著者
和田 あずみ 三澤 直加 名古屋 友紀 小野 奈津美 竹村 郷
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.390, 2019 (Released:2019-06-27)

第四次産業革命を背景に、プレゼンスが弱まっている日本経済。日本の企業では、企業の創造的活動にあたり、柔軟に、常識にとらわれないで活動を創出する目的で、グラフィックレコーディング(以下GR)の活用が広がっている。新宿区立落合第六小学校では、このGRの方法を取り入れ、創造的な人材の育成を目的に小学生へ向けた「おえかきシンキング」授業(全4回)を株式会社グラグリッドと共同で開発し、実施した。全4回の授業を通じて、創造的活動を支え推進する兆しの行動が生徒達にみられるようになった。また、生徒達の変容、授業の振り返りおよび分析を通じて、創造的人材育成に貢献する4点の影響要因として、「個人の壁や視野、固定概念からの解放」「新しい意味づけのための、身体による探索と他者関与」「他者の声を受けとめるために、自分の心の声を『きく』こと」「創造し、まとめるための『イメージ』『マインド』の育成」を導き出した。
著者
石 超 佐竹 聡 神田 崇行 石黒 浩
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.334-345, 2017 (Released:2017-06-15)
参考文献数
34
被引用文献数
12

We conducted a field study to investigate the social acceptance of social robots by stores, particularly for attracting passersby, which today's robots can autonomously perform. From interviews with ten store managers, we identified two main reasons they want to employ such social robots in their stores: robots offer cheap labor and provide unique value that humans cannot. They believe that robots are good at attracting the attention of visitors without causing or receiving stress. We also conducted three case studies in which we observed how store managers employed social robots in their stores. Each store manager requested different designs in the preparation phase. After deployment, we found that the managers were generally satisfied with the services autonomously offered by the robots, which successfully encouraged people to stop. For two out of three stores the robots successfully encouraged visitors to visit. The store managers were satisfied with the results and expressed a desire to use the robots again.
著者
高安 克己 會田 智宏
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.161-170, 1995 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8

The Sada River is a canal, 8.3km in length, built about 200 years ago which connects the Sea of Japan with Lake Shinji directly. Observation was carried out using a automatic water quality and current meter to investigate the movement of invading sea water through the River. The results indicated that, though the movement of the river water is basically controlled by the tidal fluctuation of the Sea of Japan, the sea water can scarcely reach Lake Shiniji because of the long distance of the canal and small tide range of the sea. The acceleration of sea water upstreaming mainly depends on the pushing effect of a strong west wind and sea water swelling due to the low atmospheric pressure in the Sea of Japan. The moment the upstreaming of oxygen-rich sea water into the lake depends on the atmospheric conditions which is inconsistent. If it is possible to control artificially the inflow of sea water into the lake, it will greatly enhance the self-purification of the lake water and bottom sediment which in turn will increase the benthic biological activity.
著者
坂井 優美 木村 智博 福田 誠 橋本 治 岡田 勝也 伊藤 真理 川原 潮子 岩波 基
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-44, 2010 (Released:2011-09-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2 1

兵庫県南部地震以降,廃棄物学会を中心に,地盤工学領域では応用地質学会や日本粘土学会等が災害廃棄物の調査を行うようになった.本研究では2007年新潟県中越沖地震を例に,廃棄物行政の実態を俯瞰し,住民に求められる危機管理の方向性を現地調査やアンケート等で明らかにした.また,東京都等の震災廃棄物対策を参照しつつ,地盤材としての有効性を検討した.この一連の流れで,徹底した分別回収がなされたこと,家族や住民間の協力で非常時の自主防災の成否につながったこと,膨大な廃棄物でも適正処理により環境影響を低減出来る可能性が筆者らの調査で示唆された.さらに廃棄物に内在する重金属にも言及し,新潟県内海岸部での調査結果や処理技術の現状も参考のために概観した.
著者
Mun Keong KOK James K. CHAMBERS Masaya TSUBOI Ryohei NISHIMURA Hajime TSUJIMOTO Kazuyuki UCHIDA Hiroyuki NAKAYAMA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0248, (Released:2019-06-28)
被引用文献数
22

