著者
三隅 二不二 杉万 俊夫 窪田 由紀 亀石 圭志
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1979
被引用文献数
1

本研究は, 企業組織体における中間管理者のリーダーシップ行動を実証的に検討し, その測定尺度を構成することを目的とするものである。<BR>フィールドは, 自動車部品の製造, 販売を主要な業務とする企業体であった。まず, 中間管理者 (部長, 工場長, 課長) に, 管理・監督行動に関する自由記述を求め, それを分類・整理しながら, リーダーシップ行動を測定するための質問項目を作成した。質問項目作成の過程で, 質問項目検討のための専門家会議を数回にわたってひらき, 中間管理者のリーダーシップ行動が質問項目として網羅的に含まれることを期した。最終的に, (1) 部 (次) 長・工場長用49項目, (2) 事務・技術系課長用92項目, (3) 工場課長用85項目の質問項目を作成した。リーダーシップ行動測定項目はすべて部下が上司のリーダーシップ行動を評価する, 部下評価の形式にした。これに, リーダーシップ測定項目の妥当性を吟味するための外的基準変数を測定する16項目を加えて質問票を印刷した、外的基準変数は, 仕事に対する意欲, 給与に対する満足度, 会社に対する満足度, チーム・ワーク, 集団会合, コミュニケーション, 精神衛生, 業績規範の8変数である。<BR>回答者数は, 部 (次) 長・工場長用533名, 事務・技術系課長用1, 040名, 工場課長用273名であった。リーダーシップ行動測定項目に関して因子分析を行なったが部 (次) 長・工場長, 事務・技術系課長, 工場課長, いずれの場合も, 「P行動の因子」と「M行動の因子」が見出された。<BR>次に, P行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 「P行動の因子」で. 60以上, かつ「M行動の因子」で. 40未満の因子負荷量を持つ項目のみを対象とする因子分析を行なった。その結果, (1) 部 (次) 長・工場長の場合は, 「計画性と計画遂行の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (2) 事務・技術系課長の場合は, 「計画性の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (3) 工場課長の場合は, 「計画性の因子」, 「内部調整の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」が見出された。<BR>M行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 同様の分析を行なつた。<BR>その結果, (1) 部 (次) 長の場合は, 「独善性の因子」 と「公平性の因子」, (2) 事務・技術系課長, 及び (3) 工場課長の場合は, 「独善性の因子」と「配慮の因子」が各々見出された。<BR>従来の研究との比較によって, 第一線監督者と中間管理者のリーダーシップ行動の差異が考察された。すなわち, 具体的な内容には若干の違いがあるものの, 「厳格性の因子」及び「計画性の因子」は第一線監督者と中間管理者に共通している。しかし, 部 (次) 長・工場長及び事務・技術系課長の場合に見出された「率先性の因子」と, 工場課長の場合に見出された「内部調整の因子」は, 第一線監督者を対象とした従来の研究では見出されてはおらず, 中間管理者に特有な因子であると考察された。<BR>P行動, M行動の因子得点を用いてリーダーをPM型P型, M型, pm型に類型化し, 8個の外的基準変数との関連においてリーダーシップPM類型の妥当性を検討したが, いずれの外的基準変数においても, PM型のリーダーの下で最も高い得点, pm型のリーダーの下で最も低い得点が見出され, PM類型の妥当性が実証された。このPM類型の効果性の順位は, 従来の研究における第一線監督者の場合と全く同様であった。<BR>また, P行動測定項目10項目, M行動測定項目10項目を選定した。10項目を単純加算して得られるP (M) 行動得点はP (M) 行動の因子得点と. 9以上の相関を示すこと, PM行動得点を用いてリーダーの類型化を行なった場合のPM類型と外的基準変数の関係が因子得点を用いて類型化を行なつた場合の関係と同じであったことからこれらPM行動測定項目の妥当性が明らかになった。
著者
松尾 睦
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.75-87, 1996-07

