著者
山本 忠
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.67, pp.133-145, 2021-03

昭和45年告示学習指導要領の高等学校数学ⅡBにおける「平面幾何の公理的構成」は、数学教育現代化の潮流の基に作成されたものである。数学教育現代化のねらいの一つは、現代数学の考え方を初等・中等教育に導入することであった。したがって、教科書や参考書は現代数学的な公理的構成を取り入れた。その結果、当時の実践記録によれば受容困難な場合が多くあった。たとえば「わかりきったことをなぜ証明しなくてはいけないのか」、「教科書と参考書では公理が異なっているので心配」など、生徒の反応は否定的なものが多かった。そこで、教科書、参考書の公理の異同、表現の異同、多様性、合同の公理の扱い方などの項目を設定して、当時使用された教科書、参考書の記述を数量化Ⅲ類の手法で分析した。結果は各教材によるばらつきは大きいことが裏付けられた。そして各教科書は比較的類似性があったものの、教科書と参考書の距離は遠いものがあり、当時指摘されていた生徒の不安も裏付けられた。
著者
梅澤 慎吾 岩下 航大 沖野 敦郎 藤田 悠介 西村 温子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】両大腿切断は左右の膝を失う固有の障害像から,実用歩行を困難にする要素が多い。しかし,優れた立脚・遊脚制御を備える膝継手が一般的になりつつある昨今,片側切断者に匹敵するレベルで歩行可能な事例が散見される。その達成のためには要所を押さえた義肢部品の運用と,全体のマネージメントが必須となる。先の報告では二足実用歩行を獲得した症例を報告した。今回は同様に実用歩行を獲得した新たな症例から,時代に即した情報の一つとして,大腿切断者の高活動ゴールの方向性を提示することを目的とする。【症例】27歳 男性 交通外傷による両大腿切断。既往歴や合併障害なし。前病院の断端形成術後,義肢装具SC入院《断端長》右23.0cm,左22.0cm《受傷前身長》181cm 《義足装着》シリコーンライナー使用[初期評価:リハ開始時(特徴的な要素のみ記載)]《ROM》左股関節伸展0°右股関節伸展0°《徒手筋力評価》左右股関節周囲筋4・体幹筋4《疼痛》左断端末外側に圧痛・荷重時痛 《受傷~義肢装着の期間》約1ヶ月[最終評価:24W終了時]《ROM》左股関節伸展5°右股関節屈曲伸展10°《徒手筋力評価》左右股関節周囲筋5体幹筋5《疼痛》同部位に圧痛残存するも,装着時はソケット修正で自制内[膝継手の変遷]固定膝⇒C-Leg⇒C-LegCompact【経過と結果】[開始~12W]膝継手非使用,または固定膝でリハ施行。スタビー(短義足)による動作習熟が中心。移動範囲は前半が屋内,後半が屋外・屋内応用歩行を中心に行う。坂道下りが二足で可能になることを条件に,4段階で義足長を10cm毎に長くする。《10m歩行》13.8秒 《12分間歩行》420m[12W~24W]C-Leg変更後は膝屈曲位での二足坂道下り動作と歩行中の急激なブレーキ動作など,膝継手の立脚期油圧抵抗(イールディング機能)の習熟と反復に重点を置いて訓練継続。杖なしでの坂道歩行や円滑な方向転換が16Wで自立。最終では装着時身長が178cm,約2~3kmの屋外持続歩行や公共交通機関の利用がT杖携帯で自立となる。《10m歩行》7.0秒 《12分間歩行》840m【考察】両大腿切断のリハは到達目標が頭打ちになることが多い。同障がい者が義足で生活を送るには,多様な路面の攻略が必要だが,特に坂道下り動作の自立が義足常用化の鍵になる。多くは手摺りを利用出来る公共の階段と違い,屋外の坂道に手摺りはなく,従来の膝継手では杖使用でも円滑な動作が困難だからである。この報告で提案するリハの基軸は「安心感をもたらす膝継手選択で可能になる身体機能向上」と「膝継手で引き出せる動作の習熟(坂道下り)」である。いずれも製品の理解が重要でなる。C-Legは,イールディング機能による立脚期制御と円滑な油圧抵抗のキャンセルによる遊脚期制御(クリアランスの形成)が独立して調整可能で,運用次第で多様な路面の歩行が可能になる。具体的には1.強力な油圧抵抗が大腿四頭筋の遠心性収縮を代用し,一方の膝を緩やかに屈曲させながら他方の足部接地を行う時間的猶予を与える 2.継手が完全伸展位で,かつ設定した閾値以上の前足部荷重をしなければ油圧抵抗がキャンセルされず不意に膝折れが起きない 3.エネルギー効率の面で優位とする報告があり,持続歩行が過負荷にならない等の特長がある。今症例では膝継手使用前に,低重心かつ膝折れのない環境で充分な時間を割き,二足歩行で多くの動作習熟を行った。これは股関節周囲筋群の強化と,多くの動作獲得という成功体験に繋がる。効果として,継手使用以降で動作習熟に時間を要する場面でも,かつて出来たことが基準となり,装着者に問題意識が芽生え積極性を生む下地になったと分析する。立脚期を考慮すれば固定膝に利点があるが,歩行速度や距離の結果より,高いレベルの目標達成には遊動膝の良好な遊脚期形成が重要となる。高機能膝継手はPC制御による製品が存在するが,良好なアライメント設定が前提になる。その他の検討事項として,床からの立ち上がりを考慮した低重心の保持を目的に,低床型足部やキャッチピンを使用しない装着法も有効な選択肢である。(キスシステム,シールインライナー,吸着式)【理学療法学研究としての意義】高額製品の制度内支給は決して一般的でない。しかし,両大腿切断者のQOL向上に大きく寄与する事実を公にすることで,重度切断障害者の自立支援に向けた有効な情報提供になると共に,このような実績の蓄積が制度に則った運用の円滑化を生む契機になることを望む。成功体験を得た両大腿切断者にとって,高機能膝継手は「便利」というレベルに止まらず,人生を通じて「必要不可欠」な製品である。
著者
道端 齊 植木 龍也 宇山 太郎 金森 寛 広津 孝弘 大井 健太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

