著者
藤橋 雄一郎 小林 修 山下 政和 三浦 早紀 吉村 学
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】厚生労働省は2025年を目途に可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)を構築するとしている。地域包括ケアシステムでは介護,医療,予防,住まい,生活支援の5つのサービスを一体的に受けられる支援体制を構築するとしており,各保健医療福祉の多職種が密に連携することが望まれている。そのためには,他の職種を理解し尊重すること,情報を的確に伝えるコミュニケーション能力が必要となる。現在の若者は,経験・特に対人関係の経験不足,対人関係能力の未成熟な学生が年々増加している等の報告がなされており,早い段階から他者とのコミュニケーションを図る必要性が求められている。前述の状況から,近年は多職間種連携教育(IPE)や多職種協働(IPW)が様々な場所で行われている。養成過程時にIPEを経験することで,他の職種に対する理解や重要性,卒業後の医療・福祉現場における他の職種へのギャップを減らすことができると考える。また,コミュニケーション能力の向上にも有効であると考える。今回,医療施設でのIPE研修会を実施し,社会的スキル及び自己効力感を測定した。その内容の報告及びアンケート調査による考察を含め報告する。【方法】IPE研修会の参加者は13名で男性6名,女性7名あった。参加者の職種内訳は医学6名,看護4名,理学療法2名,言語聴覚療法1名であった。IPE研修会は4泊5日の行程で行われた。1日目はオリエンテーションと懇親会が行われた。2日目は担当事例のカルテ閲覧,他職種からの情報収集による担当症例評価,他職種同行研修が行われた。3日目は,2日目の内容に加え,症例事例検討,地域住民宅へのホームステイを実施した。4日目は,同日夜に実施する地域住民との座談会において健康に関する講義を実施するための準備を行った。5日目は,IPEグループワークを実施し,研修会の振り返りを行い終了した。調査は初日のオリエンテーション時と最終日に自記式質問紙法を用いて実施した。自記式質問紙法には,看護領域などで用いられている「対人関係を円滑に運ぶ為に役立つスキル」Kikuchi's Scale of Social Skills:18items(Kiss-18)と個人が自己効力感をどの程度認知する傾向にあるのかを測定するGeneral Self-Efficacy Scale(GSES)を用いた。得られたデータより,Kiss-18とGSESの初日と最終日の平均値を算出した。Kiss-18とGSESのそれぞれの初日,終了日の関連性をSpearmanの順位相関係数,Wilcoxonの符号付順位検定を用い比較し,有意水準を5%未満とした。【結果】調査協力を得た13名を分析対象とした。有効回答率は100%であった。Kiss-18の平均値は初日59.8±9.7,最終日67.1±10.6(初日最大値71,初日最小値43,最終日最大値88,最終日最小値47)であった。GSESの平均値は初日7.7±2.2,最終日8.4±2.6(初日最大値12,初日最小値5,最終日最大値13,最終日最小値4)であった。Kiss-18の初日と最終日にはr=0.6 p=0.03と有意な相間が認められた。GSESの初日と最終日にはr=0.35 p=0.25と有意な相間は認めなかった。Kiss-18とGSESの初日と最終日の比較では,初日に比べ最終日において有意に高くなっていた(p<0.05)。【考察】調査より得たKiss-18とGESEの初日及び最終日の平均値を用い,Kiss-18とGSESの標準値と比較した。Kiss-18の標準値は,成人男子61.82±9.41,女子60.1±10.5,大学生男子56.4±9.64,女子58.35±9.02,である。本結果と比較し,初日は大学生男女を,最終日は成人男女を上回る結果となった。GSESの標準値は,成人9.59±3.89(男性10.12±3.78,女性9.12±3.93),学生6.58±3.37である。本結果と比較すると,成人の標準値よりは低いものの,学生の標準値を上回る結果となった。このことから,今回実施した4泊5日のIPE研修会は,参加学生の社会的スキル,自己効力感を向上させたと言える。今回の研修会では,担当事例に対しカルテ閲覧,情報収集,同行研修を行ったことで,より細かな情報が得られた。また,他職種が注意していることを同行研修において確認できたことで,初日と最終日でKiss-18,GSESのスコアが向上したと思われる。【理学療法学研究としての意義】医療機関でのIPEは,他職種とのコミュニケーションを図ることで,自らの知識不足や他職種の理解が深まり,学生の社会的スキル,自己効力感を向上させ更なる意欲の向上に繋がる。
著者
高橋 隆雄
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.111-126, 2013-03
著者
Valeria Fiszelew
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.75-95, 2020 (Released:2020-11-14)
参考文献数
46

