著者
大野 聡子
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージ特異的にIL-6系シグナルを亢進したmSOCS3-KOでは、アンジオテンシンIIによる大動脈の中膜損傷が解離に進展した。解離前の大動脈において、mSOCS3-KOでは野生型より細胞増殖・炎症応答関連遺伝子の発現が亢進していた。マクロファージ分化解析から炎症性M1比率の増加がmSOCS3-KOの解離の一因と考えられた。ヒト解離組織では、外膜や外側中膜でマクロファージのIL-6系シグナルと細胞増殖シグナルの亢進が見られた。以上より、マクロファージIL-6系シグナルの過剰活性が解離進展を起こすことが示された。今後は、マクロファージ分化制御に着目して解離病態のメカニズム解明を進める。
著者
青木 浩樹 吉村 耕一 吉田 恭子 田中 啓之
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージ特異的SOCS3ノックアウトではマクロファージ分化が炎症性M1優位となり解離発症が亢進した平滑筋細胞特異的SOCS3ノックアウトマウス(smSOCS3-KO)では、外膜コラーゲン線維の沈着および組織強度が亢進しており、解離発症が抑制された。ヒト解離組織では中膜外側にSTAT3の活性化を認め、外膜と接する部分の中膜および外膜にマクロファージ浸潤を認めた。STAT3活性化は中膜平滑筋細胞およびマクロファージの双方に認められた。解離発症前後にIL-6系シグナルが活性化し、その作用は細胞種特異的であることが明らかになった。
著者
平木 敬 笹田 耕一 定兼 邦彦 牧野 淳一郎 井田 茂 稲葉 真理
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究開発では、関数型オブジェクト指向言語であるRubyを拡張し、HPC向け高生産言語としてHPC Ruby言語を確立した。また、Rubyの特徴である計算環境の統合を生かし、HPC情報環境における新しいソフトウェア体系を実現した。HPC向け新言語の普及のため地球科学分野、天文分野、離散最適化分野においてRuby言語モデルを用いて問題定式化し、Rubyの科学技術計算位おける優位性を示した。分散実行環境の実証研究では、日米欧を100Gbpsインターネットで結び、その90%を高効率利用する通信方式を確立し、実験により実証した。これらの成果を総合し、Rubyを中心とした科学技術計算の体系を確立した。
著者
針原 伸二 清水 宏次
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

前年度は,主に現代人の歯を用いて,歯からDNAが抽出できるのか,また抽出したDNAからどのような遺伝子の解析が可能なのかについて,技術的に検討した.今年度は実際に江戸時代人骨の歯の試料を用いて,DNAの抽出と解析を試みた.青森県八戸市新井田遺跡から発掘された人骨から,異なる個体のものと判断できる36本の歯の試料を得た.前年度に,現代人の試料で試みた方法と同様に,それぞれの歯根部を切断して,破砕し,EDTA溶液中にてしばらく脱灰した後,プロテイナーゼ処理して,フェノール法にてDNAを抽出した.土中にて長時間を経た試料からの抽出であることもあり,DNAを定量分析したり,電気泳動での確認は不可能であったが,ミトコンドリアDNA(mtDNA)のPCR増幅は,36個体中30個体で可能であった.増幅したのは,mtDNAの中で長さの変異のみられる,領域V(non coding region V)を含む120塩基の部分である.2回の増幅により,予想される長さの断片を得ることが確認された.長さの変異は,9塩基対の欠失として報告されているが,今回増幅が認められた30個体中,3個体で増幅された断片が短く,欠失の変異があると考えられた.性別判定は,Y染色体特異的反復配列の部分をPCRで2回増幅し,断片の有無を確認した.36個体中,断片が検出されたのは10個体であった.X染色体中に1箇所しかない配列の増幅による,X染色体の検出は未だに成功していない.細胞中,多くのコピー数のあるmtDNAや,反復回数の多いY染色体特異的配列ではPCR増幅が可能であったが,ゲノム中に1箇所しかないDNA部分の増幅については,さらに技術的な改良が必要と思われる.
