著者
渡部 泰弘 平尾 和也 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会地方支部
雑誌
日本衛生動物学会地方支部大会要旨抄録集 第54回 日本衛生動物学会東日本支部大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
pp.3, 2003 (Released:2003-07-01)

先に、チャバネゴキブリは糞や死骸を通常は食べないことを報告した。マウス固形試料(餌)、ゴキブリ乾燥糞、乾燥ゴキブリ死骸を並べておいた場合、チャバネゴキブリは常に餌を選んだ。また、糞や死骸のみでは成虫の寿命が短く繁殖も悪化した。今回、クロゴキブリ成虫(雌雄、幼虫)を供試して同様な試験を試みた。クロゴキブリ雌雄及び幼虫は3種の試料(マウス固形餌、乾燥クロゴキブリ糞、クロゴキブリ乾燥死骸)が並置されたときは、常に餌を最も好み、次いで死骸を選んだ。自身の糞はほとんど消費されなかった。これは、チャバネゴキブリと同じ傾向であった。2種の組み合わせ(餌と糞、餌と死骸、糞と死骸)が並置された場合、クロゴキブリは、餌>糞、餌>死骸、糞<死骸を選択した。餌と水以外の試験区では、共食いが頻繁に観察された。水と餌では、40日までほとんど死亡しなかった。他方、水と糞、水と死骸では15日経過後から死亡する個体が見られた。
著者
金山 佐喜子 小野 昌彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.157-169, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、保健室登校をしていた12歳女児への教室登校支援について検討した。彼女の保健室登校は教室での困難な課題からの回避の機能をもち、そして彼女の回避行動は養護教諭のかかわりによって維持されてきたと分析された。個別支援計画のおもな内容は、困難な課題を克服するための目標設定行動や支援依頼行動の指導、教室登校計画と授業準備の支援、学校や家庭との連携(母親指導含む)であった。1か月にわたる支援の結果、彼女は教室に復帰した。追跡調査の結果、支援終了後も教室登校は継続していた。
著者
武田 一馬 川西 康友 平山 高嗣 出口 大輔 井手 一郎 村瀬 洋 柏野 邦夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.3, pp.58-69, 2023-03-01

本研究の目的は,多数の人物の視行動を分析することで,観衆が注目している複数の注目対象の位置の推定と,それらが注目されている度合(被注目度)を定量化することである.被注目度を推定する典型的な方法として,観衆の視線を推定し,その視線と物体の位置を対応付けることで,被注目度を推定することが考えられる.その場合,機器を設置するコストや手間をふまえると,観衆全体を一度に撮影した映像から視線を推定することが望ましい.しかし,このようにして撮影した映像から切り出した顔画像の解像度は観客ごとに撮影した場合と比べて小さく,視線推定精度は低い.そこで本論文では,低解像度でも比較的推定しやすい顔向きの時系列データを入力とし,これらを時空間的に統合することで,観衆が複数の注目対象を注視する状況下で注目対象の位置と被注目度を同時に推定する手法を提案する.提案手法の有効性を確認するため,アイドルのライブ公演を模したデータセットを構築し,注目対象の位置及び被注目度の推定精度を評価した.実験結果から,提案手法により比較手法と比べて被注目度の推定精度が向上することを確認した.
著者
大友 千絵子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.863-865, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
12

全米の医療大麻人口はおよそ260万人と推計されている。50州から構成される連邦国家であるアメリカ合衆国で、医療大麻(医療マリファナ)が合法とされている州はそのうち24州と連邦政府直轄地区であるワシントンD.C地区である。その先陣を切り、最も早く医療大麻が合法化されたのがカリフォルニア州(加州)だ。規制薬物法で最も規制の厳しいスケジュールIに分類されている医療大麻の現状を紹介する。
著者
Masaru Suzuki Takuro Shimbo Toshiharu Ikaga Shingo Hori
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.1144-1149, 2017-07-25 (Released:2017-07-25)
参考文献数
15
被引用文献数
18 23

Background:Bath-related sudden cardiac arrest frequently occurs in Japan, but the mortality data have not been sufficiently reported.Methods and Results:This prospective cross-sectional observational study was conducted in the Tokyo Metropolis, Saga Prefecture and Yamagata Prefecture between October 2012 and March 2013 (i.e., in winter). We investigated the data for all occurrences in these areas for which the emergency medical system needed to be activated because of an accident or acute illness related to bathing. Emergency personnel enrolled the event when activation of the emergency medical system was related to bathing. Of the 4,599 registered bath-related events, 1,527 (33%) were identified as bath-related cardiac arrest events. Crude mortality (no. deaths per 100,000) during the observational period was 10.0 in Tokyo, 11.6 in Yamagata and 8.5 in Saga. According to the mortality data for age and sex, the estimated number of bath-related deaths nationwide was 13,369 in winter, for the 6 months from October (95% CI: 10,862–16,887). Most cardiac arrest events occurred in tubs filled with water with the face submerged in the water. This suggests that drowning plays a crucial role in the etiology of such phenomena.Conclusions:The estimated nationwide number of deaths was 13,369 (95% CI: 10,862–16,887) in winter, for the 6 months from October. Crude mortality during the winter season was 10.0 in Tokyo, 11.6 in Yamagata and 8.5 in Saga.
著者
御崎 加代子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.4-14, 2022-12-20 (Released:2023-03-01)
参考文献数
17