本論文では、中世前期(5~8世紀)のローマカトリック教会の典礼の枠組において、聖書をはじめとする書字がネウマ譜の形成に果たした役割を分析する。カトリックの典礼において朗読することで聖書を理解させるためには、読み手を助けるために、一連の符号システムを開発が必要となった。このシステムはテクストの文法構造と朗読の抑揚を同時に示すことで、ネウマ譜の前身となった。本稿では、ネウマ譜の起源に関する先行研究を検討し、ネウマ譜いかなる歴史的経緯を経て成立したかを示す。
著者
皐月 玲子 寺師 浩人 橋川 和信 榊原 俊介 江尻 浩隆
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

銀粒子や銀イオンは細菌の増殖を抑制する、または殺菌効果がある事は古くから知られていた。近年では銀イオンを添加した外用薬や創傷被覆材が開発され、注目を集めているが、銀イオンが持つ細胞毒性により創傷治癒の阻害を示唆する報告もある。一方で本邦では細胞増殖因子(bFGF)を有効成分とする製剤も開発された。bFGF製剤と銀イオン製剤とを組み合わせた場合のこれらの相互作用についての知見は皆無である。われわれは塩化銀溶液およびbFGFを単独または併せて添加し、ヒト線維芽細胞を培養した。その結果、(1)低濃度での銀イオンは細胞増殖に影響を及ぼさないが、高濃度では細胞毒性を有する。(2) bFGFの付加は銀イオンによる細胞毒性を緩和する可能性がある。(3)銀イオンはbFGFになんらかの作用をするが、これらの相乗効果により細胞毒性は高められる。ことが示唆された。
著者
Hall Heike Schachner Melitta 山形 貞子 田中 啓友
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.10, no.55, pp.361-382, 1998
被引用文献数
2

細胞外マトリックスは細胞接着 (総説: Gumbiner、1996)、神経突起伸長の際の growth cone guidance (総説: Luckenbill-Edds、1997)、細胞移動 (総説: Lauffenberger と Horwitz、1996)、細胞極性 (総説: Drubin と Nelson、1996)、細胞死 (総説: Adams と Watt、1993) など個体発生と分化の基礎となる重要な事象全てに対し、足場として働いている (総説: Adams と Watt、1993)。細胞外マトリックスの分子構築はラミニン、IV型コラーゲン、ナイドジェン/エンタクチン、ヘパラン-、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの間の特異的相互作用によって作り上げられている (Sanes、1989; Timpl と Brown、1994; Yurchenco と O'Rear、1994; Timpl と Brown、1996; Timpl、1996)。この超-分子集合体の構築に関与する重要な分子が現在増えつつあるラミニンファミリーである (Burgeson ら、1994; Engvall と Wewer、1996)。この総説では細胞接着 (インテグリンと免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着糖タンパク質) に関与する自己-相互作用および細胞外マトリックスの他のメンバーである硫酸化糖鎖 (ナイドジェン/エンタクチン、フィブリン、パールカン、アグリン、α-ジストログリカン/クラニン) や糖タンパク質など、異なる型のリガンドとの相互作用を可能にするラミニンの独特な分子構造に焦点を絞ろうと思う。特にラミニンとそのリガンド間相互作用への糖鎖の関与について考察しようと思う。
著者
前岩 幸 斉藤 美貴子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.181-186, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

