著者
村上 民
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.26-44, 2015 (Released:2016-08-15)
参考文献数
31

自由学園創立者である羽仁もと子、吉一は、創立初年の1921年から、当時自由画提唱者として、 また農民美術運動の推進者と注目されていた洋画家、山本鼎を美術科主任として招聘した。山本鼎 は、病に倒れる直前の1942年秋頃までの20年間、つまり彼の後半生を通じて自由学園の美術教育 に携わり、また羽仁夫妻の教育事業に深く関与した。本稿は、自由学園草創期から10年間の学園美 術の展開、そして自由学園工芸研究所設立にいたる過程を、羽仁もと子・吉一と山本鼎の協働の側 面から論じる。羽仁夫妻は、自由を基調とした教育をめざし、教育と社会改造を深く結び付けよう とする志向を持っていたが、山本の自由学園での教育実践は、それまでの山本の自由画運動や農民 美術運動を統合させた形で学園美術を方向づけ、自由学園教育が持っていた社会への拡張性を具体 的に推し進めた。山本鼎はまた、自由学園卒業生による自由学園工芸研究所の設立(1932年)にも 関わった。工芸研究所の設立は、生徒たちの、山本鼎からの自立過程でもあった。
著者
吉村 元 今井 幸弘 別府 美奈子 尾原 信行 小林 潤也 葛谷 聡 山上 宏 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.713-720, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
29
被引用文献数
4 7

症例は76歳男性である.インフルエンザA型感染症発症直後に高度の意識障害を呈し,その後急激にDICやショック,多臓器不全も合併した.インフルエンザ脳症(IAE)と診断し,オセルタミビル投与,ステロイドパルス療法を施行するも効果無く,発症から24時間強で死亡した.剖検では大脳に著明な浮腫とアメーバ様グリアのびまん性増加をみとめたが,炎症細胞浸潤は無かった.また,インフルエンザウイルスA・H3香港型が剖検肺から分離され,保存血清中のIL-6は35,800pg/mlと著明高値であった.本症例の臨床経過,検査所見,病理所見は小児IAE典型例と同様であり,成人でも小児と共通した病態機序でIAEをきたしうる.
著者
岩根 秀直 松崎 拓也 穴井 宏和 新井 紀子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

数式処理は浮動小数点計算を用いる数値計算とは異なり 計算機上で誤差の生じない代数計算を実現する. 数式処理により入試数学問題を正確に解くことが実現できる. 本稿では, 入試問題の解法のための数式処理手法の紹介と 言語処理との接合における定式化や計算量などの課題について述べる.

7 0 0 0 OA 愛は輝く

出版者
日本赤十字社兵庫支部
巻号頁・発行日
1939
著者
鈴木 雅之
出版者
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻
巻号頁・発行日
2013-03-25

報告番号: ; 学位授与年月日: 2013-03-25 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(工学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 工学系研究科電気系工学専攻
著者
稲垣 朋子 イナガキ トモコ Inagaki Tomoko
出版者
大阪大学大学院国際公共政策研究科
雑誌
国際公共政策研究 (ISSN:13428101)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.243-264, 2011-09

In Japan, one of the parents exercises parental authority after divorce (§818Ⅲ, §819 Civil Code). But many of the western countries practice joint custody after divorce. Influenced by the western countries, some groups in Japan are initiating actions to realize joint custody. Recently, discussions on reforming legislation have increased. In this paper, I have selected Germany as a main object of comparison and analyzed precedents after reform in 1997. The purpose of this study is to observe from analyzing the case law of Germany the criteria to exercise joint custody. Especially, I have examined the following points: 1) suitability as a parent, 2) cooperation between parents, 3) tolerance of the relationship between the child and the other parent, 4) support towards the development of the child, 5) continuity of the living environment (status quo) of the child, and 6) the child’s will. I have dealt with points 1)-2) in this part.
著者
門田 幸二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.537-543, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
22

次世代シークエンサ(NGS)は,医療やライフサイエンス分野の諸課題を効率的に解決するための実験機器の一つである.麻酔がもたらす作用メカニズムの解明にも,おそらく利用されているか利用されつつある.例えば,麻酔に伴う重篤な合併症に関連した遺伝子,低酸素や低体温応答関連遺伝子の同定などが考えられる.ほかにも麻酔薬がどの神経細胞中の,どの遺伝子(転写物またはRNA)の発現レベルに,どの程度の投与量で作用するかについても適用可能であろう.本稿では,典型的なビッグデータである大量の塩基配列データ(NGSデータ)を効率的に扱うための取り組みを紹介する.
著者
原田 一美
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
no.9, pp.157-175, 2010

1922年に刊行された『ドイツ民族の人種学』は,大きな評判を呼び,ベスト・セラーとなった。著者のハンス・F・K・ギュンターは一躍「人種論のスター」に躍り出て,ワイマル期ばかりか,ナチズム期の人種学,人種主義に大きな影響を与えることになる。本稿では,このギュンターに焦点を当て,彼の人種論の内容を検討し,それに若干の考察を加えた。ギュンターの人種論は,人文科学と自然科学を総合するような内容をもっており,その「科学性」ゆえに多くの知識人を惹きつけた。また,外観から人種を判断できるまなざしを鍛えることを重視し,多くの顔写真を掲載することによって,人びとが日常生活で目にする顔からその人の「人種」を判定できるような「基準」を提示した。このようなギュンターの人種論が評判を呼んだことは,ワイマル期における人種意識の高まりを示すとともに,逆に彼の著作が人種意識をさらに高めるのに貢献したということもできる。また,ナチズム期には,彼の人種分類が学校や党の諸団体においても教材として利用された。親衛隊では,ギュンターが提示した多様な人種の表現型が隊員を選別する際の重要な基準にされたのである。
著者
菅沼 慎一郎
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.265-276, 2013
被引用文献数
1

「諦める」は多くの人が日常的に体験することであるが, 心理学における一貫した定義はこれまでなく, その否定的側面が報告されることが多かった。本研究の目的は, 青年期における「諦める」の構造を明らかにし, 仮説的に定義すると共に, 「諦める」ことの精神的健康に対する機能に関する示唆を得ることである。後青年期(22~30歳)の男女15名を対象に, 過去の諦め体験に関して半構造化面接を行い, 29エピソードを得た。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果, 11の概念と3つのカテゴリーが生成された。青年期における「諦める」は, 達成・実現を目指して努力してきた<諦めた内容>に関して, 目標の達成・実現困難度の認識という<諦めたきっかけ>を契機に, 目標や望みの放棄という<諦め方>に至る。これに基づき, 「諦める」は, 「自らの目標の達成もしくは望みの実現が困難であるとの認識をきっかけとし, その目標や望みを放棄すること」と定義された。「諦める」は否定的な側面のみならず, 建設的な側面を有しており, そこに「諦める」という概念の独自性があること, 精神的健康に対して多様な機能を有することが示唆された。
著者
中園 尚武 野島 一彦
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.325-334, 2003-03-31

The purposes of this research were to make the scale on peer relationship which added the viewpoint of the indifferent attitude for the peer relationship and to examine features of peer relationship in university students. 248 university students (male166, female82) were given a questionnaire. The scale which consisted of 4 factors of "real intention and closer relation", "fear of estimation and interest", "widely and pleasantly" and "egocentric" was made. As a result of classifying the subject by the scale, "the indifference group" which avoided closer peer relationship and did not mind the estimation from their friend and was egocentric was confirmed. And the reason for the attitude to peer relationship was examined from the description. It was considered that they would not have the interest for the peer relationship for their safety and stabilization.