著者
大塚 俊之 横澤 隆夫 大竹 勝
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.95-107, 2008-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
29
被引用文献数
1

1. 富士北麓の青木ヶ原溶岩流上には,いわゆる青木ヶ原樹海と呼ばれるヒノキとツガを中心とする広大な針葉樹林が成立している.本研究は,永久方形区を用いて個体の成長や生残についての調査を行い,青木ヶ原樹海の森林構造とパッチ動態について明らかにすることを目的とした.  2. 青木ヶ原樹海内に0.25ha(50m×50m)の永久方形区を設置して2001年に樹高1.3m以上のすべての個体について毎木調査を行った.また,林床の相対光量子密度の測定と樹高1.3m以下の実生の分布調査も行った.2005年には個体の生残と成長に関する再調査を行い,さらに主要優占種において成長錐を抜いて樹齢を推定した.  3. 永久方形区内ではヒノキ(胸高断面積合計の45.4%)とツガ(26.3%)が優占し,両種とも逆J字型の直径階分布を持っていた.次に優占度の高いミズメ(3.9%)は,10-20cmのクラスにピークを持つ1山型の直径階分布を持っていた.ミズメ(0.0158y^<-1>)やミズナラ(0.0126y^<-1>)などの落葉樹のRGRDは非常に高かったが,ツガ(0.0041y^<-1>)とヒノキ(0.0056y^<-1>)のRGRDは全個体の平均値を下回った.全体では直径が小さいほど枯死率が大きくなり,5cm以下の個体では4%を超えていたが,ツガ(1.4%)とヒノキ(0.5%)の枯死率は低かった.  4. TWINSPNを用いて25個のサブコドラート(各100m^2)をツガパッチと落葉樹パッチの2つのグループに分割した・直径20cm以上のツガ個体のほとんどがツガパッチに分布しており,落葉樹は少なかった.ヒノキは両方のパッチに広く出現したが,直径が大きな個体はツガパッチのほうに分布する傾向があった.一方で,落葉樹パッチにはミズメやミヤマザクラなどの落葉樹が集中的に分布しており,さらに直径5cm以下のヒノキやツガが多く出現した.落葉樹パッチは,春に落葉樹の葉が展開するまでツガパッチに比べて林床が明るく,ツガパッチにはほとんど見られないヒノキとツガの実生が非常にたくさん出現した.  5. ツガパッチでは,ツガの最大樹齢が約330年でヒノキの最大樹齢が約220年であり,ヒノキよりもツガが先に侵入していた.一方で林冠に達するような直径が15cm以上の個体では,ヒノキよりもツガのほうがRGRDが低かった.落葉樹パッチではミズメの樹齢は60-70年で揃っており,針葉樹に比べてミズメのRGRDは非常に高かった.  6. 現在のツガパッチでは,ヒノキがツガよりも遅れて侵入し混交林を形成していた.また,細いサイズのツガやツガ実生が少ないことから,混交林はやがてヒノキ林へと遷移していくと考えられる。ミズメやミヤマザクラはヒノキ林の林冠を破壊するようなギャップにおいて先駆性パッチを形成すると考えられた.  7. 本来の冷温帯林の極相種であるミズナラは,本数は少ないが300年を越す非常に古い個体が散在した.青木ヶ原樹海内では,落葉樹を炭焼きに利用していたことが知られており,ミズナラの位置づけについては今後再検討する必要がある.
著者
Sara Isaacson Ashley O’Brien Jennifer D. Lazaro Arlen Ray Gerard Fluet
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
Journal of Physical Therapy Science (ISSN:09155287)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.636-641, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
40
被引用文献数
5 17

[Purpose] The aim of this study was to test the hypothesis that Lee Silverman Voice Treatment-BIG decreases the negative impact of hypokinesia on dual task performance in persons with Parkinson’s disease. [Subjects and Methods] The records of 114 patients with Parkinson’s admitted to outpatient rehabilitation at a suburban hospital were reviewed. Demographics and data for 8 outcome measures were extracted for subjects that completed 14 of 16 sessions of BIG. 93 of these subjects had records of pre and post-test Timed Up and Go, Timed Up and Go Motor, and Timed Up and Go Cognitive scores. Average age was 68.4 years (SD=10.6) and average disease duration was 4.9 years (SD=5.3). [Results] Subjects demonstrated statistically significant improvements for Timed Up and Go (3.3 SD=4.5), Timed Up and Go Motor (4.4 SD=5.8) and Timed Up and Go Cognitive (4.7 SD=5.4). Concurrent motor and cognitive performance remained stable. Dual task cost decreased at a statistically significant level for Timed Up and Go Cognitive (7% SD=31%) but not Motor (4% SD=32%). [Conclusion] These findings suggest that cueing strategies associated with LSVT BIG become internalized and decrease the negative impact of hypokinesia on mobility and cognitive performance while performing two tasks simultaneously in persons with Parkinson’s.
著者
能登 真一 毛利 史子 網本 和 杉本 諭 二木 淑子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.126-133, 1999-04