Cutaneous tumors are commonly found in dogs. To date, few studies have investigated the epidemiology of canine cutaneous tumors in Asian countries. The present study aims to report the prevalence of canine cutaneous tumors in Japan, and assess the association of breed, age, sex, and anatomical locations with the development of common tumor types. A total of 1,435 cases of cutaneous tumors were examined, of which 813 (56.66%) cases were malignant, and 622 (43.34%) were benign. Soft tissue sarcomas (18.40%), mast cell tumor (16.24%), lipoma (9.69%), hair follicle tumors (9.34%), and benign sebaceous tumors (8.50%) outnumbered the other tumor types. Tumors were commonly found on the head (13.87%), hindlimb (10.52%), forelimb (8.01%), chest (5.78%), and neck (5.57%). The risk of developing cutaneous tumors increased significantly in dogs aged 11-year and above (P<0.001). Mixed-breed dogs (14.63%), Miniature Dachshund (9.90%), and Labrador Retriever (8.01%) were the three most presented breeds; while Boxer, Bernese Mountain Dog, and Golden Retriever had an increased risk of cutaneous tumor development in comparison to mixed-breed dogs (P<0.05). Epidemiological information from the present study will serve as a useful reference for regional veterinarians to establish a preliminary diagnosis of canine cutaneous tumors.
著者
駒走 昭二
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.35-50, 2017-10-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
15

18世紀の薩隅方言が記されているゴンザ資料には、多数のカス型動詞の使用例が見られる。本稿では、それらの形態的特徴、表現価値を、派生元になったと考えられる動詞との関係性、対応するロシア語の意味、資料中における語形の齟齬等に着目することによって考察した。その結果、形態的には、ラ行の動詞に接続し「-ラカス」という形をとるものが最多であること、音節数が4音節のものが最多であることなどが明らかとなった。また、表現価値としては、基本的に他動性を有すること、他動詞よりも完全さや過度さを表示すること、また、動作主をより強く表出することなどが明らかとなった。
著者
古橋 英枝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.85-85, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)

今月号の特集タイトルは「Institutional Researchと大学」です。10年ほど前から日本でもInstitutional Research(大学の中にある様々な情報を活用し,教育・研究等の大学の業務の改善や意思決定の支援情報のデザイン・収集・分析・評価・活用・提供などの中核を担う)の必要性が叫ばれ,米国の事例紹介から日本での導入事例紹介まで幅広く文献が存在しています。本特集では,改めてIRとは何か,日本におけるIRの組織・人材育成等制度面の整備状況,そして具体的に何を目的としてどのような情報収集を行っているのか取り上げることで,日本におけるIRの現状を概観することを目的としています。東京工業大学の森雅生氏には,日本でのIR導入経緯から各国の動向,教学IRと研究IRという2大フレームについて,分かりやすく整理して解説いただきました。国立情報学研究所の船守美穂氏には,より具体的な日本におけるIR登場の文脈,及び現在学内でIRがどのように扱われているか等について包括的に解説いただいただけでなく,最後に大学図書館との関わりの可能性について考察いただきました。このような背景を前提に,神戸大学の高田英一氏には,国立大学を中心とした実際のIR人材についての調査結果を元に,人材育成の現状と今後の課題に関して考察いただきました。さらに,東京学芸大学の岩田康之氏にはIRの考え方から派生した教員養成IRについて,「HATOプロジェクト」を事例に具体的な取り組み内容をご紹介いただき,最後に岐阜大学の利光哲哉氏には,岐阜大学で開発したIRシステムである「戦略的統合データベース」について,開発に至る経緯やシステム仕様について詳細にご紹介いただきました。IRのためのデータ収集対象には垣根がなく,IRの取り組みは,大学をはじめとするすべての高等教育機関の関係者に関わる話題であり,今後の課題だと考えています。本特集が,こういった関係者のみなさまにとって,IRの基礎知識を改めて身につける機会になると共に,今後のIRへの関わり方について,なにかしらのヒントになれば幸いです。(会誌編集担当委員:古橋英枝(主査),田口忠祐,南山泰之)
著者
丸山 康子 飯塚 幸子 吉田 敬一
出版者
Japan Society of Physiological Anthropology
雑誌
The Annals of physiological anthropology (ISSN:02878429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.61-70, 1991-01-01 (Released:2011-02-07)
参考文献数
33
被引用文献数
8 11

