著者
藤本 猛
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度の研究目的は、(1)北宋末・徽宗朝における政治状況の研究と、(2)皇帝の詔獄制度に関する研究の二つであった。まず(1)に関しては、多くの準備が調ったあと突然中止された徽宗朝の封禅計画について考察した。結果その政治的背景には、国家の礼制をめぐる徽宗と蔡京の考えの違いが存在していた。徽宗にとってすでに価値を見いださない封禅儀礼を、逆に蔡京が強行しようとしたことから、徽宗は目指すべき政権像が異なってしまっていることを痛感し、蔡京への政権委付の可能性を放棄したのだった。よってこの封禅計画の中止は、徽宗即位以来、断続的に続いてきた蔡京政権との訣別を象徴する出来事であった。(2)については、北宋後半の陳正彙の獄にっいて検討した。その結果、制度外の制度と言える詔獄は、非常に高度な政治判断を含んでおり、そのような詔獄の理解には、一般的な制度的側面と、当時いかなる政治状況であったかという政治的側面との両方からアプローチしなければならないことを指摘した。さらに、これまでの宋代「君主独裁制」についての研究を総括し、著書としてまとめた。従来の宋代「君主独裁制」は、皇帝が政治的主体性を放棄し、これを士大夫ら科挙官僚に委ねる「士大夫政治」と表裏一体の制度であり、皇帝は受動的君主であった。これが第六代神宗のときには、神宗がみずから政治的主体性を発揮し、前面に出て新法政策を継続した。これは「君主独裁制」ではなく「皇帝親政」体制であった。以降の君主は、宋初太宗に始まる「祖宗の法」を受け継ぐのか、神宗の「親政」体制を受け継ぐ(「紹述」)のかの選択を迫られた。そこに登場したのが徽宗であった。徽宗はやがて新法政策を「紹述」することを目指し、それは結局、皇帝「親政」体制への移行を探るということを意味していた。したがって徽宗朝の研究こそが、宋代「君主独裁制」研究のために重要であることを指摘した。
著者
岩野 英樹 折橋 裕二 檀原 徹 平田 岳史 小笠原 正継
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.365-375, 2012-06-15 (Released:2012-11-07)
参考文献数
44
被引用文献数
15 88

同一ジルコン粒子を用いたフィッション・トラック(FT)法とU-Pb法によるダブル年代測定した年代値の信頼性を評価した.試料にはFT年代が33 Ma,自発FT密度が106〜107/cm2の島根県川本花崗閃緑岩三原岩体のジルコン粒子(OD-3)を用いた.U-Pb年代分析は,Nd-YAG(λ=213 nm)レーザーアブレーションシステムを搭載したICP質量分析法を用い,ジルコンを47%HF溶液による洗浄あるいはKOH-NaOH共融液によるFTエッチングを施した後に行った.その結果,33 MaのコンコーディアU-Pb年代が得られた.これは化学処理されたジルコンには顕著なPb損失は生じず,そして同一ジルコン粒子のFTおよびU-Pbダブル年代測定が実行可能であることを示す.今回使用した川本花崗閃緑岩三原岩体のジルコン粒子(OD-3)は若いジルコンU-Pb年代測定の標準試料になりうる試料である.
著者
保福 一郎 横井 健 大島 邦夫
出版者
東京都立産業技術高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,有向グラフのグラフ構造を導き出すために,まず次の3つの課題を解決した.・ノード間同士を分類して各々のグループを形成する.・各々のグループの有向グラフに対する影響力を図示化する手法を提案する.・有向グラフ自体がもつグラフ構造の複雑度を表す指標を導き出す.そしてこれら3つの解析を基にノード間のクラスタリングを行う1つの手法を提案し,有向グラフを縮約化する方法に応用した.また,その応用事例を与え,縮約化の有用性についても言及している.
著者
伊藤 直紀 和南城 伸也 野澤 智
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