企業の調査部門は,事業部門から依頼を受け,情報を収集することがある。そして収集した情報を整理し,可視化して依頼者へ提供する。そこで,依頼者(事業部門)が新しい事業を探索すると仮定し,そのための事前調査として,調査部門が新事業の未来を予想し,事業化における課題を可視化する手法を模索した。
著者
時実 象一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.171-176, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

JATSは学術記事のデータを要素化・構造化するためのXMLである。JATSの歴史,現状,多言語化の支援など,日本のグループの貢献と学術情報XML推進協議会(XSPA)の活動について紹介し,JATSの可能性,利用の方法などについて解説した。
著者
大向 一輝 飯野 勝則 片岡 真 塩崎 亮 村上 遥
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.152-158, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

学術情報流通はその性質上,複数の機関による連携を必要とするため,これを支える情報システムは,相互運用性を高めるべく策定された技術標準を参照して開発されている。また学術情報流通に関する業務は多岐に渡ることから,包括的な単一の標準ではなく,役割や機能に応じて関連するコミュニティが主導する形でさまざまな標準が作られてきた。本稿では,図書館の業務・サービスに関連する技術標準を,書誌情報,相互貸借と貸出管理,検索とデータ連携,利用統計とユーザ認証に分類して概説する。
著者
吉本 龍司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.148-151, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

学術情報や図書館を取り巻く情報環境は,もはやインターネットとの接続が前提となり,組織内や図書館内に存在する情報のみならず,世界中の情報を扱うことが当然となった。学術情報流通システムにおいては,各組織が保有する情報資源を相互に共有する必要があるため,効率化の観点からも技術の標準化は欠かせない。本稿では,図書館の蔵書検索サイト「カーリル」を開発する筆者の経験から,ウェブサービスを中心として情報システムを開発する際に,標準化された技術を取り入れることのメリットとデメリット(注意するべき点)を整理する。また,いくつかの標準化技術を紹介しながら,インフォプロにとっての標準化を提案する。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.147, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

私達は普段,様々なシステムを利用しながら業務を行っています。これらシステムは単体で動作するものも多いですが,システム間で連携するものや,データの再利用を前提としたものも一般的になってきました。学術情報の業界を考えてみると,論文を始めとする様々な知識・情報を効率よく,それも世界中に流通させることが大きな課題の一つです。昔から多くの取り組みが行われており,例えば図書館ではカード目録を整備したり,図書館間の協力関係を強化したりしてきました。とくに最近では,先述の背景もありwebベースのシステムを用いた取り組みが加速しています。効率よく情報を流通させるためには,標準的な技術の利用が欠かせません。開発者が別々の仕様でシステムを構築し,運用者がバラバラのルールでデータを整備している状況での不利益を想像してみてください。例えば図書館員の立場では,コピーカタロギングのようなデータの再利用には個々のサービスのデータ構造を理解する必要があります。webサービス提供側の立場では,データの再利用を促すための緻密なドキュメント整備が必要です。開発者の立場では,要件をゼロから考える必要があるため開発効率が上がらず,開発したものが顧客の要求とどれほど合致するかは開発が進まないと確定しません。本特集では,現在一般的に使用されている,もしくは利用が見込まれる,学術情報流通システムの標準化技術を主に紹介しています。まずは吉本龍司氏に本特集の総論として,標準化技術をどのように捉えているかシステム開発者の目線でご執筆いただくとともに,webの一般的な技術を広く紹介していただきました。そのうえで具体的なシステムを個別に見ていく構成としております。主に図書館情報システムで用いられる標準化技術については大向一輝氏,飯野勝則氏,片岡真氏,塩崎亮氏,村上遥氏にご執筆頂きました。耳馴染みのある技術も多いですが,海外の状況や学術情報流に親和性の高い一般的な技術も合わせて広くご紹介頂いております。機関リポジトリシステムで用いられる標準化技術については林正治氏にご執筆頂きました。ユースケースを交えて非常にイメージしやすくご紹介頂いております。また,機関リポジトリへデータ登録する際の“SWORD”の日本語解説は,他誌やインターネット上でもあまり無く,大変参考になります。デジタルアーカイブ関連では,近年話題のIIIFだけでなく,UnicodeやTEIについて永崎研宣氏にご執筆いただきました。また,時実象一氏には論文出版システムの標準化技術としてJATSを中心にご紹介頂いております。これらの2記事は標準化技術の紹介はもちろんですが,国際的な標準化技術の改善に貢献したり,日本独自の要件を追加したりすることの重要性も,経験を交えてご執筆頂けております。学術情報流通システムは,様々な技術の連携によって構成されています。単体のシステムに留まらないこの複雑さは,学術情報流通システム全体への理解を妨げる要因であり,一方で多くの理想を実現するための興味深い技術でもあります。本特集が,学術情報流通を支えるシステムへの理解を深め,仕様を策定する際の参考資料としてや,4月からシステムを担当される方の入門書としてご活用いただけますと幸いです。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),光森奈美子,中川紗央里,野村紀匡,李東真)
著者
松岡 三郎 古谷 佳之 竹内 悦男 蛭川 寿 松永 久生
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.87, no.895, pp.20-00439, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
16

