著者
井上 征矢
出版者
筑波技術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

以下の3種の実験を聴覚障害者と健聴者の各10名に行い、光源色を用いた適切な情報提示について検討した。色と文字の探索実験では、色を色、色と文字、色文字、黒文字の4種の方法で提示し、ターゲット色を6色の中から瞬時に探すタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに色や色文字の場合に回答が速いが、聴覚障害者は黒文字の場合にも健聴者ほど遅くなく、両者で視覚認識特性が異なる可能性が示された。また両被験者群ともに赤より青に対する反応が速く、LCDモニタで白背景の場合には青の誘目性が物体色の場合ほど低くない可能性も示された。駅空間画像における探索実験では、内照式サインを含む駅空間画像を提示し、ターゲットの方向を瞬時に回答するタスクを与えた。駅空間画像には、サイン周辺の商業表示物の色や量、サイン情報の質や量が変数となる物を選んだ。その結果、両被験者群ともにサイン内に類似色がある(使用色修正が必要)、周辺にサインと類似色で高彩度の広告がある(商業表示物との棲み分けが必要)、同じ誘導色でも内照式サインと物体色で違う色に見える(色の微修正が必要)等の場合に回答が遅かった。聴覚障害者は誘導色に付記された文字が読みにくい場合に回答が遅く、色のみでなく文字までを確認する傾向が健聴者より強いことが示された。誘導色やピクトを使用する場合にも文字の可読性に配慮する必要がある。文字スクロールスピード調整実験では、電光文字提示装置を想定し、表示文字数、文字色、文型(一般的文章と名詞の羅列文章)を変数として文章を提示し、最も読みやすいスピードに調整するタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに表示文宇数が少ないほど遅いスピードを好んだ。文字色や文型による顕著な差は得られなかった。聴覚障害者は大半の試行で健聴者より遅いスピードを好んだため、健聴者の感覚でスピード設定したスクロールは聴覚障害者には速すぎることも示された。
著者
葉 倩〓
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.615-631, 2005-12-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
84
被引用文献数
1 2

本論文は, 日本植民地統治時代の台北における支配-被支配の関係を日常生活から明らかにし, 人々がいかに植民地主義と相対していたのかを論じるものである。日本植民地支配に対して, 人々はただ受容しただけではなく, 交渉し, 妥協し, そして抵抗した。本論文は, 一台湾女性の日常生活に焦点をあて, 植民地支配下の女性たちがいかに日本植民地支配に抵抗したかを明らかにする。男性や若い世代が同化され「日本化」していく中で, 日本植民地時代初期に生まれ, 日本教育を受けなかった世代の女性たちは,「中国的」生活空間に生きていた。中国の慣習や伝統・慣習・儀式を私的空間と近隣空間において保守し, 植民地都市空間の中で確固とした自己意識と自らの場所を築いていたのである。植民地権力は,公的空間において同化・皇民化政策による支配を強化していったが, 私的空間までは完全に支配することができなかった。その私的空間において女性たちは, 中国性‘Chineseness’を保持していくことができたのである。同化せず, 植民地社会の公的空間からは疎外されていた彼女たちが自らの家庭と近隣空間で守り続けた中国的生活様式は, 植民地主義に対する静かな, しかし雄弁な抵抗であった。
著者
金 智鉉
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.108-121, 2006-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
南方熊楠著
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
1971
著者
深見 英一郎 岡澤 祥訓 田中 祐一郎
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、運動の苦手な生徒に焦点づけた効果的な指導方法について検討した。生涯スポーツの基盤づくりを担う体育授業において、仲間と協力して運動に取り組み技能成果を高めることの楽しさをすべての生徒に体験させたいと考えた。運動に対する動機づけの観点から周到な準備と授業中の働きかけを重視した結果、特に運動の苦手な生徒たちが積極的に運動に取り組み豊かな人間関係と技能成果が生まれる優れた体育授業を実践することができた。
著者
若杉 充 北見 徳廣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.95, no.266, pp.13-18, 1995-09-28
参考文献数
6
被引用文献数
5

バックプレッシャアルゴリズム(BPアルゴリズム)を入出力バッファ間に適用した内部高速型ATMスイッチでは、HOLブロッキングによりセルバッファサイズが増大してしまう欠点がある。そこで3つのしきい値を用いて入出力バッファ間を制御してセルロス特性の向上を目的としたアルゴリズムを提案する。本制御方式は従来のバックプレッシャ制御方式と比較して、遅延特性を劣化させることなく、廃棄率特性を改善できることをシミュレーションにより明らかにした。特にバーストトラヒック入力時には、大幅にセルバッファサイズを削減できることを明らかにした。また、本方式の3つのしきい値がそれぞれどのようにセルロス特性に影響を与えるかを明らかにした。
著者
設樂 剛 桑原 武夫
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.42-51, 2011-07-31
参考文献数
33