Utilizing an ultrasonic device (B-mode, 7.5MHz), the thickness of subcutaneous fat was measured at 54 different points in the bodies of 59 males (aged 20-25) and 66 females (aged 20-23). The results were as follows;1. The females had significantly thicker subcutaneous fat than those of the males at every point measured.2. The thick subcutaneous fats were obsereved at the abdomen, buttocks, and the anterior and medial parts of the thigh in the males, and at the breast, buttocks, abdomen, the posterior, medial, and anterior parts of the thigh, and the anterior, medial, and posterior parts of the upperarm in the females, respectively.3. The subcutaneous fat of both sexes was more likely to be thicker in body parts closer to the trunk than the extremities.4. The correlation coefficient between the percent body fat and the mean thickness of subcutaneous fat obtained from data was 0.91 for the males and 0.83 for the females.
著者
前田 朗
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.150-154, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)

大学等の学術研究機関に所属する図書館員のスキルアップの手法として,学術情報システムの個人的なプロジェクトに取り組むことを提案する。この手法では,成果が出ることがモチベーションとなる,学習の機会が増えるといった利点がある。プロジェクトの取り組み対象は,業務の自動化,インターフェイスのカスタマイズ,ツールの作成,学術情報の解析,情報検索システムの試作とさまざまなものがありえる。これらのテーマごとに,筆者が職務ほか「図書系職員のためのアプリケーション開発講習会」講師や「専門用語自動抽出システム」開発に取り組んできた経験から,注目している情報を提示していく。
著者
濱田 孝喜 貞清 正史 坂 雅之 竹ノ内 洋 伊藤 一也 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】野球では外傷よりも野球肩などスポーツ障害の発生率が高いことが知られている。近年,肩後方タイトネス(PST)に起因する肩関節内旋可動域制限の存在が示され,PSTと投球障害肩発生との関連性が示唆されたが,高校野球においてPSTおよび肩関節可動域制限の予防策の実施状況は報告されていない。また,予防策実施と肩障害発生率との関係性は示されていない。そこで本研究の目的を高校野球において,肩関節可動域制限の予防策の実施状況および予防策実施と肩関節痛の存在率との関連性を解明することとした。【方法】長崎県高等学校野球連盟加盟校全58校へアンケート用紙を配布し,アンケート調査を高校野球指導者と選手に実施した。指導者には練習頻度・時間,投球数に関する指導者の意識調査,選手には肩障害の有無・既往歴,ストレッチ実施状況・種類などを調査した。調査期間は平成25年1月から3月であった。【倫理的配慮,説明と同意】アンケート調査は長崎県高校野球連盟の承諾を得た上で実施された。アンケートに係る全ての個人情報は調査者によって管理された。【結果】1.選手:対象58校中27校,673名から回答を得た。対象者は平均年齢16.5歳,平均身長170.1cm,平均体重66.1kgであった。アンケート実施時に肩痛を有していた者は全体の168/673名(24.9%)であり,肩痛の既往がある者は全体の367/673名(54.5%)と約半数にのぼった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は147/167名(88%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は422/490名(86%)であった。投手のみでは,肩痛を有する者が22/133名(16.2%),肩痛の既往は82/136名(60.3%)であった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は20/22名(90.9%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は107/111名(96.4%)であった。2.指導者:58校中24校,33名から回答を得た。練習頻度では,週7日が9/24校(38%),週6日が13/24校(54%),週5日が8%(2校)であった。練習時間(平日)では,4-3時間が14/24校(58%),2時間以下が9/24校(38%),回答なしが1校であった。練習時間(休日)では,9時間以上が2/24校(8%),7-8時間が8/24校(33%),5-6時間が9/24校(38%),4-3時間が5/24校(21%)であった。投球数(練習)では50球以下が3%,51-100球が24%,101-200球が24%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。投球数(試合)では50球以下が0%,51-100球が9%,101-200球が42%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。3.指導者意識と肩痛:投手の練習時全力投球数を制限している学校は12校,制限ない学校は12校であった。全力投球数制限ありの投手は45名で,肩痛を有する者は8/45名(18%),肩痛が無い者は37/45名(82%)であった。全力投球数制限なしの投手は60名で,肩痛を有する者は11/60名(24%),肩痛が無い者は49/60名(75%)であった。【考察】肩関節痛を有する者は全体の24.9%,投手のみでは16.2%であり,肩痛の既往歴が全体の51.5%であった。ストレッチ実施状況は肩痛の有無に関わらず約80%の選手が実施していた。肩関節可動域制限に対してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチによる肩関節可動域改善効果が報告されている。本研究ではストレッチ実施の有無を調査しているためストレッチ実施方法の正確性は明らかではないが,ストレッチのみでは投球障害肩予防への貢献度は低いことが考えられる。障害予防意識に関して練習時・試合時共に制限をしていない指導者が48%であった。高校生の全力投球数は1日100球以内と提言されているが,部員が少数である高校などの存在は考慮せざるを得ない。練習時全力投球数を制限している者のうち肩痛を有する者は18%,制限の無い者のうち肩痛を有する者は24%であった。1試合または1シーズンの投球数増加は肩障害リスクを増大させると報告されている。アンケート調査を実施した期間はオフシーズンであり,指導者の投球数に関する意識が選手の肩障害に関与する可能性があると考えられる。以上より,高校野球選手において一定の効果があるとされるストレッチを約8割の選手が実施していたにも関わらず肩痛の存在率は高かった。この原因としてストレッチ方法の正確性及びオーバーユースや投球動作など他因子との関連が考えられる。今後はこれらの関係性を明確にし,障害予防方法の確立が重要課題である。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場において障害予防は重要課題である。これまで障害予防方法の検証はされてきたが,現場ではその方法が浸透していないことが示唆された。医学的知識や動作指導が可能な理学療法士の活躍がスポーツ現場での障害予防に必要である。
著者
Masahiro TAMURA Kensuke NAKAMURA Tatsuyuki OSUGA Genya SHIMBO Noboru SASAKI Keitaro MORISHITA Hiroshi OHTA Mitsuyoshi TAKIGUCHI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0116, (Released:2019-06-27)
被引用文献数
4