当該研究期間の研究成果は以下のとおりである。1.銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果に対する多重散乱の寄与の研究標記の寄与について、Fokker-Planck展開を用いた方法、およびBoltzmann衝突項を数値積分する方法の両方により計算を行った。その結果、通常の銀河団については、多重散乱の寄与は1%よりはるかに小さいことが明らかとなった。この研究成果により、本研究代表者たちが以前に発表した1回散乱のみを考慮した計算結果が、通常の銀河団については十分適用できることが判明した。この研究により、銀河団における相対論的Sunyaev-Zeldovich効果の研究は、真の意味で精密科学の段階に到達した。1998年Astrophysical Journalに発表された論文に始まる本研究代表者たちの一連の研究の基礎が最終的に確立したのである。この事実は、宇宙物理学のみならず、統計物理学としての本研究の価値を大いに高めるものである。この研究論文はMonthly Notices of Royal Astronomical Societyに発表された。2.超高温銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果の研究近年25keVを超える超高温ガスを含む銀河団が発見されている。われわれはこれまでのわれわれの計算方法を用いて、このような超高温銀河団における、相対論的Sunyaev-Zeldovich効果を精密に計算した。この際に、結果を詳細な数表と解析的なフィット式によって表現した。これらの結果は将来の観測結果の解析に大いに有効であると考えられる。この研究結果は、Astronomy and Astrophysicsに掲載された。
著者
高山樗牛 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.第7巻 (日記及消息), 1933
著者
大手 信人 鈴木 雅一 小橋 澄治
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.20-30, 1990-07-20
被引用文献数
4

中国, 毛烏素沙地における緑化樹種, 旱柳(Salix matsudana Koidz.)の生育形態に及ぼす土壌水分条件の影響を考察するため, 気象観測データから土壌水分条件と蒸散特性の経時変化を推定する数値計算モデルを考案した。本モデルは, (1)沙地面蒸発-乾砂層消長モデルと, (2)土壌水分・根系吸水分布モデルからなり, (1)により算定れる沙地表層以下への浸透水量を入力とし, (2)によって水分と根系の吸水特性の鉛直分布と蒸散量を算定する。1986年から日中合作による沙漠緑化研究の一環として現地観測されている, 微気象, 土壌水分, 沙地面蒸発, 旱柳の蒸散特性等のデータを基に, 本モデルによって地下水面位置の異なる2ヶ所に生育し, 体制や葉面の組織が異なる旱柳の, 乾燥期における土壌水分消費特性の経時推定を試みた。両者の形態の相違は, 各々の立地における水分環境への適応の結果と考えられ, 地下水面から毛管上昇によって水分が根域に供給されるか否かで形態に大きな相違が現れると考えられた。また推定の結果, その適応戦略は両者とも乾燥期に吸水阻害を最小限に抑えうるものと考えられた。
著者
佐藤 志保理 山口 明彦 竹村 憲太郎 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp."1A1-O11(1)"-"1A1-O11(4)", 2011-05-26

