著者
高木 幸子 平松 沙織 田中 章浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.283, pp.51-56, 2011-11-03
参考文献数
19

本研究の目的は,日本人による感情を含んだ表情と音声を組み合わせた刺激セットを作成するため,音声動画を収録し,評価実験を行うことであった.日本人では,基本6感情を表した表情・音声動画を21人のモデルで収録し,8名(男女各4名)を選出した.これらのうち,基本6感情の表現に焦点を当て,576(8(モデル数)×6(感情の種類)×4(発話内容)×3(繰り返し))の動画を,表情のみ・音声のみで被験者99名に呈示し,カテゴリカルな感情判断を求める評価実験を実施した.その結果,正答率は表情と音声の両方において喜び感情がもっとも高く,恐怖感情はもっとも低いことが示された.また,表情と音声の比較においては,概ね表情の方が音声よりも正答率が高いことが示唆された.さらに,恐怖感情については表情よりも音声において正答率が高いことが示唆された.本稿では評価実験における正答率および回答率を混同行列にまとめ,統計的分析結果についての解釈を行い,作成した刺激の信頼性を評価するとともに,日本人の表情と音声による感情理解の傾向を考察した.
著者
篠原 一之
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.S6-4, 2012

最近、自閉症や注意欠陥障害などの発達障害が増加していることや、疾患とは診断されない、衝動的暴力、ひきこもり等の思春期問題行動が増加していることから、対人関係の問題と化学物質の関連性が指摘されている。 しかし、対人関係能力の定量的評価法が確立されていないため、それら対人関係の病態・病因は明らかにされていない。つまり、これまでの対人関係能力の評価は、医師の問診・行動観察による診断や心理アンケートによる調査であり、定性的評価の域を出ず、定量的評価が行われてこなかったのである。 そこで、我々はPCベースの思春期以降の対人関係能力評価法を確立し、検証を行ってきた。①情動認知能力評価課題(モーフィングテクニックを用いて情動表出強度を変え、表情や音声から相手の情動を読み取る能力を測定)を用いて、思春期生徒の表情と音声による情動認知能力とダイオキシン受容体(AhR)遺伝子多型が相関していることを明らかにした。また同じ課題を用いて、自閉症群と健常群を比較したところ、自閉症群は音声による情動認知能力は低下するが、表情による情動認知能力はあまり低下してないことも示した。その他、②衝動性評価課題、③不安、孤独感、ネガティブ感情評価課題を用いて、それら項目と化学物質の影響を受けうるホルモンの濃度との相関等を見いだしている。 一方、化学物質の脳への毒性作用は、胎児期に起こると考えられているので、直接的に「化学物質の母体血中濃度や新生児体血中濃度」と「児の対人関係行動」の相関を調べるためには、乳幼児の対人関係能力を調べなければならない。我々は、乳幼児期の対人関係行動の定量評価を行うための手法(④共感性、⑤衝動性)を開発し(PC上のプログラムを用い、画像や音に対する乳児の反応を記録)、現在、コホート集団における母と子のPCB類濃度と乳児期の対人関係行動能力との因果関係について検討している。
著者
瓜生 幸太郎 花沢 俊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.227, pp.17-20, 2012-09-27
参考文献数
4

会話において人は,言語情報だけではなく,身振りや声,表情など非言語情報と含めて総合的に相手の意図を判断する.その中で,身振り手振り,うなずき,姿勢,表情といった非言語行動は大きな役割を持つ.我々は,他者から説明を受けた際に生じる被説明者の頭部領域の動きから被説明者の理解度の把握ができないかと考えた.本研究では,説明者と被説明者の動きの同調や動きの傾向から非言語行動による被説明者の理解を知るため,説明者と被説明者の動き情報の相互相関を用いて,定量的な被説明者の理解の把握及び指標の算出を試みた.
著者
相澤 侑斗 片桐 恭弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.238, pp.11-14, 2012-10-06
参考文献数
10

表情や環境などの視覚的情報や音声などの聴覚的情報を基に他者の心理的状態を推測し、他者とコミュニケーションを行なっている。特にヒトは霊長類現生種の約半数の内で眼裂横長度及び強膜露出度が最大であり、唯一強膜に色素がなく白色である[1]ことからもヒトの眼はコミュニケーションに特化した形状であることがわかる。しかしながら、この眼裂のみに着目した研究は少なく、小文ではこの眼裂の変化に着目し基本6表情の判別実験の結果からどのような傾向が見られたかを記述する。
著者
高木 幸子 田部井 賢一 HUIS IN'T VELD Elisabeth GELDER Beatrice de 田中 章浩
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-39, 2013