本論文の目的は,イノベーション論の元祖とされるシュンペーターの企業者概念の特徴と意義を,彼が最も影響を受けた経済学者ワルラス,さらにはその源流に位置するJ.B. セーやカンティロンなど,フランスにおける企業者概念の歴史から考察し,現代のアントレプレナーシップ論の歴史的・思想的背景を明らかにすることである.またシュンペーターとよく比較されるカーズナーの企業家論についても,ワルラス批判という観点から考察する.
著者
仲井 まどか
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.693-701, 2013-10-01 (Released:2014-10-09)
参考文献数
15

昆虫に感染するウイルスが,害虫防除資材として使用されている.このような防除資材は,ウイルス資材 (Viral agent) あるいはウイルス殺虫剤 (Viral pesticide) と呼ばれている.ウイルス資材は,化学合成農薬と全く異なる作用機作をもち,世界各地で使用されている.本解説では,昆虫ウイルスがどのような生物学的特徴をもつのか,どのような特性が害虫防除資材として適しているのか,実際の具体例を示すとともに今後の展望について解説する.
著者
國崎 哲 牧野 圭祐
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.360-365, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
16

症例は71歳女性.56歳時に2型糖尿病と診断され食事療法と経口糖尿病薬にて治療されていた.入院2年前より全身に掻痒疹が出現し,近医皮膚科にてII群クラスのステロイド外用薬が開始となった.入院1カ月前までHbA1c 7 %前後で推移していたが,掻痒疹が増悪したため近医皮膚科に入院となる.入院中にI群クラスのステロイド外用薬へ変更となり,約3週間の入院加療後退院.退院翌日に当科再診した際に随時血糖803 mg/dLと高血糖を認めたため入院.入院精査の結果,1型糖尿病発症,悪性腫瘍,感染症等の関与は否定され,ステロイド外用薬により血糖悪化をきたしたものと診断した.ステロイド外用薬は局所投与では,吸収効率が低いため内臓への作用をきたすことは稀とされているが,本症例のように皮膚バリア機能の障害を認める症例に,高力価のステロイド外用薬を使用する際は,血糖悪化に注意する必要がある.
著者
山本 伸幸
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.295-302, 2022-10-01 (Released:2022-11-29)
参考文献数
47

明治期以降の都府県民有林行政における森林技術者任用の歴史的推移を検討することが本小論の目的である。第一に,都府県に近代林学教育を受けた森林技術者が初めて任用された明治期から現代に至るまでの全国的な動向の通史について,史資料を用いて明らかにした。都府県民有林行政における森林技術者の任用は明治30年代の水害対応を重要な契機とし,次第に各府県に浸透する。木炭を嚆矢とする府県営林産物検査機関設置の要員確保のため,1930年代後半に府県森林技術者は急増した。戦後1.1万人にまで達した都府県森林技術者は1951年森林法下の民有林行政を支えたが,21世紀以降急減し,現在に至る。第二に,近代化の端緒と言える各府県初の森林技術者の任用者および任用時期を史資料から割り出し,導入期の森林技術者任用の特徴について解明した。府県における初の森林技術者の氏名を特定し,全府県の任用に1895(明治32)から1912(明治45)年の18年間を要したこと,1890(明治23)年卒業者数が卓越していること等の知見を得た。
著者
冨岡 和子 梁 善雅 遠藤 金次
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.11-16, 1993-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

代表的な食肉および魚肉の加熱調理過程でのイノシン酸の量的変化に及ぼす昇温速度および食塩とショ糖の添加の影響について検討した。その結果は次のように要約できる.1) 急速 (7.5℃/min) または緩慢 (0.8℃/min) に昇温加熱した場合, 肉中のイノシン酸の分解率は肉の種類によって異なるだけでなく, 加熱速度依存性を示す両加熱速度におけるイノシン酸分解率の比も肉の種類によって異なった.2) 加熱過程での肉中のイノシン酸分解率と肉中のイノシン酸分解酵素活性との間に正の相関関係の存在することが認められた.3) 加熱過程での肉中のイノシン酸分解の加熱速度依存性と肉中のイノシン酸分解酵素の変性温度との間に正の相関関係の存在することが認められた.4) イノシン酸の分解はショ糖の濃度にほぼ比例して抑制されたが, 食塩の影響は肉の種類によって異なるだけでなく, 切り身のままとそれをすり潰したものとの間で異なった.
著者
冨安 昭彦 冨安 昭彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.157-168, 2005-09-30

