著者
釜 剛史 加藤 恵輔 広瀬 茂男
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2000, 2000

現在, 人道的対人地雷撤去問題に関して, センサ系について注目されているが, 感度・コスト・安全性を両立させることは困難とされている。我々はこれまでに, この問題を解決すべく, 新たに地雷探査に関する概念の提案を行い, 打撃推進型プローブによる地雷センサシステムの試験機を製作し, その基本動作実験を行ってきた。今回, これまでに得た知見を元に, センサ系動作の改良を行い, 新たな試作機を開発した。本報告では, その設計原理と基本動作実験に関する報告を行う。
著者
畑 辻明 関根 光雄 高久 洋 石戸 良治 大塚 栄子 上田 亨
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は重点領域研究を申請するに際し、その準備段階として我が国で核酸化学の研究が濃縮されている核酸化学シンポジウムの中からメンバーを選び、本年度に研究を実施した。その結果、9月におこなわれた核酸化学シンポジウム(札幌)をはじめとして各所で貴重な新しい事実が発表された。たとえば、核酸とタンパク質の相互作用を調べたものとして上田らは制限酵素BalII、Sau3AI、MboIを選びDNA鎖の酵素認識部位のチミンの代りに3種類のウラシルに変換し、制限酵素の認識の特異性を明らかにすることができた。一方、大塚らはいわゆる"ribozyme"の機能が発現するためにどのようなRNAの塩基配列が必要であるかを調べイモリサテライトRNAの切断部位を含む切断鎖と相補鎖の塩基配列を変化させたオリゴヌクレオチド(21量体)を化学合成し、どのような塩基配列が切断に重要であるかを明らかにすることができた。また、関根らはオリゴヌクレオチドの合成で通常用いられているトリチル型の保護基が酸性条件で除去された性質を変換し、アルカリ条件で除去できるトリチル型の保護基を開発した。畑らは、mRNAのキャップ構造を構築する反応形式を検討し、RNAフラグメントを効率よくキャップ化する方法を開発することができた。
著者
今 尚之 進藤 義郎 原口 征人 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.345-352, 1999

1987 (昭和62) 年に廃線となった旧国鉄士幌線の上士幌~十勝三股間には, 昭和10年代~30年代にかけて建設された大型のコンクリートアーチ橋梁など, 昭和戦前期北海道のローカル鉄道線建設工事の特徴的な土木構造物が数多く残存している. 本報告ではそれらの構造物の評価点とともに, 国鉄清算事業団の解散による撤去問題に対し, 地元で取り組まれ活動の経緯と特徴を報告し, さらに, 土木遺産を後世に伝えるために必要な保全や活用を支援する専門組織としての, 非営利団体 (NPO) の必要性について提案するものである.
著者
二宮 公紀
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.191-196, 1992
被引用文献数
1

江戸末期に薩摩藩の中心部に造られた甲突川五大石橋は、土木史跡として規模も優雅さも歴史的な価値の高さを誇っている。しかも現在においても、これらの石橋は鹿児島市民の生活道路の重要な一角を担っている。このため五大石橋には生活の利便性を優先させるために破壊または撤去するか、歴史的遺産として保存するかの問題が常に対立している。この問題は、近年特に鹿児島県民の注目を浴びるようになっている。<BR>ここでは、保存, 撤去問題の歴史的な経緯を調査し、これらに対する土木関係者の立場と、今後の保存に対する考察を加える。
著者
竹井 仁
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-54, 2000

顎関節症の治療は,その原因を明確にした上で実施することが大切である。理学療法の実施にあたっては,顎関節の解剖学や運動学を理解した上で評価が完全になされていることが重要となる。本論文では,欧米諸国の顎関節症の治療理論と実際をふまえながら,顎関節症の理学療法と生活指導について述べる。理学療法としては,物理療法の他に,マイオフェイシャルリリース,軟部組織モビライゼーション,アクティブ・ストレッチ,リラクセーション,下顎下制リリース,関節モビライゼーション,関節包内運動再教育訓練,筋力増強及び協調性訓練などについて概説する。
著者
朝倉 弘美 吉元 洋一 後東 尚樹 北村 敏乃
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100048-48100048, 2013

