著者
前之園 幸一郎
出版者
青山学院女子短期大学
雑誌
青山学院女子短期大学総合文化研究所年報 (ISSN:09195939)
巻号頁・発行日
no.9, pp.45-73, 2001-12

『ピノッキオ』の著者コッローディ(Collodi)は,子どもたちを楽しませるためにこの作品を書いた。しかし,そこにはイタリアの国家統一直後の社会に対する作者の激しい社会批判が,作者の意図をはるかに超えて描き込まれている。さらに,われわれは,この物語の中に多くの宗教的メッセージをも読みとることができる。おそらく作者は,子ども向けのこの物語において,ことさら宗教的な問題を取り上げようなどとは考えもしなかったであろう。しかしながら,19世紀末のイタリアの文化的土壌の中から生まれた『ピノッキオ』には,キリスト教的文化の伝統がくっきりと反映され,作者の意図のあるなしにかかわらずそれが明確に刻印されることになったと考えられる。
著者
篠永 東吾 Bin Md Arifin Mohd Izam Izzuddin 岡田 晃 井上 基弘
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.275-276, 2019

<p>ジルコニアは高強度,高靭性であるため摺動部品等に使用されており,長期間使用のため耐摩耗性の更なる向上が望まれている.一方で,大面積電子ビーム照射法は,材料の極表面を瞬時に溶融,蒸発することで大面積に表面平滑化が可能である.本研究では,大面積電子ビーム照射によるジルコニアの耐摩耗性向上を実験的に検討した.その際,非定常熱伝導解析によりジルコニアの表面温度変化を解析することで耐摩耗性変化を議論した.</p>
著者
姜 明采 Kang Myungchae
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.275-319, 2017-03-20

大正期は、(短い間であったにもかかわらず社会全般に大きな変化をもたらしており、こうした変化に影響を受けた建築界でも、)新しい建築への数多くの試みとして様々な建築様式が登場してきた時期である。本稿は、こうした大正期における建築デザインの動向を検討するため、1924(大正13)年12月22日より1925(大正14)年2月28日まで実施された震災記念堂の設計競技に注目した。震災記念堂の設計競技応募図案は現在、全221案のうち設計競技の当選図案図集である『大正大震災記念建造物競技設計図録』に掲載された36案の当選図案と、震災記念堂の収蔵庫に収蔵されている39案の選外図案の75案が残存している。設計競技の当選図案とこれまで公開されていなかった選外図案の外観デザインを対象に、当時流行した建築デザインの要素とその傾向を考察することを本稿の研究目的とした。立面図や透視図などで外観の形状がわかる74案の応募図案を古典主義風、表現主義風、アール・デコ風、モダニズム風、和風、東洋風の6つのデザイン様式に分類し、各様式で最も多く見られたデザインの要素をまとめた結果、以下のことが明らかとなった。 まず、全体的な外観形状としては、不要な装飾的要素を抑え、ジッグラト風デザインや直線を多く用いて垂直性を強調した計画が多く見受けられた。また、ドーム屋根に左右対称の縦長開口部を多く用いた古典主義風の塔の形状とした「コンペティションスタイル」との類似性も見られ、すっきりしたモダンなデザインと均衡が取れた古典主義風デザインが共存していた様子がうかがえた。更に、その細部には、単純幾何学的装飾の反復と変形アーチの開口部などの装飾の要素を設けられ、設計者の個性を発揮したことが考えられる。こうしたシンプルな外観と個性的な細部装飾のデザイン要素から、大正期における建築デザインの動向が読み取れたと考えられる。
著者
嘉名 光市
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.637-642, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
32

本研究では、我が国における駅前景観形成の草創期である戦前期大阪における大阪駅付近都市計画事業およびそれに関連する都市計画の立案の変遷から、駅前の整備にあたって目指した都市美観形成の方向性を明らかにすることを目的とする。戦前期大阪駅前周辺の美観形成の方向性は、当初は関係者の協議・調整によって大阪駅前整理計画協議会成案が検討され、大阪駅前や御堂筋などの大阪の玄関口をなす場所の美観形成には、街路整備に加え周辺の建築敷地造成が重要であるとの考え方が示された。さらに、大阪駅前整理工事に関する建議案などのように、美観形成の観点から大規模かつ整形の建築敷地造成が重要で、その実現手法として超過収用が期待されていた。一方、大阪市のシビックセンター計畫理想案懸賞により、欧米都市の美観形成に倣った一団街区の形成やビスタ、アイストップなどの街並美観が提案された。その後、大阪駅前付近都市計画事業変更、大阪駅前第2土地区画整理追加により、それまでの大阪駅頭、御堂筋沿道の美観形成と一団の街区の美観形成という考え方がみられ、美観地区追加指定では、詳細に区分した地区として位置づけ発展していった。
著者
棏平 司 内山 匡将 原田 千佳 大瀧 俊夫 山上 艶子 福本 貴彦 前岡 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P3571, 2009

