著者
加藤 陽子
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,学生生活への不適応を抑止する要因を「登校行動持続要因の解明」という新しい発想を用いて分析・検討し,不適応への予防的アプローチを探ることを目的とした。分析の結果,次のことが明らかとなった。(1)大学生の登校行動持続要因は,周囲との関係への配慮,自己の可能性への期待,社会,金銭に関する理由が多い,(2)積極的対消極的理由と情緒的対道具的理由の2軸がある,(3)大半の学生は登校行動持続要因を複数保有している,(4) 複数保有する登校行動持続要因のうち重要だと位置づける要因が1つでもある学生は,講義に出席しやすいものの,それは登校行動の促進や登校忌避感情の抑制には影響しない,(5)登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすい。
著者
常木 和日子
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本年度は魚類特有の脳室周囲器官である血管嚢の系統発生を調べた. 魚類のうちでも特に種数が多く多様化の著るしい真骨魚を主な対象とし, これらの脳の連続切片を作成した. 固定した真骨魚はアナワナ目からフグ目にいたる約2百種である. まだすべての種で組織標本の作成を完了したわけではないが, ほぼ全体像が明らかになった.真骨魚中, 最も原始的とされる淡水性のアロワナ目では, ほとんどの種で血管嚢が欠如または退化していた. ウナギ目, ニシン目, サケ目では調べたほとんどの種で血管嚢はよく発達していた. コイ目, カラシン目, ナマズ目, ジムノトス目の骨鰾類4目では, 血管嚢は全くないものからよく発達しているものまで様々であった. しかし, 概して発達の悪いものが多かった. 一方, サヨリ, サンマなどを含むキプリノドン目およびトウゴロウイワシ目では, 血管嚢は調べたすべての種で欠如していた. このグループは淡水魚, 汽水魚および二次的に外洋表層に進出した仲間を含んでいる. 棘魚類ではフサカサゴ目, スズキ目, カレイ目, フグ目などほとんどのグループで血管嚢はよく発達していた. ただし淡水魚, 汽水魚を含むハゼ科, グラミィ科の一部で血管嚢の退化傾向がみられた.以上の結果から, 真骨魚では血管嚢は淡水生活に伴って退化消失の傾向を示す器官であることがうかがわれる. しかし, 血管嚢は組織学的には浸透圧調節に関係した器官とは考えにくい. 古く, 血管嚢は水圧の感受に関係した器官と考えられたことがあったが, 淡水域は海に比べて浅いこと, また一部の外洋表層遊泳魚で血管嚢がないことなどを考え合わせ, この説の妥当性をさらに検討することが必要と思われる. 以上, 血管嚢の存否を適応の観点から考察したが, 適応は進化の一面であり, ここに真骨魚の系統発生史の一端をうかがうことができる.
著者
竹内 和雄
出版者
寝屋川市教育委員会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的携帯電話に過度に依存してしまう、所謂「携帯依存症」や「ネットいじめ」の実態を明らかにするとともに、特に、その有効な対応方法、対策方法を見いだすことを目的とした。特に、学校園ですぐに使用できるDVD作成や子ども自身による、ネットいじめ撲滅の取り組み(生徒によるいじめ撲滅劇上演)等、即効性のある取り組みを研究した。○研究方法全国各地の状況の聞き取り調査を実施し、他の都道府県(長野県、東京都、福岡県等)の子ども及び教職員等から情報収集し、トラブルだけでなく、効果的な指導法についても情報交換した。また、市「携帯ネットいじめ対策会議」で中学校教員と対策を検討し、アンケート調査及びピア・サポートによる対応方法について研究した。○研究成果市内アンケートや他府県の聞き取りからフィルタリングの設定が有効であることがわかった。