著者
西田 由香 出口 佳奈絵 前田 朝美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.64-75, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
70

【目的】食事の摂取時刻とミネラル代謝の関連を調べることを目的に,同一の食事で夕食の摂取時刻のみ変化させた際の尿中ミネラル排泄量と尿排泄リズムへの影響を検討した。【方法】腎機能に異常のない若年成人女性10名を対象に,夕食を18:30に摂取する「早い夕食」と23:30に摂取する「遅い夕食」の2種類の摂食条件で採尿実験を実施した。実験前日17時以降の食事と飲水量を統一し,朝6:30から翌朝までの24時間尿を2時間(夜間は6時間)の間隔で全尿を採取した。尿中ナトリウム,カリウム,リン,カルシウム,マグネシウム,クレアチニン濃度を測定し,尿中ミネラル排泄の日内変動(クレアチニン補正値)と各食後6時間の尿中排泄量を検討した。【結果】遅い夕食では,翌朝6:30(24:30~翌朝6:30)におけるカリウムとリンの尿排泄(クレアチニン補正値)が早い夕食に比べて有意に低下した(カリウムp=0.002,リンp=0.006)。ナトリウムとカリウムでは,18:30から翌朝6:30までの12時間尿中排泄量が早い夕食より遅い夕食で有意に低値を示した(ナトリウムp=0.025,カリウムp=0.030)。カルシウムとマグネシウムの尿中排泄量は,摂食時刻に関係なく食後の経過時間に応じた尿排泄パターンを示した。【結論】夜遅い時間帯に夕食を摂取すると,ナトリウムとカリウムは尿排泄されにくく体内に蓄積しやすいことが示唆された。高血圧予防や腎不全の食事管理において,夕食時刻を遅くしないことが重要であると考えられる。
著者
岡崎 由佳子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.9-14, 2021 (Released:2021-02-27)
参考文献数
22

本研究では, 大腸内の細菌叢, 発酵産物, ムチン, 免疫グロブリンA (IgA) およびアルカリホスファターゼ (ALP) 等の因子を調節する食品因子について検討を行った。著者らは, 北海道産食品のユリネの研究をもとに, ユリネに含まれるグルコマンナン等の水溶性食物繊維や難消化性オリゴ糖が共通して, 大腸特異的にラットALP活性を増加させ, この作用に腸型ALP遺伝子 (IAP-I) の発現誘導が関与することを見出した。また, 難消化性糖質摂取による大腸ALP増加と栄養条件との関連性について検討を加え, オリゴ糖摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現上昇作用は, 摂取する脂質の種類により異なることを見出した。さらに, 難消化性糖質摂取による大腸ALP活性上昇は, これまでその増加作用が報告されていた糞中ムチン含量, Bifidobacterium spp.の割合および酪酸含量といった, 腸内環境の機能維持に関わる因子と正の相関関係にあることを明らかにし, 大腸ALP活性増加の大腸内環境機能維持への関与について考察した。
著者
河月 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.J-STAGE-2, pp.84-89, 2017-08-31 (Released:2017-09-06)
参考文献数
25

嗅覚障害は直接的には生死に関係が少ないことや,外傷性などでない場合は症状の発現や進行が一般的に緩徐であり自覚されにくいことが原因で放置される傾向にある。嗅覚機能は,食品の腐敗への気づきや調理に関与し,ガス漏れや煙など身の危険を察知するためにも重要である。特定の認知症では嗅覚関連領域に病理学的変化が生じるため嗅覚機能の低下をきたすと考えられている。特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症でその報告は多く,病期の初期に障害されることがわかっている。認知機能の低下も異常な食行動を招く要因であり,認知症患者における嗅覚機能の低下を早期に発見し,アプローチすることはその後の生活の質を維持するために極めて重要である。しかし,加齢に伴っても嗅覚機能が低下することが知られており,その鑑別を正確に行うことは,現行の嗅覚検査法では困難である。一般的には,認知症の嗅覚障害のほうが重度であると報告されているが,今後,認知症の嗅覚機能の低下をより早期に発見できる検査法や,認知症患者の嗅覚障害への治療法あるいは予防法の開発が期待される。
著者
風間 八宏
出版者
日経BP社 ; 1992-
雑誌
日経情報ストラテジー (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.50-52, 2012-10

筑波大学蹴球部から2012年4月、サッカーJリーグの有力チーム、川崎フロンターレの監督に転じた風間八宏氏。解説者としてお茶の間でも人気の理論派が、ついにプロクラブのリーダーとして歩み始めた。川崎では中村憲剛や稲本潤一らを擁すタレント集団に"風間イズム"を吹き込んでいる。「個」主導の組織づくりで、Jリーグ初優勝を目指す。
著者
藤田 一郎
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.147-153, 1992-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1