海水中にはバナジウムやコバルト等わが国ではほとんど産出しない希少金属(レアメタル)が溶解している。これまでに化学的に合成された吸着剤を用いて、これらのレアメタルを海水から捕集する試みは数多くなされてきた。しかし、海水には多くの金属イオンが溶解しているため、目的のレアメタルだけを選択的に分取するのは必ずしも容易ではない。研究代表者のグループはホヤが海水のバナジウム濃度の1,000万倍(10^7)ものバナジウムを高選択的に濃縮することに着目し、その濃縮機構の解明で得られた成果をレアメタルの分取に展開することを計画した。本研究では、ホヤのバナジウム濃縮細胞(バナドサイト)の細胞質から抽出した濃縮のカギを握る12.5kDa、15kDaと16kDaの3種類のバナジウム結合タンパク質(Vanabin)の解析を進めた。その結果、それらをコードするcDNAの全長のクローニングとその解析によってVanabinは{C}-{x(2-4)}-{C}という特徴的なモチーフの繰り返し配列を持ち、金属イオンと結合し易いシステインを約20%も含むタンパク質であること、NMRによって主にαヘリックスから成る新規のタンパク質であること、Vanabin 1モルに約20原子のバナジウムが結合し、その結合定数は10^7Mであることを見出した。さらに本年度の研究により、12.5kDaのVanabinは約10原子の四価バナジウムと結合することが判明した他、15kDaのVanabinは鉄イオンや銅イオンとは選択的に結合しないこと、銅イオンは競争的にバナジウムの結合を阻害することが判明した。一方、この研究期間内では特異的金属結合部位の特定には至らなかったが、現在理化学研究所と共同でVanabinの立体構造の解明を進めつつあり、その結果によっては早晩特異なホヤのバナジウム濃縮機構の解明と応用が期待される。
著者
糸数 昌史 久保 晃 谷口 敬道 小阪 淳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.715-717, 2016
被引用文献数
1

〔目的〕バーチャル教材を用いた解剖学演習を実施し,解剖学に対する学生の興味と苦手意識の変化を調査すること.〔対象と方法〕理学療法学科2年生100名.バーチャル教材を用いた演習後に,授業評価と解剖学に関するアンケート調査を実施した.併せて苦手科目としての解剖学の状況を前年度と比較した.〔結果〕バーチャル教材は学生の興味を喚起し,解剖学を苦手とする学生が有意に減少した.〔結語〕解剖学実習にバーチャル教材を用いることで,学生の解剖学への苦手意識を解消することができた.
著者
池田 佳子 荒木 佐智子 村中 孝司 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-31, 1999-06-25
被引用文献数
9

浚渫土中の土壌シードバンクを利用した水辺の植生復元の可能性を小規模なまきだし実験により検討した.水分条件を一定に保つことのできる実験装置「種子の箱舟」の中に霞ヶ浦の湖底から浚渫された底泥(浚渫土)約0.55m^3を1998年3月下旬にまきだし,出現する維管束植物の実生の種を,新たな実生がみられなくなる11月下旬まで定期的に調査した.その結果,合計22種708実生が得られた.また,湖に隣接し,土壌がときどき水をかぶる場所(冠水条件)と,常に水をかぶっている場所(浸水条件)を含む小規模の窪地(10m×5.5m)を造成し,1998年3月下旬に全体に厚さがほぼ30cmになるように浚渫土をまきだし,9月下旬に成立した植生を調査した.窪地の植生には22種の維管束植物が認められた.湿地に特有の植物である「湿生植物」と「抽水植物」は箱舟で5種,窪地で12種出現した.また,出現した帰化種は箱舟で9種,窪地で3種であった.浚渫土の土壌シードバンクは水辺の植生復元の材料として有効であることが示唆された.
著者
松田修著
出版者
弥生書房
巻号頁・発行日
1968
著者
渡部 数樹 中村 英樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_889-I_901, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
7