保護者用啓発資料作成し、「フィルタリング・ローラー作戦」を実施し、市内の小中学生のフィルタリング設定率が48.2%から79.2%に上昇するなど、成果があがった。また、調査の結果、小中学生の携帯電話でのトラブルが、ネットいじめや携帯電話依存だけでなく、多岐にわたっていることが判明した。市中学生サミット(市内12中学校の生徒会執行部員で構成)のメンバーで考える機会を持ち、その結果を踏まえて、中学校教員や千葉大学、関西大学等と連携して「チェーンメール」「個人情報」「ソーシャルネットワークサービス」の3つの対策ビデオ教材を作成した。ビデオ教材は、市内の全中学校に配布し、授業や朝礼等で活用しており、広く一般に公開する予定である。中学生自身に携帯電話について、考える機会「ケータイサミット」を実施した。その結果を踏まえて、「ケータイネットいじめ撲滅劇」を作成。上演の様子は関西テレビに取り上げられるなど、注目を集めている。また、劇の様子は、DVDにまとめ、全小中学校に配布している。
著者
大貫 徹
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、ハーン作『耳なし芳一』とそれをアルトーが翻案した『哀れな楽師の驚異の冒険』との比較検討を行うことを通じて、アルトーが、その晩年に、ゴッホの中にもうひとりの「芳一」を見出す経緯を明らかにした。原話の『臥遊奇談』からハーンへと引き継がれてきた「亡霊に取り憑かれてしまった琵琶法師芳一の悲劇」という物語は、アルトーにおいて大きく変貌し、アルトーは芳一の盲目性さえ否定する。しかしだからこそ、アルトーは、その晩年、琵琶法師とか音楽家とはまったく無縁な、画家ゴッホの中にもうひとりの芳一を見出し、そのことによって、ハーン文学の精髄である「異界との接触」というテーマを継承することができた。
著者
大河 雄一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は,本研究課題の最終年度に当たる。本年度においては,本研究の目的である授業・講義等の発話内容を用いたeラーニング教材作成システムに用いるための音声認識モデルおよび音声認識手法の検討を行った。従来より,本研究が対象とするような大学での講義などの音声は,非常に変化が激しい自然発話音声の一つであるため認識が困難であることが,他の研究などから指摘されていた。そこで本研究では前年度に得られていた知見などをもとに自然発話音声の音声認識精度の向上を図った。本年度検討した講義音声認識の手法は,音声に含まれる音素の持続時間が通常の長さとは極端に異なるものを認識誤りの可能性が高いものと見なし,これを抑制するものである。このために,発話様式の似た学術講演を対象とした大規模な音声コーパスCSJを用いて,事前に持続時間の知識を獲得し,認識対象の音声を音素持続時間の観点でスコア化し,認識結果の候補のリスコアリングにより持続時間の誤りを抑制した。この方法により,従来,持続時間の知識を用いる時,検討されていなかった発話速度や文内の位置などの言語的特徴の影響をモデルに取り込み高精度に持続時間の予測を可能とした。本提案法により,最大で4.7%の音素認識誤り削減率が得られた。これは,従来法により持続時間を考慮した場合に2.1%の改善しか得られないのと比べ,有意な改善であった。また,この成果は情報処理学会論文誌に投稿し,採録された。
著者
一木 絵理
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、詳細な環境史を時間軸に、日本列島における縄文海進像を再構築し、海進および海退による海域生態系の変化と人間活動を明らかにすることが目的である。海進・海退の地域比較を明らかにした初年度に加え、当該年度は対象地域のさらなる調査と新たな地域を加えて、海域生態系の復原および編年を明らかにすることに努めた。対象地域は(1)古本荘湾と菖蒲崎貝塚(秋田県)、(2)古青谷湾と青谷上寺地遺跡(鳥取県)、(3)上北平野と長七谷地貝塚(青森県)、(4)常呂平野とトコロ朝日貝塚(北海道)である。