著者
増野 高司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

本報告では,大阪府の公園で行われた花見を事例として,その花見活動を概観するとともに,各地の公園管理の側面から,花見に対する行政による対応の違いを把握することを試みる. 調査地は,①造幣局「桜の通り抜け」(大阪府北区),②万博記念公園(大阪府吹田市),③大阪城公園(大阪市中央区),④元茨木川緑地(大阪府茨木市),⑤安威川河川敷(大阪府茨木市),である.調査は,2012年4月から5月にかけて実施した. 公園管理の側面から,各地の花見に対する対応をみたところ,火気利用および飲食,具体的にはバーベキューの可否,に対する対応に大きな違いがみられた. 都市部の公園における花見は,都市部への人口集中が進むなかで,例えばバーベキューに対する行政による対応の違いが示すように,その社会環境に合わせた実施形態が求められており,その試行錯誤が続けられている.
著者
金 義慶 南 豊彦 中川 のぶ子 多田 直樹 井野 千代徳
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.172-177, 2006-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

49歳男性で咽頭痛、口内痛を主訴とするSweet病を経験した。口内と咽頭には多数の口内炎を認めた。頸部、胸部、背部に皮疹が認められ、加えてCRPが高値で白血球増多を認めるにもかかわらず抗生剤無効のために、筆者らはベーチェット病を疑った。皮膚疾患に対して皮膚科の診察を仰いだところ、Sweet病が疑われるとのことで皮膚生検が行われ、確診した。Sweet病とベーチェット病は症状、所見で酷似することも少なくなく合併することもある。さらに治療法もほとんど同じとなるがSweet病では悪性腫瘍、骨髄異形成症の合併が認められることがあるので鑑別は慎重かつ厳格に行われるべきものと考えた。
著者
出口 直樹 中嶋 正明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.715-719, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)患者を対象に,推奨された身体活動の運動習慣に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は,多施設共同で実施し50歳以上の膝OA患者で,疼痛および心理的要因に関するアンケートを300部配布し調査した.〔結果〕回答数は120名(運動非定着群64名,運動定着群56名)で,統計学的処理にて交絡因子を補正した結果,運動非定着群と運動定着群の間の関連因子としてWOMAC機能,運動の自己効力感が抽出され,疼痛との関連はなかった.〔結論〕推奨された身体活動の運動習慣の継続には,疼痛や心因的疼痛の影響よりも身体機能の低さや運動への興味のなさや運動を行う自信の低下が関連しているかもしれない.
著者
山下 宗利
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

本研究では、1980年代後半と現在の空間利用を比較するとともに、空間利用の変容の大きな要因となる不動産の変化、とくに土地所有の変化を検討し、両者の関連を見出したい。<br> 主たる研究対象地域は東京都中央区日本橋三丁目6番地である。この小さなブロックの西端は中央通りに面し、3ブロック北には日本橋高島屋が店舗を構えている。東京駅八重洲口にも近接し、金融・保険機関とともに多数の商業施設が立地している。発表者の山下は1987年当時に当該地域を対象として階数別の空間利用調査を実施しており、これらの既存データを比較検討に用いた。また不動産の所有とその変化に関しては登記簿データを用いた。<br> 1987年と現在の日本橋三丁目6番地の空間利用を比較したところ、以下の変化を特記することができる。それは、空間利用の純化である。当時は中央通り沿いとその東側では空間利用に大きな違いを看取できた。表通りの金融機関に対して、ブロックの中央部には木造2階建ての小規模な建物が塊状に集中し、これらは主に飲食店として利用されていた。また倉庫や青空駐車場といった低未利用地も多く、1階の利用はきわめて混在していた。しかし階数の増加とともに空間利用はオフィスへと純化する傾向にあった。現在では多くの木造建物は再開発事業(日本橋フロント、2008年5月竣工)によって大規模な建物に置き換えられ、大企業のオフィスが入居している。ブロックの東側においても同様に高層化が生じ、低層階の商業的利用と上層階での居住利用の組合わせがある。またワンルームマンションの立地もみられ、新たな空間利用も出現している。低未利用地の減少とともに表通りと裏通りの差異がより鮮明になっている。<br> 1986年頃までは土地所有に大きな変化は認められなかったが、その後は個人から法人への変化が生じている。現在ではブロックの西半分の土地は複数の企業が所有している。この土地での再開発事業には土地信託制度が活用され、共同化手法を用いて敷地を整形し、建物を大型化することにより、土地の有効活用を図っている。このように対象地域の表通りでは、大規模なオフィス空間が出現し、一方の裏通りでは当該地で店舗を営む個人所有地が依然として卓越し、小規模な商業的な利用と居住利用が卓越している。
著者
松本 耿郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.347-371, 2004-09-30 (Released:2017-07-14)

