著者
那須 亮
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

卵巣明細胞癌は、抗癌剤耐性を示すため最も予後が悪い卵巣上皮癌である。本研究では明細胞癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発を目指した。我々が樹立した明細胞癌幹細胞の遺伝子発現パターンを解析した結果、幹細胞マーカーLGR5の高発現を認めた。さらに、R-spondin-LGR5軸によるWntシグナル活性化の分子機構を解析した結果、R-spondin/Wnt刺激が、Axin1の新規リン酸化を促進することによりWntシグナルを活性化することを見出した。従って、LGR5の細胞外領域を標的とする抗体と、Axin1のリン酸化修飾を標的とする低分子化合物の両方が新規抗癌剤として期待される。
著者
堂本 信彦 王 鏗智 森 徹 木村 郁夫 郡山 剛 阿部 宏喜
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1103-1109, 2001-11-15
参考文献数
36
被引用文献数
12 13

ホキ, ミナミマグロ, ヤリイカをミンチし, 加熱殺菌後, 麹菌, 食塩, 水, 乳酸菌を添加しもろみを調製した。発酵中に酵母を添加し, 発酵調味料(魚醤油)を製造し, 6ヵ月間の熟成中の成分変化および最終品の品質について検討した。新規発酵調味料のpHは4.8∿5.0と穀醤油に近く, 全窒素分は1.78∿1.86%と従来の魚醤油(ニョク・マム)に近い値となった。また, 遊離アミノ酸ではグルタミン酸, アラニン, ロイシン, リシンの量が多かった。官能評価の結果, ニョク・マムを対照とした不快臭の強さは3種の試料すべてで低く, 従来の魚醤油の臭いが軽減された発酵調味料が得られた。また, 味の面では塩かどがなく, まろやかなことが特徴であった。
著者
阿部 善彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.645-667, 2011-12-30

本稿は、エックハルトの「ドイツ語説教八六」(以下Pr.86)における「マリア」像を考察し、それとともに、エックハルト、タウラー、ゾイゼに通底する宗教的生の理解の解明を目指すものである。伝統的に、マリアは「観想的生」、マルタは「活動的生」の象徴として解釈されてきた。その中でも、Pr.86は、「マルタ」に完全性を見る独創的解釈を提示する説教として注目される。そのため、これまでのエックハルト研究においては、「マルタ」に示される宗教的生の完全性について論じられてきた。だが、「マリア」については十分に取り上げられてこなかった。本稿は、まず、(一)Pr.86で語られる「マルタとマリア」を、その解釈の基本線である「生」(leben)の観点から確認し、その上で、(二)「マリア」に固有の宗教的生の完全性が主題化される解釈伝統を説教内部に明らかにする。そして、(三)そこに示される「マリア」像とドミニコ会修道霊性との思想連関を考察し、これを踏まえて、(四)エックハルトから、タウラー、ゾイゼに通底する宗教的生の理解を明らかにすることを試みる。
著者
日本学校保健学会 [編集]
出版者
家政教育社
巻号頁・発行日
1959
著者
魁生 由美子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

まず、高齢化に関する日韓のデータを比較し、高齢者福祉の法と制度に関する要点を整理した。超高齢社会日本と今後高齢社会に突入する韓国においては、草の根的な市民的協同によって、施設運営やケア実践に関する知見の交流が続いている。この交流について明らかにすべく、在日外国人を含む高齢者支援の活動を展開している日本の組織・団体および、韓国において日本と連携し、独自の福祉サービスを提供する組織・団体に対して現地調査を行い、超高齢社会を支える福祉ネットワークの先進事例を収集した。
著者
大沼 義孝 北形 元 菅沼 拓夫 木下 哲男 白鳥 則郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.56, pp.1-6, 1999-07-15
被引用文献数
1

