著者
五十畑 浩平
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、フランスの長い職業教育の歴史のなかで発達してきた、理論的教育と企業での職場実践を組み合わせた「フランス型デュアルシステム」に関し、近年普及が高まってきた高等教育におけるそれに対象を絞り、どのような歴史的発展を遂げてきたのか、あるいは、実際どのような教育がなされているのか、また、どのような教育上の効果や問題点があるのかを解明していくことにある。課題であるフランスの高等教育における職業教育の実態、とくに高等教育におけるデュアルシステム(formation en alternance:交互制職業教育制度)の実態究明にあたり、本年度も昨年度同様、フランスの教育制度や、職業教育制度の歴史と現状についてのサーヴェイを引き続き行って来た。また、フランスの労使関係について、近年の動向を調べ、2018年3月331日、社会政策学会東海部会において、「フランスにおける労働市場改革の動向」と題しその成果を報告した。また、本研究課題の中心テーマであるフランスの交互制職業教育制度については、その教育制度のひとつであるcontrat d'apprentissage(見習契約)に着目し、引き続き、この制度を中心とした過去の統計データや資料を収集してきた。今後は、こうした日本でのサーヴェイを踏まえ、フランスでの現地調査を行い、フランスにおける労働市場改革の動向の実態に迫っていきたい。
著者
小島 佐恵子
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は現状のまとめとして、第29回アメリカ教育学会で発表を行った。発表は、米国の大学における州財政困難が州立大学にどのような影響を及ぼしているのか、なかでも学生支援部門への影響はどのようになっているか、The Chronicle of Higher EducationやInside Higher Edなどの各種高等教育関連のウェブサイト他、日本学術振興会の海外学術動向ポータルサイトに掲載された内容、また個別大学が公表している情報を収拾し、まとめることで、事例調査選定に役立てることを目的とした。結論としては、州財政の高等教育への支出は回復傾向を見せているが、リーマン・ショック以前のレベルには戻っていないこと、州財政が逼迫しているところではもちろん、そのレベルに限らず、複数の大学で学生支援のポストが削減・統合されていることが明らかとなった。州立大学に留まらず、連邦政府や州からの経常補助がないとされる私立大学においても、同様の傾向が見られた。一方で、アカデミック・アドバイジングが維持されている傾向や、学生支援への支出を増加することで学生の卒業率を上げることができているという傾向も見られた。また、とくにコミュニティ・カレッジにおいては連邦政府も学生支援に資金を拠出している例も見られた。そのため、全体的に削減傾向にはあるものの、部分的には維持・補填されているところもあり、とくに教学に近い部分では維持・補填されている傾向があるのではないかということが推察された。
著者
武石 典史
出版者
聖路加国際大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、陸軍における人材の選抜・配分の傾向と大正末期頃から陸軍で進行する権力の分化とが、どのような関係にあったのかという点を検討した。単に陸軍の動向をあきらかにするのではなく、文官官僚との比較をとおして、さらにはチリやブラジルといったラテンアメリカ諸国の政軍関係の研究成果を参考にしながら、後発国の軍部の特長について検討した。具体的には次の通りである。①『日本陸海軍総合事典』および『官報』に記載された情報を基礎資料とし、回顧録、新聞・雑誌記事の徹底的な分析をとおして、「陸軍内の選抜」と「諸ポストの階層性」との対応性の解明を試みた。なお、陸軍将校およびその関係者によって刊行された『偕行社記事』、『偕行』の網羅的な調査を実施した。②Leonard A. Humphreys, The way of the heavenly sword: the Japanese Army in the 1920's, Stanford University Press, 1995 や Edward J. Drea, Japan's Imperial Army: Its Rise and Fall, 1853-1945, University Press of Kansas, 2009、Meirion and Susie Harries, Soldiers of the Sun: the Rise and Fall of the Imperial Japanese Army, Random House, 1994 をはじめとする、外国人研究者の手による日本陸軍の研究群を綿密に検討し、その知見と考察を整理した。