【目的】厚生労働省は、「患者の安全を守るための医療関係者の共同行動」の実施を平成13年度より開始し、医療安全対策を全国的に展開している.今回、当院リハビリテーション科(以下リハ科)において過去5年間のインシデント状況調査を行い、その要因について若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象】対象は、平成15年1月1日から平成19年12月31日までにリハ科内においてインシデントリポートとして挙げられ、当院の医療安全管理委員会に許可を得たインシデントを対象とした.<BR>【方法】方法は、インシデントリポートより発生件数、発生内容、発生要因、対応、生命への危険度、患者の信頼度について抽出した.さらに、発生要因は、正準判別分析を用いて分析した.<BR>【結果】発生件数は、平成15年(10件)、平成16年(28件)、平成17年(35件)、平成18年(44件)、平成19年(28件)の合計145件であった.発生内容は、リハ中55%、転落・転倒31%、点滴・NGチューブの抜去・抜管5%であった.発生要因は、確認不足15%、観察不足13%であり、問題行動のある患者(R=0.748、P<0.05)であった.男性ではコミュニケーション不足(R=1.234、P<0.05)、女性では点滴・NGチューブの抜去・抜管(R=0.434、P<0.05)であった.インシデントへの対応は医師診察が54%、なし28%であった.生命への危険度は、実害なし51%、全くなし32%、一過性軽度10%であった.患者の信頼度は、殆ど損なわない52%、多少損なう10%、大きく損なう6%であった.<BR>【考察】発生件数は、平成18年までは増加傾向にあったが平成19年には減少した.これは、リスクマネージャーへの報告や会議を行い、インシデントの分析や対策についての会議を開催したため改善されたものと思われる.男女共に関与が深かった問題行動は、認知能力の低下や高次機能障害の問題によるものと思われる.一方、男性にみられたコミュニケーション不足では、男性に多い口数の少なさから生じているのか、あるいは、リハスタッフそのものの熟練性の差によるものと考えられる.女性に関しては点滴やNGチューブの抜去・抜管の要因が挙げられていたが、これは女性の方が男性より不快感をより強く感じるために起こったのではないかと思われる.インシデントへの対応は、医師診察が半数占め、しかも生命への危険度は実害なしが半数を占めていた.しかし、場合によっては手術を要するものもあり問題も見られた.患者や家族への説明は多くの場合行っていたが、患者の信頼度の中で大きく損なうこともあることから事情の説明はすべきものと思われる.<BR>【結語】今回、医療安全についてインシデントの発生から検討した.急性期化が進められる状況の中でインシデントの原因分析と対策は、よりいっそう講じていかなければならないと思われる.
著者
中田 誠司 増田 広 佐藤 仁 清水 信明 鈴木 和浩 今井 強一 山中 英壽 斉藤 浩樹 中村 敏之 加藤 宣雄 高橋 修 矢嶋 久徳 梅山 和一 篠崎 忠利 大竹 伸明 関原 哲夫 猿木 和久 鈴木 慶二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.1483-1487, 1995-09-20
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

(背景と目的) 同一家系内に発生した前立腺癌患者の臨床病理学的特徴について検討した.<br>(対象と方法) 親子または兄弟に発生した7組 (14例, 親子2組, 兄弟5組) の前立腺癌患者 (F群) と, 1987~1993年の間に群馬県およびその近郊の病院で, 未治療の状態で発見された前立腺癌患者1,741例 (G群) を比較検討した. 両群の平均年齢が異なるため, 生存率は相対生存率を求めた.<br>(結果) 診断時年齢は, F群が54~86歳まで分布し, 平均68.1±8.5 (S. D.)歳, G群が47~97歳まで分布し, 平均74.2±8.3歳で, F群で平均年齢が低い傾向であった. 臨床病期, 組織学的分化度は, F群で早期癌の占める割合が高く, 低分化癌の占める割合が低い傾向であった. 予後は, 3年および5年相対生存率はF群で82.4%, 57.6%, G群で84.3%, 73.9%で, 5年の時点ではF群の生存率が低い傾向であったが, 全体的には両群の間にほとんど差はみられなかった. F群では死因の明らかな6例のうち4例 (66.7%) が前立腺癌死であるのに対し, G群では死因の明かな398例のうち前立腺癌死は224例 (56.3%) であった.家系の病歴に関しては, F群で前立腺癌の2人を除いた他の癌患者がいたのは6家系中3家系であった.<br>(結論) 家族性前立腺癌は, 診断時年齢が若く, 早期癌が多く, 低分化癌が少ない傾向であった.
著者
森 朋子 三ヶ尻 智晴 田崎 智宏
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-24, 2020 (Released:2020-02-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究では,近年,普及が進んでいるインターネットを通じたリユース (以下,ネット型リユースという) に着目し,その利用経験が不用衣服の排出行動に及ぼす影響を分析した。衣服の購入が多い 15 ~ 49 歳の女性を対象にウェブアンケートと統計分析を実施した結果,ネット型リユースの利用を経験すると,リユースショップのような従来型のリユースルートよりもネット型リユースの活用を好むようになることがわかった。また,ネット型リユースを現在利用していなくても,過去に利用した経験があれば,不用衣服をごみとして廃棄する行動は抑制され,リユースショップ等に出す行動が促進されることも明らかとなった。これらの結果より,ネット型リユースの利用経験が,リユースの具体的な方法を学んだり,不用衣服のリユース品としてのポテンシャルを認識したりすることに役立っていることが示唆された。
著者
福地 幸文
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.77-88, 2020 (Released:2021-04-21)
参考文献数
16

