著者
近藤 愛子 佐藤 尚弘
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.452-457, 2007 (Released:2007-10-01)
参考文献数
15

0.1 M NaCl 水溶液中,pH=7,タンパク質濃度が約 10-3 g/cm3 の条件で,球状タンパク質である β-lactoglobulin(β-LG)を 75℃ で熱変性させた後に冷却させて形成される会合体の構造を,円二色性,粘度,および多角度光散乱検出器を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)により調べた.円二色性測定の結果は,この熱変性タンパク質が冷却しても元の天然状態の二次構造には戻らないこと,そして粘度測定の結果は,このタンパク質が熱変性によりランダムコイル状の形態をとり,冷却により小さく収縮した形態をとることを示した.さらに SEC-MALS により,熱変性後に冷却して形成された β-LG の会合体に関して次の結果を得た:(1)β-LG の会合体は大小 2 種類に大別できる;(2)「小会合体」は平均して 5 個の β-LG 分子から形成され,各 β-LG 分子は天然状態に近いコンパクトな形態をとっている;(3)「大会合体」は 100 以上の β-LG 分子の集合体であり,その高モル質量域での回転半径のモル質量依存性は,分岐鎖状の接触ビードモデルにより説明できる.
著者
上田 佳祐 薗頭 元春 飯山 将晃
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.3, pp.88-90, 2018-03

紙媒体や画像上の文字を計算機により自動認識する文字認識の技術は, ビジネス文書などの自動処理だけでなく人文科学の研究などにおいてもデータ処理にかかる人的資源を削減できるという点で有用である. 本研究では古典文献などのくずし文字の認識を目的とし, 現代文字の認識で高い精度が得られている畳み込みニューラルネット(CNN)による識別と, くずし文字特有のアスペクト比を用いた識別を組み合わせた認識手法を提案する. 実験の結果, 提案手法により, 単にCNNを用いた場合より高い精度の認識性能が得られた.
著者
河島 茂生
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.1E1OS24a2, 2017 (Released:2018-07-30)

本発表では,ネオ・サイバネティクスの理論に依拠しながら,人工知能に関わる倫理的問題の整序-再編を目指す。社会的な領域では人工知能は公正さや公知性を保ちながら社会システムの継続・改善に資することが求められるのに対して,個人的な領域では人工知能の利活用というよりもオートポイエティック・システムとしての相手への配慮が引き続き求められる。人工知能が普及した社会では,こうした複眼的な倫理的観点が欠かせない。
著者
伊藤 廣紀 蒔苗 耕司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.II_36-II_42, 2013 (Released:2014-03-19)
参考文献数
14

近年スマートフォンの普及により,位置情報を利用したARアプリケーションの需要が高まっている.しかし,携帯端末上におけるAR技術の利用は処理コストが高く,それに耐えうる高速な手法が求められている.中でもオクルージョン処理は,仮想物体を違和感無く重畳するために欠かせない処理であるが,現実空間の奥行きデータをリアルタイムで取得する必要がある.本研究では,現実空間から取得した地物モデルデータによってオクルージョン処理を行う手法を提案した.結果として,携帯端末の携行性を犠牲にすることなく,オクルージョン処理を行うことができた.問題点として,センサーやモデルデータについて,高い精度が求められることがわかった.今後はデータを動的に取得する手法や,ズレを補正するための手法について,研究していく必要がある.
著者
大谷 稔男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.18-22, 2013-04-10

要約 インスリンを同一部位に繰り返し注射するとアミロイドが沈着して結節を生じることがあり,インスリンボールとも呼ばれる.インスリンがアミロイドを形成する過程では,インスリン分解酵素の機能低下などが関わる可能性がある.インスリンボールは常色~褐色調の結節で,ときにlipohypertrophyとの鑑別を要する.最近われわれは,1型糖尿病患者の上腕に生じたインスリンボールを経験した.臨床像から皮膚悪性腫瘍も疑ったが,病理組織学的所見からアミロイドーシスと診断した.インスリン注射部位(腹部,上腕,臀部,大腿)に結節をみた際は,インスリンボールも念頭に皮膚生検を行い,診断を確定することが肝要である.インスリンボールへの注射は疼痛が少なく好んで行われる傾向があるが,インスリンの効果は顕著に減少する.診断後は内科医とも連携して,注射部位のローテーションを患者に指導する必要がある.
著者
山本 奬 佐藤 和生 有谷 保 板井 直之 川原 恵理子 三浦 健 若松 優子 YAMAMOTO Susumu SATO Kazuo ARIYA Tamotsu ITAI Naoyuki KAWAHARA Eriko MIURA Ken WAKAMATSU Yuko
出版者
岩手大学大学院教育学研究科
雑誌
岩手大学大学院教育学研究科研究年報 = Research Journal of the Iwate University Professional School for Teacher Education (ISSN:2432924X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.223-236, 2020-03-31

本研究の目的は,自殺予防教育の一環として,ソーシャルスキルトレーニングの考え方を参考に「援助要請の仕方・受け止め方」の心理教育プログラムを作成し,小学校3年生から中学校2年生までの児童生徒に実施し,その成果を検証することであった。作成したプログラムについて,援助要請の仕方・その受け止め方共に,当初の自信による適用の禁忌はないことが確認された。援助要請の仕方・その受け止め方の自信の向上については,いずれの学年においてもその効果が認められ,特に小学校中学年において顕著であった。困り事・悩み事の対処姿勢については,中学生と小学校高学年において,肯定的変化が認められた。
著者
三浦 一陽
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1154-1158, 1997-11-10

精液は大別すると2つの構成成分から成り立っている.精液のそのほとんどは精漿といわれる液体成分であり,残りの細胞成分である精子は全精液の1%にも満たない. 精漿は以前より副性器の機能や精子の運動機能に影響すると考えられており,精漿に対する多くの研究がなされてきた.本稿では精漿成分が精子運動においてどのように妊娠に重要な役割を果たすのか,あるいは精漿が精子運動に対して,いかに抑制的に作用するのかなどについて,筆者らの多少の経験と文献的考察をもとに述べるが,精漿に関しては,その詳細はいまだに不明な点が多いのが現状である.