本研究は,ブランディングにおける物語の効果を実証的に検討するものである。ここではロレックスに焦点をあて,物語が,生活者の好感度および購買意欲の変化に与える影響について,実験的方法を用いて明らかにした。物語論の観点から,物語の構成要素として,語り手,世界観,登場人物が設定された(本論では,語り手に,ロレックス社社長,大学教授,フリー・ライターを,世界観に,社会的責任,オープンな革新性を強調する世界観を,また同社を支持する登場人物として,著名人集団,不特定多数のクラウドを配した)。これら各要因と水準を組み合わせ,計12条件の物語を作成した。本研究では,語り手,世界観,登場人物を説明変数とし,生活者の好感度と購買意欲を目的変数として,3元配置分散分析を行った。その結果,好感度に対する効果として,語り手および登場人物で主効果が,語り手と登場人物で交互作用効果が有意であった。また購買意欲に対する効果として,世界観で主効果が有意であった。物語ごとの効果の相違が明らかになり,相対的に小さな効果にとどまる物語が特定される一方,同社が現在採用している物語以外に,より効果の高い物語が存在することを示した。
著者
定平 誠 斎藤 忍 松浦 克樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-16, 2012-03

埼玉県には他県に引けを取らない魅力あるコンテンツ(歴史遺産、文化、工芸、自然など)が数多く点在する。しかし、これらのコンテンツの魅力を十分に情報発信しきれていないため、埼玉県の全国的な認知度は低いという現状がある。そこで、本研究は埼玉県の魅力あるコンテンツの認知度を高めるべく、コンテンツの演出効果の向上をめざした新たなネットワーク連動型のプラットフォームとなるウェブサイトを構築する。このサイト上で紹介されるコンテンツ情報はYouTubeを始め、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルメディアとの連携を図り、バズマーケッティングへと発展させる。そして、これらの結果を踏まえ、埼玉県のコンテンツの発信能力をいかに強化していけるか、埼玉県のブランド創出につなげていけるか、また、地域能力の向上に貢献することができるかについて考究する。
著者
Takehisa Jun
出版者
Kyoto University
巻号頁・発行日
1999-03-23

新制・課程博士
著者
古谷 修一
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、多様な国際刑事裁判の規程・手続規則の起草過程および旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)、ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)の決定・判決等の分析を通して、各裁判所が想定する国際法実現プロセスの詳細を検討した。平成13年度は、(1)ICTY・ICTRの設置過程、ICCの設置に至る議論を詳細に分析することにより、国家を中心とした従来の国際法実現プロセスとは異なる個人への直接適用・執行を軸としたプロセスが現れてつつあることを実証した(「研究発表」欄の第2論文)。また、(2)オランダ出張によって得たICTYの国内実施立法に関する資料を素材として、国家の協力義務の性格について検討を行った。その成果はオランダ人研究者の編纂した論文集の一部として公表された(「研究研究発表」第2論文)。平成14年度は、(1)シエラレオネ特別裁判所に関する国連・シエラレオネ間の協定、同裁判所規程の起草過程に関する安保理における議論、(2)東チモール裁判所に関するUNTAET(United Nations Transitional Administration in East Timor)のRegulation 2000/15の起草過程、(3)ICTY・ICTRの決定・判決の分析、を通して国際刑事裁判所と国内裁判所の管轄権配分とそれを規律する原則に関する検討を行った。この結巣、各裁判所は、その設置目的や関係国の状況に応じて、異なる管轄権配分の原則を採用し、制度的にほぼ同型であるICTYとICTRにおいてさえ複数の原則の間の優先順位が異なることを実証した。とりわけ、これまでの管轄権配分に関する議論が、"primacy"があるか否かといった単純な分析に終始し、配分決定過程が多段階的に存在する点を見逃してきていることを批判的な知見として得た。この研究成果は、英語論文としてまとめ、現在外国雑誌への投稿準備中である。
著者
二枝 美津子
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.31-43, 2006-09

英語の句動詞は,動詞と不変化詞が共起して,新しい意味をもつ複合動詞の一部である。句動詞では構成要素である動詞と不変化詞との意味の融合がおこり,新しい意味は各要素の本来の意味から予測可能なものから,予測困難な意味をもつものまで多様である。また,句動詞の多くは多義性をもつ。本論文では,動詞と不変化詞の融合の程度差が意味形成,意味理解に積極的な役割を果たしていること,不変化詞が意味形成に重要な役割を果たしていることを明らかにする。スキーマ的な動きを表す動詞に方向性を示す不変化詞が加わることで,意味の融合が起こりやすく,意味の拡張も行なわれやすいことを示す。また,相当する一語動詞と,その使用場面の比較を通して,句動詞表現が存在する理由を求める。動詞と不変化詞の起源,音韻的特質をも考察に入れると,句動詞は二語から成るが,決して不経済な表現ではなく,ゲルマン的な生き生きとした表現であることを明らかにする。The aim of this paper is to clarify the way to form the meaning of phrasal verbs. The so-called English phrasal verbs belong to multi-word verbs whose constituents are verbs and particles, and function as single verbs in sentences. Verb and particle coalesce to form a semantic unit in which the basic meaning of verbs and particles are coerced by a metaphorical meaning of verbs. The meanings of phrasal verbs are different, from the one we can predict easily to the one we cannot. The degree of coerciveness differs in individual phrasal verbs, which makes the phrasal verbs polysemous. The verbs used in phrasal verbs are action verbs and express simple, schematic actions. And the particles indicate the movement of the action. The combination of these makes them easy to form a new meaning. Most of the verbs and the particles are one-syllable words and that makes them to be pronounced like single words by liaison. Comparing with corresponding one word synonyms, we can know phrasal verbs
著者
久保田 尚浩 小野 俊朗 小原 章男 福田 文夫 片岡 郁夫
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