また、Alfred C. Stepan, The Military in Politics: Changing Patterns in Brazil, Princeton University Press, 1971 や José Nun, ‘The Middle-Class Military Coups,’ in Abraham F. Lowenthal, and J. Samuel Fitch, ed., Armies and politics in Latin America, Holmes & Meier, 1986 の分析結果の一部を、日本の比較材料とした。③上記の①と②の双方のデータを突き合わせ、相互に資料批判させるプロセスを経ながら、昭和期における陸軍の動向を検討した。
著者
松浦 正朗 城戸 寛史 山本 勝己 加倉 加恵
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

顔面欠損を有する患者にどのような他者が見て自然と感じるかを調べるために8種類のエピテーゼの装着を想定した画像をコンピュータで制作しアンケート調査を行った。その結果、静止したエピテーゼよりも健側と同調してまばたきするエピテーゼがより自然に感じることが解明された。次いで実際に健側と同調してまばたきをする装置を試作した。1つは赤外線照射でまばたきを探知する方法、もう1つはまばたきにより細いワイヤーを振動させ、それを電流に変換する方法である。両方法とも正確にまばたきを探知でき、小型の動力部も製作できた。今後、臨床への応用が可能な段階にすることができた。
著者
山下 東子
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、缶詰用にも刺身用にも持続的に利用できる海洋資源の一つとしてキハダマグロを挙げ、そのフードシステムの解明を試みたものである。キハダマグロは、まだ資源が危機的状況には至っておらず、管理方法によっては十分に持続的利用が可能なものである。そのためには、稚魚と成魚の漁獲量を相対的に管理し、稚魚の段階で獲り控える漁業に対して何らかのメリットを与えるような資源管理の仕組みが必要である。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、組織学習論の観点からみて望ましいと考えられるチーム・マネジメントを分析・考察した。具体的には組織アンラーニングやダイバーシティ、組織アイデンティティなどの他の概念とリンクさせて、効果的なチーム・マネジメントに必要と考えられる条件やメカニズムを探るとともに、それを実証するために、協力いただいた1社に対して、デプス・インタビューを行った。その結果、成果をあげているところは、チームのもつ多様性を活かすというよりは、統制しすぎることなく、共有する価値を基盤として柔軟に対応している様子が確認された。また、それにより組織内外の統合性を実現している可能性もうかびあがってきた。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、さまざまな企業の組織学習のタイプや水準を明らかにするとともに、その成立を可能にしている要因を探った。その結果、雇用形態や職務の違いよりも、そうした違いを乗り越えて、組織メンバーに一種の自己効力感や当事者意識を持つことを許されたと感じさせるような仕組みづくりに成功するときに、各組織が期待するような組織学習が成立すること、その状態が広いほど高次な組織学習が可能になる傾向が見いだせた。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

