著者
矢田 豊 竝川 昌司 神田 大輔 畑中 健 大山 達也 長島 多聞 久保田 潤 高木 均 吉永 輝夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.523-529, 2012 (Released:2012-08-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は56歳,男性.C型肝硬変に腹膜播種を伴う進行肝細胞癌(HCC)を併発し,ペグインターフェロンα併用5FU全身化学療法(PEG-IFN/5FU全身療法)を施行したところ,化学療法開始直後に出血性ショック状態となった.腹部CT検査で腹腔内出血を確認し,化学療法に伴う肝癌破裂と診断した.保存的加療にて軽快し,かつPEG-IFN/5FU全身療法によりHCCは腹膜播種巣を含め著明に縮小した.このため,PEG-IFN/5FU全身療法を計5コース施行したところ,同療法は奏功した.化学療法に伴うHCC破裂は化学療法が有効であるがゆえに生じる可能性があり,循環動態の安定が得られた後に,同療法を繰り返すことで著効が期待できる.腹膜播種を伴う進行HCCにPEG-IFN/5FU全身療法は考慮すべき治療法と考えられた.
著者
亀井 且有 豊田 晃史 串田 淳一
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.944-953, 2012

擬似同期を用いた動画共有の代表的な例として,ニコニコ動画がある.そこでは,コメントが挿入されたビデオを見ている視聴者は一人でビデオを見ているにもかかわらず,ユーザーとそのシーンの感情をあたかも共有しているかのように感じる.本論文では,擬似同期を用いた動画共有において動画に重畳されるコメントに起因する視聴者の感情高揚について述べる.まず,ラッセルの円環モデルの4感情を生起させる動画を選出する.次に,それらをニコニコ動画に投稿し,それら動画に重畳された代表的なコメントを抽出する.さらに,それらコメントを先の動画に重畳した動画を作成し,被験者がコメントあり動画およびなし動画(オリジナル動画)をそれぞれ視聴しているときの感情の強さを測定する実験を行う.最後に,実験結果より各感情におけるコメントの有無と感情高揚との関係を明らかにするとともに感情心理学や神経科学の観点からその現象を考察する.
著者
小野 正嗣
出版者
明治学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

コンゴ出身の振付家フォスタン・リニエキュラの舞台作品『ベレニスと訣別するために』と『Cargo』を分析し、植民地支配、とりわけ言語支配が、被植民者の人々の現在のアイデンティティ形成に深い影響を及ぼしていることを明らかにした。また、レバノン出身のフランス語圏作家アミン・マアルーフの著作の詳細な読解から、この作家の文明論的考察が、今日の世界、とりわけ西洋とアラブ世界の対立を理解する上できわめて有効であることを明らかになった。
著者
大久保 由紀 八藤後 忠夫
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-29, 2004

An investigation for 279 university students, resulted in the following conclusions.1) Resistance to "abusive language" was shown to be significantly higher in the control group than in the object group. The working hypothesis was formed from this result.2) High resistance in the object group was significantly shown only in the "the nursing family".3) Both object and control groups had a high resistance score of toward language on "physical region". A low resistance score was also confirmed both groups on language concerning "the region on the actions of the partners" and "the region on the inner matters of the partner".4) In all inter-group comparisons, Resistance to the language use concerning "people who are not so intimate with the subject" was significantly high. Especially in cases of "dispute".5) University students of nursing and psychology and welfare (the object group) had low resistance. However, it is be not appropriate to postulate their lack of their sensitivity toward "abusive language" from this.
著者
佐藤 久美 小川 友理江 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.200-205, 2011-06-05
参考文献数
17
被引用文献数
1

豆腐の凝固剤である'にがり'を用いてプディングを調製し,その製品の色差測定により外観の評価,テクスチャー測定および動的粘弾性の測定により物性の評価,抗酸化性の評価,官能評価による嗜好性を評価し,総合的にプディングの品質を検討した。その結果,無添加に比べて,'にがり'添加により黄度か弱く,明度が高い製品となった。テクスチャー測定では付着性が低く,軟らかいプディングとなった。抗酸化性においても'にがり'添加で増強されることがわかった。動的粘弾性測定では'にがり'添加濃度0.5wt%の製品が高周波領域では他の試料に比べ貯蔵弾性率ならびに損失弾性率が周波数に大きく依存し,ゲル構造が柔らかくしなやかなプディングであると考えられた。嗜好意欲尺度法による官能検査では0.5wt%添加が最も嗜好意欲が大であり,プディングへの'にがり'添加の有用性が認められた。