スケジュール管理システムを用いたスケジュール調整を行うには,ユーザのスケジュール予定を表現するイベント情報が予め入力されていることが必要不可欠である.しかしながら,多くの情報の中から自分に関連するイベント情報をもれなく抽出し,それらを管理システムの要求する形式に変換,入力する作業は利用者にとって大きな負担となっている.そこで我々は,電子的に通知される電子メールや電子ニュース内の文書を対象に,知的ユーザエージェントであるイベント取得エージェントが,スケジュール関連文書の選別を行い,更に不足情報を補うことでスケジュール管理システムに入力できる定型文書を生成するシステムを提案する.本稿では,個人プロファイルを利用した選別判断機能と情報補完機能に焦点をあて,その基本的概念について述べる.An event scheduler needs event information. Event information has become electronically available in different sources i.e mailbox, netNews etc. Filtering necessary information from these sources and inserting them to the scheduler, manually by a user itself is a troublesome routine work. We propose a system wherein an agent automatically gathers necessary information on the user behalf by checking the prospective mailbox, Net News etc, arranging them to the given standard format, and finally conveying to the scheduler. And thus, reduces the user overloads. This paper also discusses the necessary issues involved e.g decision making, information-completion functions by referring user's personal profiles.
著者
伊藤靖章 高橋 圭 蔡東生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.105, pp.1-6, 1999-12-10

生体の複雑な動きを生成するために、個々が簡単なルールに従い、群れ全体として複雑な動きを生成するというボイドのアルゴリズムを基に生体の群れを作成した。そのボイドに、自己組織化臨界現象のモデルである砂山モデルを用い、生体の群れが外敵に襲われる際の非定常状態に適用し、群れの崩れる様子を作成した。また、人に心地良いといわれ、インテリアデザインなどの分野にも応用されている1/fゆらぎを群れの個体のパラメータに適用し自然な振る舞いをする群れの作成を試みた。また、カオスゲームを群れの飛び立ちに適用することで人に自然に群れだと感じさせるだけではなく、複雑で見栄えがある群れの生成を試みた。Natural creatures like birds, butterflies often display very complex grouping behavior. Reynolds reported that such grouping behavior can be expressed via some simple rules, and called them "boids". However, many more complex grouping behaviors are beyond the description of simple "boids". We report some more complex "boid" using SOC (self-organized criticality) and chaos game algorithm.
著者
志田 英邦
出版者
青土社
雑誌
ユリイカ (ISSN:13425641)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.191-198, 2009-04
著者
佐伯 昭彦 土田 理 氏家 亮子 末廣 聡
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,モバイル学習環境を活用した実験・観察型の数理教材を開発し,その教育的有効性を実際の授業で明らかにすることである.研究期間内において,インターネットとハンドヘルド・テクノロジーを活用したモバイル学習環境を構築した.授業の内容は,遠隔地にいる2つのクラスの生徒が,協調学習を通して,歩く動作とグラフの関係を探究することである.授業を評価した結果,研究目的が達成できたことが明らかになった.
著者
松本 浩毅 山田 剛久 竹村 直行 左向 敏紀 小山 秀一 本好 茂一 稲田 頼太郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.727-730, 1996-08-25
被引用文献数
1

臨床的に健常でDirofilaria immitis (D.immitis)感染の認められない102頭のビーグルと16頭のD.immitis感染犬の血中免疫複合体(CIC)を免疫粘着赤血球凝集反応(IAHA)法によって測定した. 102頭の健常犬のCIC値は, 28.2±29.1μg/mlであった. CIC値に関しては, 年齢や性による有意差はみられなかった. D.immitis感染犬のCIC値(210±111.4μg/ml)は, 健常犬に比べ有意に高かった(P<0.01). 今回の実験結果より, IAHA法がイヌのCIC測定に適した方法であり免疫複合体介在性疾患の検出あるいは診断に応用可能であると考えられた.
著者
村松 康司
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炭素材料の劣化は多くの場合炭素表面の酸化に起因するが,この分析技術は確立しておらず,炭素表面酸化の簡便かつ高精度な状態分析および定量分析技術の開発が急務となっていた。そこで,本研究では放射光軟X線分光法を利用して,複雑な局所構造をもつ炭素材料の酸化(劣化)分析・評価技術を開発することを目的とした。具体的には,(1)我々が提案した全電子収量軟X線吸収分光法による炭素表面酸化の状態・定量同時分析法について,実験を通してこの可能性と適用限界を明らかにするとともに,(2)産業界の実材料を分析して本法の実用性を検証した。加えて,全電子収量軟X線吸収分光法を用いた状態・定量分析に関する新しい知見・技術を取得した。
著者
松下
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会グル-プウェア研究会
巻号頁・発行日
pp.4-1, 1993
被引用文献数
2

