著者
横川 洋 CHEN T. CHEN Tinggui
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

宋敏、陳廷貴、劉麗軍という三人の著者で『中国土地制度の経済学的分析』と題した書籍が中国農業出版社より出版されることになっている。陳廷貴が「農地請負経営制度及び農地流動化」を担当し、中国西部地域における家族請負制、「30年不変」政策および請負農地経営権の譲渡に関する農家の意識並びにその形成要因について分析を行った。第一に、調査地域において、調査農家の農地所有権に対する意向は、多くの専業農家が農地私有制を希望しており、農地制度の現状とやや異なっているものの、農地経営権に視点を当ててみれば、家族請負制は農家の意識とあまり違和感のない農業経営制度である。第二に、専業農家、第一種兼業農家は、より長期の農地請負期間を望んでおり、また、農地に対する長期投資に意欲をもっている。それにもかかわらず、多くの農家は農地の割換え(調整)に強い懸念を持っており、それが農家の農地への長期投資意欲を消極的なものにしている面があることも見逃せない。したがって、政府は「30年不変」政策を着実に実施し、農家に安定かつ長期的な請負農地経営権を保証することが重要である。第三に、特に専業農家にとって農地は生産手段であるとともに生計維持手段でもある。家族人数と請負農地の配分とが大きく乖離することになれば、農地調整の必要が生じ、安定かつ長期的な請負農地経営権の実現にとっては障害となる。このため、農村において、別途、生活保障制度を充実させ、農地の社会保障的機能の側面を低下させていくことが必要である。最後に、一部の兼業農家は農地の貸付けを行い、一部の専業農家は農地の借入れを行っているものの、他産業の就業の不安定さや農産物価格の低迷などにより、これらの農地の貸付け・借入れは必ずしも定着していないことを指摘しなければならない。安定的な農外就業機会の創出が、請負農地経営権の譲渡促進及び農業経営規模の拡大のための必要条件になると考えられる。
著者
南後 守 大倉 一郎 住 斉 野澤 康則 垣谷 俊明 長村 利彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本計画の目標は、光合成での光エネルギー変換系でのタンパク質複合体の連動したシステムの構造とその機能について基礎的な研究を行うために広範囲の研究者と意見交換を行うことである。そして、社会的に要請の強いこの分野の研究に対して貴重な情報を提供することである。この分野の研究の進展が目覚ましく、したがって、基礎的な研究情報の交換を継続して行い、さらに、共同研究へと発展させることが必要である。本計画では、光合成での光エネルギー変換システムでの基礎的な研究に焦点を絞り、つぎの3点について研究情報の交換を行う。1)アンテナタンパク質複合体の動的構造と機能の関係、2)光エネルギー変換系での色素の構造と機能との関係 3)光エネルギー変換機能をもつデバイスの開発。講演会を年間5回開催して情報交換を行った。講演会では光合成、光エネルギー変換、タンパク質複合体および色素の構造と機能、核酸、分子モーターのキーワードで互いの最先端の仕事内容を発表していただいた。この研究会に参加していただた方はそれぞれの分野でのスペシアリストなので講演会で情報交換を行うことが本研究の企画を進めることになった。ここで、主な研究費として、会議費、国内旅費、それに伴う消耗費が必要となった。また、必要に応じて研究会のメンバー以外の方に講演、事務処理などの手伝いを依頼した。ここで、謝金が必要となった。さらに、外国人研究者(Prof, Scheer(独)およびProf, Cogdell(英))に来日していただいて臨時セミナーで講演してもらった。ここで、この分野の先導的な欧州の第一線の研究者と交流をもつために外国旅費が必要となった。
著者
藤瀬 浩 比嘉 一成 中山 孝大 和田 香陽子 落合 秀治 田名部 雄一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.495-497, 1997-06-25
被引用文献数
4 31

劣性である高K(HK)赤血球の表現型を持つ犬が, 日本犬の13の系統あるいは地方犬群の中の10群に発見された. HK犬の発生率は山陰柴犬, 信州柴犬および秋田犬で26-38%であり, その遺伝子頻度は0.513-0.612であった. 韓国の珍島犬は, HK犬の最も高い発生率を示し(42%), その遺伝子頻度は0.652であった. 韓国の他の2つの群もこの変異を保有していた. HK赤血球の表現型を持つ犬は, 台湾, インドネシア, モンゴル, ロシア(サハリン)の犬群には発見されなかったが, 日本および韓国に広がっていた.
著者
岩倉 成志
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