1 0 0 0 OA シラーの方法

著者
木本 欽吾
出版者
日本独文学会
雑誌
ドイツ文學 (ISSN:03872831)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.7-11, 1953-11-20 (Released:2009-01-29)
著者
山﨑 信幸
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.234-238, 2014-07-15 (Released:2017-08-29)
参考文献数
12

近年,うつ病患者数は増加傾向にあり,うつ病患者に適切な医療を提供する意義は大きい。 うつ病に対する認知行動療法の有効性が確立されてはいるが,多忙な総合病院精神科医師が認知行動療法を実施する際には困難を伴うことが多い。総合病院精神科の医師,コメディカルが認知行動療法のトレーニングを受けることで,認知行動療法を希望する患者のニーズに応えることができるとともに,精神科治療技法の質の向上につながり,若手医師・コメディカルの精神療法の教育にも役立てることができる。セルフヘルプ用の書籍,コンピュータ支援型認知行動療法などの簡易型(低強度)認知行動療法の利用を通じて,総合病院精神科においても認知行動療法の導入が進むことが期待される。
著者
古市 裕子 神浦 俊一 福山 丈二
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.247-257, 2005-06-24 (Released:2010-05-31)
参考文献数
20

水分の影響を受けにくいグラファイトカーボン系吸着剤 (Carbopack Z) を用いて大気中の不飽和エステル類, すなわちアクリル酸メチル (MA) , アクリル酸エチル (EA) , メタクリル酸メチル (MMA) , メタクリル酸エチル (EMA) およびメタクリル酸ブチル (BMA) を加熱脱着-GC/MS法で分析する手法を開発した。吸着管にはガラス管にCarbopack Z (スペルコ社製) 100mgを充填したものを用いた。また, 加熱脱着装置にはパーキンエルマー社製ATD-400を使用した。吸着管に0.5ngの標準物質を添加し, 7回繰り返し分析して得られた標準偏差から求めたIDL (装置検出限界) は32pg~103pgであった。同様にして求めた大気を10l捕集したときの検出限界は4.9~16ng/m3であった。添加回収率, 保存安定性とも良好であった。
著者
中間 玲子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.374-386, 2013
被引用文献数
3

本研究は, 恩恵享受的自己感との比較を通して, 自尊感情と心理的健康との関連を再考することを目的とした。恩恵享受的自己感とは自己の周りの環境や関係性に対する肯定的感情から付随的に経験されるであろう自己への肯定的感情である。心理的健康としては幸福感および主体性の側面をとりあげた。大学生306名を対象とした質問紙調査(研究1)において、幸福感・内的統制感は自尊感情・恩恵享受的自己感の両方と有意な関係にあることが示され、自尊感情と共に恩恵享受的自己感も心理的健康に関連する重要な概念であると考えられた。大学生173名を対象としたネット調査(研究2)の結果からもその見解は支持された。また、女性は男性よりも自尊感情の得点が低いが恩恵享受的自己感の得点は男性よりも高いこと(研究1)、相互協調性は自尊感情とは負の関係にあるが恩恵享受的自己感とは正の関係にあること(研究2)から、恩恵享受的自己感は、性役割や文化的価値による抑制を受けない自己への肯定的感情であると考えられた。一方、自律性・人生の目的意識との関連(研究1)から、他者との対立を凌駕するような強い主体性とは自尊感情のみが関連することが明らかとなった。
著者
山内一宏
出版者
参議院
雑誌
立法と調査
巻号頁・発行日
no.300, 2010-01-15
著者
浦 光博 南 隆男 稲葉 昭英
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.78-90, 1989-03-20 (Released:2016-11-23)
被引用文献数
3

This article contains two parts. In the first part, we review recent studies on social support and define three new trends in the area of social support research. The first trend is recent increment of studies examining the relationship between social support concepts and some other concepts in social psychology. The second trend is a series of studies re-examining social support process from the viewpoint of more general features of social interaction process. The third trend is the emphasis of roles of various ecological factors in social support processes. All of these three trends are considered to have impacts on future directions of this area of research. In the second part, we report results of the studies in which we examined the relationship between social support and family stress and individual stress in a situation of job-induced separation. This examination is considered to be related with the third trend reported in the first part. The results revealed that the social support, on the one hand, buffer negative effects of stressful life events on family and individual adaptation, but on the other hand, the buffering effects may have a limitation.
著者
坂口 淳 赤林 伸一 鍛冶 紘子 都丸 恵理
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.74, no.635, pp.39-45, 2009-01-30 (Released:2009-11-02)
参考文献数
15
被引用文献数
5

This paper described the distribution of contaminants (fine particle and bad smell from tobacco smoking) in the restaurant where the smoking seat and the non-smoking seat are arranged in the same space. The results are as follows; (1)When the smoking seats are in close formation near the exhaust outlet, the fine particle concentration from tobacco smoking is the lowest. (2) It is very difficult to reduce bat smell intensity to the comfortable level, where smoking seats and non-smoking seats are arranged in the same space.