著者
三輪 芳朗
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.55-122, 2020-05-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
50

2016年8月の山本幸三行政改革担当大臣就任と続く筆者(三輪)の大臣補佐官就任以後の準備期間を経た同年12月の経済財政諮問会議の「統計改革の基本方針」決定により,「EBPM推進体制の構築」を第1議題とする統計改革推進会議が創設された.この会議の活動開始を明確な契機として,政府のEBPM推進の取り組みがスタートし,その後の大方の予想を上回るスピードでの展開を経て今日に至っている.2020年2月に刊行された大橋弘編『EBPMの経済学』(大橋編,2020)は,この取り組みの本格化後まもなくTCERのconference企画としてスタートし,2年強の時間をかけて出版にこぎつけたものである.各論文(そしてペアとなる各コメント)の内容はかなりのバラツキがある(端的に言えば,実質的にバラバラ).本稿は,中心的読者としてEBPM推進に取り組む政策立案担当者を含むEBPM推進関係の実務家を想定する.政策決定は政治プロセスの中で行われる.筆者は,いわば至近距離に位置してこの展開過程を注視し時には参画してきた.この経緯・経験に基づき,必要最小限の関連情報を,支障のない範囲内で提示して,本稿の読者の参考にし,本書の内容の理解と今後の活動に役立てる一助とする.
著者
田中 剛平 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1081-1084, 2009 (Released:2010-02-23)
参考文献数
9

新型インフルエンザが世界的に流行し, 今後さらに拡大が続くと懸念されている.今冬以降の流行に備えてワクチンの製造が急ピッチで進められているが, その製造量には限界があるため, ワクチン接種以外の予防手段を徹底することも感染拡大を防止するのに重要だと考えられている.本研究では, 患者のマスク着用や外出の自重, 部屋の換気, 非感染者の手洗いやうがいの徹底などの予防手段によって新型インフルエンザの感染力が一定の割合で低下すると仮定し, その効果について感染症流行モデルを用いて試算した.その結果, 例えば1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均を1.4人とした場合, 上記の対策により感染力を10%減らすことができれば, その効果はワクチン約1600万人分に相当し, また最終的な罹患率を約25%減らせることが分かった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
澤 幸祐 大北 碧 西山 慶太 鮫島 和行
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR ANIMAL PSYCHOLOGY
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.29-36, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

Animals, including humans, communicate by transmitting various kinds of information to each other. Although individuals of the same animal species share a channel of communication, it is sometimes difficult to explore the nature of communication between different animal species. In this study, the transmission of information between humans and horses was examined regarding the three-term contingency in behavior analysis. We introduced studies in which signals from humans are discriminative stimuli for horses, and in which signals from humans are reinforcing stimuli for horses. Possibility and difficulty of information transmission between humans and horses were discussed.
著者
柿木原 くみ
出版者
書学書道史学会
雑誌
書学書道史研究 (ISSN:18832784)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.19, pp.9-22, 2009 (Released:2012-02-29)

The Chinese seal engraver Qian Shoutie 銭痩鉄 met in Shanghai the Japanese painter Hashimoto Kansetsu 橋本関雪, who invited him to his home in Kyoto, where Qian Shoutie resided for a time, carving seals for Kansetsu and his acquaintances and gaining a good reputation and trust among Japanese men of culture. Around the same time, the popular Japanese author Tanizaki Jun'ichiro 谷崎潤一郎 had asked a friend living in Shanghai to have an address seal and name seal made for him. The engraver commissioned by Tanizaki's friend was Qian Shoutie, and upon receiving the seals, Tanizaki extended his interests to the field of seal engraving. Tanizaki amused himself in the miniature world of seals and came into contact with a great many seal engravers.  Donald Keene has written of Tanizaki's works that they should be savoured in their individually published editions rather than in the form of his collected works. This is because Tanizaki's almost obsessive passion was poured into every aspect of the content and binding of his works.   In this article, basing myself on the association between the three artists Hashimoto, Qian Shoutie and Tanizaki and the inner depth of this association, I inquire into the engraver of the author's seals on the colophons of first editions of Tanizaki's works, and I also consider the seals used by Tanizaki for his personal use.

