著者
溝井 令一 植田 真一郎 田中 耕一郎 千葉 浩輝 奈良 和彦 山元 敏正
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-7, 2019

<p>神経変性疾患の連続74例について気血水スコアを用い気虚,気鬱,気逆,血虚,瘀血,水滞の有無(証の病態6項目)を評価し,同年代のその他神経疾患の連続149例を比較対照として比較検討した。年齢,性別,重症度も共変量とした多変量解析の結果,神経変性疾患ではその他の神経疾患と比較して血虚,水滞,気鬱の順で関連性が高く,調整済みオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ3.02(1.43-6.48),2.37(1.13-5.11),2.33(1.01-5.44)だった。神経変性疾患と最も関連性が高い証は血虚であった。四物湯類(四物湯加減)の処方を考慮することは,患者の苦痛軽減に寄与できる可能性がある。自覚症状に加え脈候,舌候,腹候など東洋医学的な尺度を用いた治療効果の判定が必要である。</p>
著者
太田 麻美子 小原 愛子 運天 尚美 權 偕珍
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education
巻号頁・発行日
vol.7, pp.16-25, 2019

文部科学省(2019)は、2017年から次期学習指導要領に関する周知・徹底を行っており、それに伴い小・中学校においては「カリキュラム・マネジメント」の観点を取り入れた次期学習指導要領に即した教育課程の改善等が少しずつではあるが、行われてきている。 本研究では、沖縄県内の知的障害を主とする特別支援学校において、教育課程の改善を行った2017年度及び2018年度の授業を、特別支援教育成果評価尺度(Special Needs Education Assessment Tool; 以下、SNEAT) (Han, Kohara & Kohzuki, 2014)を用いて評価する。そうすることで、教育課程及び指導内容の改善が児童生徒にどのような効果を与えるのかを検討することを目的とした。
著者
真栄田 裕行 鈴木 幹男 上里 迅 島袋 拓也 仲吉 博紀 嘉陽 祐紀 照喜名 玲奈 金城 秀俊 安慶名 信也 又吉 宣
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.278-283, 2019

<p>食道穿孔は日常診療において時に経験する病態であるが,多くの場合生じた穿孔は頸部や縦隔内と交通するため,頸部感染症や縦隔炎を誘発し,時に重篤となることがある。また開胸を伴う胸部外科手術と頸部手術の併施は,術直後の縦隔炎発生の可能性が高まるため,一般には敬遠されている。</p><p>今回われわれは胸骨正中切開を伴う大動脈弁置換術直後に,歯科用補綴物による頸部食道穿孔をきたした1例を経験した。症例は66歳の女性で主訴は頸部異物である。開胸手術直後に頸部に迷入した異物が確認され,直ちに頸部外切開による異物摘出術および瘻孔閉鎖術が施行された。異物は歯科用補綴物(クラウン)であり,金属製の突起を歯根に埋め込むタイプのものであった。本症例は開胸手術直後であったにもかかわらず頸部外切開手術を全身麻酔下に施行できたこと,異物を速やかに発見・除去できたこと,頸部創と胸部創が連続しないようにしたこと,気管切開を施行せずに術後も気管内挿管のまま気道管理をしたことが重篤な合併症を誘発しなかった理由としてあげられた。</p>
著者
安藤 香織 大沼 進 安達 菜穂子 柿本 敏克 加藤 潤三
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-13, 2019

<p>本研究では,環境配慮行動が友人同士の相互作用により伝播するプロセスに注目し,調査を行った。友人の環境配慮行動と,友人との環境配慮行動に関する会話が実行度認知や主観的規範を通じて本人の環境配慮行動の実行度に及ぼす影響を検討した。調査は大学生とその友人を対象としたペア・データを用いて行われた。分析には交換可能データによるAPIM(Actor-Partner Interdependence Model)を用いた。その結果,個人的,集合的な環境配慮行動の双方において,ペアの友人との環境配慮行動に関する会話は,本人の環境配慮行動へ直接的影響を持つと共に,実行度認知,主観的規範を介した行動への影響も見られた。また,ペアの友人の行動は実行度認知を通じて本人の行動に影響を及ぼしていた。結果より,友人同士は互いの会話と相手の実行度認知を通じて相互の環境配慮行動に影響を及ぼしうることが示された。ただし,環境配慮行動の実施が相手に認知されることが必要であるため,何らかの形でそれを外に表すことが重要となる。環境配慮行動の促進のためには環境に関する会話の機会を増やすことが有用であることが示唆された。</p>

1 0 0 0 日佛通信

出版者
H.Takata
巻号頁・発行日
0000
著者
西岡 千文
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2038, 2019-08-31 (Released:2019-09-05)

IIIFに準拠した京都大学貴重資料デジタルアーカイブは,2018年12月1日に正式公開から一周年を迎えた。本稿は,2017年10月から2018年11月までのデジタルアーカイブの利用状況を報告する。アクセス数は,概ね増加傾向が観察された。アクセスの約4割が中国・アメリカなど海外からであった。富士川文庫ならびに絵図を含む資料が頻繁に閲覧されている。2種類のIIIF対応画像ビューワは同頻度で利用されており,「目的・嗜好に応じてソフトウェアを選択できる」というIIIFの特長を反映している。

