントの分析を通じて、青年文化の変容を検討した。《NHK・青年の主張全国コンクール》(1954 年-1989年)の優秀作品をデータベース化し、量的および質的に分析した。また、関連資料の分析から日本社会における「青年」への眼差しの変化を明らかにした。その結果は『青年の主張-幸福感のメディア史』(仮題)として河出書房から出版の予定である。
著者
若松 昭彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,自閉性障害児・者を対象とした感情理解プログラム・パッケージの開発を目的として,そのベースとなる表情学習プログラムの実用化,音調や身振りによる感情表現や感情喚起状況の理解課題などの作成を目指してきた。それらの課題の中で,感情喚起状況の理解課題については,近年,発達障害児・者に対する社会的スキル学習の重要性が増してきていることから,課題内容を変更して,高校生や青年を想定し,教室場面等での望ましい言動と望ましくない言動をペアにして演劇部の学生に演じてもらい,動画による場面集を作成して,2事例に試行した。その結果,1)グループ活動での会話場面でも,相手の表情や視線などの様子を意識しようとする意欲が見られた。2)最初は雑談の内容が全く分からない様子であったが,何度も聞くことで,その概要の記述ができた。3)学習から日を経ない場合には,スキルを実際に使っている姿が見られた,等の対象者の変化が報告された。繰り返し視聴できるので,場面の状況や適切な行動のポイントなどを説明しやすい,人とのかかわり方だけではなく,表情を読む,視線や語調の違いに気づく,気持ちを知る,雑談の内容を理解する課題としても使用できるなどの利点があり,教材としての有用性が示唆された。しかしながら,日常場面への明らかな効果が見られたとは言えず,最適な学習内容・方法の検討や般化を促す支援方法の工夫などが,今後の課題として提起された。一方,音調の理解課題については,素材は収集したものの,作成の途上にある。また,表情学習プログラムについては,技術移転した企業との共同研究で,試作版を作成している段階である。その開発過程で,新たな特許申請の準備も進めており,今後,表情,音声,社会的スキルなどの学習課題を組み込んだ,発達障害児・者のための感情・社会的スキル学習プログラムの実用化を目指していく計画である。
著者
若林 幹夫 田中 大介 南後 由和
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、消費化・情報化時代の「都市の論理」と、それを成立させる社会的過程と構造を明らかにすることを目的としている。具体的には、1990年代以降、全国の都市部や郊外地域に普及した消費空間であるショッピングセンター、ショッピングモールを主要な対象として、現代都市社会における空間の生産・流通・消費のあり方と、それが生み出す社会と文化の様態を、情報化・消費化社会における新たな「都市の論理」として分析した。
著者
森井 宣治 (1987) 森井 宜治 宮内 太積 澤 洋一郎 松平 秀雄
出版者
沼津工業高等専門学校
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

地上の転校に影響され難く, その敷設計画が既設の建築物によって左右され難い地下鉄網は都市部の安定した交通・輸送機関として重要である. その敷設の経済効率を上げるために地下鉄トンネルの径を小さくし, 閉塞率を大きくすることが求められるが, それは列車の運動によって誘起される気流, 列車風, を強くすることになる. 列車風は乗降客に不快感をもたらし駅部の空調負荷を増大させる. それは地下鉄系内の火災時における煙の挙動を複雑にし, 乗降客の避難や消化活動を困難にし, 被害を拡大する要因となり得る. 1987年11月18日, ロンドンのキングス・クロス駅で発生した火災は死者31名, 負傷者23名を出す大惨事となった. この火災においても, 列車風が火災規模を拡大した. 列車風の挙動をより正確に把握することが大きな人的, 経済的損害をもたらす地下鉄火災に対応するために必要である. 本研究の目的は, 列車の運動が誘起する地下鉄列車風の挙動を理論的にも実験的にも正確に把握し, 地下鉄計における換気, 空調及び防災対策等を検討する上で有用な設計指針を与えることにある. 本研究の主要な成果は以下の通りである. 1)トンネル内で運動する列車が誘起する気流の発生機構を理論的に解明した. 地下鉄列車の運動がトンネル内に誘起する気流の挙動を解析するために, 気体を理想気体とみなして基礎的な考察を行い, 列車風を1次元・圧縮性流体として取り扱う理論を提示した. 2)列車の運動と気流の挙動との関わりについて模型実験及び実地計測を通じて明らかにし, 理論の妥当性を検証した. 模型実験装置を用いて, 地下鉄構造・列車運行による列車風現象の相違点を明確にした. 実験データの自動処理をおこなった. また, 帝都交通鉄道営団・東西線木場駅にち, 実地計測を行なった. 3)地下鉄駅各部における火災を模擬した模型実験を行ない, 地下鉄系における防災対策を検討する上で, これらの理論と模型実験の有用性を示した.
著者
前田 健太郎
出版者
首都大学東京
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本の公務員数が他の先進諸国に比べて大幅に少ない理由を考察した。特に、従来の研究が触れてこなかった点として、日本が経済発展の早い段階で公務員数の増加を抑制した理由を重視した。その結果、日本では政府が公務員の人件費をコントロールする制度的な手段を持たなかったことが重要な要因だという結論に至った。給与を抑制できなかったことが、政府を人員の抑制へと向かわせたのである
著者
宮田 Susanne 伊藤 恵子 大伴 潔 白井 英俊 杉浦 正利 平川 眞規子 MACWHINNEY Brian OSHIMA-TAKANE Yuriko SHIRAI Yasuhiro 村木 恭子 西澤 弘行 辰巳 朝子 椿田 ジェシカ
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1歳から5歳までの日本語を獲得する子どもの縦断発話データに基づき発達指標DSSJ(Developmental Sentence Scoring for Japanese)を開発し、この日本語の発達指標を84人の子どもの横断データ(2歳~5歳)にあてはめ、標準化に向けて調整を行った.DSSJはWWW上のCHILDES国際発話データベースの解析プログラムCLANの一部として一般公開されている.
著者
佐々木 宏子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