半側空間無視症例に対し,右手使用の木琴を用いた訓練を考察し,訓練効果をシングルケースデザインで検討した.木琴療法は180度回転させて設置した木琴を演奏するものである.ABAB法を用いて訓練効果を検討した結果,ベース期と介入期,除去期と再介入期の間に半側空間無視の成績の有為な改善を認めた.半側空間無視の改善は,左方向への音階の探索により左方向への運動意図が高まったことと,音楽の利用により右半球が活性化されたためと考えられた.
著者
唐帆 健浩
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.12-18, 2019-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
20

超高齢社会を迎えた本邦では, 摂食嚥下障害のある高齢者の増加が予想される。 嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を用いない簡易検査である, 摂食嚥下機能スクリーニング法のニーズが高まっている。 現在, 国内外で行われている摂食嚥下機能スクリーニング法に関して, 文献調査を行った。 欧米では, The Mann assessment of swallowing ability (MASA) や Gugging swallowing screen (GUSS) を用いた報告が散見される。 在宅医療が推進されている現在, 摂食嚥下機能を簡易に評価して適合した食形態を提案できるような, 日本人向けの摂食嚥下機能スクリーニング方法の開発が望まれる。
著者
大庭 道夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-10, 1984-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
137
著者
鷲尾 隆 元田 浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.681-692, 2000-07-01 (Released:2020-09-29)

A novel and generic theory is formulated to characterize the structure of a scientific law/model equation. Based on the theory, an efficient algorithm is developed to discover scientific law/model equations governing an objective process under experimental environments, and the algorithm is implemented to the "Smart Discovery System(SDS)"program. SDS derives the quantitative equations reflecting the scientific first principles underlying the objective process. The power of the proposed approach comes from the use of "scale-type constraints" to limit the mathematically admissible relations among the measurement quantities representing the states of the objective process. These constraints well specify the admissible formulae of the scientific law/model equations, and provide a measure to efficiently reduce the search space of the equation formulae. In this paper, the theoretical foundation to discover the scientific law/model equations and the algorithm of SDS are presented, and its efficiency and practicality are demonstrated and discussed with complex working examples. Since the conventional equation discovery systems could not sufficiently guarantee the mathematical admissibility of the discovered equations, this work is expected to open up a new research field on the scientific equation discovery.
著者
山本 重樹
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.723, pp.101-106, 2009-02-15

PaaS導入企業は着々と増加中だ。柏レイソルや外食チェーンの銀座アスターはForce.com上に業務アプリケーションを構築した。実装にかかった期間はわずか1カ月。PaaSが情報武装の迅速化に一役買っている。ユーザー部門、システム部門それぞれのニーズを満たすPaaSの利用が広がりそうだ。
著者
犬童 健良
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2006年度秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.3, 2006 (Released:2007-08-10)

本論文は選好集計理論を限界合理性に対して応用することによって,(誤)表象をもつエージェントの認知的モデリングを提案した.選好集計理論は,社会的選択の分析に用いられたが,本論文では前診断的プロセス,つまり日常的推論やオフィスにおける断片的な情報の統合に適用する.また論争ジレンマを条件文推論の検証(選択課題)のための実用的スキーマとして再解釈することを通じて,権利システムとしての側面に光を当てる.
著者
鳥屋尾 忠之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.28, pp.25-31, 1967-12-22 (Released:2009-07-31)
参考文献数
16

やぶきた(k/+)×こうろ(k/k)のF1と,比較のために,他のこうろ種とアッサム種を用いて28形質を調べた。その結果,こうろ型と普通型との間には,葉の大きさと形,着花の多少,さし木発根性およびタンニン含量に有意な差がみられ,この両型の差異は,k遺伝子の多面的発現で説明されることがわかった。こうろ型の成葉は大きく,波曲が大で,花はほとんど着かず,タンニン含量は普通型よりも多かった。また,耐凍性・早晩性・クロロホルムテストによる発酵性は差異が認められなかった。こうろ型は葉の側脈数ときょ歯数が決定された後に,葉の形態形成の制御機構に異常が生じて,非常に大きく,かつ波曲の多い成葉が形成され,それに伴って二次的に,他の一連のこうろ型の特徴形質が発現するものと推定した。k遺伝子の多面的発現による遺伝子型相関について論じ,また,アッサム種とタンニン含量の多いことが,成葉の大きいことに関係があることを,こうろ種とアッサム種の相似形質との関連から推察した。
著者
林 俊信 奥村 理子
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会発表予稿集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.39-40, 2020

