著者
小林 忠雄
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本年度は前年度にひき続いて、伝統都市を中心としたフィ-ルドにおける色彩に関する民俗伝承の聞き書きと、文献資料および実物の写真撮影等の調査を実施した。本年度予定した調査地は熊本市・松江市・金沢市・岐阜市・津市の計5か所であったが、実施したのは熊本県人吉市・鹿児島県知覧町・松江市・金沢市・弘前市の5か所である。これらはいずれも中世ならびに近世以降より始まった城下町であって、前年度の伝統都市における色彩表徴の事例研究を補足し、また深めるに足る対象地であった。ちなみに、調査結果をまだ充分に検討していないので、早急に明確な結論を導き出すことは出来ないが、中世鎌倉期より城下町として発達した人吉市の場合、中世的な歴史遺物が少ないながらも、青井阿蘇神社の社殿に残る建築彩色には注目され、赤・青・黒の色彩表徴にひとつの歴史的意味を見つけだすことが出来た。しかし、その他民俗事象としては近世末期の事象の伝承より遡ることができず、また衣裳の染色などの技術も地方的な稚拙なものにとどまり、いわゆる京・大坂との物流関係に規制されることが多く、そこにはこの地方独自の色彩伝統を見出せなかった。このことは前年度の調査研究による都市(マチ)とその周辺農村との対比といった次元での差異でしか、その色の民俗の特色を見出し得ない結果とほぼ同一の傾向にある。しかし、一方で従来からフィ-ルドとしている金沢においては、その後の調査によって五行思想に基づく五色のシンボリズム、すなわち日月山海里を意味する赤・白・黄・青・黒(紫)の儀礼的展開例を見出し、都市の民俗社会が色彩を重視する原理を新たに確認することが出来た。現在、その他の文献資料との照合が出来ていないので、調査終了とともに、さらに分析を行い結果報告をまとめる予定である。
著者
大橋 和也 前田 忠計 小寺 義男 丸橋 正弘 大谷 真理 大石 正道 伊藤 一郎 佐藤 絵里奈 大草 洋 松本 和将 馬場 志郎
出版者
日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
雑誌
日本プロテオーム学会大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.18, 2009

シスプラチンやタキソールは優れた抗腫瘍効果から、悪性腫瘍の治療において頻用されている抗癌剤であり、膀胱癌においても一般的な化学療法に組み込まれている。これら抗癌剤の有効性は証明されているものの、徐々に抵抗性を示す症例を経験する。これは膀胱癌がシスプラチンやタキソールに対して耐性を獲得したことが原因の一つとして考えられる。そのため、これら抗癌剤に対する耐性獲得機序の解明が求められている。しかし、膀胱癌において薬剤耐性を獲得する機序は未だ不明な点が多い。そこで、我々は予後因子としてのマーカーの発見ならびに薬剤耐性獲得機序解明を目的として研究を進めている。本研究では、膀胱癌細胞株 T24 、膀胱癌細胞株 T24 より樹立されたシスプラチン 26.6μM の培地で成育された T24 シスプラチン耐性株を用いた。これらを二次元電気泳動法により定量分析し、シスプラチン耐性関連タンパク質を探索した。二次元電気泳動法は一般的な方法よりも高分子量タンパク質を分析可能なアガロース二次元電気泳動法を用いた。二次元目の SDS-PAGE 用ゲルのアクリルアミド濃度は 12% 均一ゲルと、高分子領域の分離能が高い 6-10% 濃度勾配ゲルを用いた。また、二次元電気泳動ではゲル毎の泳動パターンの差が問題となるので、再現性確認のため、T24 、T24 シスプラチン耐性株を各 3 回独立に電気泳動し、解析した。T24 と T24 シスプラチン耐性株を比較分析した結果、12% 均一ゲルにおいて約 300 スポット中 22 スポット、6-10% 濃度勾配ゲルにおいて約 150 スポット中 9 スポットのシスプラチン耐性獲得関連タンパク質を検出した。これらを LC-MS/MS により分析した結果、最終的に 25 種類のタンパク質の同定に成功した。同定されたタンパク質はシスプラチン耐性関連として報告されているものが 3 種類、報告されていないものが 22 種類であった。現在、22 種類のタンパク質から T24 シスプラチン耐性株において増加した 5 種類、消失した 1 種類、大きく減少した 2 種類の合計 8 種類のタンパク質に注目し、発現量解析を Western Blotting 法により行っている。発表ではこれらの結果をタキソール耐性株の分析結果と共に報告する。
著者
桐 広樹 端山 昌樹 前田 陽平 識名 崇 増村 千佐子 岡崎 鈴代 奥野 美香 武田 和也 津田 武 猪原 秀典
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-44, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
12

歯性上顎洞炎は耳鼻咽喉科と歯科の両方で治療が行われており,治療方針も各施設によって異なっている。今回,われわれは歯性上顎洞炎の診断および治療を検証するために,歯性上顎洞炎30例32側を対象に,診断モダリティおよび治療方針について後向きに検討を行った。初期治療として抜歯とESSが行われた9例では再発を認めなかったものの,抜歯だけが行われた12例のうち8例で後にESSが行われた。また歯科用単純X線写真にて原因歯の診断が可能であったのは55%であり,歯性上顎洞炎の診断にはCTでの読影が必要であると考えられた。いずれも後向きの検討であり,今後治療方針を一定にした前向き研究が必要であると考えられた。

