著者
池谷 充弘 石塚 ちあき 安本 弥生 吉本 麻美 長澤 充城子 黒川 誠子 齋藤 薫 隆島 研吾
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.G-100_1-G-100_1, 2019

<p>【はじめに・目的】</p><p>前回調査では地域在住損傷者の歩行能力(10m歩行タイム〔快適/最速〕・6分間歩行距離・TUG)と生活空間の広がりの関係性について調べ、生活空間が「自宅から800m以内の群」と「800m以上の群」では歩行能力に有意差が見られたが、「800m以上16km以内の群」と「16km以上の群」では有意差は見られず、歩行能力だけでは両群を区別できないという結果となった。今回調査では歩行能力評価とともに認知機能を加えて移動能力にどのような影響を与えるのか比較検討した。</p><p>【方法】</p><p>2010.5~2018.5に当施設の自立訓練事業を利用した106名。平均年齢49.5歳、発症からの期間35.7ヶ月、主な疾患名は脳出血(47%)・脳梗塞(24%)・くも膜下出血(13%)、麻痺の部位は右片麻痺(49%)・左片麻痺(27%)、四肢麻痺(14%)・麻痺なし(10%)、下肢Br-stageはⅢ(36%)・Ⅳ(17%)・Ⅴ(30%)・Ⅵ(7%)、使用している主な歩行補助具はT字杖(51%)・なし(32%)・四点杖(9%)、下肢装具はなし(43%)・SHB(33%)・SLB(18%)。認知検査ではWAIS-Ⅲを可能な範囲で実施しクラス分類ごとに平均値を算出した。外出実態状況から利用者の移動能力を小林らが作成した『実用的歩行能力分類(改訂版)』を用いて各クラスに分類した。(class2「平地・監視歩行」:11名、class3「屋内・平地自立」:23名、class4「屋外・近距離自立」:13名、class5「公共交通機関限定自立」:19名、class6「公共交通機関自立」:40名)各クラスごとに歩行能力とWAIS-Ⅲの平均値を比較した。統計処理は一元配置分散分析および多重比較を行った。</p><p>【結果】</p><p>10m歩行タイム〔最速〕とTUGで屋内歩行自立群(class2・class3)と屋外歩行自立以上の群(class4・class5・class6)で有意差あり(p<0.01)。6分間歩行距離で屋内歩行自立群(class2・class3)と公共交通機関利用群(class5・class6)で有意差あり(p<0.01)。歩行能力とWAIS-Ⅲのいずれの項目でも公共交通機関利用限定自立(class5)と自立(class6)で有意差はみられなかった。</p><p>【結論】</p><p>10m歩行タイム、6分間歩行距離、TUGによる歩行能力評価は、前回調査結果と同様に歩行自立が屋内レベルか屋外レベルに広がるかの判断材料になる可能性が示唆された。しかし歩行能力評価やWAIS-Ⅲ(平均値)の今回選択した指標についても公共交通機関利用の自立を見極めるには有効でなかった。今後は、class5とclass6の差を生じさせる因子について、各症例の状況を分析することにより、歩行能力評価や認知機能検査や環境なども含めて探っていきたい。また、生活範囲が大きく異なる、公共交通機関が利用できる群(class5と6)と屋外近距離自立に留まる群(class4)の差の要因についても検討をしていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>当施設の臨時倫理委員会にて承認を得た。</p>
著者
村上 泰子 米谷 優子 川瀬 綾子 北 克一
雑誌
情報学 (ISSN:13494511)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.94-100, 2015

日本図書館協会分類委員会により、『日本十進分類法新訂10版』が2014年12月発行された。1995年8月の『日本十進分類法新訂9版』の刊行以降、概ね20年ぶりの日本十進分類法の改訂である。今後の日本図書館界の主題組織化を担う『日本十進分類法新訂10版』のうち、本稿では、「6類産業」について、検討を進めた。
著者
元木 久
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.503-519, 2004-11

