著者
山田 昭彦
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.4_9-4_17, 2010-04-01 (Released:2010-11-01)
参考文献数
25

中嶋章は1930年代に独自にブール代数に相当する理論を構築し,スイッチング理論の研究を行ってリレー回路設計に適用した.1935年にド・モルガンの法則を含むリレー回路構成理論を発表し,1936年には榛澤正男と共著で“+”と“×”の記号を用いてスイッチング回路を論理式で表し,この変換及び簡単化を含むスイッチング理論を発表した.Claude E. Shannon が同様の論文を発表したのは1938年である.中嶋の生誕100年にあたる2008年にフィンランドのTampere University of Technology より中嶋の全英文論文を収録した覆刻本が出版された.
著者
久志本 鉄平 新田 理枝
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.17-23, 2023-04-25 (Released:2023-05-11)
参考文献数
36

ペンギンの胃内から見つかる石の役割については,潜水時の浮力調節のため,あるいは餌の消化を助けるために飲み込む,もしくは絶食への適応ではないかと考えられてきた.本研究では,胃の中にある石の役割を明らかにするため,飼育下のフンボルトペンギンが小石を飲む行動と吐き戻しする行動を観察し,産卵との関連を調べた.その結果,産卵期のメスにのみ小石を飲み込む行動が確認され,その多くが卵殻形成時期に集中していた.このことから,ペンギンの胃内から見つかる石は,メスが卵殻形成に必要なカルシウムを補給しようとして,誤って小石を飲み込んでいる可能性が考えられ,これまで考えられているような浮力調節や消化や絶食時の適応のために胃石を持つ必要性は低いのではないかと考えられた.
著者
森川 政人 小林 達明 相澤 章仁
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.103-108, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
2

学校プール内に生息している水生昆虫相の種,個体数について,東京都及び千葉県内の 4 地域計 32 校において,2007 年 5 月~2008 年 5 月までの使用期間外に各校月 1 回程度調査を実施した。調査の結果を TWINSPAN で解析したところ,東京都と千葉県が異なるグループに分類された。ヒメゲンゴロウ,コシマゲンゴロウ,ミズカマキリ,ショウジョウトンボは東京都の学校プールで確認することができなかった。種数に差が確認された要因として,種の供給源となる学校プール周辺の水田面積や周囲の樹木の有無などが考えられた。主にトンボ目の個体数の差に影響を与える要因としては,学校プール周囲の植生から供給される落葉である可能性が示唆された。
著者
二宮 祐 小島 佐恵子 児島 功和 小山 治 浜島 幸司
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-25, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
14

本論の目的は,「第三の領域」と呼ばれる分野で働く新しい専門職のキャリアと職務に関する意識に関して,ファカルティ・ディベロッパー,キャリア支援・教育担当者,インスティテューショナル・リサーチ担当者,リサーチ・アドミニストレーション担当者,産官学連携コーディネート担当者を事例として取り上げて,聞き取り調査の結果を分析することによって明らかにすることである。各分野で概ね共通して認識されていることは次の通りである。任期付雇用のために,必ずしも十分には目標を達成することができず,職能形成にも課題がある。また,求められる知識・スキルが多様であること,専門とは異なる仕事を任されること,そもそも仕事の目標さえ曖昧であったりすることゆえに,何が評価の対象とされているのかがわからず,専門職としてのアイデンティティが揺さぶられている。他方,裁量を発揮することは可能であり,やりがいを感じることもある。
著者
山田 哲夫 船橋 亮 村山 鐵郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.554-559, 2005-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
14