1 0 0 0 OA 掛漏 56巻

著者
杉原, 直友
出版者
巻号頁・発行日
vol.[53],
著者
桜庭 麻衣子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.238, pp.88-90, 2004-07

90年代後半、渋谷・原宿に数多くの美容室が出現し、「カリスマ美容師」という言葉と共に世の話題となった。しかし、それより20年以上も前に、トップヘアデザイナーの地位を不動のものとし、以来、業界ナンバーワンの座に座り続ける人物がいる。美容室チェーン田谷の現会長、田谷哲哉である。 美容師の世界では、腕に覚えのある者ほど独立願望が強い。
著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.433-438, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
10
被引用文献数
4

市販のコーヒー焙煎豆は,通常エージング処理が施されている.エージング処理によってコーヒー抽出液中の多くの揮発性成分が減少する.エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を誘導する.関与する成分は2,5-dimethylpyrazine,2,6-dimethylpyrazineであった.血中IgGの産生増強効果には2-methylpyrazineも関与した.これらの成分は何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆抽出液は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を有することが分かった.エージング処理は焙煎豆中の有効成分の減少を招き,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を弱めることが分かった.
著者
篠原 康雄 寺田 弘
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.131-134, 1988-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
19

This paper deals with why the Pβ0-Pγ bond is cleaved specifically in the enzymic hydrolysis of ATP mediated by Mg2+. Mg2+ coordinates with the β-and γ-phosphoryl groups in such a way that it binds more strongly to the former. This asymmetric coordination weakens the bond where specific cleavage takes place in the enzyme catalyzed hydrolysis.
著者
立見 辰雄 菊池 徹 久野 久
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.17-33, 1957-03-30 (Released:2009-11-12)
参考文献数
78
著者
森 達也
出版者
政治哲学研究会
雑誌
政治哲学 (ISSN:24324337)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.91-100, 2019 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
著者
矢田 努 高木 清江 仙田 満
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.629, pp.1441-1448, 2008-07-30 (Released:2009-09-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Forty-eight cases of collegiate lecture rooms were psychologically assessed by students during regular classes through a semantic differential technique. Multi-variable analyses were then applied first to extract the structure of evaluation and then to predict students' satisfaction which represented the first and primary factor, namely, “overall evaluation.” Other factors were “lecture content,” “acoustics” and “communication.” Spatial and environmental planning guidelines for enhancing students' satisfaction as interpreted from the multiple-regression equation which explained 72.3% of variance were lower students' density, higher level of illumination, curbing of natural lighting and increased main window area per total wall area. Larger room depth as well as larger desk size increased satisfaction. Illumination, however, should be given priority over room depth. Twenty to thirty percent of illumination increase should compensate twenty percent decrease in room depth.
著者
宇佐美 洋
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.147, pp.112-119, 2010

<p> 日本語母語話者が学習者の日本語作文を評価する際,評価の基本的方針(評価スキーマ)は人によって大きく異なる。評価スキーマのばらつきの全体像をとらえるため,評価観点に関する質問紙への回答傾向によって評価者をグルーピングする試みを行った。</p><p> 評価者155名に学習者が書いた手紙文(謝罪文)10編を読んでもらい,「最も感じがいいもの」から「悪いもの」まで順位づけを依頼し,作業後,「順位づけの際どういう観点をどの程度重視したか」を問う質問紙(22項目,7段階)に回答してもらった。得られた回答に対して因子分析を実施した結果,「言語形式」,「全体性」「読み手への配慮・態度」「表現力」と名付けられる4因子を得た。さらに,評価者ごとに算出した上記4因子の因子得点に対しクラスタ分析を実施したところ,評価者は「言語重視型」,「非突出型」,「態度・配慮非重視型」,「言語非重視型」という4グループに分類するのが適当と解釈された。</p>
著者
高山 耕二 中西 良孝 朝 魯孟
出版者
鹿児島大學農學部
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-36, 2005 (Released:2011-03-05)

ヌビアン種とトカラヤギにおける超音波検査法による早期妊娠診断と、胎齢ごとの胎子器官の発育と胎子胸腰部長(体幹)、頭長、心臓直径を測定した。超音波検査法は胎齢別に経直腸検査法と経腹部検査法を用いて交配から分娩まで行った。交配後23±2日で胎胞がみられ、胎子は胎胞観察後7±2日でみられた。眼窩は交配後6週間にみられた。心臓はそれぞれのヤギで交配後30、40並びに50日でみられ、心室は交配後4ヵ月ごろにみられた。胎子の胸腰部長、頭長、心臓の直径は胎齢の推移に従って増加した。交配後3ヵ月までの胎子頭長の増加、4ヵ月半の胎子胸腰部長の増加が明瞭であった。これらの結果から、ヤギに対する超音波検査法は早期妊娠診断を可能にし、さらに胎子発育のモニターにも有用と思われた。
著者
Wei-Ta Chu Hideto Motomura Norimichi Tsumura Toshihiko Yamasaki
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
ITE Transactions on Media Technology and Applications (ISSN:21867364)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.60-67, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
72
被引用文献数
3

With the advances in digital media processing technologies and the tremendous growth in the amount of digital media that have been created, new artworks are becoming possible and drawing much attention from researchers, industry, and consumers. A related emerging research area is the evaluation of such multimedia artworks by machine learning techniques. We call this research area “attractiveness computing.” Attractiveness computing is made possible by the great accumulation of such multimedia artworks and of consumers' responses. In this paper, we review existing research on multimedia artworks analysis and attractiveness computing.