著者
丸山 広達 水口 聡 友岡 清秀 谷川 武
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.85-89, 2019 (Released:2019-04-23)
参考文献数
27
被引用文献数
1

愛媛県農林水産研究所では, 一般的な米飯に比べ, 食後血糖の上昇が抑えられる高アミロース米「ホシニシキ」を県の気候において, 収量や食味などが優良だと想定される有望品種とした。そこで本研究では, 愛媛県で栽培したホシニシキのグリセミックインデックスの評価を行った。本研究は, 日本Glycemic Index研究会のプロトコルに基づいて, 21‐48歳の健常男性8名を分析対象とした。基準米を計2回, 愛媛県で栽培したホシニシキを1回摂取し, 各米の摂取後2時間までの血糖値を測定してその曲線下面積 (incremental area under the curve: IAUC) から, グリセミックインデックスを算出した。基準米2回の平均IAUCは4872.50分・mg/dL, ホシニシキのIAUCは4015.31分・mg/dLであった。以上の結果から, 愛媛県の気候において栽培した高アミロース米ホシニシキは, 白米に比べて86.2というグリセミックインデックスを示した。
著者
石津 珠子
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.17-25, 2018-03-15

The purpose of this paper is to clarify the significance of aesthetic education in art education.In general, art education has two aspects:, to get artistic skill for art works and, to cultivate personality through art.Contemporary concepts of aesthetic education rely heavily on Friedrich von Schiller’s treatise on aesthetic theory “Uber die asthetische Erziehung des Menschen, in einer Reihe von Briefen written in 1795”.We have usually a tendency to emotional feeling and rationality thinking in action.Since the ancient Greece and Rome eras, we have traditional thought of the whole human being, that is “kaloka gatia.”, “arma bella”, and “schone Seele.”.The concept of the harmony of the human being lead to the conception of aesthetic human transformation through aesthetic education in Schiller’s treatise.Schiller’s ideas exerted various influences on art education. One example is the work of Herbert Read, whose “Education Through Art was published in 1943”.The aesthetic education theory of Rudolf Seitz was also influenced by Schiller’s theory. His concept of theory is basic in very practice and creative action. Especially in childhood, a lot of experience with sensibility becomes very important basis of creativity, and makes an aesthetic human transformation through aesthetic education.
著者
山浦 公美子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.315-359, 2000

本論文は,日本のパレスチナ問題および中東和平プロセスに対する政策について,外務省が政策を公式に表明している『外交青書』を中心として分析するものである。1973年から1999年までを対象とする。外交青書は政策決定者の意見が表れ,彼らが政策において強調している個所を見極められるという点で高い資料価値があるにも関わらず,これまで十分に研究が行なわれてこなかった。本論文では,外交青書の内容を通商産業省の通商白書との比較を加えつつ分析した。外務省の対パレスチナ政策声明には3つの分岐点がある。1973年の第一次石油危機,89年以降のドナー大国化,湾岸戦争後の国際貢献への参加である。第1次石油危機によって公式に表明された政策は,急速に親アラブに傾いた。外交青書はイスラエルとの関係に一線を画すことを明言し,親アラブ色を前面に出している。次に,89年以降のドナー大国化により,日本政府は外交青書を通して経済的,物的支援一辺倒であった国際貢献を拡充することを提案している。それは90年代の湾岸戦争後に実行に移される。湾岸戦争の終結により,日本政府は国際的,国内的な世論の高まりを背景に,親平和政策をもとに「国際貢献」を推し進めることを表明した。1991年のマドリッド中東和平国際会議,1992年のモスクワ会議を経て,外交青書は日本政府の貢献を誇らしげに列挙している。また日本政府の国際貢献においてPKOとODAが90年代の主要な柱であることを表明している。外交青書の分析を通して,日本政府が2つの原則を主張していることが判明する。国連安保理決議242号,338号の遵守と,当事者の合意を前提として援助を行うという政策である。これらは日本政府の親平和政策に基づいており,武力による領地併合の不可,交渉による平和的解決という政策を反映している。外交青書は,平和の確立は当事者の合意に基づいて行われるべきであるという日本政府の政策声明を明示している。1993年のオスロ合意以後,日本政府がパレスチナ問題への政治的参加を開始したのは,平和構築を目指す当事者の合意が成立したと見なしたからである。対パレスチナ援助において,日本政府は外交青書を通じ,当事者の民生と独立以後のパレスチナ社会支援という観点から,一層の政治的参加の必要性を強調している。
著者
南 友紀子 岩瀬 梓 宮田 洋輔 石田 栄美 上田 修一 倉田 敬子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.163-180, 2016