1 0 0 0 OA 本草和名

著者
[深江輔仁 撰]
出版者
日本古典全集刊行会
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1927
著者
森 俊之 谷出 千代子 乙部 貴幸 竹内 惠子 高谷 理恵子 中井 昭夫
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-67, 2011-12-30

ブックスタートに取り組んでいる自治体と取り組んでいない自治体を比較することで,乳幼児期からの絵本の読み聞かせがその後の子どもの読書習慣に及ぼす影響を検討した.7年間以上ブックスタートに取り組んでいる自治体と未だ取り組んでいない自治体を1か所ずつ選び,当該自治体の公共図書館の近隣に立地する小学校7校で,1年生の子どもをもつ保護者を対象に子どもの生活習慣や読書環境に関するアンケート調査を行った.乳児期におけるブックスタートの体験が,小学1 年生の時点での読書習慣を増やし,ゲーム習慣を減らすという結果が見出された.また,乳児期に親子でブックスタートを体験することで,保護者の図書館利用頻度が高まり,保護者による子どもへの読み聞かせの頻度が高まるという結果も示された.ブックスタートは,保護者の読み聞かせ行動などを変化させ,それにより小学校入学後の子どもの読書習慣など生活習慣に影響を及ぼすと考えられる.
著者
羽渕 裕真 大内 浩司 小野 文枝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WBS, ワイドバンドシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.374, pp.11-14, 2004-10-18
参考文献数
1

2004年8月30日(月)から2004年9月2日(木)まで、8th IEEE International Symposium on Spread Spectrum Techniques and Applications, ISSSTA2004(第8回スペクトル拡散技術と応用に関する国際シンポジウム)がオーストラリア、シドニーのソフィテルウエントワースホテルにて開催された。発表件数は196件、プレナリ講演は5件であった。本橋では、本国際会議の参加報告と本国際会議の近年の動向についての報告がなされている。
著者
広渡 俊哉 亀谷 計泰
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.85-92, 1999-03-30
参考文献数
13

コンオビヒゲナガ,Nemophora ahenea Stringerは,本州,四国,九州に分布し,成虫が7-9月に出現することが知られていたが,その生活史や配偶行動などについてはまったく不明であった.そこで,配偶行動を中心として飛翔活動の日周性・産卵寄主など,本種の生活史の一部を明らかにすることを目的として,兵庫県猪名川町の三草山,および和歌山県橋本市の玉川峡において調査を行った.三草山では,1997年7月11日,7月19日,7月23日の3回,玉川峡では,8月26日,8月30日の2回調査を行った.調査は原則として午後3時から日没まで,7月23日のみ日の出から日没まで行った.いずれの調査日においても,30分ごとに温度・照度を記録した.成虫,特にオスは日没前後,照度が500-8,000lxと薄暗くなってから活発に活動し,オスが群飛するのが確認された.玉川峡では,オスがイタドリ,ヌルデ,ヒメジョオンなどの花の約10-30cm上空で群飛するのが見られた.これまでヒゲナガガ科の配偶行動についての報告例は非常に少なかったが,三草山で7月19日と7月23日に本種の交尾に至る行動を観察することができた.今回観察されたのは,いずれの場合もオス1個体がヒメジョオンの約10cm上空でホバリングしているところにメスが直線的に飛んできて交尾が成立するというものであった.オスは,メスが約10cmのところまで接近すると,メスに飛びついて空中で絡まり,葉上に落下したときにはすで交尾に至っていた.コンオビヒゲナガでは飛翔中のオスが1個体でも交尾が成立したことから,本種にとって群飛をすることはオスとメスが出会うための必要条件ではないことが明らかになった.また,本種の寄主植物は知られていなかったが,玉川峡で8月30日にイタドリの花のつぼみに産卵行動をするメスが見られた.卵は確認できなかったが,イタドリは本種の寄主植物である可能性がある.Thornhill(1980)は,ケバエの一種にみられるオスの群飛は,メスが羽化してくる地面に近い場所を確保しようとするオス同士の闘争であると考えた.コンオビヒゲナガの場合,オスはイタドリやヒメジョオンなどの花をマーカーとしてメスとの出会いの場所として利用しており,群飛を形成するのはThornhill(1980)が観察したケバエの一種のようにその場所をめぐって争っている結果なのかもしれない.また,コンオビヒゲナガではオスの複眼がメスに比べて大きく発達しており,特に背面域の個眼が腹面域の個眼にくらべて大きかった.ホバリングするオスは地面に対して体軸をさまざまな角度に傾けており,地表から飛んでくるメスを発見するのにも背面域の発達した個眼を用いている可能性がある.また,コンオビヒゲナガのメスの複眼はオスに比べて小さいものの,群飛をしないとされるクロハネシロヒゲナガ(オスは単独で探雌飛翔をすると考えられている)のメスに比べて相対的に大きかった.コンオビヒゲナガのメスが,飛翔するオス,あるいはマーカーと考えられる植物のどちらに誘引されるかは不明だが,今回の観察からもメスはオスを視覚で発見していることが示唆された.
著者
石原 裕規 諏訪 博彦 鳥海 不二夫 太田 敏澄
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.14, pp.1-6, 2012-12-05