1 0 0 0 OA 学制

出版者
文部省
巻号頁・発行日
1872
著者
丹羽 幸司 織田 裕行 石井 慧 康 純 諸富 公昭 磯貝 典孝
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1-2, pp.9-15, 2019-06-19

[抄録]性同一性障害(Gender Identity Disorder, GID)は,Female to Male(FTM)と Male to Female(MTF)に大別される.MTF患者に手術治療を行う場合,その精神医学的な特性から,医療側として特別な対応が必要と考えられる.ロールシャッハ・テストに基づく分析によれば,MTFは,FTMに比較して情緒的に不安定であり,悲観的な自己イメージ,逸脱した思考を持つ傾向にあることがうかがわれる.このMTFの精神医学的な特性を鑑み,手術適応の判断においては慎重な医療体制を整える必要があると考える.日本精神神経学会の「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」に則した身体治療適応判定会議で手術治療の承認が得られている患者であっても,GIDに精通した精神科医の外来診察を設けて検討し,場合によっては身体的治療を行う前に精神療法を行うことが重要であると考えられる.そのうえで身体治療医から十分過ぎるインフォームドコンセントを行い,それでもなお手術治療を受けたいと希望する患者を受け入れるべきである.GID患者を受け入れるに際して,特にMTF患者の望ましくない特性を引き出すことのないように,きめの細かい病院対応が求められる.加えて,身体治療を行う医師,特に外科医としての心構えを考え続けたい.
著者
土居 丈朗
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.15-29, 2012-04

我が国の税制改革論議の中で, 消費税増税とともに, 法人課税が国際的にみて負担が重いとの議論がある。しかし, 消費税の増税と法人税の減税という政策パッケージは政治的に受け入れられないとの見通しもある。その背景には, 消費税は主に消費者が負担し, 法人税は主に法人(関係者)が負担するとの直感があるが, これは法人税の転嫁と帰着の問題であり, 学術的な研究の裏づけが明確に示されないまま主張が展開されているように思われる。こうした現状から, 本稿では, 法人税負担の転嫁と帰着について, 客観的な分析を可能にする動学的一般均衡理論を構築した上で, シミュレーション分析を試みた。本稿で採用したパラメータの値の下では, 法人税の負担は, 短期的(1年目)には約10~20%が労働所得に帰着し, 約80~90%が資本所得に帰着するが, 時間が経つにつれて労働所得に帰着する割合が高まり, 長期的には100%労働所得に帰着することが示された。また, 資本分配率, 割引率, 資本減耗率などによって, 法人税負担の帰着の時間的経過が影響を受けることも示された。The incidence of corporate income tax is both an old and a new problem in public economics. In this paper, we utilize the dynamic general equilibrium model to analyze the incidence of the burden of corporate income tax and explain the intertemporal incidence. By building a dynamic macroeconomic model, we are able to analyze not only the instantaneous incidence of corporate income tax but also consider the intertemporal incidence. This dynamic macroeconomic model includes households' maximization of lifetime utility and firms' profit maximization.We implement a simulation based on the dynamic macroeconomic model with plausible parameters, and measure the incidence of corporate income tax on labor income.In the short run (for the first year), the incidence on labor income is approximately 10-20% and roughly 80-90% on capital income. In the long run, however, the burden borne by labor income gradually increases to 100%.論説
著者
Eiichi KANAI Noriyuki MATSUTANI Ryutaro HANAWA Satoshi TAKAGI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0412, (Released:2019-09-18)
被引用文献数
2

A female Bernese Mountain Dog was diagnosed with a right middle lung lobe mass. The dog was positioned in a left lateral recumbency and one-lung ventilation was used under general anesthesia. Video-assisted thoracic surgery anatomical lobectomy was performed with 4 cm small thoracotomy and two 6-mm ports. Pulmonary vessels and bronchus were dissected and isolated individually at the hilum of the right middle lung lobe. Pulmonary vessels were ligated and were coagulated and transected using a vessel sealing device. The bronchus was ligated and transected. The mass in the right middle lung lobe was removed with a clean margin and without complications. Video-assisted thoracic surgery anatomical lobectomy was used to successfully remove a primary lung tumor in a dog.
著者
長谷川 孝子 沼沢 忠祐
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.65-69, 1990-04-01 (Released:2019-07-01)