(1)では、菖蒲崎貝塚周辺で重要なボーリング・コアが得られ、沖積層の層序を解明することができ、本荘平野の変遷史の中で貝塚を位置づけることができた。特に縄文時代早期後半の段階で内湾奥部まで海が侵入して古本荘湾が形成され、貝塚は水深の深い海辺に形成されたことがわかった。(2)では、古青谷湾の海進および海退、平野の形成を明らかにし、さらに縄文時代後半期の浅谷形成と弥生の小海退も新たに認めることが出来た。環境史の中に遺跡を位置づけ、その特異性が明らかになった。(3)では、長七谷地貝塚周辺でボーリング・コアの採取を行い、火山灰編年と層序を対応させることができ、災害の影響と遺跡群の変遷を捉えることができた。(4)では、常呂平野とサロマ湖でのボーリング・コアの採取によって、海退の現象を追うとともに比較研究が可能となった。本研究によって、日本列島における縄文海進および海退による海域生態系の復原を行い、地域ごとの実態を年代測定を加え詳細に対応させていくことで、地域間の共通点と相違点が明らかになった。海進・海退による大きな変化期が人間活動とどのように結びつくかということは、各地域を成り立たせている基盤-地形地質や河川形態、内湾形態といった要素と切り離せず、今後も各地域においてその様相を把握し明らかにしていきたい。
著者
石田 依子
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

かつて船員業は男子絵の領域と考えられてきたが、女性も海に出たことが記録されている。女性が最初に士官候補生として雇用されたのは1960年代後半になってからであり、その後、海運業が船員として男性を雇用することに深刻な困難を経験し始めた1990年代後半になって女性船員は再び登場することになった。これらの女性たちは機会を与えられれば女性ができることを示している。
著者
鈴木 雄志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

研究計画通り、研究指導を頼んだパリ第4大学ギュイヨー教授の指導を受けながら、フランス、パリでの資料・文献収集を引き続き行った。研究対象となる18・19世紀の文献、特に近年になっても校訂版やファクシミリ版さえ出版されず、日本の図書館にも所蔵されてない作品を、パリの国立図書館等で調査し、必要に応じて収集した。また、パリやフランス各地の学会にも参加し、最先端の研究に触れることで有意義に研究を進めることができた。研究実績としては、調査した内容の一部を、日本国内のフランス文学会にて二度発表した。詩と造形芸術との関連、造形芸術における官能性と詩におけるその表現を示した発表内容に関し、学会誌の査読委員会から執筆依頼を受け、提出した論文が現在審査中である。来年度にかけて、今年度の研究成果を学会や論文誌等で発表するために、現在論文準備を進めている。資料調査のために海外で研究を進めることで、日本におけるフランス文学研究が遅れている領域について書かれた研究に多く触れることができた。特に当研究者が取り組んでいる18世紀リベルタン文学と19世紀文学の関わりは、間にフランス革命という大きな断絶が存在しているために、従来フランスでも研究が遅れている領域であった。しかし、近年多くの研究者たちが革命期の文学についての論文を多く発表し、革命という断絶を繋ぐ文学史の流れを再構築しようとしている。その流れに沿ったところに位置づけられる本研究によって、フランス文学研究全体が近年行っている文学史、そして文学の意義の再検討する研究活動の一端をになう成果を挙げることができた。
著者
山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、高大連携の期待と現実のズレに注目し、日本における高大連携の事例を収集し、質的および数量的分析を行った。成功事例の特徴、実施体制やプログラム内容の実態などの分析結果から、「高大連携」を促進する要因と阻外する要因を明確にすることができた。日本の高大連携活動の大半は、高校と大学が対等に共通の問題の解決に取り組む「共働」ではなく、それぞれの必要に基づく「協力」関係であることが明らかになった。高大連携活動についての組織間関係論的な視点からの考察は、今後の日本の高大連携を有効に機能させるための組織・運営や環境条件など明らかにするために重要であることが示唆された。