潜在クラスモデルを用いてアプリオリに選択行動モデルをセグメンテーションするための方法論を研究した.この方法は期待するパラメータ範囲の初期値を外生的に与えて, EMアルゴリズムによって各セグメントの尤度を最大化するモデルである.観光地の選択行動や列車選択の際の内装色彩の評価,地方部の交通機関選択行動のデータを取得し,提案したモデルの可能性や今後の課題を明らかにした.
著者
矢島 道彦
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

インド各地を訪ねてジャイナ教のマンダラ図像を収集、画像データ化するとともに、ジナの生涯を戯曲的に再現するパンチャ・カリヤーナカの儀礼の調査を二度実施して、写真とビデオで記録した。これらのデータの整理・分析と、新たに入手した儀礼のテキストの解読を行ない、その成果の一部を学会等で報告・発表した。ヒンドゥー儀礼の影響が色濃いジャイナ教儀礼のなかで、パンチャ・カリヤーナカの儀礼はジャイナ教に固有のもので、とくにジナの開悟に伴う「聖なる集い」(サマヴァサラナ)の儀礼は、仏教のいわゆる尊像マンダラの対応物として注目される。
著者
奥村 康 八木田 秀雄 中内 啓光 熊谷 善博
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

抑制性T細胞に限らず、T細胞の機能発現のために、標的との結合に不可欠の数々の免疫機能分子の解析、その発現機序等の解析を通し、T細胞の免疫系での調節性の役割を解析した。1)抑制性T細胞株の確立とその細胞膜分子の解析 抗原に得異的な抗体産生抑制性T細胞株を確立し、その抗原レセプターを介するシグナルがいかなるリンフォカインを産生するかを指標に、抑制性T細胞の機能の多面性を解析した。また、この抑制性T細胞膜上の遺伝産物に対する抗体の確立と、その抗体の反応分子の検索を進めた。また、これらの抑制性T細胞の疾患における意義を解析するため、各種の自己免疫病、特にリウマチにおける抑制性T細胞をその細胞膜表面分子を指標に解析した。2)リンパ球機能分子のコードする遺伝子の単離とその分子に対するモノクローナル抗体の確立 T細胞の抗原レセプター以外に、いくつか重要な補助分子としてリンパ球機能分子と総称される膜分子が、リンパ球の分化と機能発現に大きな役割をしていることが明らかになりつつある。マウスのT細胞に焦点をあて、抑制性T細胞、細胞障害性T細胞の機能発現に不可欠な分子CD8、CD2等の遺伝子の単離同定、またそれらの遺伝子導入した細胞を用いて、その分子の免疫反応での役割を解析した。その分子に対するモノクローナル抗体を確立し、これらの機能分子の動きを調べた。3)細胞障害性リンパ球の最終エフェクター分子の解析 T細胞やNK細胞の細胞エフェクター分子のひとつであるperforinの遺伝子の単離に成功し、その分子の免疫応答で果たす役割を分子免疫学的に解析した。
著者
神澤 孝夫 伊藤 佐知子 澤田 誠
出版者
(財)脳血管研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