Barn owls localize sound most accurately among all animals. Studies on the brain mechanisms of their sound localization represent a case where many important questions in sensory physiology can be addressed in a straightforward way. This article will review our current understanding of how neurons in the owl's auditory system create their selectivity to position of sounds.
著者
徐 善水
出版者
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院
雑誌
国際広報メディア・観光学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.25, pp.39-56, 2017-10-25

Currently, numerous studies on Japanese prewar media events were merely focused on the perspectives of cultural and media management, rather than its propaganda function. However, propaganda function of Japanese prewar media events is not hard to be observed on the Japanese prewar event phenomena, for instance, the New Eight Views of Japan selection event held in 1927 (Showa 2 year) is a typically representative case. Combined with its historical background, based on the analysis on reports of media events from its host organizations (newspaper offices) at that time, in this paper, the propaganda function of media events during the Japanese prewar period has been confirmed and the study viewpoint in the relationship between media events and political propaganda has been extended to the Japanese prewar period.
著者
内薗 明裕 森山 一郎 山本 誠
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.238-243, 2014-11-20 (Released:2015-11-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

デキサメタゾンシペシル酸エステルは、デキサメタゾンに脂溶性官能基を導入することにより、ステロイド骨格が有する抗炎症作用を保持しつつ脂溶性を高めた薬剤であり、 2009 年に本剤を有効成分とした本邦唯一の 1 日 1 回投与が可能な鼻噴霧用粉末ステロイド製剤(エリザス®カプセル外用 400 μg)が発売された。発売時のカプセル製剤では、患者が投与ごとに専用噴霧器へのカプセルのセット、穴開け、カプセルの取り出しといったやや煩雑な操作を行う必要があり、カプセルと専用噴霧器をともに管理する手間も考えられた。これらの点を改善すべく 2012 年には定量噴霧式製剤が発売された。そこで今回は新たな定量噴霧式製剤とそれ以前のカプセル製剤との操作性を中心とした使用印象に関する比較アンケート調査を行った。また、処方する医師の立場においても噴霧器の操作性ならびに患者への噴霧指導のしやすさという点について比較アンケート調査を実施した。 噴霧器の使用感については、患者、医師ともに 73.7%が操作が簡単になったと回答した。 さらに、患者においては、効果が強く、刺激感が少ないという印象が多数を占め、63.1%の患者が継続使用を希望した。噴霧指導については、85.7%の医師がしやすいと回答した。以上の結果から、定量噴霧式製剤はカプセル製剤と同様の特性(効果の強さ、刺激感の少なさ)を保ちつつ、噴霧器としての操作性が向上しており、良好な服薬コンプライアンスの達成・維持に有用な剤型であると考えられた。
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
辻野 裕紀
出版者
朝鮮学会
雑誌
朝鮮学報 = Journal of the Academic Association of Koreanology in Japan (ISSN:05779766)
巻号頁・発行日
vol.240, pp.25-66, 2016-07

本稿は,辻野裕紀(2014b)に引き続き,現代朝鮮語における,若年層(20代)ソウル方言話者の〈n挿入〉の実現実態について,記述,分析するものである。本稿では,特に外来語,混種語,いわゆる「語+レベルの複合語」,句について論じた。まず,外来語においては,後行要素の頭音が〈n挿入〉実現如何に最も大きく関わっている。後行要素の頭音が/y/の場合は(n挿入〉が起きやすく,/i/の場合は〈n挿入〉がほとんど起きない。また,先行要素の末音や語構造(枝分かれ構造),語の長さなども(n挿入〉実現如何に関与している。混種語においては,後行要素の語種が〈n挿入〉実現如何を統べる。つまり,後行要素が固有語であれば固有語合成語仁漢字語であれば漢字語合成語と,外来語であれば外来語合成語と類似した振る舞いをする。いわゆる「語+レベルの複合語」でも,後行要素の頭音が〈n挿入〉実現如何に最も大きく関わっている。語を問わず休止を志向するインフォーマントがいた点が他の漢字語合成語との違いだが必ず休止を伴わなければならない日本語の語+レベルの複合語とは性質が大きく異なる。句については,語の場合と異なり,発話速度や句の長さ,助詞の介在などの影響で休止実現率が高い句が散見されるものの全体的な傾向としては,後行要素の頭音が〈n挿入〉の実現如何に最も大きく関与するなど,語の場合とよく似た傾向が観察された。以上の結果は,いずれも辻野裕紀(2014b)で明らかにした固有語や漢字語の〈n挿入〉実現様相と類似している。
著者
堀向 健太
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.316-325, 2019