The purpose of this study was to investigate the determinants of organizational climate, which was defined as shared behavior patterns. A total of 153 managers responded to the mailed questionnaire designed to evaluate the actual state of each company. The results indicate that organizational climate was influenced by planned organizational reform, external environment, overall organizational performance, and success of a particular department or product. Interestingly, change in management, recruitment of new members and planned change with downsizing had no effect on organizational climate. Implications for future research were discussed concerning the causal relationship between organizational performance and organizational climate.
著者
橋本 剛明 唐沢 かおり 磯崎 三喜年
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-88, 2010
被引用文献数
2

大学生が所属するサークル集団は,フォーマルな組織とインフォーマルな集団の双方の特徴を併せ持った集団であり(新井,2004),本研究はこれを準組織的集団と位置づけた。その上で,サークル集団における成員と集団とをつなぐコミットメントのモデルを探り,検討を加えることを目的とした。具体的には,組織研究の領域における3次元組織コミットメントのモデル(Allen & Meyer, 1990)を基盤に,サークル・コミットメントを測る尺度を作成し,学生205名を対象に調査を行った。その結果,サークル集団におけるコミットメント次元として,情緒的コミットメント,規範的コミットメント,集団同一視コミットメントの3因子が抽出された。さらに,それぞれのコミットメント次元の規定要因に関して,集団がフォーマル集団に近い程度を表す集団フォーマル性との関連を含めて分析を行った。情緒的コミットメントは課題および成員への集団凝集性により規定されており,また,課題凝集性と集団フォーマル性の交互作用が示唆された。規範的コミットメントと集団同一視コミットメントはともに,集団フォーマル性と成員凝集性によって規定されていることが認められた。<br>
著者
浅井 千秋
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.79-90, 2013
被引用文献数
1

本研究では,自発的職務改善が,情緒的組織コミットメントとキャリア開発志向の2つの就業態度および,上司エンパワーメント,上司の統制的管理,組織エンパワーメント,キャリア開発支援,業績主義評価の5つの就業環境によって規定されるという仮説に基づいて,構造モデルが構成された。5つの企業の従業員372名に対する質問紙調査のデータを用いた共分散構造分析によって,このモデルの妥当性を検討した結果,自発的職務改善に対して,キャリア開発志向と上司エンパワーメントから正の影響が見られ,業績主義評価から負の影響が見られた。組織エンパワーメントと情緒的組織コミットメントは,キャリア開発志向を高めることを通して,間接的に自発的職務改善に影響を与えることが示された。最後に,本研究を通して明らかになった知見の妥当性と課題について考察を行った。<br>
著者
沾凉 纂緝
出版者
須原屋伊八
巻号頁・発行日
1772
著者
若林 満
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.173-187, 1987-12-24

わが国企業の国際化は, 1980年代にはいって急速な進展をみせており, 最近の円高傾向はこの動向にはくしゃをかけている。日系企業が海外において受け入れられ, 定着し, 着実に発展するためには, 現地従業員との融合が不可欠である。なぜなら, 日本的経営の最大の特色の一つは, 各企業が独自の方法で人材を育成し, 人的資源の充実と呼応する形で業務の展開を行なうことにあるからである。それ故, 現地従業員をどれだけ教育訓練し, 事業拡大の人的資源として活用できるかが, 今後の海外日系企業の発展の鍵をにぎる重要なファクターの1つとなろう。このような観点から, 本稿では既存の調査データをもとに, アメリカとASEAN調査において日系企業がどのような人材育成の試みを行ない, どのような問題に直面しているかがまず検討された。これらの地域において日系企業は, 各種の日本的経営の試み(終身雇用, 年功序列賃金など)を行なっていたが, 大部分は大きな修正を迫られていた。このことから, 海外日系企業は日本の制度や慣行をそのまま現地に移植するのではなく, これらが発揮していた"経営機能"(雇用安定, キャリア形成, 仕事への動機づけなど)を現地において獲得すべく, 新しい制度や慣行の確立(すなわち新しい人的組織のあり方)が必要であることが主張された。このような新しい人的組織は, 現地の制度や慣行, 日本固有のシステム, それに新たな革新的なアイデアを基礎とした, 混合(hybrid)モデルの性質をもつであろうことが示唆された。加えて新しいシステム構築のための方法について, 若干の提案がなされた。
著者
Patricia Yuca HAMAGUCHI WuYin WENG Takeshi KOBAYASHI Jiraporn RUNGLERTKREINGKRAI Munehiko TANAKA
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.200-204, 2007-08-25 (Released:2007-10-04)
参考文献数
22
被引用文献数
4 16