(目的) 線維筋痛症 (FM) は米国において間質性膀胱炎 (IC) の約10%に合併するとされているが本邦ではほとんど知られていない. 我々も米国とほぼ同様な割合で合併例を経験した. 合併例の実情と意義について報告する.(患者と方法) 患者はICに関する1987年 National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases (NIDDK) とFMに関する American College of Rheumatology (ACR) の診断基準を満たした過去4年間における30例で, これらの臨床所見の検討を行った.(結果) ICの symptom index と problem index の平均は各々14.9と14.6で, ACRの診断基準における圧痛点の平均は16ヵ所であった. 患者全体で9ヵ所の診療科を受診し, 患者の38%が精神病でないにも関わらず精神科受診を余儀無くされていた. 両疾患は疹痛閾値の低下やび漫性の痛み, 症状の増悪因子, 治療法などに類似点が認められた.(結論) ICの約11%がFMを合併し, 合併例は病状を理解されず全身の激しい痛みに耐えていた. ICとFM患者の臨床所見において共通点が多く認められた.
著者
佐藤 元
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_63-2_78, 2005 (Released:2010-02-02)
参考文献数
77

公衆衛生政策は私的権利の制限(私権制限)を伴うことが多い。私権に関わる例としては,公衆衛生情報と個人のプライバシー,コミュニケーション政策と表現の自由,検疫・隔離や強制的入院と個人の自律や自由,安全衛生基準と経済活動の自由などの間に見られる対立が挙げられる。国家・自治体は公共の福祉のために私権を正当に制限し得るとされるが,公衆衛生領域における政府の責務と権限が拡大する中,人権保護に関する議論を整理し制度を整えることは重要な課題である。本稿は,現代の米国における議論を総括紹介し,今後の議論に資すことを目的とした。公衆衛生政策を人権保護の観点から検討する際には,正当性,合理性,経済的負担と効率,私権制限の程度,公平性,政策相互の整合性が系統的に評価されることが望ましい。また,こうした評価を制度化し実効性のあるものとするためには,正当な法的手続きと政治過程の透明性確保が重要と考えられる。前者は,実質的正当性と形式的正当性の両者からなる。
著者
JongEun Yim
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.239, no.3, pp.243-249, 2016 (Released:2016-07-16)
参考文献数
60
被引用文献数
38 87

In modern society, fierce competition and socioeconomic interaction stress the quality of life, causing a negative influence on a person’s mental health. Laughter is a positive sensation, and seems to be a useful and healthy way to overcome stress. Laughter therapy is a kind of cognitive-behavioral therapies that could make physical, psychological, and social relationships healthy, ultimately improving the quality of life. Laughter therapy, as a non-pharmacological, alternative treatment, has a positive effect on the mental health and the immune system. In addition, laughter therapy does not require specialized preparations, such as suitable facilities and equipment, and it is easily accessible and acceptable. For these reasons, the medical community has taken notice and attempted to include laughter therapy to more traditional therapies. Decreasing stress-making hormones found in the blood, laughter can mitigate the effects of stress. Laughter decreases serum levels of cortisol, epinephrine, growth hormone, and 3,4-dihydrophenylacetic acid (a major dopamine catabolite), indicating a reversal of the stress response. Depression is a disease, where neurotransmitters in the brain, such as norepinephrine, dopamine, and serotonin, are reduced, and there is something wrong in the mood control circuit of the brain. Laughter can alter dopamine and serotonin activity. Furthermore, endorphins secreted by laughter can help when people are uncomfortable or in a depressed mood. Laughter therapy is a noninvasive and non-pharmacological alternative treatment for stress and depression, representative cases that have a negative influence on mental health. In conclusion, laughter therapy is effective and scientifically supported as a single or adjuvant therapy.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエルグリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2998-3011, 2002-10-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームおよびゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を演じてきた.認知研究の題材にゲームを用いることの利点は,ゲームが良定義問題で対戦による評価が容易なことである.チェスで最もよく知られた認知実験は局面の記憶に関するものでDe Grootによって行われた.この研究を継いだSimonとChaseはチャンクという概念を用いてエキスパートの認知能力を説明した.チャンクは一種の情報のかたまりで,チェスでいうとチェス盤上の典型的な駒の配置パターンのかたまりをチャンクと呼んでいる.彼らは強いプレイヤは弱いプレイヤよりも広い配置パターンをチャンクとして記憶していることを示した.将棋の認知研究の第1歩として,我々はまずチェスで行われた認知実験を追試してみることにした.チェスと将棋には認識の点からいくつかの違いがあるので,この追試実験を一度は実施することが必要だと考えた.本論文では将棋を対象とした時間無制限と時間制限の記憶実験を行った.強いプレイヤが弱いプレイヤより成績が良いこと,すなわち広い配置パターンをチャンクとして記憶しているというチェスとほぼ同様の結果が得られた.
著者
加藤 貴彦 藤原 悠基 中下 千尋 盧 渓 久田 文 宮崎 航 東 賢一 谷川 真理 内山 巌雄 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.94-99, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

