著者
池坊 由紀 高井 由佳 後藤 彰彦 桑原 教彰
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.307-314, 2014 (Released:2014-02-28)
参考文献数
6
被引用文献数
5

This research was performed in order to clarify the difference between inexperienced person and experts of Ikebana through impression evaluation during the appreciation of arrangement. In this research, not only arrangement themselves, but also photos of them were used for the evaluation. Experimental results indicated that experts could distinguish the difference of arrangements between experts and inexperienced persons even though they watch Ikebanas or photos. However, it is thought to be difficult for inexperienced person. Concerning of the elements of evaluation, that will lead a new research which element appear in which media and the reason that cause this situation.
著者
奥田 敬一 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.696-700, 1995

院内感染防止対策の一つとして, 現在市販されている抗菌繊維と抗菌壁剤のMethicillin resistant <I>Staphylococcus aureus</I>および緑膿菌に対する抗菌活性を調査した.<BR>抗菌活性は, 各試料上に35.0℃, 18時間培養後の菌の減少率で判定した.<BR>供試した緑膿菌50株の血清群はE群, G群, B群, I群, A群, MRSA50株のコアグラーゼ壁はVII型, II型, III型, IV型の順で, 全国の病院で多く検出された血清群, コアグラービ型に一致していた.<BR>4種の抗菌繊維のうち2種はMRSAに99%以上の減少率を示したが, 他の2種は少しも減少しなかった.また, 3種は緑膿菌を減少しなかったが, 1種のみ軽度の減少を示した.抗菌壁剤は両菌種に対して良好な減少率を示した.<BR>これらの結果から, 抗菌繊維を白衣, 手術着に用い, また, 抗菌壁剤の使用は病院環境の浄化に関与することが示唆された
著者
中川 祐希
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.221-244, 2019

<p>本稿は,神戸市の湊川公園の変容過程を事例とし,米騒動後における「市民」形成によって,いかなる都市空間が形成されたのかを明らかにした。米騒動と労働争議を契機に,都市行政は,湊川公園に公設市場や職業紹介所といった施設を設置した。都市行政は,「貧民窟」や労働者地区,歓楽街と近接するがゆえに,湊川公園にこのような整備を施した。さらに音楽堂と児童遊園地が設置されたことで,湊川公園は,諸階層を「市民」へと教化する空間に変容した。このように「市民」が湊川公園の利用者として想定される一方で,不況により公園内には数多くの野宿者が姿を現していた。はじめ都市行政は野宿者を救済の対象として認識した。しかし,「市民」を想定した公園の整備が進展し,昭和天皇の即位を祝う記念事業が開催されたことで,野宿者は排除や抑圧の対象に位置づけられた。湊川公園が私生活を積極的に管理する「勤勉」な「市民」によって利用される公園に変容する過程で,野宿者はこの規範から逸脱する「怠惰」な主体として捉えられた。こうして米騒動後の湊川公園は,「市民」への主体化の成否によって,諸階層が選別される空間へと変容した。</p>
著者
城所 哲夫 蕭 ?偉 福田 崚
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
no.767, pp.79-88, 2020-01
被引用文献数
2

<p> This study aims at the hypothesis verification on the polarization to mega-city regions and urban divide. In the first part, we examined the polarization to mega-city regions in Japan focusing on the aspect of concentration of wealth based on various economic statistics as well as the record of public investment. In the second part, we pick up Osaka city as the case analysis for the urban divide inside the mega-city region based on the cluster analysis and analyzed the current conditions of urban divide in Osaka city. In the third part, we shed light on the type of living with diversity in Airin area, Nishinari ward, Osaka city. Through the analysis based on the interview survey to the local real estate company, we discuss the mechanism of housing provision for the realization of diversity.</p><p> The acceleration of the concentration of wealth to Tokyo is clearly observed in Japan since 2000s. In particular, the polarization of wealth as well as the highest income class to the central part of Tokyo is ever accelerating these days under the neoliberal urban policies. In the urban scale analysis in Osaka city, gentrification trends in the central city areas are obvious these days. On the other hands, the concentration of poverty is observed in inner areas to the south. As a result, the urban divide in both social and spatial terms are clearly observed in Osaka city. In particular, the Airin area of Nishinari district, Osaka city worked as the area where daily-based construction workers are concentrated and it has become the area where poverty is concentrated since many of workers in this area have been aged and lost jobs.</p><p> According to the interview surveys to real estate agents who work in Nishinari district, conversion of the workers' hostel to the apartments for the jobless people who received public assistance was widely observed. In addition, they are further converted to the gest-houses for international tourists recently. Investment by Chinese people is also a new trend in this area. This phenomenon shows the ambivalent characteristics of inner areas that they often become a socially excluded areas but, at the same time, they function as the place to accept a wide range of immigrants and thus they become a source of diversity as the gateway to the city. It is recommended that the improvement of the inner areas should fully consider this ambivalent characteristic of the inner areas.</p>
著者
熊野 貴文
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.193-214, 2018
被引用文献数
1