This empirical study examines the changes in life insurance buying behavior caused by the Spanish influenza pandemic in Japan. We use panel data from the 47 Japanese prefectures during the years 1914-1922 to perform a regression analysis. By employing dummy variables, we demonstrate, that the Spanish influenza outbreak prompted life insurance buying behavior in 1919. In addition, a separate regression analysis using differences in mortality rates provides a glimpse at how social stability is the foundation of the life insurance business.
著者
Adamson John
出版者
信州豊南短期大学
雑誌
信州豊南短期大学紀要 (ISSN:1346034X)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-31, 2006-03

This study has looked at the use of semi-structured interviewing in educational research between native speakers and non-native speakers of English. It has viewed this type of interviewing from various perspectives, particularly focusing on context, topic control, turn-taking and the interview as a speech event influenced by classroom discourse. It has argued that the role of context lays at an interface between conversation analysts and linguistic anthropologists who dispute the manner of its application in the process of interpreting interview discourse. Of particular significance in this discussion is the work of Briggs (1986) whose work in ethnographic interviewing is seen in this study as having important lessons for the semi-structured interviewer.
著者
前川 知樹
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.97-104, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
27

Developmental endothelial locus-1 (DEL-1) was identified as a biomolecule that regulates neutrophil migration through integrin receptors. Hajishengallis (University of Pennsylvania) and colleagues found that DEL-1 is highly expressed in periodontal tissues, and revealed that DEL-1 regulates alveolar bone resorption by suppressing excessive inflammation in periodontitis. DEL-1 is a 52-kDa protein with three epidermal growth factor (EGF) -like repeats at the N-terminus and two discoidin-like domains at the C-terminus. DEL-1 plays an important role in inflammation and the immune system by interacting with αv integrins, such as β2 integrins (e.g. αLβ2, αMβ2) and αvβ3, as well as phospholipids. We have shown that DEL-1 may not only be involved in neutrophil regulation, but also in bone regeneration, by inducing stem cell niches in hematopoietic stem cells in the bone marrow, to regulate osteoclasts and osteoblasts, promote efferocytosis, and also regulate mesenchymal stem cells. We are now exploring how DEL-1 is regulated in vivo and whether it can be applied clinically to benefit patients with periodontal disease and related disorders. Recently, studies on two distinct mucosal diseases, periodontitis and pneumonia, have revealed that DEL-1 decreases with aging and inflammation; the studies also provided insight into the molecular mechanisms underlying the effects of DEL-1 on bone metabolism-related cells and mesenchymal stem cells, as well as into factors regulating DEL-1 expression. In this article, we shall review the various functions of DEL-1 and its clinical applications from the viewpoints of immunity and bone metabolism.
著者
小野 晃典 菊盛 真衣
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.22-37, 2018 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26

イノベーション普及論の分野における有名な古典理論において,早期に採用した消費者はいまだ採用していない消費者に対して正の口コミを発信するというテーゼがあるが,これに対して,近年,消費者はしばしば高い独自性欲求を有しており,そのような場合には,正の口コミ発信は控えられ,その結果,普及は生じない,という主張が展開されるようになった。しかしながら,この主張は,独自性欲求を一次元的にとらえた上で展開されている点に問題を抱えている。本論は,独自性欲求を三次元に分類した上で,正の口コミを抑制する効果を有するのは特定の種類の独自性欲求のみであり,独自性欲求の高い消費者が必ずしも正の口コミ発信を控えるとは限らないと主張する。

1 0 0 0 気象

著者
気象庁 監修
出版者
日本気象協会
巻号頁・発行日
no.396, 1990-04