イスラームの信仰宣言「アッラーのほかに神はなく。ムハンマドはアッラーの使徒である」はムスリムを宗教的瞑想に誘う。その理由は、二つの命題の論理的関係が文言だけでは不明で、なぜ二つの命題を宣言するのかも明らかでないからである。多くのムスリムの思想家たちがこの問題に取り組み、その知的営為の中から存在一性論という哲学が形成され、この哲学を継承発展させる運動がイスラーム世界全域で展開した。存在一性論はアッラーを唯一の真実在者とし、それ以外の諸存在は仮の、あるいは幻の存在であるとする。そして、唯一の真実在者と幻の存在との関係を考察し、さらにこの真実在者から預言者ムハンマドが派遣される理由を可能な限り理論的に説明しようとする。これは相当なエネルギーを必要とする知的営為である。しかし、存在一性論はその中で使用する基本概念をいずれも重層的意味を持つものに設定して、この学派の枠組みの中での思索がほぼ自己増殖的に発展する装置を創り上げている。それは思想的生命力の自動的維持装置ともみなしうる。存在一性論が中国の思想的土壌のなかでも見事に開花していることもこのことを証明している。
著者
森山 正敏 寺島 和光 福嶋 義光 黒木 良和
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.591-593, 1984 (Released:2010-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Sotos 症候群患者8名に対して外性器の診察および排泄性腎盂造影, 膀胱尿道造影を施行して尿路性器異常の有無を検討した.性器異常としては停留睾丸・移動性睾丸・尿道下裂などが認められた. 尿路異常としては膀胱尿管逆流が最も多く認められ, 水腎症や萎縮腎なども認められた. 何らかの尿路性器異常は8例中7例 (88%) に認められ, 特に膀胱尿管逆流は8例中6例 (75%) と高率に認められた. 今後は先天奇形症候群においては泌尿器科医による尿路性器の精査を含めた全身的な検索が必要である.
著者
片瀬 雅彦 柴田 忠裕 Gaspard Jerome T. 水久保 隆之
出版者
日本線虫学会
雑誌
Nematological research (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.45-47, 2009-06

千葉県の植木産地では、伝統的な樹芸技術によって多数の造形樹が生産されている。近年、EU諸国における日本庭園ブームや中国における造形樹の需要拡大により、植木の輸出量は拡大傾向にある。ところが、出国時の植物検疫において植木の土壌から規制の対象となる植物寄生性線虫が検出されると、その植木を輸出することができない。さらに、輸出相手国の植物検疫において規制の対象となる植物寄生性線虫が検出されると検疫措置を課せられ、植木の廃棄または返送処分を被る場合もあることから、輸出上の大きな障害になっている。日本の樹木類に寄生する土壌線虫に関して、これまで林業苗畑、森林樹木、花木類を対象とした調査報告があり、庭木樹種ではイヌマキ、イヌツゲにおいて線虫検出記録があるものの、造形樹となる植木を対象とした組織的な調査は行われていない。そこで、植木に寄生する土壌線虫の種類を明らかにするために、千葉県下の植木生産圃場において線虫調査を行った。
著者
須藤 愛弓 三和 真人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0484, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】 高齢者の問題として転倒が注目されているが、これに関連する心理的問題として転倒に対する恐怖心がある。恐怖心やそれに関連したバランス低下が転倒を招くとされており、両者の関連性について理解する必要があると考えられる。本研究では、異なる条件下で不意の外乱刺激を与えることにより、恐怖心が姿勢の安定性にどのような影響を及ぼしているか検討することを目的とした。【方法】 対象は本研究に同意の得られた健常成人14名(平均:年齢21.4歳、身長168cm、体重58.9kg、男性8名、女性6名)である。方法は、重心動揺計を可動式の床面上に設置し、高さと視覚条件を変えた4条件下(平地開眼、平地閉眼、高地開眼、高地閉眼:以下LO, LC, HO, HC)で立位姿勢をとらせ、予告なしに前方への外乱刺激を与えた。重心動揺計にて総軌跡長、動揺平均中心変位、動揺速度、三次元動作解析装置にて下肢の角度変化を同時に測定した。恐怖心はVASおよびSTAI(状態・特性不安検査)にて評価した。統計学的解析は、級内相関係数による再現性、恐怖心と各項目の関連性はPearsonの相関係数及びANOVAの多重比較検定を行った。なお、有意水準は5%とした。【結果】 恐怖心はLO、LC、HO、HCの順に増加した。恐怖心と重心動揺の各項目は有意な正の相関を示し、外乱刺激の前後ともLOやLCに比べHO、HCで有意に増加した(p<0.05)。外乱前の平均中心変位は恐怖心が増すにつれ徐々に前方へ変位し、HCの時では約2.4cm前方へ変位していた。一方股関節及び足関節の角速度は弱い負の相関を示し(r=-0.24, r=-0.27, p<0.05)、LOに対しHO、HCで有意に減少した(p<0.05)。4条件とも外乱刺激から約0.5秒後に股関節が先行して反応した。足関節の反応時間との差は0.1秒程度で、条件間で統計学的な有意差は認められなかった。【考察】 恐怖を感じることにより、支持基底面内における姿勢の安定性が低下するのに加え、基底面から重心が外れないようにするための下肢の姿勢調節機能が働きにくくなると考えられる。この時健常者では下肢関節の協調した働きや危険を予測した身体の準備反応により自身の安定性を確保している可能性が考えられる。しかし高齢者の場合、身体機能が低下し、外乱に対する反応が鈍くなっていることが予想される。そのため下肢の協調性や準備反応が不十分となり、更に姿勢の安定性が低下するかもしれない。【まとめ】 健常成人を対象に、恐怖心と姿勢の安定性との関連性を検討した。恐怖を感じることで姿勢の不安定性が増し、身体機能が低下している高齢者の場合には転倒に至る可能性があることが示唆された。
著者
浦久保 知也 大場 徹也 岡村 元義 金田 伸一 川俣 治 塩見 哲次 重松 弘樹 菅谷 真二 菅原 敬信 曲田 純二 丸山 裕一 元木 政道
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.23-36, 2008 (Released:2009-12-04)
参考文献数
6