6 0 0 0 OA 守貞謾稿

著者
喜田川季荘 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻14,
著者
藤田 昌侾
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, 1972-06-15
著者
内田 智士 弓場 英司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

メッセンジャーRNA (mRNA)を用いたがんワクチンは、患者毎に異なるネオ抗原を標的とした設計が容易であり、かつ抗がん免疫を得る上で重要な細胞性免疫を得られるといった特長を持つ。一方で、ワクチンには、抗原とともに、免疫賦活化のためのアジュバントの投与が必要となるが、mRNAワクチンに適したアジュバントの開発は行われてこなかった。まず、本研究では、mRNAに2本鎖RNA構造を組み込むことで、アジュバント機能を組み込んだmRNAを開発するが、この設計は安全性が高く、さらに抗原提示細胞に抗原とアジュバント共送達できるといった利点を持つ。従来我々が開発したシステムでは、mRNAに2本鎖構造を付与した結果、その翻訳活性が若干低下した。本年度の研究で、2本鎖構造を再設計した結果、翻訳活性を損なわず、高い免疫賦活化作用を示すmRNA構造見いだすことに成功した。さらに、mRNA導入により惹起される炎症反応の強度を制御することにも新たに成功したが、この点は、ワクチン効果を得るのに必要十分な強度の免疫賦活化作用を得ることで、安全かつ効果的にmRNAワクチンを投与する上で極めて重要である。また、mRNAワクチンでは、脾臓やリンパ節といった免疫組織にmRNAを効率的に送達することが必要となるが、そのためには輸送担体に免疫組織指向性のリガンドを組み込むとともに、標的組織への送達前のmRNA酵素分解を防ぐことが必要である。本年度の研究で、2本鎖RNA構造を組み込む際に用いた方法論を、mRNA輸送担体の安定化に展開することで、生体内でのmRNA酵素分解耐性の飛躍的向上に成功した。以上のように、mRNAワクチンに必要な、mRNA設計、及び輸送担体設計において、優れた成果を得ることができた。
著者
鈴木 公啓 菅原 健介 西池 紀子 小松原 圭司 西口 天志 藤本 真穂
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.677-686, 2014-09-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
11

本論文では,男性における下着の着用や購入の関心の実態,および,下着へのこだわりの背景にある心理機序について明らかにすることを目的とした.その際,心理的機能がどのような場面,目的で期待されているのか,心理的機能は下着の何が作り出しているのか,心理的機能を期待する背景にどのような要因が関与しているのか,それらをまとめた下着のこだわりの心理モデルを構築し検討した.結果,男性において,下着にも心理的な機能があり,その機能への期待が,下着へのこだわりに結びついているということが明らかになった.中でも,気合いの効果が極めて重要であり,様々な場面でのベースとなっていることが確認された.幅広い年代の男性が,日常生活において直面する様々な場面において,課題を達成するための心理的資源を得るために,お気に入りの下着を着用していることが示された.ただし,そのプロセスについては,女性ほど分化していないことも併せて示された.

6 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1912年11月16日, 1912-11-16
著者
松村 尚彦
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2010 (Released:2010-09-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本論文では,日本の株式市場を対象として決算発表後の株価ドリフト(Post Earnings Announcement Drift, 以後PEADと表す)と呼ばれるアノマリーを検出するともに,決算情報に対する投資家およびアナリストの期待形成が合理的であるかという点について分析を行った.その結果,日本市場においてもPEADが存在すること,それはCAPMやFama and Frenchの3ファクター・モデルでは説明できないアノマリーであること,さらにMishkin検定による実証分析によって,投資家は直近の決算情報を過小評価していることと,そしてこの過小評価を時間と共に少しずつ修正していることなどが明らかとなった.こうした検証結果は,投資家とアナリストは将来の企業業績に関する期待形成のプロセスにおいて,アンカリングと調整という行動バイアスの影響を受けており,それがPEADと関連しているという仮説と整合的なものである.
著者
二瀬 由理 行場 次朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.227-231, 1996-08-26 (Released:2010-07-16)
参考文献数
9
被引用文献数
8 8

It is a well-known observation that when a Kanji character is viewed steadily and continuously, the viewer often becomes unable to recognize the Kanji as a whole pattern and it becomes difficult to judge whether or not the Kanji is orthographically correct. Such a phenomenon is called the “Gestaltzerfall” of Kanji characters. In the present study, two experiments were carried out to examine delays in the recognition of test Kanji following 25 s of prolonged viewing of adaptation Kanji, which were comprised of either the same or different parts and structures. When the size of the adaptation Kanji was equal to that of the test Kanji, there were significant delays of more than 50 ms, both when the stimuli were of the same pattern, and when they had the same structure but different components. However, when their sizes were different, delays were found only when the test and the adaptation Kanji were of the same pattern. These results suggest that a Kanji pattern may be internally represented as a whole, independent of its size, while the processing of Kanji structure may be dependent upon its size. Prolonged viewing may produce an adaptation effect specific to such representations.