完成年度である本年度は、昨年度までに得られたデータを分析し、組織学習活動や当該組織における従業員各々のキャリア開発に対してモチベーションを高める環境要因、組織要因、個人要因を掘り下げる作業を行った。とくに、上司との関係、組織内地図の有無、企業の従業員育成制度のあり方、自己に対する自信などが、注目されるべき要素として浮かび上がってきた。その結果の一部は、本年度(2006年度)の夏(8月)に開催された三菱国際カンファレンスにおいて、英語で報告をし、参加者の方々から、貴重なご意見をいただくことができた。また、そのご意見をもとに考察を重ね、2006年10月には、東京大学大学院経済学研究科におけるワークショップ、2007年1月には、専修大学を会場としたシステムダイナミクス学会日本支部研究会で発表を行った。また、著作物としては、本研究内容に基づいた明治安田生活研究所への寄稿、南山大学経営学部の紀要への投稿なども行った。このような機会を得て、また、分析手法などについてその分野の専門家に教えを乞う機会も得ることができたことにより、さまざまなご意見・ご助言を得ることができた。しかしながら、まだ分析結果に納得がいかない点も残っているため、今現在でも改善作業中である。来年度の前半の完成を目指しているが、そのためには、来年度の初期にでも追加的なインタビューを行う必要性を、現在のところ改めて強く認識している。一方で、昨年度得られたデータは、比較的年齢の高いもの(若い人々も含まれているが、主対象は、40代の従業員)であったため、別の企業群が対象ではあるが、20代の従業員に対して追加的な調査も実施した。その結果、やはり上司との関係や組織内地図、育成の仕組みが、彼らの学習活動や行動、モチベーションなどの心理面などに大きな影響を及ぼしている可能性が確認された。この成果については、調査協力および事務局となっていただいた社団法人のもとで報告書を作成するとともに、やはり2007年1月に報告会を実施している。ただし、昨年度来のデータを論文にする作業を優先しており、今年度得られたこのデータについては、まだ論文執筆作業に着手していない。こちらもあわせて、来年度の課題としたい。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は、人事異動の主目的の1つである人材育成に焦点をあて、その人材育成のあり方が組織学習やその必要条件の1つである組織内地図とどのような関係をもちうるのかということを研究した。その結果、新たな雇用関係に移行する中、人材育成のあり方にも大きな変容、異なる役割が期待されていることがまず明らかになったが、それと同時に、組織学習の質を保ったり、活発な学習活動を実現するためには、先行研究が今後必要であるとする新たな雇用関係に関わるいくつかの施策を単純に、あるいは組織一律で導入することはあまり適切ではないとの考察が得られた。組織学習の活発化だけでなく、有能な人材の流出問題の改善にも貢献する組織内地図がどれだけ発達しているかによって、新たな雇用関係に関わる施策が良い方向に機能する場合もあれば、逆効果になる場合もあることが明らかになったのである。現在、この考察・分析結果については投稿中である。
著者
THAWONMAS Ruck
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ネット上の仮想三次元空間であるメタバースのセカンドライフ(Second Life,以下SL)での体験学習を支援するための,「移動・行動分析」,及び「体験集約」に関する研究成果が得られている.SL での体験学習は,実世界での体験学習と同じように,仮想の博物館などの見学を通じて問題の解決や探究活動に主体的,創造的,共同的に取り組む態度を育てると期待できる.これらの研究成果は,体験学習支援に止まらず,SL のようなメタバース内での効果的な教育サービスの創出につながると期待できる.
著者
樋口 浩朗
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:本研究は、山形大学のような地方国立大学において、職員が地域密着型のマネジメントを行うためには、どのような課題があり、どのような手法により能力開発すべきかを明らかにし、提言することだった。○研究方法:まず、マネジメントとは何か?地域密着型大学とは何か?について文献(ドラッカー氏の著作等)及び実地(広島大学、国立大学協会、公立大学協会等)調査を行った。それを踏まえ、本学の40歳以下の中堅・若手職員による勉強会を立ち上げ、上記課題の洗い出しを行うと共に、学長・理事との意見交換を通じ、本学に相応しい職員のトップマネジメント能力の開発について調査した。○研究成果:大学のトップマネジメントを支える職員には、大学(理念、機能等)と地域に関する基礎知識と学内外とのコミュニケーション能力が不可欠であることが明らかになった。なお、平成22年度は本研究成果を活用し、東北地方の国立大学との連携を深める。
著者
東 達也 安里 亮