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、エボラウイルスなどの新興感染症は世界の限られた地域でしか認められていないが、昨今の急激な国際化による人の移動および動植物の輸出入に伴い、それらの疾病の原因病原体が他国に拡散する可能性が高まっている。さらに近年、エボラウイルスのような致死率の高い出血熱ウイルスがバイオテロリズムの手段として使用される危険性が高まっており、対策を講じる必要がある。しかし、ウイルス性出血熱に対する効果的な医療手段はほとんどなく、予防・治療法を開発する事が急務となってきた。これまでに申請者は、エボラウイルスZaire株の表面糖蛋白質(GP)分子はウイルスの感染性を中和する抗体および増強する抗体の両方の標的である事を証明した。そこで、エボラウイルスの病原性の強さと感染増強抗体との関わりを調べるために、病原性の非常に強いZaireウイルスと病原性の比較的弱いRestonウイルスの間で、感染増強抗体誘導能を比較した。ZaireウイルスとRestonウイルスGPに対するマウスの抗血清をそれぞれ作成し、血清中の感染増強活性および中和活性を調べたところ、中和活性には殆ど差が無かったのに対して、感染増強活性はZaireウイルスの血清の方が優位に高かった。これは、感染増強抗体が結合できる抗原決定基の種類と数が両ウイルスの間で異なることを示している。また、この感染増強活性は主に血清中のIgG2a抗体によるものであることが示唆された。以上の成績より、エボラウイルスのGP分子そのものの感染増強抗体誘導能がウイルスの病原性と関連があることが示唆された。(注)実際のエボラウイルスを用いた実験は、Heinz Feldmann博士の協力でカナダの国立研究施設Canadian Science Centre for Human and Animal Healthで行った。
著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 梅村 孝司 藤田 正一 前出 吉光 中里 幸和 高田 礼人 岡崎 克則 板倉 智敏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏胚の奨尿膜を超音波破砕し、その可溶性画分をニワトリの静脈内に注射した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって抑制されたことから、本因子は血液凝固に関与する物質と推定された。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーおよび塩析法によって病原性細胞因子を濃縮精製する系を確立し、粗精製致死因子をマウスに免疫して、モノクローナル抗体11クローンを作出した。ニワトリの鼻腔内にインフルエンザウイルス強毒株と弱毒株を実験感染させ、経過を追及した。強毒株はウイルス血症を起こしたが、弱毒株はウイルス血症を起こさなかった。すなわち、強毒株を接種したニワトリでは全身臓器の血管内皮細胞でウイルス増殖が起こり、血管炎を招来した。強毒株の標的が血管内皮細胞であることが明らかになった。損傷した血管内皮細胞から血液凝固因子ならびにサイトカインが放出された結果、汎発性血管内血液凝固を起こし、ニワトリを死に至らしめるものと結論した。この成績はインフルエンザウイルス感染鶏胚奨尿膜から抽出した細胞因子がニワトリに血管内凝固を起す事実と一致する。汎発性血管内血液凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たすものと考えられる。ウイルス感染症の治療法を確立するため、本致死因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。
著者
赤垣 友治
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

PEEK材料の焼付き挙動は、リング温度に強く依存することがわかった。良好な油膜が形成されていてもリング温度が増加し続ける場合、運転条件にかかわらず100℃を超えると摩擦係数が増加し始め、PEEKは120~130℃,PEEK複合材料は160~180℃を超えると焼付きに遷移した。焼付きによって、樹脂表面は溶融あるいは軟化するために、微細なロール状やプレート状摩耗粒子が特徴的に発生した。このように、発生する摩耗粒子形態から、樹脂軸受の運転状態を知ることができる。
著者
赤垣 友治 佐々木 義憲 中村 等
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