著者
保田 孝一
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1992年ペテルブルグのロシア海軍資料館で、1861年の対馬事件に関するロシア側の一次史料を発見した。それに基づいて、当時幕府の非公式の顧問だった有名なフォン・シ-ボルトが、この事件と東禅寺事件を解決するためにどのような役割を果たしたかを明らかにすることができた。その中心資料は、1861年にシ-ボルトが横浜と江戸から、ロシア東洋艦隊提督リハチヨフに宛てた5通の手紙である。これらの手紙を読むとシ-ボルトが、ロシア側からも、幕府からも尊敬されていたことが分かる。しかしシ-ボルトが親日的、親露的立場から事件を解決しようとして日露両国へ行った提言は、事件を解決するために直接の効果をもたらしはしなかった。明治時代の日露関係は、今想像するよりもずっと友好的であった。両国の皇室外交は、日露戦争の前にも後にも活発で、両国の皇族や重臣は相互に友好訪問をくり返していた。たとえば日露戦争の前に訪露した皇族には、有栖川宮熾仁・威仁両親王・小松宮彰仁親王・閑院宮載仁親王らがいる。ロシアからはアレクセイ大公、アレクサンドル・ミハイロヴィチ大公、キリル・ヴラディーミロヴィチ大公らが訪日している。訪露した最大の政治家は伊藤博文であった。かれは生涯に3回ロシアを訪れている。かれの持論は、日露戦争を避けるために満韓を交換するという提案である。つまり韓国は日本の、満州はロシアの影響下におくというのである。伊藤のこの提案は、日露戦争後に日露協商として実を結んだ。
著者
青木 彩
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は2010年に埼玉県鳩山町でスタートした鳩山町研究の追跡調査とリンクして加齢黄斑変性(AMD)の有病率について調査を行った。その結果初期AMDが37.9%後期AMDが0.6%に認められることを発表している。又AMDの発症に関連する因子の検討として年齢、性別、全身既往歴、喫煙歴、研究開始時の炎症性血液マーカーとの関連を多変量解析を用いて検討し、又complement factor H (CFH)I62Vとage-related maculopathy susceptibility 2 (ARMS2)A69S遺伝子多型との関連をMantel haenzel法を用いて検討した。その結果CFHI62VとARMS2A69S遺伝子多型とAMDの発症とに有意な関連があることをこれまでに報告している(P=0.029、P=0.025)。又我々は自己式簡易食事歴質問票(BDHQ)を用いこの鳩山町研究コホートと東京大学付属病院黄斑外来に通院している滲出型AMD患者との栄養摂取量の比較を行った、その結果n3不飽和脂肪酸、アルファトコフェノール、亜鉛、ビタミンD、ビタミンC、ベータカロテンといった抗酸化物質の摂取と滲出型AMDの発症とに有意な関連があることを報告している。さらに我々は最近後期AMDとの関連が指摘されているコレステリルエステル転送タンパク(CTEP)遺伝子多型やHCLコレステロールといった脂質代謝と早期AMDとの関連を解析中であり、また上記の結果をふまえ他のコホート(群馬県 草津)でAMDの有病率および発症因子の解析を準備中である。
著者
徳井 淑子 小山 直子 西浦 麻美子 新實 五穂