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本年度は甲状腺癌そのものの検討は行わず、頚部リンパ節の検討を行った。甲状腺癌および下咽頭癌の術前患者43名を検討し、これらの症例において見られた頚部リンパ節転移を検討し、リンパ節転移の良悪性鑑別を試みた。リンパ節は術後に病理組織にて確認された転移性のリンパ節が60ケ、転移のないリンパ節が81ケが対象となった。良悪性鑑別は通常の超音波検査、パワードップラー超音波、およびエラストグラフィで行った。通常の超音波検査、パワードップラー超音波では良悪性の鑑別の因子として「短軸径」 「短軸-長軸径比」 「エコー濃度」 「石灰化」 「定性的血流量」を用いた。エラストグラフィでは良悪性の鑑別の視覚的因子として「リンパ節視覚的描出」 「視覚的輝度」 「境界部の規則性」 「境界部の明瞭性」、さらにエラストグラフィでは定量的因子として「リンパ節・周囲筋肉ストレイン比」を用いた。結論として「リンパ節・周囲筋肉ストレイン比」が1.5以上という因子が頚部リンパ節転移の良悪性鑑別因子としてもっとも正確で、鋭敏度98%、特異度85%、正診度92%であった。これに対し通常超音波エコーでは「短軸-長軸径比」が0.5以上という因子がもっとも正確であったが、鋭敏度81%、特異度75%、正診度79%程度であった。エラストグラフィは昨年度までの甲状腺癌の良悪性鑑別のみでなく、頭頚部癌の頚部リンパ節転移の良悪性鑑別因子としても有用であることが確認された。
著者
成瀬 尚志 崎山 直樹 児島 功和 笠木 雅史 髙橋 亮介 片山 悠樹 井頭 昌彦
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、ライティング教育においてはこれまでほとんど重視されてこなかったレポート論題の重要性を、インターネットなどからの剽窃を防ぎ、思考を促すという観点から研究した。第一に、剽窃を防ぐ論題の類型を分析し、剽窃を防ぐための具体的な論題案を開発することができた。第二に、アンダーソンらによる改訂版タキソノミー(教育目標の分類学)に対応させた「レポート論題タキソノミー」を開発し、授業設計と論題を関連付ける枠組みを提示した。
著者
安藤 満代 椎原 康史 伊藤 佐陽子
出版者
聖マリア学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

がん患者へのマインドフルネスは、患者の抑うつ感と不安感を低減させ、さらにマインドフルネスを体験した後は肯定的な心理変化がみられた。また、マインドフルネスプログラムは、気分のなかの緊張を低減し、活力を維持することに効果があること、さらに精神的健康度が低い人に対してより効果があることが明らかになった。
著者
伊藤 進一郎 福田 健二 中島 千晴 松田 陽介
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1980年以降、日本ではブナ科樹木に萎凋枯死が発生し、被害は拡大している。この被害は、カシノナガキクイムシが伝搬するRaffaelea quercivoraによって発生することが明らかとなった。本研究では、アジア地域でカシノナガキクイムシ科昆虫に随伴するRaffaelea 属菌を調べ、それらの病原性を明らかにすることを目的とした。その結果、タイ、ベトナム、台湾で採集したカシノナガキクイムシ科昆虫からはRaffaelea属菌類が検出された。それらの菌類は、ミズナラに対して親和性があること、またタイの1菌株がミズナラに対して病原性を示すことが明らかとなった。
著者
百鬼 史訓
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、平成17年度から平成19年度にわたって、剣道難聴予防のための基礎的研究として『剣道難聴を予防するための剣道具(面)の開発研究』を行なった。研究の概要は、平成17年度には、剣道を専門的に実践している学生や警察官を対象として「剣道難聴」の実態調査を行い、高い出現率と2kHz,3kHzそして8kHzが存在することを明らかにした。その原因と考えられる「剣道騒音」について分析(音圧・周波数)を行ったところ、掛け声、踏み込み音、竹刀音、打撃音などに固有の周波数あることや、かなり高い音圧の騒音が発生していることが明らかになった。平成18年度には、剣道騒音と剣道難聴の関連性について検討したが、測定器具の精度や生理的な個人内変動などの問題が生じたため、その因果関係については明らかにならなかった。平成19年度には、現実的な対応として難聴予防のために遮音性の高い「面」布団の芯材やその構造などの改良を行うために、各種面の遮音性についての検討を行なったところ、各種面布団の遮音性は1kHzでは低いと考えられるが2kHz,4kHzと周波数が高くなるにしたがって高くなり、ミシン刺しより手刺し材料の方が遮音効果は高く、化学素材(ソルボセイン)を1枚加えると、あらゆる布団材料よりも遮音効果は高くなるなど、剣道具開発のための有益な礎的資料を得ることができた。