<p> アトピー性皮膚炎 (AD) が他のアレルギー疾患の発症リスクを上げることが明らかになってきたため, その発症予防と増悪予防が注目されている. そして皮膚バリア保護により経皮感作を防ぐという観点から, 新生児期からの保湿剤定期塗布によりAD発症リスクを低下させるという報告が増えてきている. しかし, 保湿剤の定期塗布のみでAD以外のアレルギー疾患も防ぐことができるかに関しては, 大規模介入試験の結果を待つ必要がある. 一方, 経皮感作は 「経湿疹感作」 ともとらえることができ, 皮膚の炎症病変に対する早期介入試験が感作を予防するかを検討するために現在進行中である. さらに積極的に経口免疫寛容を誘導する目的で, 離乳食早期導入による食物アレルギー発症予防の検討が報告されるようになった. しかしそこでも, 皮膚の治療を並行して行う必要性があることが判明してきている. 最近, アレルギー疾患発症予防に対し衛生仮説やビタミンD仮説に関しても知見が増えてきており, 多面的に考えていく必要性が出てきている. </p>
著者
江良 智美
出版者
帝京平成大学
雑誌
帝京平成大学紀要 = Journal of Teikyo Heisei University (ISSN:13415182)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.27-34, 2021-03

Let's Go Young , which held a prominent place in the history of popular music from the 1970s to the 1980s, provides a valuable record for learning about the trends of the times, from the clothing worn by the different weekly guest performers, hosts, and regular performers, and from their communication with the audience. The relationship between fashion and music in television media runs deep, and it could be argued that fashionable outfits on teen-oriented programs led to an understanding of the reception of new music. This study analyzes the expression methods in the presentation of foreign music as cultural knowledge on the third season of Let's Go Young , focusing on the stylistic expression demonstrated by the performers' outfits.
著者
菊池 良和 梅﨑 俊郎 安達 一雄 山口 優実 佐藤 伸宏 小宗 静男
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.333-337, 2014 (Released:2015-02-05)
参考文献数
12

思春期以降の音声言語外来において「声がつまる」「電話で最初の言葉がうまく言えない」という吃音らしい訴えは,吃音症だけに見られるものではない.成人で吃音と鑑別すべき疾患として,過緊張性発声障害や内転型痙攣性発声障害が挙げられる.本研究の目的は,吃音症と発声障害を問診上で鑑別する手掛かりを探すことである.2011年3月から2013年5月まで吃音らしい訴えで九州大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科に来院した患者のうち,病歴・音声・喉頭内視鏡所見で10歳以上の吃音症と診断した46名(平均25.2歳,男女比=3.6:1)(吃音群)と,過緊張性発声障害,内転型痙攣性発声障害の診断にて,問診表を取得できた成人12名(平均39.2歳,男女比=1:3)(発声障害群)との問診上の特徴を比較した.その結果,「声がつまるなど吃音らしい訴えに気づいた年齢」が吃音群で平均8歳,発声障害群は平均34歳と吃音群で有意に低年齢だった.また,吃音群は「言葉がつっかえることを他人に知られたくない」「予期不安がある」「苦手な言葉を置き換える」「独り言ではすらすらしゃべれる」「歌ではつっかえない」「からかい・いじめを受けた」「話し方のアドバイスを受けた」「つっかえるのでできないことがある」などの項目が,発声障害群より有意に多かった.吃音様の訴えでも発声障害と診断されることもあり,音声・喉頭内視鏡だけではなく,詳しい問診をすることが,吃音症と発声障害の鑑別に有効である.
著者
かりまた しげひさ
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.69-82, 2011-10-01

琉球方言にひろくみられる助辞=duをふくむ文は、=duに呼応して連体形と同音形式の述語が文末にあらわれることから、おおくの研究者が=duを古代日本語のゾとおなじ係助辞とよび、琉球方言に係り結びがあると主張してきた。琉球方言には=duとおなじ文法的な特徴をもつ=ga、=nu、=kuse:がある。内間(1985)は那覇方言の=gaを、仲宗根(1983)は今帰仁方言の=kuse:と=gaを、平澤(1985)は宮古方言の=nu、=gaを係助辞とみなした。本稿は那覇方言、今帰仁方言、宮古方言、八重山方言の=du、=ga、=kuse:、=nuをふくむ文の通達的なタイプと文末述語を検討し、当該助辞が特定の活用形と必ずしも呼応していないこと、当該助辞の機能が焦点化であることをのべる。