Multiple chemical sensitivity (MCS) is an acquired chronic disorder characterized by nonspecific symptoms in multiple organ systems associated with exposure to low-level chemicals. Diagnosis of MCS can be difficult because of the inability to assess the causal relationship between exposure and symptoms. No standardized objective measures for the identification of MCS and no precise definition of this disorder have been established. Recent technological advances in mass spectrometry have significantly improved our capacity to obtain more data from each biological sample. Metabolomics comprises the methods and techniques that are used to determine the small-level molecules in biofluids and tissues. The metabolomic profile—the metabolome—has multiple applications in many biological sciences, including the development of new diagnostic tools for medicine. We performed metabolomics to detect the difference between 9 patients with MCS and 9 controls. We identified 183 substances whose levels were beyond the normal detection limit. The most prominent differences included significant increases in the levels of both hexanoic acid and pelargonic acid, and also a significant decrease in the level of acetylcarnitine in patients with MCS. In conclusion, using metabolomics analysis, we uncovered a hitherto unrecognized alteration in the levels of metabolites in MCS. These changes may have important biological implications and may have a significant potential for use as biomarkers.

39 0 0 0 OA 秘書類纂

著者
伊藤博文 編
出版者
秘書類纂刊行会
巻号頁・発行日
vol.帝室制度資料 上巻, 1936
著者
阿部 恵子 須山 祐之 川上 裕司 柳 宇 奥田 舜二 大塚 哲郎
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.69-73, 2007-06-01 (Released:2012-10-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1

空気清浄機の除菌性能評価法を策定するために必要な基礎データを得ることを目的とした予備実験を試みた。供試微生物散布用の試験室を作製し, その試験室の空気中に浮遊させる微生物としてwallemia sebiおよびPenicillium freguentansの胞子を用意し, 胞子の散布にネブライザ法および超音波法を適用し, 散布胞子の採取にゼラチンフィルタ法を用いた。ネブライザ法と超音波法の何れの方法でも, 試験室内に胞子を散布することができた。市販の空気清浄機の除菌性能 (空中浮遊菌除去性能) の評価試験を試みたところ, フィルタによる空中浮遊生菌濃度の低減効果が認められたが, クラスタイオンによる低減効果は認められなかった。
著者
寺田 喜平 平賀 由美子 河野 祥二 片岡 直樹
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.908-912, 1995-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
17 20

水痘ワクチンによる高齢者の帯状庖疹の予防効果について検討するために, 水痘患者を多く診察し特異細胞性免疫が賦活化されている小児科医の帯状疱疹発症率を調べた. また, 帯状庖疹と診断された患者の水痘患者との接触歴や家族構成を調べ, 水痘患者や小児との接触が多いかを調べた.500名の小児科および内科小児科を標榜する50歳と60歳代の医師にアンケート調査し, 344名の有効解答を得た. 50歳および60歳代の帯状庖疹発症率はそれぞれ65.2,158.2/100,000 person-yearsであり, 他の報告の約1/2から1/8と低かった. 61名の基礎疾患を持たない帯状庖疹の患者では, 発症前4名だけが水痘患者と接触していたが家族内接触はなかった. また50歳以上の40名の患者のうち7名だけが14歳以下の子供と同居し, 23名は1世帯家族で孫や子供と同居しておらず, 子供との接触が少ないため水痘のブースターの機会が少なかったと思われた.以上より, 水痘ワクチン投与によるブースター効果で高齢者の帯状疱疹を予防できる可能性があると思われた.
著者
白木 公康
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.18-30, 2021 (Released:2021-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