The Bio-Virus Safety Committee (BV-Committee), one of the committees of the Parental Drug Association Japan (PDA Japan), has discussed various concerns on biopharmaceuticals from scientific, technical and regulatory perspective. One of the most significant concerns is the risk of contamination of infectious agents into manufacturing process and products. This risk should be addressed, as required per the international regulations, by minimizing to use raw materials sourced from animal origin and by performing viral clearance studies in order to evaluate capability of purification process to reduce and/or inactivate known and/or adventitious viruses. BV-Committee reported the conclusions of discussion how to prepare and qualify cell bank system as one of raw materials and how much Log Reduction Value (LRV) should be targeted in virus clearance studies in the 13th annual conference of the PDA Japan in 2005 and published in the PDA Journal1). Since 2007, BV-Committee discussed the practical experimental procedures for viral clearance studies and reported the conclusions in the 14th annual conference of the PDA Japan in 2007 and reported in the PDA journal2). In the report, standardized and practical experimental procedures for viral clearance studies were proposed, considering not only requirements for submission to the regulatory agencies but also experimental technique. In addition, trouble shooting based upon the actual experience of the members, information regarding Contract Research Organizations (CROs), references of international guidelines, and worksheets for viral clearance study are provided.   Since 2008, BV-Committee has discussed how the Quality Risk Management (QRM) approach can be applied to manufacturing and quality control of biopharmaceuticals through a case study of a recombinant monoclonal antibody. The conclusion was presented in the 15th annual conference of the PDA Japan in 2008. In the case study, we supposed that viral contamination and residual process related impurities could be the source of quality risk. Risk assessment practice was performed, focusing on the following five categories, “Cell Banking”, “Cell Culture”, “Purification”, “Medium/Buffer Preparation” and “Viral Inactivation and Filtration”. In certain items, where the assessment showed higher risk, preventative measures to control the risk were discussed.

1 0 0 0 日本航空史

出版者
航空協会
巻号頁・発行日
vol.坤, 1936
著者
安元 剛 坂田 剛 安元 純 廣瀬 美奈 飯島 真理子 篠塚 翔太 窪田 梓
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