絵本は、乳幼児の(0・1・2歳児)のコミュニケーション能力をどのように育むかを調査した。まず、絵本のタイプをA「ナンセンス・ユーモア絵本」と伝統的なB「物語絵本」に分けた。約20組の親子に3年間でABタイプの絵本を各30冊ずつ60冊貸与し、親子で読み合いの記録を採ってもらった。その結果、Aタイプの絵本は言葉を獲得する前の乳幼児をもつ親子に豊かなコミュニケーション能力を育むことが分かった。
著者
眞保 智子
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の調査の方法は予備調査を含めて30社へのインタビューと全国の特例子会社278社(回答数153社、回収率55.03%)に対するアンケートである。知的障害者の技能について、従来指摘されている仕事より、やや高度な仕事、すなわち判断を伴う仕事の一部をこなせることが明らかになった。能力開発の方法は、OJTが中心であるがoff-JTも行われていた。アンケート調査の結果から定着する労働者と早期に退職する労働者の分岐点が入社後3 年程度のところにあることが示唆されている。健常者が基幹的な仕事を担い、知的障害者が周辺業務を担う分業により、リーマンショック後においても助成金を加えることなく黒字である企業の割合は40%強存在した。
著者
板東 絹恵
出版者
四国大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

思春期、青年期を対象とした分析結果から、摂食障害傾向スクリーニング尺度を作成した。この尺度は質問29項目からなり、摂食障害の特徴的パーソナリティや摂食行動より抽出された「食へのとらわれ」、「ジェンダー」、「自己肯定感」、「完璧主義」、「摂食行動」の5因子から構成されている。そして、この尺度の内的整合性および安定性、さらに構成概念妥当性について、十分な値が得られたことから、作成した尺度の信頼性と妥当性を確認することができた。
著者
石井 聡
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では疲労のミラーシステムの存在を示すとともに、疲労感の神経メカニズムを明らかにすることを目指した。異なるパラダイムを用いた複数の実験から、身体疲労感および精神的疲労感に後帯状回が関連していること明らかになった。我々のこれまでの報告と合わせて、本研究で得られた結果は疲労感のミラーシステムの存在を示唆する重要な成果である。これら成果は疲労への対処法の開発に大きく貢献するものと考えられる。
著者
水野 みか子 マルク バティエ ダニエル テルッジ
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、 20世紀半ば以降の現代音楽に関して「ひびき」の概念を打ち出し、和声、旋律、律動という三分法でも、音高、持続、強度、音色という四分法でもない音楽構成分析の視軸を提示した。研究過程では、歴史研究、分析研究、創作実践の三つの分野を横断する形で、当該時代の作品や作曲家の新生面を明らかにした。「ひびき」という用語は、専門性が薄く、音楽学や音楽分析ではなく、むしろ評論や日常の言葉として頻用されるが、それに対して本研究では、あえてこの一般的な語を引き合いに出して、その一般性が示唆する、学問分野を越えた研究分析方法を打ち立てることをめざした。
著者
長崎 正朗
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

次世代シークエンサではさまざまな転写産物を同時に見ることができるが同じ領域から出る転写産物について実際にどの転写産物がどの程度出ているかを区別することが課題である。特に機能を行っているかどうか未知であるncRNAやmicroRNAの網羅的探索においてはより正確な転写産物の推定が重要である。本研究ではこれらの特性を生かした転写量推定アルゴリズムを開発した。また、スーパーコンピュータを用いてlincRNAおよびmRNAを抽出できる環境整備を本研究成果により実現することができた。
著者
石川 菜央
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

21年度は,主に岩手県久慈市および沖縄における調査を実施した。久慈市では,市内で開催された全国闘牛サミットおよび全国闘牛大会にて,来場者へのアンケート調査,牛主への聞き取り,資料収集を行った。沖縄では,闘牛がさかんなうるま市や読谷村,北谷村,今帰仁村などで,牛舎を訪れ,牛主に対する聞き取りを行った。22年度は,調査のまとめと発表,論文化を重点的に行った。研究の目的における「日本における闘牛の存続の要因を解明する」点について,現代では闘牛を通した担い手の交流が活発になっていることに着目し,成果発表を行った。
著者
岩本 直樹
出版者
香川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究において日本古典文学の中でもっとも有名な作品の一つである平家物語を取り上げ、「扇の的」の記述について自然科学的な視点から検証を行なった。具体的には暦の変換、太陽運動のシミュレーションによる扇の的の日時の決定、江戸時代の弓の競技の記録のデータを解析することによって、扇の的までの距離について、中世に使われていた「段」という距離の単位に関して 2.7m, 11m という 2 説のうちのどちらが妥当であるかの決定、風波の影響の評価などを行った。
著者
大西 孝之
出版者
静岡産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

プロスポーツチームの社会的責任においては、「パフォーマンス的責任」「強化的責任」「継続企業的責任」「ファンサービス的責任」「法的責任」「企業統治的責任」「スポーツ振興的責任」「地域活性的責任」「社会貢献的責任」「インプレッサー的責任」という10の責任が特定された。また、トップアスリートの社会的責任においては、「パフォーマンス的責任」「スポーツパーソンシップ的責任」「プレー外のスポーツパーソンシップ的責任」「ファンサービス的責任」「スポーツ振興的責任」「社会貢献的責任」「インプレッサー的責任」という7つの責任が明らかとなった。