本稿はデューク大学出版の季刊誌『レズビアン&ゲイ・スタディーズ』(GLQ)のトランスジェンダー特集号(1998年)で発表された、歴史学者ジョアン・マイエロウィッツの論文の翻訳である。[Meyerowitz, Joanne, "Sex Change and the Popular Press: Historical Notes on Transsexuality in the United States,1930-1955," GLQ: A Journal of Lesbian and Gay Studies, 4:2 (1998), pp.159-187.] マイエロウィッツはこの論文のなかで、従来のトランスセクシュアリティに関する歴史認識の見直しを主張する。そして、20世紀初めにヨーロッパで興った性別変更の医療化の過程、さらに、1930-50年代のアメリカで公表された性別変更の報道などの分析を通じて、当時のトランスジェンダーの人びとが、「読むこと」を通じて、自己のアイデンティティを構築し、再形成していった過程を明らかにしている。なお、マイエロウィッツは現在インディアナ大学の歴史学教授で、The Journal of American Historyの編集者でもある。主な編著書: How Sex Changed: A History of Transsexuality in the United States (Harvard UP, 2002); History and September 11th: Critical Perspectives on the Past (Temple UP, 2003)ほか。
著者
坂井 博通
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29-38, 1995-05-31 (Released:2017-09-12)

近年「丙午」研究の範囲が広がり, 1906年と1966年以外の「丙午」にも明かりが投げかけられると同時に1966年の「丙午」に関しては,ミクロデータを用いて出生間隔の研究もなされ始めた。しかし,今までの「丙午」研究は,次の3つの視点(1)「丙午」の影響が及んだ範囲, (2)「丙午」生まれの子ども側から見た特徴, (3)「丙午」が与えた社会人口学的影響,が欠けていると考えられるために, 1966年の「丙午」を例に検討を行った。「丙午」の影響が及んだ範囲に関しては,主に人口動態統計を用いて,「丙午」を含む前後20年の出生数,出生性比の動向を観察した結果, (1-1)在日韓国・朝鮮人や在日中国人, (1-2)外国在住の日本人, (1-3)非嫡出子に関しても「丙午」の影響が見られたことを確認し,「丙午」迷信の内容が,マスコミだけでなくパーソナルな伝播により普及した可能性が大きいことを示唆した。また,「丙午」の影響測定には,出生数と出生性比の両方を検討する必要を述べた。「丙午」生まれの子ども側から見た特徴に関しては,主に厚生省人口問題研究所が1985年に行った「昭和60年度 家族ライフコースと世帯構造変化に関する人口学的調査」(サンプル数7,708)の全国調査の分析により,他の年次生まれの子どもと比較して,「丙午」生まれの子どもは, (2-1)父方のおじ,おばは多くないが,母方のおじ,おばが多く,その母親の出産意欲に母親自身の兄弟姉妹数が正の影響を及ぼした可能性のあること, (2-2)特に第2子の場合,男女とも兄弟姉妹数が多いこと, (2-3)父がホワイトカラーの割合が大きく,迷信から自由な出産が多かった可能性があること, (2-4)「丙午」前後生まれの者も含めて「丙午」の迷信をよく知り,さらに,自分も「丙午であっても出産した」と答える割合が大きい,という知見を得た。「丙午」と関連する社会人口学的影響に関しては,人口動態統計と人口移動統計により,「丙午」の年において, (3-1)例年より低い3月の出生性比と例年より高い4月の出生性比, (3-2)低い移動性比, (3-3)女子の自殺の増加,自殺率の上昇, (3-4)母子世帯の増加と翌年の減少,「丙午」と翌年の性病罹患数の増加,を見出した。その原因に関しては,それぞれ,「丙午」と関連させて,「丙午」年度生まれの女子を忌避する届出操作,出産を控えた女子の人口移動の活発化,女性の価値の低下,家庭内禁欲に伴う家庭外性行動の活発化の観点から論じた。
著者
楯 誠
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-43, 2016-09-30 (Released:2019-04-25)
参考文献数
11

1名の無発語自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の幼児に対して、音声言語の獲得を目指した個別指導を行った。弁別・分類学習、模倣学習、音声による要求表出の般化を中心に、学習理論に基づくアプローチが取られた。就学までのほぼ1 年間の指導の結果、言語に関わる認知機能の向上や、個別指導の各場面における音声による要求表出の増加が確認された。一方、音声模倣は十分な結果が得られず、音声言語の獲得には至らなかった。それぞれの学習の成果と問題点を検討するとともに、今後の働きかけの考察がなされた。