全ての生物の細胞内に高濃度で含まれているポリアミンという生体物質が,空気中の二酸化炭素と高い親和性を有し,二酸化炭素を水溶液中に取り込むという新たな化学的知見から光合成および石灰化への寄与を検証した。その結果,二酸化炭素を吸収させたポリアミン溶液は,光合成で炭素固定を担う酵素であるルビスコの炭素源となりうることを明らかにした。また,シアノバクテリアの増殖をポリアミン輸送体阻害剤が有意に阻害し,ポリアミンの光合成への寄与の可能性が示された。ミドリイシサンゴの稚ポリプの骨格形成の場である石灰化母液内のpHが周りの海水と比較して高いことが分かり,生体塩基であるポリアミンの関与の可能性を示した。
著者
吉田 亮 齊藤 和秀 吉澤 千秋
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.587-594, 2018-03-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では、高炉スラグ細骨材に含まれる微粒分を除去することで、高炉スラグ細骨材と高炉スラグ微粉末が緻密化する空隙構造の差異を、水銀圧入試験により明確にした。高炉スラグ細骨材を使用することで、直径400nm以上の空隙が緻密化される。細骨材周りの元素分析では、天然細骨材に検出された遷移帯の特徴が、高炉スラグ細骨材の周りでは示されなかった。水銀圧入法で捉えた直径400nm以上の空隙量と乾燥収縮、透気係数との間には強い相関関係が確認できた。高炉スラグ細骨材は、直径400nm以上の空隙(遷移帯)を緻密化することで、セメントペーストと細骨材の付着を強固とし乾燥収縮抵抗性を向上させ、また透気抵抗性を高めていることが示唆された。
著者
趙 瑋琳
出版者
日経BP社
雑誌
日経systems (ISSN:18811620)
巻号頁・発行日
no.297, pp.50-57, 2018-01

中国のIT企業が巨大化している。代表格が「BATH」と呼ばれるバイドゥ、アリババグループ、テンセント、ファーウェイ・テクノロジーズの4社だ。日本にいると存在感が分かりづらいが、今後のIT業界の鍵を握る企業となっている。日本を含む海外への進出を進めており、動向を押さえておきたい。

1 0 0 0 OA 年録

出版者
巻号頁・発行日
vol.[226],
著者
Runch Tuntipaiboontana Chatuporn Kuleung Vipa Hongtrakul
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
pp.OKD-128, (Released:2018-04-11)

For their exceptional beauty and great variety, waterlilies of the genus Nymphaea are popular ornamental plants worldwide. To improve their appealing traits, breeders worldwide have attempted intrasubgeneric and intersubgeneric cross-breeding and succeeded in producing new varieties. Molecular markers have become standard practice in the breeding process and for accurate variety identification. With increasing knowledge about transposable elements in eukaryotic genomes, retrotransposon-based markers have been developed for various plant species and were sometimes found to be more informative than conventional marker methods. Due to the lack of information about retrotransposons in waterlilies, this study aimed to confirm the presence and analyze the diversity of the Ty1-copia retrotransposons, which have been well studied and used to develop markers in many plants. 133 sequences of a conserved domain in the reverse transcriptase gene of Ty1-copia elements were isolated from 13 varieties of waterlilies and found to be homologous to either Ale, Angela, or TAR lineages. Sequences homologous to the Ale lineage were found to be abundant and diverse. Those homologous to the Angela lineage were found to be very conserved, but scarce. Those homologous to the TAR lineage were relatively conserved and were found in ample amounts. Furthermore, the results indicate that those homologous to the Angela or TAR lineages are more conserved to their counterpart in other plants than those homologous to the Ale lineage. From this study, 3 groups of Ty1-copia elements were found to be suitable candidates for development of retrotransposon-based markers for waterlilies in the future.
著者
山口 智実 古城 直道 樋口 誠宏 島田 尚一 松森 昇 尾倉 秀一 小田 廣和
出版者
社団法人 砥粒加工学会
雑誌
砥粒加工学会誌 = Journal of the Japan Society of Grinding Engineers (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.557-561, 2010-09-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

転がり軸受面の性能向上を目的として開発した,セリア (CeO<SUB>2</SUB>) 砥粒とcBN砥粒を混合しビトリファイボンドで結合したメカノケミカル超砥粒砥石の設計システムの開発に着手した.本論文では,その初期段階として,砥石の作用面形状や強度を左右する砥石の構造モデルの構築を行った.先に通常砥石の構造モデルに適用した拡散律速凝集アルゴリズムおよび砂山崩落アルゴリズムに基づく砥石の凝集/焼成モデルをベースにして,本砥石の構造特性を考慮し,新たに"セリアクラスタ凝集アルゴリズム"と"砥粒脱落判定アルゴリズム"を開発・適用することで,本メカノケミカル超砥粒砥石の構造モデルを確立した.本モデルと実砥石におけるセリアおよびcBN砥粒の分布に関するフラクタル次元解析を行った結果,非常によく一致し,本モデルの有効性を確認した.