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男女の性が服装によって明確に二分化されたのは、洋の東西を問わず近代社会においてである。日本では、それが国家および知識階級の要請によって行われ、政治的な意味をもったが、一方でヨーロッパでは資本主義社会への転換のなかでブルジョア倫理として要請され、社会・経済的な意味を帯びている。近代社会では男女の服装の乖離が顕著であるのに対し、中・近世社会では服装による男女の分化は必ずしも鮮明ではない。現代社会では同化、接近、越境はさまざまなレヴェルで絶え間なく行われ、それによってファッションの多様化が進み、二元論的な性では捉えられない複雑な性のあり方を示している。男女の服装の同化・接近・越境は新たな感性により新たな性の表象として現出するが、同時にジェンダー表象としてつくられた新たな服飾が、新たなジェンダー感性を育んでいくことも確かである。
著者
柏原 昭博 渡辺 成良 長谷 川忍 岡本 竜
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大学の研究グループなどにおける研究活動に着目し、徒弟的な関係を踏まえて研究初心者が熟練者と同様に真正な文脈で学ぶことができるようになるためのスキルの獲得・向上を支援する計算機システムを構築した。特に、研究活動と連携しつつ段階的に学習スキルアップを図る新しい支援の仕組みを実現した。具体的には、Webリソースから研究活動に関連する知識を学ぶスキル、研究ミーティングでの学習スキル、プレゼンテーションスキルを取り上げ、学習プロセスを具体化する認知ツールを基盤とした学習スキル向上支援技術を設計・開発した。
著者
伊藤 敦規
出版者
国立民族学博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究計画の2年度目に実施した調査・研究・成果報告は以下の通りである。米国南西部先住民ズニのズニ博物館長による日本国内博物館収蔵資料調査について、江戸東京博物館での民族藝術学会(4月)、立教大学での日本文化人類学会(6月)にて概要を口頭発表した。5月に国立民族学博物館で開催されたサントリー文化財団のプロジェクト、および、11月のアジア太平洋資料センターでの連続講座にて、ホピ族の宝飾品産業形成史についての口頭発表を行った。日本国内における文化人類学者と米国先住民コミュニティの知的財産を通した関わりについては、10月の東北大学での共同研究会、12月の国立民族学博物館での共同研究会にてそれぞれ口頭発表をした。加えて、11月のアメリカ人類学会(米国ルイジアナ州)と、2011年1月の国際シンポジウム(北海道)では、英語と日本語による口頭発表を行い、日本語圏以外の研究者との研究成果の共有を図った。年度内に開催された北海道大学アイヌ・先住民研究センターの共同研究でも口頭発表を2度行い(6月、11月)、研究者とアイヌ民族のアーティストや商工会役員等と研究成果の共有を行った。文化人類学を専攻する研究者や先住民族の知的財産問題の関係者以外への成果の公開も行った。10月に獨協大学で行った連続講座での講演である。米国先住民の知的財産問題に関するアウトリーチ活動も行い、日本国内の消費者、ホピとズニのアーティスト、ギャラリー経営者、自治政府知事との共有を図った。米国アリゾナ州とニューメキシコ州での3週間ほどのフィールドワークも実施し、アーティストやその拡大家族成員を対象に、制作技術やコミュニティにおける知的財産(宗教的知識)の管理の様態について聞き取りをした。これら調査で得られた資料の分析・整理を進め、学術論文を複数投稿すると共に、学位論文(社会人類学博士)を執筆した。
著者
増山 幹高 坂本 孝治郎 待鳥 聡史 奈良岡 聰智 村井 良太 飯尾 潤 竹中 治堅 川人 貞史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

この研究では, 日本を含む議会制民主主義諸国における立法と行政のあり方を体系的に理解し, 歴史的・比較政治学的視座に基づいて日本の国会および議院内閣制を理論的・実証的に分析している. とくに, 国会に関する未公開史料の保存・整理を進めるとともに, 代議制民主主義の発展過程, 二院制と立法・行政関係の制度構造, 議会制度と選挙制度の相互連関を歴史的・比較政治学的に検証している.