<p>本稿では,大阪大都市圏の郊外外圏に位置する奈良県桜井市を対象に,1980年代後半以降の新設住宅の立地と土地利用変化を分析し,その要因について考察した。桜井市では,人口増加と地価高水準の局面にあった1980年代後半~1990年代前半に比べて,人口減少と地価下落の局面にある1990年代後半以降の時期の方が,新設住宅の離心化と中心市街地での低・未利用地化が進行し,都市構造は低密度化している。その要因として,以下の点を指摘することができる。大都市圏の地価動向を反映して郊外外圏の住宅供給の構成が戸建住宅中心に変化したこと,郊外間通勤の増加と関連して鉄道などの公共交通機関よりも自家用車を前提とした生活行動が成立していること,土地需給の空間的ミスマッチが発生していること,土地所有者の高齢化やバブル経済崩壊を背景に周辺部で土地の売却や賃貸アパート建設がみられたこと,そして,中心市街地の土地所有者が投資リスクの低い土地活用として駐車場経営を選択したことである。以上の知見は,郊外外圏の都市構造の変化が,郊外都市内の土地利用条件に加えて,郊外化の終焉や多核化といった大都市圏の構造変化の影響を受けていることを示す。</p>
著者
木村 昭夫 五十嵐 英夫 潮田 弘 奥住 捷子 小林 寛伊 大塚 敏文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.223-230, 1993
被引用文献数
7 3

全国国立大学付属病院より分離収集された黄色ブドウ球菌430株を, コアグラーゼ型別に加えてエンテロトキシン (SE) 並びにToxic Shock Syndrome Toxin-1 (TSST-1) 産生性をマーカーとして疫学的に細分し, これらの疫学マーカーと10種抗菌剤に対する感受性の関連性について調査した. 全黄色ブドウ球菌はVCMに感受性であった。OFLXには, コァグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株は高度耐性傾向を示したが, 他の株では約半数が感受性であった. FMOXに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株では感受性菌が78%に認められた。しかし, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株には, 感受性菌は存在しなかった. IPMに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株, コアグラービIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株においては, 50%以上の感受性菌が認められた。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では耐性化が進んでいた。MINOに対して, コアグラーゼIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株は良好な感受性を示した。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼIV型-SEA産生株では中間的な感受性を示し, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では感受性が著しく低かった。STに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株は耐性化が進行していたが, 他の株は良好な感受性を示した。
著者
深沢 徹
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.14-23, 1994-02-10