新素材「ガラス繊維強化PTFE系複合材料」の摩擦摩耗特性を広範囲な実験条件の下で評価し,メンテナンスフリー型軸受の実用化の可能性を検討した。得られた結果を要約すると次の通りである。【1】高速無潤滑下における摩擦摩耗特性:すべり速度が〜40m/sで摩擦係数は0.4〜0.45で最大となる。この時の摩擦面温度は〜130℃で,粘弾性変形抵抗が最大となる温度に一致する。10m/s以上では,〜0.3でほぼ一定である。比摩耗量は(1.5〜3.3)x10^<-6>(mm^3/Nm)である。摩耗面は微細な褐色酸化鉄粒子で覆われており,これらの保護作用により破局的な摩耗形態へ遷移しないと言える。このように高速無潤滑という条件下においても,破局的な摩耗を生じない,新規な特性を有していることがわかった。しかし,相手材がステンレス鋼や硬質クロムめっきなどの場合,複合材料の摩耗量は各々〜2倍,〜1000倍大きくなる。【2】油潤滑下の摩擦摩耗特性に及ぼすすべり速度と荷重の影響:金属製の軸受が焼き付きに遷移するような薄い油膜が形成されるような厳しい条件下においてもPTFE系複合材料は焼き付きに遷移せず低摩擦・低摩耗を維持した。高速高荷重下において,油煙が発生するような厳しい摩擦条件下においても焼き付きにき遷移せず,摩擦係数0.02〜0.04を維持した。この時,リング温度は100〜150℃,比摩耗量は10^<-6>(mm^3/Nm)のオーダーであった。【3】油潤滑下の摩擦摩耗特性に及ぼす相手面粗さの影響:金属製軸受や他の複合材料(PEEK)は,相手面粗さが油膜厚さより大きくなると,低摩擦係数(〜0.008)から高摩擦係数(0.06〜0.1)へ急激に遷移し,焼き付きの様相を示す。しかし,PTFE系複合材料は,相手面粗さ依存性が小さく,摩擦係数の上昇率は小さく,激しい焼き付きの様相を示さない。【4】摩耗粒子分析及び摩耗機構の解析:摩耗粒子発生量はきわめて少なく,レーザ回析式粒度分布測定装置では,ほとんど検出できなかった。唯一検出されたのは,粗いリングと摩擦した場合であった。粒径0.4μ程度の小さな粒子が僅かに検出された。このように,PTFE系複合材料の耐摩耗性が、摩耗粒子分析の観点からも実証された。以上の結果から,PTFE系複合材料は,実験条件を厳しくしても焼付きの様相を示さず,また,発生摩耗粒子数も非常に少なく,メンテナンスフリー軸受への応用の可能性が非常に高いと結論付けることができる。
著者
青山 夕貴子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

海鳥散布プロセスの検証〈付着メカニズムの解明〉海鳥散布プロセスの検証の一部として、種子の付着がおこるのは巣材に種子が含まれているからではないかという可能性に注目した。海鳥が巣材として用いる植物体に種子が含まれている場合、単に繁殖地にある植物種が付着するというだけでなく、海鳥の種による巣材選好性によって散布される植物種に違いが生じると考えられる。また巣材に接している時間は長いため歩行中の接触だけでは付着しない種子も付着する可能性がある。クロアシアホウドリ、オナガミズナギドリ、アナドリ、カツオドリの巣材を分析した結果、すべての海鳥種の巣から多様な植物種の種子が検出された。特に地上繁殖種であるクロアシアホウドリとカツオドリの巣には多様な植物種の種子が含まれており、捕獲調査でこれらの種の羽毛から検出されている植物種の種子はすべて巣材に含まれていることが分かった。一方オナガミズナギドリやアナドリのような巣穴繁殖種の巣材は比較的少数種の種子しか含まれていなかった。海鳥散布プロセスの検証〈海鳥による陸地利用〉海鳥が島間移動をすることを確かめるため、父島列島および母島列島周辺の島に海鳥がとまっているかどうかを海上から観察した。その結果、特にカツオドリは頻繁に繁殖地以外の陸地を利用していることが分かった。このことは、少なくともカツオドリは頻繁に島間移動を行っており、種子を島間散布する能力があることを示している。海洋等フロラ成立過程の再検討〈付着散布可能な種子の解明〉海鳥によって付着型種子散布をされる植物種をリストアップするため追加的な捕獲調査を行った結果、昨年度までの調査では検出されなかったケツメグサやタツノツメガヤの種子が見つかった。これらの種子は非常に小さいため昨年度までの調査では見落とされていた可能性がある。1.5~2mm以下の小型種子は海鳥の付着散布に非常に適していると考えられる。
著者