Contrast-enhanced ultrasonography (CEUS) is useful to distinguish benign and malignant focal liver lesions in dogs. Cholangiocellular adenoma is an extremely rare benign tumor in dogs and has not been examined using CEUS with Sonazoid. The aim of this study was to describe findings of CEUS with Sonazoid in three dogs with cholangiocellular adenoma. All three dogs showed contrast defects in the Kupffer phase and these findings mimicked malignant neoplasia during the Kupffer phase. Moreover, all dogs showed early washout and hypoechoic lesions relative to the surrounding normal liver parenchyma in the portal phase. To our knowledge, this is the first study to report that CEUS findings of cholangiocellular adenoma with Sonazoid mimicked malignancy in three dogs.
著者
森 理恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.197-212, 2015 (Released:2015-05-14)
参考文献数
21

The purpose of this study was to clarify how the term kimono became popular as a way of referring to Japanese traditional clothing.   We collected articles from the Yomiuri and Asahi newspapers in which the term kimono in kanji, katakana, and hiragana were used by searching those words on their online databases, and analyzed them in order to find out the meaning of the word, as well as the sex and the nationality of the people who wore or possessed kimono in the articles.   We found the following: Firstly, kimono once referred to clothing in general or nagagi (long garment), regardless of which sex it was meant for. Secondly, kimono came to mean Japanese traditional clothing in the 1900s after the word “kimono” was established in Western languages. Thirdly, the word “kimono” tended to be used for women while wafuku and nihonfuku were gender-neutral words. In addition, it became increasingly common to write kimono in hiragana in the 1960s, during which time the main consumers of kimono were women, who preferred that it be written that way.
著者
山田 和慶 篠島 直樹 浜崎 禎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.280-286, 2017 (Released:2017-04-25)
参考文献数
37
被引用文献数
1

内科的治療では十分効果の得られないパーキンソン病・不随意運動症 (運動異常症) でも, 脳深部刺激療法 (DBS) により改善する場合が少なくない. 手術支援システムや刺激装置の機能の進歩と連動して, DBSの治療実績とエビデンスの蓄積がなされてきた. Convention empiricalに適応除外されがちな運動異常症を取り上げ, DBSの適応疾患が拡大しつつある現状を俯瞰する. 【パーキンソン病】一般的にレボドパに反応しない運動症状に対してDBSは無効である. しかし, 薬剤投与量が制限されている場合, 一見レボドパ反応性が欠如していても, levodopa-challenge testにより, 予想以上の運動機能改善が得られることがあり, DBSのよい適応になる. 【ジストニア】典型的ではない振戦様運動, 感覚トリックや動作特異性といった表現型, 発作的な症状増悪, 高率の精神疾患併存など, ジストニアは心因性運動異常症 (PMD) と判断されかねない要素に富んでいる. いったんPMDと診断されると, DBSに辿り着くのは困難である. 【その他】Lance-Adams症候群, 代謝性神経変性疾患に伴う不随意運動症, バリズム, Holmes振戦, 発作性ジスキネジアなど比較的まれな病態に対するDBSの有効性も報告されている. DBSの適応疾患は拡大しつつある. 運動異常症の症候を理解し, DBS介入のchanceを逃さないようしたい.
著者
Motoaki Sano
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.2870-19, (Released:2019-06-07)
参考文献数
17
被引用文献数
9