藤原頼長や藤原信西に代表される飽くなき<知>への欲望は、混迷する時代状況をより高次のレベルから把握し、その往き着く先を見通したいという切実な願いに端を発している。「未来を見通したい」というこの願望はやがて集合化され、その名もズバリ「未来記」というテキストの形を採って、多くの人々に共有されることになる。それは要するに、日本版の「讖緯説」であった。だが、聖徳太子が書いたとされる「未来記」など、本当にあったのだろうか。実在すらも危ぶまれる幻のテキストを次々と生み出していく奇怪な<情念>に想いを致すとき、院政期という時代の特異性が、ありありと見えてくる。「日本紀」の注釈、「野馬台讖」の発掘、「聖徳太子伝」の様々な読み換え等々、問題は多岐に亙る。それらはどれも、院政期という時代状況の中で互いにリンクしており、単純な図式化を拒んでいる。したがって本稿では、天の意志を地上に伝えるメディアとしての星の言説を通して、それがモノガタリの文脈に取り込まれ、やがて中世になると「未来記」という架空のジャンルを形成していくプロセスを、ごくごく大ざっぱに跡付けたにとどまる。問題のほんのとば口で終わってしまったことを、お許し願いたい。
著者
三上 岳彦 長谷川 直子 平野 淳平 Batten Bruce
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>弘前藩御国日記には、江戸時代の弘前における毎日の天候が記載されている。そこで、11月〜4月の冬春季における降水日数と降雪日数から、毎年の降雪率(降雪日数/降水日数)を求めて、1705年〜1860年の長期変動を明らかにした。同じく、弘前藩日記に記載された十三湖の結氷日と解氷日から結氷期間(日数)を求めて、その長期変動特性を明らかにした。次に、冬春季における弘前の降雪率と平均気温との関係を考察するために、観測データ(AMeDAS弘前)の得られる最近数十年間について、毎年の降雪率と冬春季の平均気温との関係を分析した。</p><p>1705年〜1860年の156年間における十三湖の結氷期間と弘前の降雪率の変動傾向は、年々変動、長期傾向(11年移動平均)ともに類似している。すなわち、十三湖の結氷期間が長い年や年代は寒冷で、降雪率が高く、結氷期間が短い年や年代は温暖で、降雪率が低い。長期トレンドで見ると、十三湖の結氷期間は100日間前後で一方向の変化は見られないが、弘前の降雪率は18世紀前半から19世紀前半にかけてやや減少傾向にある。1740年代と1820年代に、結氷期間と降雪率がともに低下した時期があり、一時的な温暖期と考えられる。とくに、1810年代から1820年代にかけての降雪率の顕著な低下については、従来の研究では指摘されたことがないので、さらに分析を進めたい。</p><p>観測データ(AMeDAS弘前)の得られる1983年〜2020年の38年間について、毎年の降雪率(11月〜4月)と平均気温(12月〜3月)の関係から、両者の間に負の有意な相関があることがわかった。これにより、十三湖の結氷期間や降雪率から、弘前の冬春季の平均気温変動を復元することが可能となろう。</p>
著者
山岡 伸 小山 達也
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森保健医療福祉研究 = Aomori Journal of Health and Welfare (ISSN:24356794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-12, 2020-12-04

[目的] 現在,食事調査は日々の食事の栄養価などの食事摂取状況を把握するために行われている。しかしながら,食事からの栄養価の算出は第二次世界大戦以降の人々の食事を対象としている場合が多く,それ以前の時代の人々の食事はほとんど対象にされていない。したがって,古文書などの史料から,昭和初期以前の食事の栄養価の算出を試みようとした研究はほとんどない。そこで,本研究では,江戸時代における弘前藩の史料である[年中行事御祝献立並三方等御飾]に記載されている食事の描写から栄養価の算出を試み,その結果から,江戸時代の史料が食事の栄養価の算出のための新たな既存資料として利用できるか栄養価の算出方法の検討を行った。[方法] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から一部料理を抜粋し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて,雑煮,田作り,数の子,うちまめの栄養価を算出した。[結果] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から食事の栄養価を算出することができ,雑煮のエネルギーは446kcal,田作りは81kcal,数の子は49kcal,うちまめは46kcalと推定された。[結論] 本研究で算出した各料理の栄養価は,現代の食事調査法の1つである写真法によって栄養価を算出された結果に相当すると考えられる。したがって,江戸時代などの史料からの食事の栄養価の算出は,現代の食事調査の知識を活かすことで可能となることが示唆された。
著者
芳賀 高洋
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.205-216, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
20

本稿は,2020年度,COVID-19パンデミックの対応として,教育関係者だけではなく,世間一般からもかつてない大きな注目を集めた「教育の情報化」,特に「オンライン教育」における著作権取扱いに関して詳しく解説し,今後の課題を述べる.なお,著作権取扱いに関しては2020年1月に「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が発表した「改正著作権法第35条 運用指針策定に関する論点整理」に基づき解説する.
著者
市來,健吾
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, 1994-09-20