本論文では,交通事故削減に向けた効率的な安全対策実施を目標として,道路交通や社会環境条件と事故発生との関係について事故類型別に統計モデル分析を行った.分析にあたっては,事故データに道路交通状況等の各種情報をGIS上で付与したデータベースを構築し,事故発生頻度を被説明変数とした負の二項分布回帰分析より影響要因の特定を試みた.分析結果より,幹線道路の事故発生頻度と混雑時平均旅行速度や交差点間距離が密接な関係にあることや,非幹線道路では道路幅員や用途地域等の要因が事故類型間で異なることを示した.さらに,非幹線道路の事故は旅行速度の低い幹線道路に近い位置で多発する傾向を示唆した.分析結果をふまえ,幹線道路の円滑性向上や階層化された道路ネットワークの再構築による安全性向上について考察した.
著者
佐方 易忠 橋本 忠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.878-880, 1959
被引用文献数
3

In order to examine chemical properties of <i>p</i>-trimethylsilylphenol (I), reaction of (I) with several kinds of cationoid reagents was carried out. Application of bromine to (I) affords <i>p</i>-bromophenol, while that of benzenediazonium chloride gives 4-hydroxyazobenzene. Nitration of acetate (II) of (I) with acetyl nitrate affords <i>p</i>-nitrophenyl acetate and the Friedel-Crafts reaction of the methyl ether (III) of (I) with anhydrous aluminum chloride and acetic anhydride gives <i>p</i>-methoxyacetophenone. The Fries rearrangement of (II) results in formation of <i>o</i>- and <i>p</i>-hydroxyacetophenone. The Reimer-Tiemann reaction of (I) affords 5-trimethyl-silylsalicylaldehyde. (I) is decomposed by 10% hydrochloric acid to form phenol but remains unchanged with 10% sodium hydroxide. These experimental results indicate that the cationoid reagents that easily undergo substitution at a position <i>para</i> to hydroxyl replaces the trimethylsilyl group in (I) while reagents that undergoes substitution in the <i>ortho</i> position does so in (I) without severance of a bond between silicon and the aromatic ring.

1 0 0 0 OA 三味線楽譜

著者
川本逸童 著
出版者
邦楽講習会
巻号頁・発行日
vol.1, 1913
著者
中林 克巳
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.151-160, 1974-03-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

This paper describes the sound localization on the horizontal plane. Fig. 1 shows the Loudspeaker arrangement for the experiments of directional hearing made. An observer sits on a chair with a headrest as shown in Fig. 2. The observer's head is slightly supported by the headrest. The observer gives the perceived direction of sound source presented. The results of the experiments of the directional hearing for these one-octave band noises can be divided into two groups (Fig. 3, 61%, and Fig. 4, 35%). The perceived direction of the observers of Fig. 3 is influenced by the signal frequency and the sound pressure level but that observers of Fig. 4 is not influenced by these factors. Table 1 shows the percentage of observers for each signal frequency and each judgement type. It is noteworthy that only the 8k - 16kHz one-octave band noise gives the correct judgement (74%). As for other four signals, the misjudgements are influenced by the signal frequency and the sound pressure level. As for the phantom sound source (see Fig. 7), the directional hearing for the one-octave band noise is shown in Fig. 8 and there occur many misjudgements. It is also noteworthy that the phantom sound source in the direction of 45゜ - 135゜ are not perceived in the direction of 45゜ - 135゜ but in the direction of 45゜ or 135゜ and that this phenomenon still occurs even if the band width of the signal becomes two octaves (Fig. 9). In order to find the factor which is effective for the correct judgement, three additional experiments are tried, the directional hearing of the real sound source, of two-octave band noise (Fig. 5), and of one-octave band noise with a certain amount of 8k - 16kHz one-octave band noise (Fig. 10), and the male voice cut off by a Low-Pass-Filter (Fig. 6). By these experiments, it may be said that the sufficient amount of the component of 8k - 16kHz, and widening of signal band are effective for the correct judgement and that the former is far more effective for the correct judgement and that the former is far more effective than the latter. Table 2 shows the percentage of observers of each one-octave band noise whose perceived direction is influenced by the sound pressure level. The ratio of observers whose perceived direction is influenced at least by two kinds of one-octave band noise is 53%. The relationship between the perceived direction and the sound pressure level is shown in Fig. 11 as a typical example. The perceived direction is determined independently of the loudspeaker direction. The last problem is the perceived direction of phantom sound source in the direction 45゜ - 135゜. This phenomenon can be explained by the calculation of ⊿P and ⊿ψ, where⊿P is the difference of the sound pressure level and ⊿ψ is the difference of the phase at the entrance of two external auditory canals (See Fig. 12 and Eq. 1 - Eq. 8). The results mentioned above are under the condition that the observers heard the signals in an echoless chamber with their head supported. Fig. 13 shows the relative frequencies of the directional hearing of 1/3-octave bands noise under the ordinary condition, without a headrest and in a laboratory room There still occur many misjudgements. These results and discussions can be applied to the recording technique of the 4-channel stereo.