岩熊 成卓 川越 明史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Y系超伝導線材は扁平なテープ形状であり、従来の低温超伝導多芯線・撚線導体で常套手段であった低交流損失化のための多芯化、大電流容量化のための撚線導体化の手法は適用できない。本研究では、独自の概念に基づき、Y系超伝導線材の低磁化・低交流損失化、大電流容量化を図り、線材・導体の基本的電磁特性の評価と解明を行って、低周波から高周波に至るあらゆる応用に適応しうるY系高温超伝導線材・導体・巻線の基本的構成法を提示した。
著者
山口 雄仁 鈴木 昌和 川根 深 駒田 智彦 金堀 利洋
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

印刷ないしPDFの理数系文書をアクセシブルな電子書籍形式であるDAISYに変換するOCR技術の改良,理数系DAISY編集・閲覧ソフトウェアの開発,日本語理数系教材をきちんと取り扱えるようにDAISY形式を拡張・改良する研究などを行った。その結果,全盲・重度弱視・発達性読字障害など様々な形で視覚に障害を持つ生徒が,インクルーシブな教育環境で晴眼者と同じ科学教材を共有するための基礎が確立できた。
著者
山口 雄仁 藤芳 明生 渡辺 哲也 鈴木 昌和 相澤 彰子 川根 深 駒田 智彦 金堀 利洋
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,全盲・重度弱視・発達性読字障害など様々な形で視覚に障害を持つ児童・生徒が,インクルーシブな教育環境でデジタル教科書を容易に利用できるようにするため,電子書籍の国際標準規格EPUB3(DAISY4)に準拠するアクセシブルなデジタル教科書の標準モデルを確立した。それに基づいて既存のデジタル教科書に含まれる数式・化学式や図・グラフ・表・地図など特殊表記・2次元情報を,バリアフリー化するためのコンテンツ制作・編集システムと,多言語でそうしたコンテンツを利用するための閲覧システムなどを開発するとともに,わかりやすい触読図製作ツール,理数系文書理解支援技術などを研究した。
著者
佐野 仁美 小畑 郁男
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、学生が主体的に旋律を表現できる力を養うための教授法を開発することである。楽譜と音楽表現との間には客観的な法則性があることの例証を通して、楽譜には書かれていない音楽表現を楽譜から読み取る方法を一般理論化した。また、音楽表現を楽譜上に視覚化していく方法を提案するとともに、理論をもとに、教員養成課程でよく用いられる楽曲を多く取り上げて、音楽表現の方法を例示した。最終年度には、まとめとして、一般の音楽愛好家を対象とした『究極の読譜術――こころに響く演奏のために――』を出版した。
著者
稲永 由紀
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、大学立地政策の終焉と「地域主権」への政治的流れの中で、再び高等教育機関の地域配置と学生の地域移動実態に焦点を当て、公的統計分析、キャリア横断型データ(卒業生調査)分析、特定地域を単位とした総合的な地域配置・地域移動分析を通じて、人材養成機能面からみた大学立地政策終焉後の高等教育機関の地域的役割について解明することを目的とする。分析の結果、進学・卒業直後・現在に至って一度も地域移動を生じない者が一定数存在すること、特に女性は大卒であっても、地元定着志向が強い一方、私的領域におけるライフコースイベントの影響を大きく受ける傾向にあること、などが明らかになった。
著者
櫛田 直規 天内 和人 吉田 政司 丸山 延康 DAI Fengzhi WANG Hui YANG Guanghui
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

科研23653278により得られた主な知見は次のとおりである。(1)省政府は、企業(地方企業、海外企業)と学院の連携を促進させる役割を持っている.このため、教育資金の援助にも貢献している.(2)高等職業技術学院は,地域に特有な産業(地方企業、海外企業)に寄与するための学科を持っている。それらの企業は、長期インターンシップを行っている。(3)高等職業技術学院は二重学位の取得のためのプログラムを持っている.大学と連携し、職業を持ちながら学士コースを取得できるプログラムも数多くある。
著者
布村 育子 陣内 靖彦 坂本 建一郎
出版者