It has become clear that sodium glucose cotransporter (SGLT)-2 inhibitors not only do not increase the incidence of cardiovascular events but they also reduce the duration of hospitalization for heart failure in type 2 diabetic (T2DM) patients. The administration of SGLT2 inhibitor in T2DM patients with hypertension and a fluid retention tendency lowers the blood pressure and mitigates fluid retention. It also reduces the heart rate in T2DM patients with a fast heart rate. As an explanation for the multifaceted effects of SGLT2 inhibitors on hemodynamics, we hypothesize that these agents act on the inter-organ communication pathway, which modulates the sympathetic nerve activity to the cardiovascular system.
著者
豊田 秀樹 池原 一哉
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.32-40, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

In this article, we propose a non-hierarchical clustering method that can consider the relations between several variables and determine the optimal number of clusters. By utilizing the Mahalanobis distance instead of the Euclidean distance, which is calculated in k-means, we could consider the relations between several variables and obtain better groupings. Assuming that the data are samples from a mixture normal distribution, we could also calculate Akaike's information criterion (AIC) and the Bayesian information criterion (BIC) to determine the number of clusters. We used simulation and real data examples to confirm the usefulness of the proposed method. This method allows determination of the optimal number of clusters, considering the relations between several variables.
著者
高橋 行雄
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.14-22, 2014-06-30 (Released:2014-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
5

副作用自発報告は,実際に臨床現場において副作用と認識された事象の一部しか報告されないこと,またその割合がさまざまな要因で変動するといった報告バイアスが存在すること,発生頻度が求められず一般的な副作用発現の評価手法が適応できないという問題が知られている.そのため,シグナル検出という探索的な解析法が確立されてきた.(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)から医薬品副作用データベース(JADER)が, 2012年4月に公開され,誰でも制約なしに使えるようになった.本データベースの活用により,薬剤疫学研究の質が向上することが期待されている.しかしながら,活用方法としては「シグナル検出」に注目されがちであり,その結果,規制当局が対応すべき課題と認識され,製薬企業などでの活用事例の報告は少ないのが現状である.筆者ら第2期医薬安全性研究会薬剤疫学グループは,JADER 公開以前から網羅的ではないが,PMDA が提供している「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索」で得られたリストを取りまとめてデータベース化し,薬剤疫学の検討方法を参考に製薬企業の中での活用を試みてきた.その後,JADER を用いて一般的な PC でも可能なシグナル検出のための統計量を容易に算出するための方法を考案し,各種の課題に応用を試みてきた.本論文では,シグナル検出を可能にするための JADER の処理方法について解説する.この方法を用いて,多くの薬剤疫学の課題に対する応用が活発に行われ,薬剤疫学研究の質の向上に寄与することを期待する.
著者
蘭 信三 中里 英樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.41-57, 1998-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
48

本稿は、計量的歴史社会学の展開を跡づけるとともに、その可能性と今後の課題を論じるものである。アメリカにおける歴史社会学の復興が、没歴史的な一般理論の構築とその検証としての社会調査への反省から生じたこともあり、その主流は、質的データを多面的に検討することによって歴史的な事象を理解する、あるいはその因果律を明らかにしようとするものであった。しかし、一方で計量的歴史社会学と呼べるような試みも、着実に成果をあげてきた。集合行動と社会変動など比較的マクロな対象をあつかう主流派歴史社会学とトピックを共有しつつ、コンピュータを用いた計量的分析を行ったティリーやレイガンがその例であるが、本稿で中心的に見ていくのは、フランス・イギリスの歴史人口学・家族史からくる流れである。その流れは、アメリカにおいて、社会学・人口学における計量的方法の発達を受けて、イベントヒストリー分析などの多変量解析を用いた家族史研究へと展開する。さらに大量データをコンピュータによって処理し計量的に分析する家族史の試みは、日本においても成果を挙げつつあり、その一例は本稿で紹介される。このような計量的歴史社会学は、データの収集と加工およびその処理、分析技法、個人単位の分析と長期変動の分析との両立など、解決すべき課題も多いが、これらの課題に適切に対処できれば、歴史社会学、さらには社会学全般において大きな流れを築いていく可能性を持っているといえよう。