東日本大震災時に,人々は, Twitter により様々な情報収集や,情報交換を行い震災に対処した.この際,情報発信や拡散の起点となるアカウントや,情報を仲介するアカウントが重要となる.ネットワーク分析においてこれらのアカウントは次数中心性と媒介中心性で表現できると考える.本研究では,二つの中心性を算出し,アカウントを特定し,コミュニケーション形態により分類した.今後このアカウントがどのような役割を果たしていたか理解し,今後の震災時における Twitter 利用に繋げられると考える.Using tweets extracted from Twitter during the Great East Japan Earthquake 2011, social network analysis techniques were used to generate and analysis the online networks that emerged at that time. People attempted to collect information about earthquakes and to communicate with friends through the twitter, and it is coping with the earthquake disaster. The aim was to identify active players for the Great East Earthquake on twitter. We construct a communication network and calculate two centrality measures(degree and betweenness) on twitter. As a result, Important players during the Great East Japan Earthquake were found to be: media reporters, people from not-for-profit, social media volunteers, newspaper publishing company, celebrity, and autonomous computer program.
著者
齋藤 桂
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.601-613, 2011-04-25

This paper examines the current educational effort, adopting the Balanced Scorecard (BSC). The BSC is a goal-setting and accountability tool that all schools (and eventually district departments) in the San Francisco Unified School District build to describe the efforts of each individual school site in meeting the goals and objectives of their respective district's Strategic Plan. It ensures that schools are focusing on key strategic actions to improve student achievements for all students and to disrupt the historic power of demographics. Mainly, student test scores now serve as the prevailing achievement. The BSC offers schools and the community at large the opportunity to design alternative measures. The importance of engaging the school community and all stakeholders in discussions to gain a shared understanding has been stressed. However, many difficulties confront the adoption of this new approach, which includes ensuring consistency, selection of evaluation methods, increased burdens on educators, and personnel allocation. It is contemplated that with more measures to assess performance, greater levels of accountability and school performance can also be achieved. The implementation of BSC in the San Francisco Unified School District began in 2009, and it deserves continued attention.
著者
齋藤 桂
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.57, pp.601-613, 2011

This paper examines the current educational effort, adopting the Balanced Scorecard (BSC). The BSC is a goal-setting and accountability tool that all schools (and eventually district departments) in the San Francisco Unified School District build to describe the efforts of each individual school site in meeting the goals and objectives of their respective district's Strategic Plan. It ensures that schools are focusing on key strategic actions to improve student achievements for all students and to disrupt the historic power of demographics. Mainly, student test scores now serve as the prevailing achievement. The BSC offers schools and the community at large the opportunity to design alternative measures. The importance of engaging the school community and all stakeholders in discussions to gain a shared understanding has been stressed. However, many difficulties confront the adoption of this new approach, which includes ensuring consistency, selection of evaluation methods, increased burdens on educators, and personnel allocation. It is contemplated that with more measures to assess performance, greater levels of accountability and school performance can also be achieved. The implementation of BSC in the San Francisco Unified School District began in 2009, and it deserves continued attention.
著者
神庭 信幸 荒木 臣紀 土屋 裕子 和田 浩 塚田 全彦
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

センサーサブシステム、データ管理サブシステム、分析サブシステム、意思決定サブシステム、最適化管理サブシステムを備えた臨床支援システムが完成し、合わせて既存のデータベースであるプロトDBとの接続も完了した。これによって、文化財の保全に向けた実空間での活動と、その結果をデータとして確認・分析・評価・判断する情報空間とが高度に統合された包括的保存システムが構築され、文化財に及ぶ様々なリスクの軽減に対して有効であることが確認された。