In order to clarify the effect of internal hydrogen on the fatigue life properties of SUS304, SUS316 and SUS316L, tensile tests and low- and high-cycle fatigue life tests were carried out in air at room temperature using 10, 68 and 100 MPa hydrogen-charged specimens. High-cycle fatigue life tests demonstrated that S-N curve (i.e., relationship between stress amplitude, σa, and number of cycles to failure, Nf) of each steel was higher in hydrogen-charged specimen than in uncharged specimen. The increase in fatigue limit, Δσw, with internal hydrogen was 40 MPa in 100 MPa hydrogen-charged specimens, 20 or 30 MPa in 68 MPa hydrogen-charged specimens, and 0 or 10 MPa in 10 MPa hydrogen-charged specimens. Low-cycle fatigue life tests manifested that εta-Nf curve (i.e., relationship between total strain amplitude, εta, and number of cycles to failure, Nf) of 68 MPa hydrogen-charged specimen was nearly coincident with that of uncharged specimen in SUS316L, whereas 68 MPa hydrogen-charging markedly lowered εta-Nf curve in SUS304. The fraction of strain-induced martensite was measured on specimens fractured by tensile tests and low- and high-cycle fatigue life tests. The critical value of the martensite fraction below which 68~100 MPa hydrogen-charging does not cause hydrogen embrittlement, fmH, was 1 % in tensile tests. On the other hand, the fmH value was 9% in low- and high-cycle fatigue life tests. The increase in fatigue limit due hydrogen-induced solid solution strengthening, Δσw, in high-cycle fatigue life tests was expressed as Δσw (MPa) = 15.4 × 237H, where H is the hydrogen content (mass %). In addition, the hydrogen-induced strengthening of stress amplitude, Δσa, and 0.2% proof strength, Δσ0.2, in low-cycle fatigue life tests was expressed as Δσa+0.2 (MPa) = 15.4 × 296H. The results inferred that the contribution of hydrogen to solid solution strengthening was about 10 times larger than that of carbon and nitrogen when compared at the same mass concentration.
著者
近畿大学 法学会
出版者
近畿大学法学会
雑誌
近畿大學法學 = Kinkidaigaku hogaku: Kindai University Law Review (ISSN:09164537)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, 2021-03-31

[注記]近畿大學法學, 第68巻第4号, 近畿大学法学投稿規程, 前号目次[第68巻第1,2号(通巻188号),第68巻第3号(通巻189号)],執筆者紹介