<p>本研究では,van Deursen らの「デジタルスキル」を基礎に,従来の情報検索の専門的なスキルを組み込んだウェブ環境における情報検索スキルの現状を明らかにすることを目的とする質問紙調査を行った。2014 年8 月にオンライン調査を実施し,1,551 名から回答を得た。その結果,ウェブ環境で検索を行う人々は,(1)ブール演算子などの高度な情報検索技法は用いない,(2)ウェブ上の情報の形式は理解している,(3)検索語の選定に対する意識は高い,(4)一定の評価方針のもとに複数の検索結果を閲覧する,(5)インターネットから恩恵を受けていると感じている,ことが明らかになった。階層的クラスタリングにより回答者を8 クラスタに分割し,高い情報検索スキルを持つクラスタを特定した。この高能力者群は,比較的若く,男性が多く,学歴が高く,批判的思考能力と自己認識が高かった。高能力者群は全てのスキルの平均得点が最も高いが,検索技法に関するスキルのみ得点は大幅に低かった。</p>
出版者
巻号頁・発行日
vol.東寺金勝院白清,
著者
海後 宗男
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-60, 2004

これまでの研究で、社会的デジタル・デバイドは、新しい情報通信技術へのアクセス能力(media access)の欠如によって形成されていることが検証されてきた。日本の場合、特にメンタルな接続能力の欠如(コンピュータ不安やコンピュータに対する興味の欠落によって生じる心的要因によるデジタル経験の欠如)とスキルの接続能力の欠如(教育環境やインターフェースの問題によって発生するデジタル・スキルの欠如)のふたつが、社会的デジタル・デバイドを構成する要因となっていると推測される。本研究では、2つの調査を行ってメンタルな接続能力とスキルの接続能力の欠如の実態を明らかにした。また本研究では、2つの調査結果を検証するなかで、日本のデジタル・デバイドの現状が本来の語義である「持つ者、持たざる者」に二分されるのみではなく、様々な要素が組合わさって、多層からなる階層が形成されていることに着目し、これを「デジタル階層」と呼ぶことにした。「デジタル階層」は日本の社会的デジタル・デバイドを捉えるために用いた構成概念ではあるが、社会的文化的背景や経済状況が異なる場合にも応用が可能で、各国のデジタル・デバイドの実態を捉えやすくし、系統的にデジタル享受を推進する方略を練る上で有効だと考えられる。
著者
中村 慎吾
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.100-105, 1971