Avigan (favipiravir) has been developed as an anti-influenza drug and is attracting attention as an anti-COVID-19 drug, because Avigan has exhibited therapeutic efficacy against new coronavirus (COVID-19) infections. This article reviews the development of Avigan as an anti-influenza drug, its mode of action as an anti-RNA-dependent RNA polymerase drug, toxicity to embryogenesis and teratogenicity, and its activity to COVID-19. The epidemic of the new coronavirus infection began, and masks, hand washing, and self-restraint were continued to prevent it. As a result, infection control measures have had the effect of reducing the epidemics of various infectious diseases except for some. This seems to be important information for implementing transplantation medicine.

39 0 0 0 OA 画本虫ゑらみ

著者
喜多川歌麿//筆,宿屋飯盛<石川雅望>//撰
出版者
蔦屋重三郎
巻号頁・発行日
1788

歌麿の狂歌絵本のうちでも特に評価が高く、代表作とされる。全15図。1図に虫2種類を描きそれを詠んだ狂歌2首を掲げる。初刷りは2冊本。後刷りも含め異版が多い。展示本は元来は跋である歌麿の師鳥山石燕(1711-88)の文をはじめに置く。
著者
Kimiko Tomioka Midori Shima Keigo Saeki
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
Environmental Health and Preventive Medicine (ISSN:1342078X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.18, 2022 (Released:2022-05-03)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Background: Community health activities by public health nurses (PHNs) are known to improve lifestyle habits of local residents, and may encourage the practice of infectious disease prevention behaviors during the COVID-19 pandemic. We investigated the association between prefecture-level COVID-19 incidence rate and the number of PHNs per population in Japan, by the COVID-19 variant type.Methods: Our data were based on government surveys where prefectural-level data are accessible to the public. The outcome variable was the COVID-19 incidence rate (i.e., the cumulative number of COVID-19 cases per 100,000 population for each variant type in 47 prefectures). The explanatory variable was the number of PHNs per 100,000 population by prefecture. Covariates included socioeconomic factors, regional characteristics, healthcare resources, and health behaviors. The generalized estimating equations of the multivariable Poisson regression models were used to estimate adjusted incidence rate ratio (IRR) and 95% confidence interval (CI) for the COVID-19 cases. We performed stratified analyses by variant type (i.e., wild type, alpha variant, and delta variant).Results: A total of 1,705,224 confirmed COVID-19 cases (1351.6 per 100,000 population) in Japan were reported as of September 30, 2021. The number of PHNs per 100,000 population in Japan was 41.9. Multivariable Poisson regression models showed that a lower number of PHNs per population was associated with higher IRR of COVID-19. Among all COVID-19 cases, compared to the highest quintile group of the number of PHNs per population, the adjusted IRR of the lowest quintile group was consistently significant in the models adjusting for socioeconomic factors (IRR: 3.76, 95% CI: 2.55–5.54), regional characteristics (1.73, 1.28–2.34), healthcare resources (3.88, 2.45–6.16), and health behaviors (2.17, 1.39–3.37). These significant associations were unaffected by the variant type of COVID-19.Conclusion: We found that the COVID-19 incidence rate was higher in prefectures with fewer PHNs per population, regardless of the COVID-19 variant type. By increasing the number of PHNs, it may be possible to contain the spread of COVID-19 in Japan and provide an effective human resource to combat emerging infectious diseases in the future.