金融市場の規制緩和と強化が同時に進行する、いわば、レジーム転換の経済の中で、金融市場に存在する各種の規制が相互にコンシステントでなければ、金融システムに機能不全が発生するであろう。預金金利の自由化を行うとき、銀行の破綻確率を低下させるために、支払準備率規制と業務分野規制の緩和が同時に行われることが必要であろう。自己資本規制の強化は銀行の貸出比率を低下させるが、破綻確率の低下に繋がらないだけでなく、臨界状況では起死回生のギャンブルに向かわせる銀行行動の変化を引き起こす可能性がある。また、破綻確率に対応した可変的預金保険料率制度は預金受入銀行の存立を困難にし、固定的保険料率制度の場合、単独で銀行経営の健全性を確保することができず、他の諸規制と組み合わせる必要がある。本稿全体で主張したいことは、競争制限的規制を緩和してレジーム転換を進めるとき、自己資本比率のような単一の指標に硬直的に依拠して銀行システムの健全化を目指すならば、マクロ経済ショックに対応できないので、可変的保険料率制度の創設、準備率規制の緩和、自己資本比率の弾力的運用を含む規制の組み合わせが重要であるということである。
著者
金子 拓
巻号頁・発行日
no.43, 1996
著者
青木 達彦 六浦 光一 池田 欽一
出版者
信州大学経済学部
雑誌
信州大学経済学論集 (ISSN:02880466)
巻号頁・発行日
no.49, pp.89-161, 2003

本研究は,平成10年度以降破綻の相次ぐ全国信用金庫,信用組合を対象に,経営破綻した信用金庫・信用組合と,破綻金融機関の譲渡・引受を行った金融機関を選び出し,それら個別行の財務変数の平成9年度から13年度までの動きを読み取ることにより破綻の説明に有意な財務変数を確定し,それによって破綻確率の推定を行ったものである。地域中小零細金融機関が共通しておかれるマクロ的・制度的環境下で,「倒産」する金融機関と「非倒産」の金融機関とを分岐させ,破綻に至らせるところの財務変数として,われわれは不良債権とその処理の仕方,そして不良債権処理の進捗率に焦点を当て,それに影響する各金融機関の不良債権「処理体力」等を問題にした。破綻行に特徴的な財務変数の動きをパターン化し,それをロッジト分析において破綻確率の推定に用いようとするとき,われわれはそれらの変数,例えば「不良債権の処理進捗率」が破綻行と非破綻行との間で識別しがたいという問題に出会った。この識別問題に対して,われわれは変数をどのように適切に組み合わせて,破綻確率をもっとも効率的に説明しうるかについての基準を与えるAIC (Akaike Information Criterion)を用いることとした。こうしてわれわれは破綻確率の推定に当たって,不良債権比率とか自己資本比率といった通常の説明変数よりもより効率的に説明しうる変数として(不良債権処理損を貸出で割った)「(実現)信用コスト」や不良債権の「処理体力」(その水準と変化率),あるいは「処理進捗率」を選び出し,それらを組み合わせて,破綻,健全を正しく判別できる確率が93%以上という最適モデルを得た。
著者
今井 瞳良
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.95-113, 2020

<p>本稿は、日活ロマンポルノの団地妻シリーズが性別役割分業を前提とした「団地妻」イメージの起源でありながら、固定化された「団地妻」言説を批評するシリーズでもあったことを明らかにする。ロマンポルノ裁判をきっかけに興隆した映画評論家や批評家によるロマンポルノ言説は、低俗な娯楽とみなされるロマンポルノを称揚するために、芸術的創造の主体としての監督を必要とした。そのため、複数の監督によって製作された団地妻シリーズが批評的な評価を得ることは、ほとんどなかった。ところが、団地妻シリーズの第1作『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督、1971年)は、専業主婦として家にいる女性と仕事で通勤している男性を分割するジェンダー化された空間である団地を舞台に、性別役割分業を前提とした中流階級の安定性を支える高度経済成長期以後の戦後史の語りに組み込まれることで、「団地妻」イメージを室内で退屈する専業主婦として固定する「団地妻」言説を生み出していった。しかし、その後の団地妻シリーズは人気シリーズとしてマンネリの打破やメディア状況の変化、他社製作などに対応しながら1971年から1987年まで全29作も作り続けられたことによって、多様な「団地妻」を描き出し、固定化された「団地妻」言説に対する批評性を獲得していることを明らかにした。</p>
著者
西谷 隆夫
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_9-1_21, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
29

今回の「技術の原点」は,DSP(Digital Signal Processor: 信号処理プロセッサ)の発明者の一人として世界的に認知されている西谷隆夫先生によるDSP 黎明期から現在までの発展についての後編です.(前編:http://w2.gakkai-web.net/gakkai/ieice/vol4.html)後編では,DSPの市場が拡大するにつれ,非技術的な競争が支配的になっていく現在までの状況,及び,今後の発展について論じて頂いています.前編に引き続き,数々のイノベーションについての,興味深いエピソードをお楽しみ下さい.(編集委員会)
著者
田浦 扶充子 島谷 幸宏 小笠原 洋平 山下 三平 福永 真弓 渡辺 亮一 皆川 朋子 森山 聡之 吉冨 友恭 伊豫岡 宏樹 浜田 晃規 竹林 知樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_153-I_168, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
著者
山内 敏弘
出版者
龍谷大学法学会
雑誌
龍谷法学
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, 2019-02-15
著者
佐藤 滋高
出版者
学習院大学
雑誌
学習院大学人文科学論集 (ISSN:09190791)
巻号頁・発行日
no.13, pp.181-199, 2004