Fish muscle protein films were prepared from blue marlin (Makaira mazara Jordan & Evermann) meat which had been stored at 30°C to intentionally lower the meat quality. In this study, the effects of meat quality and pH on the formation of these protein films were investigated. Moreover, ε-polylysine was added to the film-forming solutions to reduce the microbial population of films. The mechanical properties of the films were slightly affected by acidic and alkaline pHs. However, the water vapor permeability of muscle protein films was not affected by either the quality of the fish meat or the pH of the film-forming solutions. SDS-PAGE (sodium dodecyl sulfate- polyacrylamide gel electrophoresis) showed the degradation of myosin heavy chain in acidic films and polymerization in alkaline films. It was revealed that biodegradable films can be produced even from very low quality fish meat, and that the bacterial population of films could be drastically reduced by the addition of ε-polylysine.
著者
福田 敦夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

1.タウリン作用へのリン酸化/脱リン酸化の関与の検討と細胞内情報伝達分子の同定:すでにリン酸化酵素阻害剤でタウリンによるKCC2機能抑制の解除が起こることを確認していたので、想定されるリン酸化部位に変異を導入したKCC2 mutantを作製して実験に供した。ラットを用い、in vitroでのタウリンによるKCC2蛋白機能抑制は消失し、in vivoではwildでは起こらない細胞移動の抑制を示した。タウリンが活性化するリン酸化酵素と基質であるKCC2のリン酸化部位を同定した。2.Ca^<2+>振動を指標としたモーダルシフトの発生部位の解析:胎齢17.5日のマウス大脳皮質スライスでタウリントランスポーター阻害剤(GES)、GABAトランスポーター阻害剤(ニペコチン酸)を投与して、移動中の細胞(電気穿孔法でmRFP導入)の示す自発的Ca^<2+> transientsに対する影響を比較した。皮質板ではニペコチン酸が、サブプレートではGESがよりCa^<2+>振動の頻度を上昇させる傾向を示したが、中間帯ではCa^<2+> transientsそのものが少なくGESも作用しなかった。GABAイメージングでGABA放出部位は脳室下帯と中間帯に多く、これらの場所に少なくサブプレートに多いタウリンの空間分布とは相反的であった。上の結果から、タウリンとGABAはCa^<2+>振動の変調と移動モードのシフトに各々異なる役割で関与する可能性が考えられた。3.母体拘束ストレスが胎仔脳タウリン量とモーダルシフトに与える影響:妊娠15日目のマウスに、拘束・光刺激ストレスを一日に3回、妊娠17日目まで3日間続けた。胎仔大脳皮質のタウリン含有量がストレス群で減少傾向にあった(p-0.077)。しかし、GABA、グルタミン酸の含有量に変化はなかった。さらに、皮質板細胞の発生や細胞移動を観察したところ、全く影響を受けていなかった。その一方で、GABA細胞は有意にその発生数が減少していた。
著者
紫加田 知幸
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

有害赤潮鞭毛藻類シャットネラ・アンティカの日周鉛直移動リズムに及ぼす光環境の影響を調べた。その結果,暗期における微弱なUV-A~青色光(>0.01umol m^<-2>s^<-1>,360~480 nm)の照射により,その後の日周鉛直移動リズムが変化することが判明した。さらに,暗期に回収したシャットネラ細胞について,全mRNAシーケンスを実施したところ,クリプトクロームやオーレオクロームといった青色光受容体の類似配列が検出された。今後,これらの光受容体と日周鉛直移動リズムの光位相変化の関係を解析していく予定である。
著者
高橋 誠一
出版者
関西大学アジア文化交流研究センター (CSAC)
雑誌
アジア文化交流研究 (ISSN:1881350X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.7-23, 2008-03