本論文では,人間のかかわりを階層化することによって,そのかかわりの深度を明確化しようと試みる.同じ場所にいる2人の間で「道を教える」ような場合と,遠隔にいる複数人が連立政権樹立のために「政策調整を行う」ような場合とを比較し,前者がコミュニケーションであり,後者がコラボレーションであることを述べる.ここでは,コミュニケーションとコラボレーションの違いを明確化し,遠隔のコラボレーションのために臨場感のあるコミュニケーションが要求されることを述べる.コラボレーションのためにCommunication, Awareness, Copresenseという下位の階層が存在し,それらの層がコラボレーションのためのインフラストラクチャの役目をはたす.
著者
村崎 恭子
出版者
横浜国立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

(1)本年度は本研究にとって最も悲しい年になってしまった。樺太アイヌ語の最後の話し手であり、本研究の唯一の情報提供者であった浅井タケさんが、平成6年4月30日未明に入院先の東札幌病院で亡くなったのである。(2)そのため、本年度の2回にわたる調査旅行は、1回目は浅井タケさんの最後を見届け、身寄りのなかったタケさんの供養をすることに使い、2回目は調査した地域で状況取材と資料整理のために使った。(3)ついに話し手が絶えてしまった樺太アイヌ語の記述的研究は、今やこれまで過去20年にわたって私が収集した樺太アイヌ語資料のすべての整理とまとめしか不可能となった。(4)1988年から1993年までに調査した浅井タケさんの収録資料の一部をまとめて「樺太アイヌ語口承資料2」を研究成果報告書として印刷した。(5)1960年から1994年まで34年間にわたって収集した樺太アイヌ語音声資料をまとめて整理しコンピューターによるテープリストの作成に着手した。(6)これらのデータのまとめは平成7年度に新規申請した「樺太アイヌ語の記述的研究(3)-音声資料の整理と保存、データベース作成の試み-」で行う予定である。
著者
大泉 匡史
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経ネットワークにおける情報の統合を測る指標である、「統合情報量」を情報理論、情報幾何学の枠組みから新たに導出した。これまで提案されてきた統合情報量の指標は、いくつかの数学的な問題点を抱えていたが、本研究において導出した新しい指標はそれらの問題点を解決したことになる。また、神経ネットワークの解析などで良く使われる、移動エントロピーやGranger因果性などの因果性を測る指標と統合情報量との関係性が明らかになり、統合情報量の直観的な理解が進んだ。提案した新しい指標をヒトのfMRIデータに適用し、意味のない刺激を見ている時は、意味のない刺激を見ている時に比べて統合情報量が低くなることを示した。
著者
井川 浩輔 厨子 直之
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究課題の目的の1つは人事コンピテンシーと個人や組織の成果との関係について定量的に分析することである。本報告書で用いられているデータは140人の人事プロフェッショナルから得た質問票への回答から収集された。量的調査の結果は主に以下の2つの発見事実を明らかにした。まず,日本における人事コンピテンシーは9つの要素から構成された。次に,とりわけビジネスへの貢献というコンピテンシーは個人的パフォーマンスと組織的パフォーマンスの双方にポジティブな影響を与えた。
著者
山本 敦司 米田 渥 波多野 連平 浅田 三津男
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.493-501, 1995-11-20
被引用文献数
6

殺ダニ剤ヘキシチアゾクスを用いて, 静岡県榛原郡の日本曹達(株)榛原農業研究所内の柑橘園から採集したミカンハダニ(Panonychus citri McGREGOR)の抵抗性および感受性への室内淘汰を行なった.17回の圃場における淘汰後6回の抵抗性への室内淘汰で, 無淘汰系統および室内淘汰の親世代と比較しLC_<50>値の抵抗性比が, それぞれ23, 000および4450の非常に高いレベルの抵抗性が発達した.一方, 5回の感受性への淘汰で, LC_<50>値の感受性比が0.59の, 淘汰前よりも感受性が高い集団が得られた.抵抗性系統では, すべての発育ステージおよび雌成虫に対する不妊活性において, ヘキシチアゾクス抵抗性のレベルが高かった.抵抗性系統に対し, ヘキシチアゾクスにピペロニルブトキサイドを混用し, 殺卵活性と不妊活性を調べたが, 協力作用は認められなかった.20種類の殺ダニ剤に関してヘキシチアゾクス抵抗性系統に対する効力を検討したところ, クロフェンテジン, フルフェノクスロンおよびフルサイクロクスロンの効力が低かった.