本研究では、「粘性流体中におけるの分散多体系の動的挙動」として、粉体流動層の数値シミュレーションと、粘性流体中の多粒子系の平均沈降速度の理論に関して行なった。これらは、「粉体」の現象に対する実験的側面と、解析的側面として捉えることが出来る。両者の間に存在する溝を埋めることは、非常に重要であり、粉体の引き起こす現象の、物理的理解には欠くことの出来ない課題である。残念ながら、本研究において、この目的は達せられなかった。しかし、現在もこの文脈で研究を継続中である。はじめに、本論文の概要をまとめておく。まず、粉体流動層の数値シミュレーションについて述べる。これまで、粘性流体中の多粒子のダイナミクスに関する研究は、流体力学的な相互作用の取り扱いが複雑であったため、コロイド粒子系に対して幾つか行なわれていた程度である[1]。今回、コロイドより粒子のスケールが大きな系に対して、同様の手法を用いてシミュレーションを行なうことが出来た。この場合は、熱的なランダム力よりも、粒子の慣性の効果の方が重要であり、この効果を導入して計算を行なった。シミュレーションの結果から、粒子の速度分布が、Maxwell分布ではなく、指数分布的であることが得られた。同様の分布は、乱流の中でも「ハード乱流」と呼ばれる現象に対しても得られているものである。以上のことから、粉体粒子の速度場と、乱流との関連についての研究が待たれる。次に、本研究のもう一つの課題である、粘性流体中の多粒子系の平均沈降速度の理論に関して述べる。シミュレーションの定式化でも問題になる流体力学的な相互作用の長距離性による発散の問題や、流体力学的な多体相互作用の複雑さから、これまでの沈降速度の理論は、Batchelor(1972)[2]での希薄極限での扱いに限られていた。高濃度への拡張の試みの一つとしてBrady&Durlofsky[3]による方法を紹介し、彼らの方法の問題点を明らかにする。次に本研究で行なったStokesian Dynamicsの方法の沈降速度の問題への適用について紹介する[4]。その結果、Brady&Durlofskyの結果を改善し、希薄極限でBatchelorとほぼ等しい結果が得られた。
著者
市來,健吾
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, 2001-07-20

水の中を重力で落ちる粒子の挙動を21世紀の科学は完全に予言できるか、あるいはこんな古典的な現象でも現代の科学は完全に解明できていないのか?この現象を重力だけで水を無視して考えると、粒子は加速運動することが分かる。しかし実際には粒子はある程度の速度でほとんど一定に落下する。速度に比例するような水の抵抗力を考えればこの振舞は定性的に記述できる。しかし更に現実には、この抵抗力がまわりの粒子全ての影響を持つため、多粒子系ではその挙動は複雑である。「流体を直接数値計算してしまえ」という立場もあるが、ここでは流体の粘性が支配的な状況であるStokes近似に徹底的にこだわり、それ以上の人工的な、あるいは仮想的な近似を排し出来るだけ妥協せずにその性質を実感したい。その正確な数理的な情報を得るために数値計算を使おう、というのが本論文の立場だ。物理のカリキュラムの中で「流体力学」は大きく取り上げられないし、microhydrodynamicsと呼ばれる粘性流体中の多体問題は通常触れられない。専門の異なる研究者にこのmicrohydrodynamicsの面白さと難しさも併せて紹介したい。この論文は半分は(独断や偏見に満ちた)レビューで、半分は最近の私の仕事の紹介である。ここで紹介する計算手法は流体力学に限らず一般の多体問題に応用可能であると期待し、「多体問題の数値解析」という広いframeworkを示唆する。Stokes流れの多粒子問題に興味の無い方もこの手法の応用を少し考えて、もし使えそうなら是非チャレンジして欲しい。ここではもっとも単純な、つまり高級な技巧を使っていない計算道具を議論しているだけで、Stokes流れの多粒子問題に対してすら面白い物理現象への応用は示していない。本来私自身がこの道具を使って物理を取り出し尽くした後に「どうだ、まいったか」という論文を書くべきなのだが、逆に読者にチャレンジするspaceが残っている、と挑発しておく。
著者
市場 尚文
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.470-475, 1984

折れ線型自閉症の病態生理の解明のため, Rutterの診断基準にもとつく幼児自閉症28名と折れ線型自閉症22名の計50名を対象として, 臨床的脳波学的検討を行った。<BR>その結果, 折れ線型自閉症では特異な経過で自閉症を発症する他, 幼児自閉症に比較して脳障害を示唆する臨床的脳波学的所見が少ない傾向があること, psychic traumaと考えうる誘因を有する症例が多いこと, 予後とくに言語予後が不良であることが特徴的であった.このため, 折れ線型自閉症の成因としては, 幼児自閉症の成因とされている脳器質性障害による言語認知障害とは異なる機序が推測された.