著者
大関 真之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

最適化問題に関連するスピングラス模型の解析を通じて、Jarzynski等式や揺らぎの定理からなる非平衡関係式による最適化問題の解法を検討・提案した.【平成24年度成果】Masayuki Ohzeki, Phys. Rev. E 86, 061110 (2012), 【平成25年度成果】Akihisa Ichiki and Masayuki Ohzeki, Phys. Rev. E 88, 020101(R) (2013), 【平成26年度成果】Masayuki Ohzeki and Akihisa Ichiki, Phys. Rev. E 92, 012105 (2015)
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、日本の豊かな自然環境の象徴の一つであり、幻想的な光で古くから日本人の心を魅了している昆虫"ホタル"を取り上げ、その発光現象中に人に対してどのような癒し効果が含まれているのかについて実験的な検討を行ったものである。まず、平成11年度には、ホタルの発光現象を計測・解析する光計測処理システムを新たに構築し、関東エリアにおいてフィールド計測を開始した。平成12年度には、四国エリアにも広げてフィールド計測を継続しつつ、統計解析や画像処理などの工学的技法を応用してホタルの発光現象を解析・評価し、人の精神に安らぎを与える効果があると言われている1/fゆらぎを始めとする様々なゆらぎ現象について考察を進めた。また、各地で開催されているホタル鑑賞会などにおいても、感性工学に基づいた意見サンプルを充分に採取し、ホタルの発光現象が人の精神に及ぼす影響を評価した。その結果、ホタルの発光輝度変動・発光間隔変動・輝度差変動には、人の網膜が反応することの出来る中低周波数域において1/fゆらぎが存在することを初めて明らかにすることができた。これには、十分な癒し効果が期待できるものと考えられ、ホタルを活用したヒーリング機器や福祉機器への応用が十分に期待できることが予想された。また、ホタルの発光パターンが有する癒し効果については、感性工学的な立場からもその有効性を統計学的に確認することができた。したがって、本研究から得られた知見は、今後、ホタルを利用したヒーリング機器や福祉機器の開発を展開研究して行く上での基礎と成り得るものである。なお、一連の研究成果は、日本機械学会へ研究報告したばかりではなく、NHKテレビ・ラジオや日本工業新聞などのメディアなどにおいても報道された。
著者
稲垣 照美 穂積 訓
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本申請課題では, 要素技術として確立した知識を総合的に融合して, 住空間だけでなく福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等に, 自然や生物情報に基づいた(模した)サステイナブルかつ省エネルギーな快適(癒し)空間の設計指針を提供することを最終目標として研究を行ってきた. そのために, 昆虫類の活動特性や人の感性におよぼす影響を解析した. また, マイクロバブルの気泡発生に関わる物理特性を解明し, より細かくかつ大量の気泡発生について検討を行った. さらに, 風車を用いた発電におけるゆらぎ現象や, 風車の回転時に生じる不快音の調査を行って, より効率的かつ住環境に配慮した風車の配置・運転について提案した.
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等の福祉住環境の構築へ向けて,提唱した要素技術(マイクロバブルと多孔性媒体によるホタル水圏環境の改善技術,遮熱塗料を施工した通気層制御型外断熱技術,色香と人の感性に関する評価技術)を個別に検証するとともに,これら要素技術群を試験的に構築したネイチャー・テクノロジーに基づいたサステフィナブルな模擬環境空間へ取り込んでその効果を総合的に評価したものである.