埼玉学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、教員採用システムを多角的に捉えることを目的としてスタートした。2 年間の研究期間の中で、教員採用が市場化している傾向を、主として教育委員会へのヒアリング調査から明らかにした。第二次世界大戦後、教員養成と教員採用は、民主主義国家としての新たなシステムに基づいて策定された。しかし,現在の教員採用システムは、教員採用試験の透明性と公平性が強調されるシステムに変化している。このような「市場化」ともいえる動向は、結果として教師の自律性を失わせる状況につながっていくと思われる。
著者
鈴木 崇彦 細井 義夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ラット新生児より採取した心筋細胞に2Gy、5Gy、10Gy、20Gy、および50GyのX線照射を行い、エンドセリン(ET)遺伝子mRNAの発現量について、RT-PCR法を用いて検討を行った。その結果、X線の10Gyから50Gyの線量において、照射2時間後より8時間後にかけてETmRNAの発現量の増加を認めた。定量的評価の結果、増加量は最大270%という結果が得られた。心筋細胞は50GyのX線照射によっても、24時間後の細胞生存率の低下は観察されず、培養心筋細胞はX線による細胞障害に対し強い抵抗性を示すことが分かった。次に、ETのmRNAの発現上昇が、ETペプチドの産生上昇につながるかどうかを検討するため、培養心筋細胞に20GyのX線を照射後、12時間、24時間後の培養液を採取し、その中のET分子についてELISA法を用いて定量を行った。しかし、培養液中には有意な量のET分子の産生は認めることが出来なかった。一方、X線照射後の培養細胞自身をET特異的抗体を用いた細胞免疫染色を行ったところ、わずかではあるがETの存在が認められた。このことは、X線照射によって、心筋細胞はETを産生するものの、その量は極めて少ないことが推察された。しかし、1個の細胞での産生量が少ないといっても、心筋の組織レベルになれば、血管を収縮させるのに十分量のETが産生されることが予想されたため、ラットの新生児胸部へのX線照射により、組織中にETの遺伝子およびペプチドの産生上昇が認められるかどうかについて実験を行った。ラットの3日齢の新生児の胸部に対し、20GyのX線を照射し、24時間後に心臓を摘出し、mRNAの発現をRT-PCRにて測定した。その結果、mRNAはやはり上昇するという結果が得られた。次に組織切片におけるETの産生について組織免疫染色を行ったところ、ETペプチドの産生は認めることができなかった。現時点では、細胞レベルならびに個体組織レベルではX線照射によりET遺伝子の発現上昇がおこることは間違いないと思われ、個体レベルでは、その後のさまざまな要因によりETペプチドの産生につながる可能性があると考えられる。ヒトの場合、X線照射後、心筋梗塞を引き起こす患者は約2割であり、また、発生までの時間経過も患者それぞれにばらつきがあるため、さらに検討が必要であるが、ETにより血管平滑筋の増殖が高まることを考えると、X線照射に先立って、ET受容体遮断薬を一定期間投与することが、平滑筋増殖を抑制し、放射線による心筋梗塞発生の予防につながる可能性が考えられる。
著者
山崎 その 伊多波 良雄 宮嶋 恒二
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、大学を教育・研究・社会サービス等を生産する主体と捉え、その活動を効率性の視点から定量的に分析した。さらに、効率性に影響を与える要因として大学の内部要因(大学の使命・計画、組織構造、構成員、ガバナンス)と外部要因(補助金制度・認証評価制度)との関係を考察した。分析の結果、外部要因は学長のリーダーシップに影響を与え、大学の理念・目標・計画の遂行にはマネジメント機能が影響を与えていることが明らかになった。一方、効率性は大学の理念・目標・計画の遂行に間接的ではあるがマイナスの影響を与えており、教育の質保証と経営の効率性を両立させるには、何らかの工夫が必要であることも明らかになった。
著者
河合 成雄
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、日本人学生に対してキャンパス内の国際的人材育成プログラムの効果を検証するという前半部分と、そこでの卒業生の活用の新しい在り方を探るという後半部分とからなる。具体的には20年以上にわたって実施されている「神戸大学国際学生交流シンポジウム」を材料に使い、かつての経験者へのインタビューを主に行った。長いスパンでみる調査は、短期のものとは異なり、人材育成の面やプログラムの評価の点で相違が称することもわかった。卒業生の活用は、人材育成の方法として新しい試みであったと言えよう。卒業生は現役学生のロールモデルとなり得たり、教員と学生の間でファシリテーターとして寄与したりすること等が確認された。