Although Tuboya district is subsumed into the central areas of Naha city now, it was an independent village where was manufacturing pottery, and it was located midway between Shuri and Naha. This paper discribes that this district’s settlement pattern is not gridiron settlement pattern (格子状集落形態) which was newly formed in Ryuku period; however, this district keeps the traditional style that is consisted of complicated and twisted road networks and blocks. This paper also mentions that many Ishigantou as talisman are set to prevent the entry of evil spirits which can go straight only, reflecting the perspective of traditional geography of which was came from China. The new style, gridiron settlement pattern which was promoted to make agricultural settlements in Ryuku period, was not introduced to Tuboya district that devote themselves to manufacture pottery. Preservation of this historical district which can attract many tourists would be needed.
著者
長井 健介 篠原 康浩 津留 英司 石野 まゆ子 鈴木 徹也
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.267-274, 2012 (Released:2012-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

It has been well known that anisotropy in yield stress and the work-hardening rate is induced by pre-strain and aging. However, such an origin has not been adequately understood. In the present study, stress-strain curves in different directions were investigated after 2% pre-straining and post-heat treatment at 150°C in ferritic steel. When the applied strain path was changed to the orthogonal direction of the pre-straining path, the re-yield stress was lowered and the work-hardening rate in the low plastic strain was increased. The heat treatment following 2% pre-straining caused an increase of the re-yield stress in the parallel direction to the pre-strain and caused no change on the re-yield stress in the orthogonal direction. The work-hardening rate was increased in both directions after the heating. Electron back scatter diffraction pattern (EBSP) analysis was also conducted to measure the kernel average misorientation (KAM) value, which corresponded to the density of the geometrically necessary dislocation, on each [hkl]-oriented family grain for the pre-strained and the post-heated materials. The EBSP results indicated that heterogeneous work-hardening behavior among the [hkl]-oriented family grains could strongly effect the anisotropy induced by strain path change and aging.
著者
新堀 英二 高木 幹雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1932-1940, 1993-09-25
被引用文献数
39

離散的コサイン変換(DCT)を用いたGerchberg-Papoulis(GP)の反復法を適用した画像拡大法"IM-GPDCT"を提案し,その特性を評価した.従来用いられてきた補間法による拡大画像は,観測過程において失われた空間的高周波成分を復元することが原理的に不可能なため,画質劣化が避けられなかった.IM-GPDCT法は観測時に失われた空間的高周波成分を復元する概念を用いることにより拡大画像の画質を改善する.IM-GPDCT法では,周波数帯域拡張の基本原理としてGP反復法を用いており,画像をDCTにより正逆両方向に変換する過程において,画像の広がりが有限であることと空間的低周波成分の正しい情報が既知であることの二つの拘束条件を用いて空間的高周波成分を復元する.提案手法と3種の従来法(補間法)を再生誤差と拡大画像の画質の観点から比較した.その結果,IM-GPDCT法は再生誤差の観点から補間法よりも優れていること,また,拡大画像の画質は鮮鋭さ,ジャギーのないエッジ再現やテクスチャの再現性に優れていることが示された.
著者
千賀 裕太郎 土屋 俊幸 朝岡 幸彦 三橋 伸夫 鎌田 元弘 廣田 純一 柏 雅之 堀口 健治
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地域住民・NPO・企業・行政のパートナーシップを構築することで、多様な地域再生活動を展開する「中間支援型組織」としてのグラウンドワーク組織の普及・定着に関する研究を行った。このなかで、グラウンドワークが農村を含めた全国各地においていかに活動を展開し、地域住民、地域企業等の参加を組織し、環境改善および雇用創出を通じて地域の持続的活性化へと結び付けてきたのか、その構造を明らかにし,特に弱い経済条件の地域におけるグラウンドワークの更なる普及・発展の条件を明らかにした。