ミクログリアは脳内のマクロファージ様細胞として知られ、悪性脳腫瘍においても腫瘍内部および浸潤域に、集蔟している事が確認されているが、その抗腫瘍作用は不明であった。しかし、活性化ミクログリアは悪性脳腫瘍細胞に抗腫瘍効果を発揮し、悪性脳腫瘍細胞に形態的にアポトーシスでなく、第二のプログラム細胞死:オートファジーを伴う細胞死を誘導することが、悪性脳腫瘍細胞に生じるオートファジーをモニターすることによって、判明した。そして、この細胞死はカスパーゼ阻害役で抑制はされなかった。抗腫瘍効果の機序として、ミクログリアが産生するNOが重要で必須であることが分かったが、NO単独では、悪性脳腫瘍細胞にオートファジーは誘導されるもの、細胞死は誘導されなかった。さらなるミクログリア由来の分子を解析したところ、TNF family分子および炎症性サイトカインが重要な役割を果たすことがわかった。TNF-α、CD40、Fas、IL-β、IL-6は、いずれも、単独で、細胞死を誘導することはなく、NO阻害薬がこの細胞死を完全に抑制するのに対して、TNF family分子および炎症性サイトカインの阻害は部分的な抑制のみであった。これらの結果から、悪性脳腫瘍に対するミクログリアの抗腫瘍効果において、NOは必須であるが、細胞死を誘導するには至らず、さらに、TNF family分子および炎症性サイトカインからのシグナルが、相補的に作用することによって、細胞死を制御していると考えられた。
著者
鈴木 敏和
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1202, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】現在日本国では平均在院日数の短縮に伴い,退院後の管理を担う地域リハビリテーションが注目されるようになってきた。2011年4月に日本理学療法士協会が行った「日本理学療法士協会会員所属施設調査」では,介護保険施設所属会員は,医療施設所属会員の75%に対し,12%と非常に少なかった。日本理学療法士協会では,今後増加すると思われる多くの資格取得者の活躍の場として,地域リハビリテーション分野が注目されるようになったのだが,H24年度末に厚生労働省により行われた介護保険施設へのアンケート調査では,機能訓練指導員(理学療法士等)の確保が,非常に困難であるとの調査結果が出されており,理学療法士の介護保険施設への就職意欲の低さが伺える結果となっている。H24年,本研究者は介護保険施設への就職動機を調査するため,研究者の所属する法人内の介護保険施設所属理学療法士に対しアンケート調査を行い,要因分析を行った。結果は,“自分をスキルアップできる場所”として介護保険施設を選んだ要因が大きいことが明らかとなった。しかし,前回の調査は法人の特色に大きく作用された可能性が高く,介護保険施設への就職動機の要因分析には不確実性があった。今回,より広範囲の施設に協力をお願いし,再調査を行うことにより,再度介護保険施設への就職動機の分析を行った。【方法】介護保険施設に就職した理学療法士を対象に,アンケート調査を行った。対象には,新卒,中途採用を問わなかったが,経営者となる者と主な収入源が介護保険施設以外にある者は,対象外とした。公募及び回答は,研究者所属法人のホームページ上にて行い,所属施設情報,介護保険施設への就職動機を自由記載として回答をいただいた。但し所属情報に関しては,介護保険施設就職者としての同意を頂き,施設名の回答は自由意志とした。アンケート結果は,介護保険施設就職動機を計量テキスト分析ソフトKHcoder(Ver2.beta.29e)にて,計量テキスト分析を行い,10回以上出現するワードを就職要因に関する項目として判別した。但し,量の多さと動機の強さとの因果関係は証明されていないため,本調査では動機としての要因として,考えられるか否かを判断した。【倫理的配慮】本調査研究は,医療法人社団新和会倫理委員会の定める倫理規定に則り,同倫理委員会より承認を受け,対象者には書面をもって説明し,署名にて同意を得た。また説明を必要とする者には,相談窓口を設置し対応した。【結果】介護保険施設就職者のアンケート回答者は46名(有効回答率93%)であった。所属施設数は自由回答であり,不明となっている。介護保険施設就職動機を計量分析した結果,要因ワードは“地域リハビリテーション”“地域医療”“退院後”等「地域リハビリテーションに関する要因」,“産休”“休暇・休日”“勤務時間”等の「福利厚生に関する要因」,そして「中間ワード」の3つに大別された。また,個別の分析ワードは,中間ワードと,どちらか一方の要因に全て含まれていた。【考察】今回の調査では,前回の調査で就職動機要因としてあげた「スキルアップ」とは異なる結果となった。前回は法人の特色が顕著に出た結果で,今回の調査が広範囲の施設を対象にした事により,介護保険施設全体の標準データに近づいたと考えられる。今回の調査結果は,非常に綺麗に二分された。更に,両方の要因を含む回答者が無かった事は,どちらか一方に偏った動機で就職先を決定していると考えられた。一方は,退院後の地域リハビリテーションの必要性を感じ,自分が携わりたいと思う要因。もう一方は,福利厚生面が就職するにあたり自分の希望に即しているという点が要因にあげられた。今後,介護保険施設への就職動機を高める為には,地域リハビリテーションの必要性のアピールと福利厚生面の充実が効果的と考えられる。今回の調査では明らかにできないが,調査結果は,年齢(経験年数),性別の要因も関与していると考えられ,今後必要に応じては,この要素を含めた調査も必要となる可能性も示唆された。【研究意義】今回,調査範囲を広げた事により,より標準的な結果を得る事ができたと考えている。今回得られた結果を,有効にアピール,活用する事により,機能訓練指導員が不足していると言われる介護保険施設への就職促進効果を期待していきたい。
著者
田中 雅人 尾崎 敏文 沖原 巧 渡邉 典行 瀧川 朋亨 塩崎 泰之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