Information derived from facial and vocal nonverbal expressions plays an important role in social communication in the real and virtual worlds. In the present study, we investigated cultural differences between Japanese and Dutch participants in the multisensory perception of emotion. We used a face and voice that expressed incongruent emotions as stimuli and conducted two experiments. We presented either the face or voice in Experiment 1, and both the face and voice in Experiment 2. We found that both visual and auditory information were important for Japanese participants judging in-group stimuli, while visual information was more important for other combinations of participants and stimuli. Additionally, we showed that the in-group advantage provided by auditory information was higher in Japanese than Dutch participants. Our findings indicate that audio-visual integration of affective information is modulated by the perceiver's cultural background, and that there are cultural differences between in-group and out-group stimuli.
著者
宮澤 史穂 高木 幸子 田中 章浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.455, pp.149-154, 2013-03-04

本研究は,複雑な高次感情について概念構造(研究1)と,認知および表出(研究2)の2つの側面から検討を行った.研究1では質問紙を用い,高次感情にどの程度基本6感情が含まれているかを,それぞれ7段階で回答させた.研究2では参加者は,基本6感情を表す表情と音声を組み合わせて,指定された感情を最も適切に表すような発話動画を作成することを求められた.その結果,本研究で扱った6種類の高次感情は,概念構造と,認知および表出において共通した4つの基本感情の組み合わせに分類された.したがって本研究では,少なくとも一部の高次感情は,基本6感情の組み合わせによって説明できることが示唆された.
著者
森田 紗也子 中野 良樹
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学 (ISSN:1348527X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.9-16, 2013-03-31

The purpose of this study is to investigate whether the familiarity of a face affects on recognition of emotion which expressed by face and voice. In the experiment, participants observed a video image of one woman who has selected among four women, the two were known for the participant and the others were not. The woman expressed one of four emotion, happiness, surprise, sad and disgust, via face and voice. In these stimuli half of them expressed the same emotion from the face and the voice, while the other half expressed the different emotion between the two modalities. The observers were required to assess how much they felt the four emotions from the expression of that woman. Results suggested that the participant predominantly recognized surprise and disgust that were typical expression among the four emotions when they observed a familiar woman. Furthermore, the familiarity let an observer to proceed information and predominant modality, when the participants recognized happiness and sadness that were involved surprise and disgust respectively.
著者
髙木 幸子 平松 沙織 田中 章浩
出版者
Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.344-362, 2014

This study aims to further examine the cross-cultural differences in multisensory emo-<br>tion perception between Western and East Asian people. In this study, we recorded<br> the audiovisual stimulus video of Japanese actors saying neutral phrase with one of the<br> basic emotions. Then we conducted a validation experiment of the stimuli. In the first<br> part (facial expression), participants watched a silent video of actors and judged what<br> kind of emotion the actor is expressing by choosing among 6 options (i.e., happiness,<br>anger, disgust, sadness, surprise, and fear). In the second part (vocal expression), they<br> listened to the audio part of the same videos without video images while the task was<br> the same. We analyzed their categorization responses based on accuracy and confusion<br> matrix, and discussed the tendency of emotion perception by Japanese.
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-36, 2014-03

「毎度 ! 儲かってまっか 」,「えぇ、ぼちぼちでんなぁ」。大阪人のことばの文化, 話の本題へ入る前のこのようなあいさつの文化の背後にはその地域の人々にしか分からない伝えることばの奥深さがある。ことばを使って相手に自分の意図を伝える場合, 直接的もしくは間接的に伝える方法がある。話し手が字義通りに解釈することを聞き手に期待するのではなく, 言外の意味を読むことを聞き手に期待する間接的な表現の場合, ことばと真意との間にはギャップが生じる。間接的に自分の意図を相手に伝える場合では, 聞き手はそのことばの背後に隠された素顔の人間心理を顔の表情, 声のトーン, 身振り, 手振り等から読み取らなければならない。このような自分の意図するところを字義通りではなく間接的に相手に伝える活動は人間のみが発達させた手法である。そこでは, 時にメタファー・メトニミーのレトリックが用いられる。言外の意図を探ることを話し手が聞き手に求める人間心理の背後には話し手の置かれた状況と生まれ育った環境、経験からの背景知識が相互に関わりあっている。話し手が伝えたい真の意図を聞き手がうまく捉えられない場合に考えられることは認知主体間の主観性が大きく影響を及ぼしていることである。