(1)ブドウ栽培用ランプの開発:発光ダイオードを使って、450と660nmにピークを持つランプおよび両波長を半分ずつ持つランプを試作した。(2)ブドウの生長と花房分化に対する光の作用性:ピオーネを供試し、上記のランプおよび730nmにピークを持つランプで長日処理(16時間日長)した。660nmでは新梢生長が最も優れ、花房原基数も他区の約2倍であった。ブドウ3品種を供試し、自然日長の異なる3時期(12月、2月、3月)からシリカ電球、育成用ランプおよび赤色光ランプで長日処理した。長日処理効果は、新梢生長ではピオーネで最も大きく、次いでデラウエア、マスカット・オブ・アレキサンドリアの順であり、また花房分化ではピオーネで大きかった。長日処理効果は、自然日長が短い時期ほど大きく、一方ランプによる差は小さかった。(3)ブドウ栽培における電照技術の開発:ピオーネの二期作において、二作目の新梢や果粒の生長を促すには14時間以上の日長が必要なこと、日長時間が長いほど処理効果が大きいこと、暗期中断処理は16時間日長よりも長日処理の効果が大きいことが明らかとなった。(4)紫外光によるブドウ果粒の着色促進技術の開発:UV-A照射はブドウ果皮のアントシアニン蓄積を促すが、その程度は品種によって異なること、成熟期後半だけの照射でもアントシアニン蓄積が促されること、その効果はPAL活性を介したものであること、品種によってはアントシアニン組成に違いが生じることなどが明らかとなった。(5)ブドウ果皮のアントシアニン合成におけるPALおよびmyb遺伝子の関与:幼果期の高いPAL活性は果実生長、成熟開始期の小さなPAL活性は着色に関係していると思われた。RT-PCR法によって3種類のPAL遺伝子断片と6種類のmyb遺伝子断片を得た。このうち、アントシアニン合成に関わる遺伝子は主としてmyb11.PAL5およびPAL14であると推察された。
著者
加藤 一幾 植田 稔宏 松本 英一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.345-350, 2008-07-15

黒ボク土地域の施設栽培において,コマツナ'夏楽天'の3作連続栽培試験(夏作(1),夏作(2),秋作)を行い,施肥前上策中(深さ0〜15cm)の硝酸態窒素量を基準量からさし引いた窒素診断施肥を行い,高温期の可食部硝酸イオン濃度を低減することを目的とした.夏作の可食部硝酸イオン濃度は標準区(N7kg・10a^<-1>)と診断施肥区(診断N7,診断N5kg・10a^<-1>)の間にはほとんど差がなく,診断施肥による低減効果はほとんどなかったが,秋作では診断施肥による低減効果が顕著にあらわれた.一方,窒素を施肥しない無窒素区では全ての栽培季節で著しい低減効果が認められた.また,夏作(2)の無窒素区では栽培期間を5日間延長することで標準区と同等の収量を得ることができた.土壌から無機化した推定窒素量は夏作におけるコマツナの窒素同化量を上回った.以上のことから高温期のコマツナ施設栽培では,より詳細に植物の窒素同化量を推定することで,収穫までに必須な窒素量を明らかにし土壌からの無機化窒素量を考慮した診断施肥の窒素基準量を設定することで,収量を維持しつつ可食部硝酸イオン濃度をさらに低減できると考えられた.
著者
袴田 光康 金 任仲 堂野前 彰子 木村 淳也 金 孝珍
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本・韓国・琉球の漢文テキストを通して、東アジアにおける神仏習合の分析を行った。具体的には『扶桑略記』(日本)・『三国遺事』(韓国)・『遺老説伝』(琉球)という三つのテキストを対象とした。研究の結果として、東アジアの固有神が仏教によって護国神へと変容するという共通点を持つこと等を明らかにした。その成果は、2013年度韓国日本言語文化学会(ソウル)の口頭発表や『「三国遺事」の新たな地平』(勉誠出版、2013年11月)の論文などによって広く発表されている。