パンの水,砂糖の配合差及び乳化剤の添加が及ぼす影響をパン生地,調製パン,1日保存パンについてレオメーターによる弾性率の物性値と水分量を測定した.またパンについては水分活性も測定し,パンにおける配合差を物性値と水分量から明らかにした.1)調製パンの水分量は水添加の高いものが高く,砂糖添加3%と6%の差は焙焼,保存時とも6%添加が水分の蒸散を抑える傾向がみられた.2)乳化剤によって,焙焼,保存時とも水分の蒸散を抑える効果があった.中でも1%モノステアリン酸グリセロール添加の効果が高かった.3)パン生地の弾性率は水添加量と反比例した.4)調製パンの弾性率は砂糖添加量に大きく関係し,6%砂糖添加が3%添加より弾性率は低く,軟らかいパンであった.また6%砂糖参加では1日保存で弾性率の上昇を抑える効果が著しかった.5)乳化剤添加のパン弾性率は無添加パンに比べ,焙焼,保存時とも低かった.中でも1%添加がその効果が大きかった.6)パンの水分活性は1日保存によっパン中の水分量は減少したにもかかわらず,上昇傾向を示した.終りに本研究はエリザベス・アーノルド富士財団の研究費助成によった.また本研究に対し,ご好意下さいましたフジパン株式会社ならびに同財団及びご指導頂いた諸先生に深く感謝の意を表します.
著者
守口 善也
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.10-16, 2011-02-10 (Released:2011-05-10)
参考文献数
24
著者
安田理深著
出版者
文栄堂書店
巻号頁・発行日
1994
著者
二瓶 直子
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.249-256, 2012-12-30 (Released:2013-07-06)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

The main endemic areas of schistosomiasis japonica in Japan were three sites in Yamanashi Prefecture, Hiroshima Prefecture and Fukuoka/Saga Prefectures, and ubiquity of distribution is governed by the intermediate host Oncomelania nosophora. The presenter has to date, undertaken to clarify these factors that govern distribution through the implementation of local surveys and breeding experiments. In Japan, numerous direct and indirect eradication measures were implemented immediately after the discovery of O. nosophora. These measures resulted in the declaration of safety being made in relation to the Kofu Basin in 1996, and in Japan, schistosomiasis was thought to have ended. However, since O. nosophora still inhabit the Kofu Basin, etc. the monitoring of habitation status is important. Consequently, with regards to the Kofu Basin, working with habitation density distribution maps from the end of the 1960s and around 2000, GIS was used to clarify the range of distribution and changes in habitation density. From Japan's satellite images, paddy fields were isolated, and by combining the range of risk areas with various maps, the areas that should be monitored for O. nosophora were isolated. We are currently establishing more effective monitoring systems by implementing local surveys using GPS remote sensing using satellite images.
著者
天野 敦雄 秋山 茂久 森崎 市治郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

Porphyromonas gingivalis線毛遺伝子(fimA)は核酸配列の違いにより5つの型に分類される.Polymerase chian reaction(PCR)法を用いたプラーク細菌叢の分析により,歯周病患者から分離されるP. gingivalis株と,健康な歯周組織を有する被験者からのP. gingivalis株の線毛遺伝子(fimA)型の相違を検索した.30歳以上の健康な歯周組織を有する被験者380名と歯周病患者139名からプラークと唾液を採取し,P. gingivalisの検出とfimA型の決定を行った.87.1%の歯周病患者と,36.8%の健康被験者からP. gingivalisが検出され,そのP. gingivalisのfimA型は,健康被験者では80%近くは1型fimA株であり,逆に歯周病患者では2型と4型fimA株が優性であった.特に,2型fimA株は歯周病との相関が,オッズ比で44と計算され,これまで報告されている中で最も強い歯周病のリスクファクターであることが示された.また,2型fimA株の分布は歯周ポケット深さと強い相関性を示し,8mm以上の深いポケットから検出されるP. gingivalisは90%以上が2型株であった.歯周炎に高い感受性を示す遺伝的素因を有し,早期に重篤な歯周疾患が併発するダウン症候群成人患者と,プラークコントロールが著しく不良な精神発達遅滞成人においても同様の検討を加えたところ,歯周病の重篤度とP. gingivalisの2型がfimA保有株との強い関連性が認められ,どのような因子をもつ宿主においても2型fimA保有P. gingivalisの歯周炎への密接な関与が示された.上記5つの型の線毛に対応するリコンビナントタンパク(rFimA)を新たに作製し,ヒト細胞への付着・侵入能を比較した.上皮細胞へのrFimAの結合実験では,2型rFimAが他のrFimAと比較して3〜4倍量の付着を示し,さらに細胞内への侵入も群を抜いて顕著であった.一方,繊維芽細胞への結合では型別による有意な差は認められなかった.rFimAの細胞への付着・侵入は,抗線毛抗体,抗α5β1インテグリン抗体により顕著に阻害され,同インテグリン分子が線毛を介したP. gingivalisのヒト細胞への付着・侵入に関わっていることが示唆された.さらに,各線毛型の代表菌株を用いた付着実験を行った結果,2型線毛遺伝子を保有する株は,30%と高い上皮細胞への侵入率を示したが,3,4,5型線毛株の侵入率は2-5%であった.これらの結果から2型線毛遺伝子を保有するP. gingivalisは口腔内上皮細胞への高い付着・侵入能を有し,上皮によるinnnate immunityを踏破し歯周組織への定着を果たすと考えられ,同遺伝子型のP. gingivalisが歯周病の発症に強く関与していることが示唆された.