著者
酒井 一光
出版者
大阪市立博物館
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究題目について、昨年度の摂津の事例に続き、本年度は全国の代表的な事例について調査を進め、神仏分離における神社境内の「仏教的建造物」の保存・転用の実態について研究、分析した。今回の調査・研究を通して以下の点を明らかにした。神仏分離における神社境内の「仏教的建造物」の排除は、必ずしも神社側の本位ばかりではなかった。その際、境内の由緒ある建造物は以下のような方法で移築、転用された。1.神社境内の「仏教的建造物」が機能を変え、一部改造を受けた上で、神社の社殿のひとつに転用された。今回の調査ではこの事例が最も多くみられた。例)知立神社(愛知県)多宝塔→知立文庫に改造し現地保存2.神社境内の「仏教的建造物」は売却され、移築の上、当時荒廃していた寺院の復興にあてられた。例)旧住吉神宮寺西塔(大阪市)→切幡寺(徳島県)に移築3.神社境内の「仏教的建造物」がそのまま、当初の機能として、神仏分離以前の場所に残された。その場合、その建造物のみが、旧神宮寺などの飛地境内となったことがある。また売却後、移築が遅れたり、買い手が付かないためにその場所に残され、古社寺保存法成立以降、文化財的価値が認められて保存された場合もある。例)花岡八幡宮(下松市)多宝塔→隣接する閼伽井坊の飛び地境内として現地保存4.神仏分離以降、寺院が神社となり、境内の堂宇が一部改変され、神社の社殿に転用する例が見られた。例)永福寺(高槻市)→畑山神社に変更し現地で保存5.廃寺により、寺院境内の建造物が神社に移築された。例)常楽寺(茨木市)堂宇→廃寺にともない井於神社(摂津市)に移築6.鎮守社が寺院から独立し、社殿はそのままに単独の神社となった。例)広済寺(尼崎市)久々知妙見祠→久々知須佐男神社に変更し現地で保存
著者
川本 重雄
出版者
北海道工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、大きく分けて三つの内容からなる。一つは、科学研究費補助金の助成を受ける以前から続けていた、『類聚雑要抄』および『類聚雑要抄指図巻』の写本の調査である。これまでに、『類聚雑要抄』については、京都大学菊亭家本・陽明文庫本・内閣文庫本(十三点)・国会図書館本(三点)・宮内庁書陵部本(六点)・群書類従来、『類聚雑要抄指図巻』については、サントリ-美術館本・東京国立博物館本(二点)・慶応大学図書館本・宮内庁書陵部本を調査することができた。二つめは、こうして集めた諸写本をもとにした校合作業である。『類聚雑要抄』は、京都大学菊亭家本を底本に、諸写本と校合した結果を、本年度作成した報告書にまとめた。また、『類聚雑要抄指図巻』については、平成八年度科学研究費出版助成補助金を申請中である図書『類聚雑要抄指図巻』において、その成果を報告する予定である。三つめは、『類聚雑要抄』・『類聚雑要抄指図巻』の成立やその内容についての研究である。従来、『類聚雑要抄』の作者を平知信とする説があったが、その誤りを指摘し、左大臣藤原頼長の家司藤原親隆がその編者であることを明らかにした。また、『類聚雑要抄』各巻の内容を詳細に検討することによって、いくつかの記事の誤りを指摘したり、各巻の成り立ちの差などを明確にすることができた。こうした『類聚雑要抄』についての検討内容は、報告書の中で詳しく述べられている。このほかに、記事の補正の多い群書類従本の『類聚雑要抄』がどのような史料によって補正したかといった問題を現在検討している。
著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2年間の調査で得たデータをもとに,記述的ケース・スタディと解釈的ケース・スタディを作成している。2009年度には,文献調査と訪問調査によって,ウエスタン・オンタリオ大学に関する基礎的な情報を得た。2010年度には,記述的ケース・スタディを学会で発表するとともに,追跡調査を実施した。現在,この記述的ケース・スタディをもとに,解釈的ケース・スタディを作成し,ここで得られたモデルを他大学のケース・スタディで得られたモデルと比較検討する準備をしている。
著者
白水 始
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、ジグソー法という学習者ごとに異なる資料・課題を分担して内容を交換・統合する学習法が、分担しない協調学習法に比べて学習を促すかを検討した。数学、算数および認知科学を対象に比較実験を行った結果、促進効果が認められ、そのメカニズムとして、各自が自らの資料を理解し説明する課題遂行に従事する一方で、他者の資料に客観的にコメントするモニター役を行う役割分担・交替により、意見の違いが生じ、深い理解が促されることが示唆された。
著者
神原 信幸
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究により、アメリカの事例研究から、高大連携と学習の生産性の論点がリンクしていることが明確になり、教育接続の問題と、高等教育計画の効率化、社会発展アプローチ別の視点を包含した政策の理論化を果たした。日本でも、緊縮財政下の高等教育は、効率化と、教育機会の均等性の確保、大学教育の質の向上を追及することが必要であるが、そのための政策や実践の形成や、評価、改善のサイクルに資する基礎付けが可能になった。