In this paper, we study a method to translate the style of an input motion which is obtained by a motion capture system. For this aim, we model the difference of motions coming from the actor's attribute, such as gender and age. Especially, we focus on the difference coming from the gender, and model the difference of poses (joint angles) between males and females by using a Gaussian process regression. In training the model, we utilize Multifactor Gaussian Process Model to align the training set of motions in cyclic phase. In the experiments, we train the filter with walking motions of males and females, then we apply the filter to walking, running, and jumping motions of males. The results demonstrate that the filter successfully translates the motion into a womanish one.
著者
渡會 兼也
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は高校物理の実験にハイスピードカメラ(以下、HSカメラと略す)を利用し、生徒が『観察』と同時に『測定』を行う教材の開発を目的としている。CASIOのデジタルHSカメラは1秒間に最大1000コマの動画撮影が可能である。現象を撮影しておけば、ゆっくり・何度も観察できるだけでなく、コマ送りによる位置測定も可能となる。HSカメラによる位置測定は映像から直接データを取得できるため導入が容易であり、本研究が今後のICT普及に重要な役割を果たす可能性がある。本研究では生徒が実験でHSカメラを使うことを主眼に置き、その様子や実験精度を調べた。生徒実験のテーマは①「物体の自由落下による重力加速度の測定」と②「力学台車の衝突による運動量の保存」の2つを設定した。①については、記録タイマーを使った班(6班)とHSカメラを使った班(2班)との実験を比較した。結果、記録タイマーの班の重力加速度は平均が8.06m/s^2であるのに対し、HSカメラの班の平均は8.70m/s^2になった。これはHSカメラの場合はテープと記録タイマーの摩擦を考慮しなくてよいため、精度が向上したと考えられる。②については、すべての班(10班)でHSカメラを使い、衝突における運動量の保存を確認した。実験は10%以下の精度で運動量の保存を確認できた班もあれば、比較的大きな誤差(20%~30%)を出した班もあった(割合は半々)。これは実験の最初に解析方法や誤差評価について生徒に周知が不十分であったことが一因であると考えている。解析の手法やその周知は今後の課題である。生徒の感想には、本研究のねらい通り「測定が簡単にできる」「何度もくり返し観察と測定ができる」等が多く挙げられた。一方で、「4~5人の班ではカメラの液晶画面が小さい」「視差による誤差評価が難しい」などの意見もあった。今後、視差による誤差が無視できる条件の提示等(例えば、物体のサイズを小さくする)も考える必要がある。現在は生徒実験による反省を元に実験の手順等を学会誌にまとめている。
著者
斉藤 英俊 丹羽 信彰 河合 幸一郎
出版者
広島大学総合博物館
雑誌
広島大学総合博物館研究報告 (ISSN:18844243)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-57, 2011
被引用文献数
1

西日本でどのような水生動物が釣り餌として流通されているのかについて,2009年12月~2011年8月の期間に市場調査をおこなった。釣り具店で販売されている商品として,多毛類,ユムシ類,ホシムシ類,二枚貝類,甲殻類および魚類など少なくとも27種が確認できた。これらの釣り餌動物は,1)国外から輸入されている非在来種(≧4種),2)国外から輸入されている在来種(18種),3)国内流通されている外来種(2種),および4)国内流通のみされている在来種(3種)の4タイプに分けられた。Market research was performed between December 2009 and August 2011 to investigate the current state of aquatic animals sold as bait for sport fishing in Western Japan. At least 27 species of bait—including nine polychaetes, one echiuran, one sipunculan, three bivalves, at least ten crustaceans, and three fishes—were sold at fishing bait shops in Osaka and Hiroshima prefectures. These animals were divided into four types: 1) non-native species imported from foreign countries (at least four species), 2) native species imported from foreign countries (eighteen species), 3) invasive species supplied in Japan (two species), and 4) native species supplied only in Japan (three species).
著者
奥泉 香
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.11-18, 2010-09-30

The purpose of this paper is to propagate the inclusion of visual texts such as pictures, photographs, and charts into the curriculum of the national language class and clarify and present the underlying theory behind such inclusion. The text environment surrounding learners is significantly changing. One of such changes is the incorporation of visual text learning into the character text learning that has long formed the core of the Japanese language class. To promote this incorporation properly, it is indispensable to develop a theory that especially supports the learning of visual texts as a meta learning approach of these texts. To that end, this paper focuses on the study by G. Kress et al., who employed M. Halliday's systemic functional grammar in their research. It also discusses specific practical possibilities, including the kind of new perspectives that can be gained toward learning and educational material analysis by the introduction of this theory.
著者
若松 謙一 西田 実継
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