【はじめに、目的】 介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと,そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと,さらには軽減を目指すこと」と定義されている.また,平成18年度の介護保険法改正により,介護予防は,要介護状態の軽減や悪化の防止だけでなく,高齢者が地域で再び自立して生活することができるようにすることを目的に,要支援者に対し介護予防サービスを効果的に提供する予防給付と併せて,要支援・要介護状態等となる恐れのある高齢者を早期に把握し,水際で食い止める介護予防事業が重視されることとなった.一方,フラダンス(以下,フラ)は,ハワイアン音楽に合わせたゆったりした動きであるが,常に股関節・膝関節屈曲位での動きであり,体幹は正中位に保持したままで骨盤の回旋・傾斜運動が反復的に行われる.また,エアロビクスや太極拳と同様に有酸素運動であり,1曲(3~4分程度)の運動量は4~6METsであると報告されている.しかし,介護予防にフラを使った報告は少なく,今回,フラによる運動効果について検証したので報告する.【方法】 研究目的に賛同を得られた,60歳代・70歳代のフラ未経験女性8名(平均年齢66.1歳)を対象に,3か月間(週1回,計12回)のフラレッスンを実施し,実施前後の運動機能・動作能力等をE-SAS,開眼片足立ち時間,Functional Reach Test(以下,FR),握力,筋力等で比較した.なお,E-SASは質問紙であるため,回答の信頼性を確認するために改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R)を実施した.フラレッスンは1時間とし,ストレッチ・リズム体操・フラの基本の動きを使った筋力トレーニング・ダンスレッスンを実施した.なお,毎回,実施前に血圧を測定した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には書面及び口頭にて,研究目的,研究方法,研究期間,途中でのクレーム等の権利の確保,プライバシーの保護等について説明した後,書面による参加の同意を得た.なお,本研究は,専門学校星城大学リハビリテーション学院研究倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号120001).【結果】 1名が高血圧症で通院及び内服中であり,実施前の血圧測定で高血圧の症状が見られたため,その1名は除外し,対象は7名とした.E-SASでは,生活のひろがり,歩くチカラ,人とのつながりで5名の改善が認められた.HDS-Rでは全て25点以上であり,E-SASの結果の信頼性に問題はないと判断した.また,BMIは4名に減少が認められた.開眼片足立ち時間,FR,握力,Timed Up & Go Test(以下,TUG)では,6名の改善が認められた.下肢筋力では4~5名の改善が認められた.最終評価時の自由記載欄では,5名が楽しかったと回答しており,また,自分が想像していた以上に動けなかったと2名が回答した.【考察】 12回のフラレッスンにより,半数以上に筋力,バランス能力,柔軟性,歩行能力の改善が認められたことは特筆すべきことである.またE-SASにおいても5項目中3項目に改善が認められたことにより,フラは介護予防に有用な手段となり得ると考える.フラはパウスカートやフラワーレイなどのコスチュームでハワイアン音楽に合わせてゆったりと踊るため楽しく実施でき,その「楽しさ」が「運動の継続」に繋がると考える.さらに,発表会などに参加するなどの目標を持つことや,人前でダンスを披露することの「満足感・達成感」が,さらなる「運動の継続」に繋がると考える.介護予防には,定期的な,そして継続的な運動が重要であり,フラはその有効な手段であると考える.しかし,本研究では対象者数が少ないため,さらに対象者数を増やして検証する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 フラの運動効果を明らかにすることで,「フラによる介護予防プログラム」作成の一助となると考える.
著者
浦野 茂
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-16, 2014-07-31 (Released:2016-04-27)
参考文献数
29

本稿の目的は、保健医療分野においてなされてきたエスノメソドロジー研究の意義を評価する視点を設定することにある。この目的のもと本稿は、医学的診断とその社会的帰結をめぐる問題を念頭におきながら、イアン・ハッキングとマイケル・リンチとの間で交わされてきた議論を検討する。これを通じ、診断と病者の存在を考えるにあたり、診断概念の使用を形づくる具体的状況の解明が必要となることが示唆されることになる。
著者
木村 紗矢香 山田 如子 町田 綾子 杉浦 彩子 鳥羽 研二 神崎 恒一
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.264-265, 2013