1 0 0 0 OA さへづり草

著者
加藤雀庵
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻179,180,
著者
白井 真紀 佐藤 靖 藤川 真章 山田 弘 堀井 郁夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.89, 2006 (Released:2006-06-23)

【背景】近年,創薬初期でのminiaturizeされたげっ歯類のin vivo毒性試験が展開されてきている。我々は,ラットを用いたin vivo Mini-tox studyを探索研究早期のin vivo毒性スクリーニング試験として立ち上げ,毒性情報の乏しい新規化合物の多面的安全性評価を進めている(第31, 32回日本トキシコロジー学会)。今回,マウスを用いたバリデーション試験を示す。【材料および方法】動物:頚静脈カニュレーション(JVC)施術済みのICR マウス(8週齢,雄)を溶媒対照群,低用量群(L),高用量群(H)の各群に3例づつ振り分け,化合物Xを単回経口投与し,投与翌日にネンブタール麻酔下で放血,安楽殺し,剖検した。検査項目:体重(毎日),機能観察総合評価法(FOB),自発運動測定Motor Activity (MA),心拍数・血圧測定(HR,BP with BP Monitor MK-2000),薬物血中濃度測定,剖検,臓器重量測定および血液生化学的検査を行った。【結果および考察】JVCマウスを用いた今回のバリデーション試験において,ラットとほぼ同等の結果を得ることができた。創薬早期においては使用化合物量の少量化が求められること,また,薬効評価のための疾患モデルとしてマウスが用いられることも少なくない。今回,ラットに比べて,より少ない化合物量で毒性学的評価が可能であり,創薬早期のin vivo毒性スクリーニング試験としてマウスが有用となる場合があることが示唆された。
著者
藤井 千年 Chitoshi FUJII
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学人文科学部論集 = Otemae journal of humanities (ISSN:13462105)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.A105-A131, 2005

この小論は公共図書館におけるボランティア活動の現況を紹介し、更には図書館ボランティアを核とした図書館業務の民間への委託に関するさまざまな問題を考察しようとするものである。公教育の一端を担ってきた公立図書館が、NPOをはじめ民間の一企業に運営の全般を委託することへの危倶・反論も当然大きなものがある。図書館の本来の使命を再確認する中で、図書館の民間委託問題を考察するものである。図書館学課程における授業科目との関連としては「図書館経営論」をはじめ「図書館サービス論」「児童サービス論」「生涯学習概論」などが関係するものと思われる。
著者
吉川 理恵 藤川 真章 山本 利憲 堀井 郁夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.43, 2005 (Released:2005-06-08)

近年医薬品開発における安全性評価は、多種類の化合物を短期間に評価することが求められており、in vivoの毒性を反映するin vitroスクリーニング系の確立が必要とされている。前回,医薬品開発において問題視される肝毒性を標的とし、肝細胞における毒作用のスクリーニング系確立のためのbiomarker探索を目的として、初代培養肝細胞のプロテオミクス解析を行ない,ミトコンドリアに存在する代謝関連タンパク質や酸化ストレス関連タンパク質の変動を認めたことを報告した。今回,肝毒性を惹起することで知られている各種化合物の単回投与ラット肝細胞を用いて酸化ストレス関連タンパク質の免疫組織学的検出を試み,in vitro プロテオミクス解析の結果とin vivo病理組織学的および免疫組織学的検索結果を比較することによりin vitroおよびin vivo肝毒性の発現の相違を比較検討した。その結果,投与後24時間において,アセトアミノフェンおよびテトラサイクリン投与肝において,化合物に特徴的な肝毒性を再現することができた。また,全ての群において発現の増減が共通する酸化ストレス関連タンパクはみられなかったが,いずれの化合物を投与した肝細胞においても投与後6時間より何らかの酸化ストレス関連タンパクの増加を認めた。これらの酸化ストレス関連タンパク質はミトコンドリア呼吸の調整に関連して動くことが知られており,形態学的変化は軽微であっても,細胞の機能低下が起こっていることが明らかになった。