銀河間衝突が銀河中心核の核活動、特にセイファ-ト現象やクエサ-と深く係わっているのではないかとの仮説は1985年に出され、最近大きな関心を呼んでいる。衝突に依って相棒銀河から剥ぎ取られたガスが銀河中心核へと隆り積もり、爆発的星の形成を引き起こし、ブラック・ホ-ルへガスを供給して中心核を活性化する、と言うのである。銀河間衝突で形成されたことがはっきりしているリング状銀河について、セロトロロ天文台で得たCCD撮像分光デ-タを本研究費で購入したワ-クステ-ションを用いて解析を行い、現在までに以下の結果を得た。1.約40個のリング状銀河の中心核は輝線や強いバルマ-吸収線を示しており,星形成等の激しい核活動が起こっている事を見いだした。2.輝線を示す銀河の大部分はライナ-(LINER)やスタ-・バ-スト型であり,セイファ-ト2型はわずか3個、1型は新たには1個も発見出来なかった。3.また、多くのリング状銀河がIRAS赤外線源であることもつきとめた。4.以上の事より、リング状銀河では予想通りの形成は極めて活発ではあるが、セイファ-ト1型が少なかったことより、銀河間衝突がブラック・ホ-ルへガスを供給して銀河中心核を活性化する、とのシナリオを検証するには至らなかった。5.その理由として、リング状銀河を形成する衝突は銀河ディスクを垂直につっきるタイプなので、ガナを中心核へ落し難しくなっているとも考えられるが、その割にはスタ-・バ-スト型が多いことからそう単純でもなさそうである。6.リングを持った楕円銀河であるHoagーtype銀河ではバルマ-吸収線が強く、10億年以内に激しい星の形成があったと思われる。なお、平成4年7月にもう一度セロトロロ天文台で観測できる事となったため、この問題をより一層突き詰めたいものである。
著者
柳沢 健二
出版者
新日本出版社
雑誌
経済 (ISSN:04534670)
巻号頁・発行日
no.221, pp.128-141, 2014-02
著者
橋本 修 角 和俊 横川 英広 伊藤 晶彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.90, pp.53-59, 2001-05-18
被引用文献数
11

抵抗皮膜を用いたλ/4型電波吸収体は, 構造が簡単でしかも設計等が容易にできることから, 室内無線LANなどの利用を考えた場合, その利用が期待されている. しかしながら, このタイプの電波吸収体は, 使用するスぺーサ内の波長の1/4より薄くできない欠点がある. そこで, 本研究では, λ/4型電波吸収体のスペーサ部にFSS (Frequency Selective Surface)を吸収膜としての抵抗皮膜と並列に挿入し, スペーサ内の位相を変化させることにより, 吸収体の厚みを薄くすることを試みた. この場合, 設計周波数領域における使用するFSSのインピーダンスを把握する必要があるが, 本研究では, 測定したFSSの透過特性からFDTD法を用いて, インピーダンスを求め, これを電気的等価回路に代入することにより, 吸収特性が最大となるFSSの挿入場所や抵抗皮膜の面抵抗値を決定した.
著者
棚瀬 幸司 小野崎 隆 稲本 文野 上垣 弘子
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

カーネーションは通常の品種では品質保持剤を処理しない場合、花持ち日数が約7日である。我々は花持ち性に優れる品種と系統を作出している。花持ち形質に関与する遺伝子の網羅的な情報を得るためこれらを材料に用いてトランスクリプトーム解析を行った。マイクロアレイ解析により、対照品種と日持ち性の優れる品種の老化時に発現が異なる遺伝子1253個を抽出した。その中で花の老化に伴って発現が上昇する遺伝子群の中にいくつかの興味深い遺伝子が含まれていた。さらに、リアルタイムPCRにより解析したところ、日持ち性の優れる品種と通常品種で発現の差が見られた遺伝子を複数獲得した。
著者
佐々木由治郎 著
出版者
佐々木由次郎
巻号頁・発行日
1910
著者
横井春野 著
出版者
野球界社
巻号頁・発行日
1922