抗菌薬をリン酸化プルランに含有した新規骨補填材の有用性について検討した。骨補填材からの抗菌薬徐放能を検討し、新規骨補填材では従来の骨補填材と比較し良好な徐放能を示した。また、黄色ブドウ球菌をマウス骨髄内に注入し作成した骨髄炎マウスモデルを用いて検討を行い、従来の骨補填材と比較し有意に強い抗菌作用を認めた。以上より抗菌薬含有リン酸化プルランは感染治療に有用であることが示唆された。
著者
加賀谷 駿 荒井 幸代
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.12, pp.3000-3008, 2013-12-01

新たなエネルギー供給と消費の形態として注目されているマイクログリッドは,既存の電力系統からの送電に極力依存せずに,エネルギー供給源と消費施設をもつ小規模なエネルギーネットワークである.供給が不安定な自然エネルギー活用を前提とするため,グリッド内での電圧均衡を実現し,逆潮流による大停電を回避する必要がある.そこで本研究では,マイクログリッドを,複数のエージェントからなるネットワークとしてモデル化し,需給の不安定をエージェント間での電力融通によって吸収することを考える.具体的には,太陽光発電をもつ需要家エージェントの強化学習モデルを提案する.エージェントは,太陽光発電・定常発電・電力需要・需要制御・蓄電の五つのモジュールから構成され,不安定要素である太陽光発電と電力需要の二つを需要制御と蓄電によって安定化する.需要制御に用いる強化学習には,連続値をとる電力制御問題に対応するために,Actor-Criticとタイルコーティングを導入する.実験では,5体のエージェントからなる完全グラフにおいて需給の安定化が学習できることをシミュレーションで示し,電力融通における提案モデルの有効性を示す.
著者
宮岡 大 小玉 祐一郎 武政 孝治 蓮井 睦子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.72, no.618, pp.37-43, 2007
被引用文献数
1 3

Ventilation is one of the most important techniques for cooling. However the cooling effect depends not only on the building design and the climate condition, but also on the mode of ventilation -when and how the ventilation is operated. In this paper, is proposed the ventilation mode: a ventilation mode where a plenty of natural ventilation operates when being outside air temperature during the period: 18℃ ≦ AT ≦ 27℃ (AT: ambient temperature) throughout the year. Next, then the passive cooling effect is discussed based on the results of a series of parametric simulation studies. The cooling effect is verified in two ways: 1) hourly indoor temperature fluctuation without air-conditioning and 2) monthly cooling load of air-conditioning throughout the year. The results are obtained as following. 1. A room temperature decline is seen by the ventilation mode, and the effect of passive cooling is understood as for a change in a room temperature in summer.2. As for cooling load as well, it had great effect on a reduction by the one with ventilation mode. 3. When heat capacity was enlarged more, great effect on passive cooling was seen in a room temperature decline and cooling load reduction, and it found out multiplier effect with ventilation mode.
著者
松尾 光一
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射光真空紫外円二色性法により,蛋白質の精密な溶液構造情報の獲得を可能にすると共に,この手法を生体膜と結合した蛋白質の精密構造解析に応用した。またアルツハイマー病などの原因蛋白質であるアミロイド線維の円二色性スペクトルを,最先端の計算科学を用いて帰属し,アミロイド線維の形成や毒性に重要な分子間構造を明確にした。円二色性研究の国内外の専門家14名を招聘し円二色性国際ワークショップ(広島,2014年3月4日)を開催し,円二色性法による蛋白質構造解析の有効性を広く発信した。