L'usage que le narrateur d'A~αrecherche du temρs perdu fait du terme de "m6taphore"est trさs souvent diff6rent du sens g6n6ral indiqu6 par la d6finition de cette figure. Nous pr6sentons ici quelques caract6ristiques de cette conception originale de la m6taphore, a l'aide de l'analyse de quelques passages du roman proustien. Nous examinons en meme temps, au cours de l'analyse, ce que signinent les termes d"anneaux n6cessaires"et d"essence"mentionn6s par le narrateur Le bruit du chauffage central rappelle au narrateur l'apr色s-midi a Donci6res au cours duquel il l'entendait fr6quemmenしDans ce cas-lb,1a m6moire auditive est li6e au souvenir total d'une p6riode et d'un endroit, par l'interm6diaire d'une 6vocation m6tonymique fond6e sur la relation de voisinage spacio-temporeL Le narrateur apPelle cette sorte de rations''anneaux n6cessaires". L'6vocation de l'apr6s-midi at Donci6res par le bruit est, pour lui, une r6miniscence in6vitable et''n〔5cessaire". Cette(≦vocation, hors de son contr61e, fonctionne donc en lui comme un《autre》, avec son propre statut, sa propre らc ヲり essence . Bien que les 6vocations de ce genre doivent etre class6es parmi les rapports m6tonymiques, le narrateur les indique par le terme de"m6taphore", parce que dans sa terminologie particuliさre, ce mot d6signe presque tous les proc6d6s utilis6s pour pr6senter des visions fidさles aux impressions regues. Une locution "m6taphorique"en ce sens proustien, telle que"faire cateleya", aurait la possibilit6 de montrer des images esth6tiques du pass6, a travers un effet m6tonymique:renvoyer l'attention du lecteur a l'anecdote dans laquelle ce tour de phrase est n6.
著者
露木 聡
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-47, 1998
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

人口密度と緑地面積(自然面積)との関係を都市の発展段階と対応させることにより,都市の発展段階から見た場合,現存する緑地がどのような位置にあるかを類型化するための手法の開発を行った。国土数値情報の3次メッシュを単位とし,各メッシュから半径5km内における人口密度と自然面積それぞれを大きい順に並べた降順曲線をクラスタ分類することにより,緑地環境のタイプ区分を行った。千葉県を対象に分類を8クラスで行った結果,クラス8:人口稠密な都市域,クラス7:クラス8に準ずる都市域,クラス5:都市への発展が強く進んだ地域,クラス6:農村または海浜工業地帯,クラス2:クラス6より開発度合いが少ない地域,クラス3:都市への発展が弱く進んだ地域,クラス4:開発がやや進んだ地域,クラス1:自然が最も残された地域に類型化が可能であった。また,都市の発展段階に対応させた場合,森林が開発され都市へと向かう方向と,農村や工業地域に向かう方向とが示され,この手法によりマクロな視点からの緑地環境の評価が可能であることがわかった。
著者
谷川 孝弘 松井 洋 小林 泰生
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.495-501, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

夏秋ギク‘精雲’の開花期の遅延と貫生花を発生させる温度要因を明らかにし,計画的出荷および貫生花発生率の減少対策を確立するため,昼/夜温および高温に遭遇する花芽発達時期が開花と開花時の形質に及ぼす影響について検討した.夏秋ギク‘精雲’の発根苗を栽培箱に定植し,温室内で暗期中断を行って花芽分化を抑制した.6月18日に電照を打ち切り,翌日から栽培箱をファイトトロンに移し,昼(6:00~18:00)/夜温(18:00~6:00)をそれぞれ替えて6区設定し,自然日長下で栽培した.また,短日下で2週間の高温処理を(35/25℃),①電照打切り直後から,②電照打切り2週間後から,③電照打切り4週間後から,および④電照打切り6週間後からの4処理区を設けた.頭花内の総苞片数が25枚以上ある株を貫生花として算出した.その結果,‘精雲’の開花は昼温30℃以上または夜温20℃以上になると遅延するようになり,貫生花は,短日処理開始2週間後から2週間,昼温35℃以上または夜温25℃以上の高温に遭遇すると発生することが明らかとなった.貫生花発生の防止対策として,電照打切り直後から3週間,遮光率50%のダイオネットを用いて遮光することにより貫生花発生率を減少させることができた.