<p>本稿では、2020年3月から行われた全国の学校休校措置で生じた学習機会の損失について、デジタル教材を用いることで、一定量の学習保証を行うことができたことを報告する。デジタル教材は、個別最適化の機能を持ち、個々の学習記録を詳細に確認できるものである。調査対象者は、無学年式デジタル教材「すらら」を学校・学年単位で導入した組織である。休校措置期間と通常期間における利用時間に関して、休校の時期でも一定の学習機会を維持することができた。個別最適化機能を持った教材は、教員との密な時間確保がままならない休校期間中の有効な打開策の一つとなった。今後、Society5.0に向けた日本社会では、修得主義[1]やAI活用を求められているため、社会展開の一端として、児童・生徒へ還元される方法も模索していく。</p>
著者
天野 靖士
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.241-242, 2020-12-22 (Released:2020-12-26)
参考文献数
5

To satisfy the unmet medical needs, innovation of the technology for structural biology is important. Three-dimensional structures of drug-target molecules and their complexes reveal the mechanism of disease and accelerate discovery of novel drugs for patients.
著者
下村 勝平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.39-42, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
3

本稿では,中学校数学での「証明」学習の困難を背景に,その改善の一方略として算数科における「説明」に着目した.研究目的を算数科において行われる「説明」の内容を対象とし,子どもがどのように「説明」を捉え,「説明」に関する概念を獲得していくかについて明らかにすることと定めた.そこで,「説明」の内容を検討できるような実験授業を計画・実施した.そこから,抽出児を選定し,分析を加えることによって「説明」に関する概念形成の様相を捉えた.
著者
寳来 俊介 合原 一究 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.106-109, 2007 (Released:2007-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2匹のオスのニホンアマガエル(Hyla japonica)が鳴き声を介して相互作用する発声行動において観測された音声データに関して,音声編集ソフトウェアAudacityを用いた時系列解析を行なった.特に,2匹のカエルの鳴き声を記録した単一の時系列データから,それぞれのカエルに対応する発声データを抽出し,2匹の発声の時間間隔および相互の発声の関係性について定量的に解析を行った.今回の解析により,2匹のカエルが位相差1.11πというほぼ位相が反転した状態で同期して交互に鳴いていることが明らかになった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
長澤 孝真 田中 裕有 関本 征史 根本 清光 出川 雅邦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-162, 2012 (Released:2012-11-24)

【目的】CYP3A4遺伝子の発現はプレグナン X受容体(PXR)やビタミン D受容体(VDR)により、それぞれ正の制御を受けることが報告されている。しかし、CYP3A4遺伝子発現におけるこれら受容体の相互作用については未だ明確にされていない。最近、我々はPXRやVDRの活性化を介してLuciferaseを発現するHepG2由来レポーター細胞株(HPL-A3)の樹立に成功した。そこで、本研究では樹立したHPL-A3株を用い、PXR活性化剤とVDR活性化剤のそれぞれ単独、あるいは複合処理によるCYP3A4遺伝子発現への影響を検討した。【方法】PXR活性化剤としてRifampicin(RIF)を、また、VDR活性化剤として1,25-dimehydroxyvitamin D3(VD3)を用いた。HPL-A3細胞に対し、RIF(1 µM)とVD3(0.1 µM)をそれぞれ単独あるいは複合処理し、PXR/VDR活性化(CYP3A4プロモーター活性化能)への影響をLuciferase assayおよびReal time RT-PCR法を用いて測定した。【結果】RIF単独処理では72時間まで経時的に、またVD3の単独処理では24時間をピークとして、LuciferaseおよびCYP3A4遺伝子の有意な発現誘導が観察された。また、これら発現量はRIFとVD3を24時間複合処理することで相加的に増加した。【考察】以上の結果より、PXRリガンドとVDRリガンドの複合暴露により、CYP3A4プロモーター活性化が相加的に増強されることが明らかとなった。CYP3A4酵素は異物(医薬品を含む)の代謝に関わる主要酵素であり、その発現変動は異物の薬効・毒性発現に大きな影響をもたらす。したがって、適切な薬物治療や人の健康維持(異物の安全性・毒性評価)を考える上で、環境化学物質(医薬品を含む)のPXR活性化能やVDR活性化能について検索・評価し、さらに、その相互作用についても考慮することが重要であると考えられた。