本研究の目的は,高齢者の耳掃除の実態を調査し,CGAとの関係を検討することである.当院もの忘れセンターの外来患者116名を対象に耳掃除の有無,認知機能,基本的ADL,抑うつ,意欲,周辺症状,介護負担について調査した.その結果,28%の患者が1年以上耳掃除をしておらず,耳掃除をしていない患者は耳掃除をしている患者よりも認知機能,基本的ADL,意欲,周辺症状が有意に低下もしくは悪化していた.<br>
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.693, pp.72-75, 2007-12-10

「企業のIT力」を比較するために、「経営層との関係作り」や「IT投資の管理」「稼働しているシステムの機能」など8つの視点で各社の取り組みを評価した。ここでは柱ごとのランキング上位10社と主な質問内容、全体の傾向を紹介する。経営層との関係作り IT部門がどのように経営層との距離を縮めようとしているのかを聞いた。柱のトップは、セイコーエプソン。
著者
多ヶ谷 有子
出版者
関東学院大学文学部人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.128, pp.21-41, 2013

中世後期のヨーロッパに見られる宗教抒情詩には、天国への希求とともに地獄への恐怖が鮮やかに描かれている。地獄の恐怖はまた、天国の対比として、絵画や造形美術に表された。これらの絵画や造形美術は、文字を理解しない多くの庶民に、死後の審判、そして天国と地獄を強烈に印象付けた。一方、日本では、仏教の普及とともに、地獄の思想が受け入れられていった。仏教の地獄は六道の一つであり、輪廻転生の世界である。仏教では元来、輪廻転生を断ち切ることを理想としている。平安時代以降、浄土思想とともに、地獄・極楽の思想が人々の間に広まった。化野、紫野、鳥辺野、蓮台野など風葬地は、現世無常を教えるとともに、極楽を望み、地獄の恐怖をかきたて、仏教布教に影響を与えた。キリスト教世界の地獄と日本における仏教の地獄を対照させると、興味深い相違が見えてくる。キリスト教の地獄は永遠の罰であるが、日本の地獄は六道の一つであり、気の遠くなるような長い時間を経るとしても、永遠ではない。日本の地獄絵には、地獄の中に仏がいる。こどもを救う地蔵、女性を救う観音。仏教の地獄は期限があり、かつ、地獄からも救われる。その意味で、日本の地獄にはキリスト教の煉獄に当たる要因がある。キリスト教の地獄と煉獄、日本の仏教の地獄を比較検討したときに、そこには救済を希求する普遍的な人間性の一側面を見ることができる。本稿では、文学、絵画などを通して、キリスト教と日本仏教の天国(極楽)の対比にある地獄(煉獄)観についての一考察を行いたい。
著者
ムーアハウス H.F. 岡田 桂
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-12,129, 2001-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23

本稿は、過去30年にわたるヨーロッパのサッカー社会学の発展に関しての批判的な検討である。具体的には、サッカー社会学が「フーリガニズム」と暴力というテーマに支配され、その双方に関する研究が不完全、あるいは過剰であるということを問題にする。また、主として暴力に関する議論の焼き直しである「アイデンティティ」や「ファン性」といったものに対する最近の新たな強調と、「ファン」を若い男性サポーターと同義と見なすような誤りや多くの分析上の欠陥についても指摘する。これらの一般的な誤りを実証する上で、多様な文献を用いた考察を行う。本論文ではまた、イングランドの研究者が「フーリガニズム」と「アイデンティティ」に対する過度な強調姿勢をヨーロッパに広めたため、ヨーロッパのサッカー社会学がサッカーに関する他の多くの重要な問題点を見落とすことになった事実についても議論する。不適切な問題設定とお粗末な方法論によるビジネスとしてのサッカー論に関する新たな出版ラッシュとは裏腹に、サッカーにおける財政的な取り決め、ユース世代のトレーニングや育成、購買者によるサッカー関連商品の実際的な消費のされ方、女性とサッカーなどの問題は、重要でありながら関心が払われてこなかった。この論文は、サッカー社会学が社会分析の一分野としての重要性を増すためにも、これまでの伝統的なテーマから脱却すべきであることを示唆するものである。