1. 中国地方のヒメシジミの食草はマアザミであるが,ヒメシジミの分布を規定している要因はマアザミの分布だけではない. 2. マアザミの分布している湿原は中国地方では,かなり低地にもみられるが,ヒメシジミがみられる湿原は中国山地内にみられるヌマガヤ・マアザミ群集として知られている湿原植生の分布とほぼ一致し,ヒメシジミの分布はこの湿原植生と密接な関係がある. 3. 兵庫県下にヒメシジミが分布しないのは自然的諸条件によってヌマガヤ・マアザミ群集のみられる湿原が成立し得なかったためと考える. 4. 中国地方のヒメシジミは朝鮮半島を経由して日本列島へ分布を拡大してきた系統で,後氷期の温暖化で退行途中のものと思われる.また,北海道から本州中部の高地帯に分布する別亜種pseudoaegonはアムール,樺太を経由して南下した系統と考えられる. 5. ヒメシジミの日本列島への侵入期はリス氷期〜ヴェルム氷期の間でくりかえし分布を拡大したものと推定される.
著者
矢野 博明 伊藤 誠 山口 佳樹 井上 和哉 北原 格 原田 悦子 澁谷 長史
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では歩車混在空間において人および移動体それぞれが安全かつ安心して移動するために、自身の情報を発信する外向きヒューマンマシンインタフェース(外向きHMI)の評価のために、人が歩行する空間と車両が走行する空間を物理的に別々に構築し、バーチャルリアリティ技術や拡張現実感技術を用いて両者を統合するシステムを開発する。このシステムを用いて、歩車混在空間での人と移動体の間の情報のやり取りの特徴や、機械学習による行動予測に基づく外向きHMIを人や移動体に重畳してバーチャルに実装する。その時の反応や通行リスクの変化を比較することで、外向きHMIの開発・評価システムや外向きHMIの必要要件を明らかにする。
著者
VAN DEUSEN Brendan OWATARI-DORGAN John Patrick RAWSON Thom Brendan VAN・DEUSEN John・Patrick Owatari-DORGAN Thom RAWSON
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-11, 2016

本稿では、日本の大学において、外国語としての英語を学ぶクラスのためのアクティブラーニングのビデオプロジェクトについて考察する。このリサーチプロジェクトの目的は、次の問いを調査することである : 1)学生の英語力にこのプロジェクトはどのような効果があるのか、 2)英語力以外のどのようなスキルを学生は身につけるのか。これらの問いに答えを出すために、このプロジェクト実施の前後に、学生が認識している効果と困難さに関する意見を把握するためのアンケート調査を実施した。これらの結果と教員の観察、及び最終成果物に基づき、このプロジェクトは、学生の英語コミュニケーションスキル、協力するスキル、プロジェクトのプランニングスキル、そしてメディア制作のスキルの向上に寄与したと言える。また、テクノロジーの役割は有益であることが見て取れたが、時に、プラスの面とマイナスの面の両方が見られる場合もあった。さらに、統合カリキュラム内でプロジェクトを実施することの含意についても論じている。This paper discusses the implementation of an active learning video project for an English as a foreign language class at a university in Japan. The goal of this research project was to investigate the following questions: 1) How did the project benefit students'English? 2) What non-English skills did the students acquire ? A questionnaire was administered before and after the project to gage students' opinions about the perceived benefits and difficulties of the project. Based on these results, teacher observation and an analysis of the end product, this project helped students improve skills for English communication, collaboration, project planning and media production. The role of technology was observed to be positive, though it both enables and hindered students at times. Implications for implementing projects within an integrated curriculum are discussed.
著者
前田 真治 長澤 弘 平賀 よしみ 頼住 孝二 古橋 紀久
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテ-ション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p191-200, 1993-03
被引用文献数
10

脳内出血・脳梗塞の発症当日の治療として従来から安静臥床がなされているが,安静臥床による筋力低下・起立性低血圧などは,リハビリテ-ションを遅らせる要因となる.そこで,発症当日から座位・立位・歩行訓練などを試みた結果,体幹機能は対照群と比較して有意に維持でき,その後の機能予後も比較的良好なことを認めた.一方,自覚症状が訴えられない患者やII桁以上の意識障害で従命ができない患者は,安全管理の面から訓練不能であった.また,発症後数日間以上安静臥床させた群との比較でも再発・進行率には有意差はなかった.さらに最終到達運動機能については,不可逆的な廃用症候群が生じる前に訓練が始まれば差はないと考えられた.したがって,自覚症状を訴えることができ,II桁以上の意識障害と重篤な他の合併症がない限り,健側と体幹筋力維持,廃用症候群防止を目的に脳内出血・脳梗塞は発症当日から可及的立位・歩行訓練を開始することは可能と思われた.